昆虫のカナブンとコガネムシについて徹底解説!
昆虫であるカナブンとコガネムシについて徹底解説をしていきます。カナブンとコガネムシはどのような生態なのでしょうか。見た目の違いや見分け方、どんなえさを食べて生きているのかなど紹介していきます。
昆虫の生態は非常に複雑です。姿形が似ていても全く異なった昆虫も沢山います。幼虫の時と成虫のときで違いはあるのか、違いがあるのならカナブンとコガネムシではどう違うのか具体的に説明していきます。
カナブンとコガネムシの生態を知ることによって、植物を育てていくうえで重要な要素も分かってきます。植物にとって益虫なのか害虫なのか、対策や防除方法も紹介していきます。
カナブンとコガネムシの生態とは?
カナブンとコガネムシの生態を紹介していきます。カナブンとコガネムシはどのような昆虫なのでしょうか。見た目の違いや体の特徴であったり寿命なども説明します。また、カナブンとコガネムシはどこで見ることができるのか、それぞれの生態や生息場所も紹介していきます。
カナブン
カナブンは、コウチュウ目コガネムシ科ハナムグリ亜科に属している甲虫類になります。見た目は全身が黄土色や銅褐色の金属光沢があり個体によって異なります。体長は約20ミリから30ミリになります。脚の先端に鋭い爪を2本持っており、木の樹皮にしがみ付けるようになっています。
カナブンは飛行能力も優れており、後翅(こうし)のみを広げて飛ぶのが特徴です。カナブンは春から秋にかけて様々な花に蜜を求めて飛来します。花にとって重要な、受粉に関わる昆虫の1つです。
カナブンは日本国中に生息しており、屋久島や種子島などの離島でも見ることができます。主に雑木林や森林に生息しており、都市部においては公園や街路樹でも見かけることができます。
カナブンの寿命は最長で10ヶ月になり越冬はできません。成虫になってからは1ヶ月程度しか活動できない短命な昆虫になります。
コガネムシ
コガネムシは、コウチュウ目コガネムシ科に属している甲虫類になります。漢字で書くと「黄金虫」と書き、全身は光沢が強いのが特徴です。濃い緑色や黒褐色、赤褐色など個体差があります。艶やかな見た目から「飛ぶ宝石」とも呼ばれています。
体長は約7ミリから25ミリと幅があり、体形が丸みを帯びています。触角は短いものが多く先が広がっています。脚には棘があり、先端にかぎ爪が付いているので、樹木の皮をしっかり捉えることができます。
コガネムシは前翅を閉じて飛ぶことが出来ず、前翅を広げたまま後翅を使い飛びます。更に体重が重いため長時間飛行ができません。
コガネムシは全国に生息しており、雑木林や森林、市街地ではトイレなどでも見ることができます。寿命は約1年になります。幼虫は越冬することができますが、成虫はできません。
カナブンとコガネムシの2つの違いと見分け方
カナブンとコガネムシの見分け方を紹介していきます。カナブンとコガネムシには2つの違いがあります。この2つの違いを知っていると、どちらがカナブンかコガネムシか見分け方が分かります。どちらかが益虫の可能性もあるので、間違って駆除してしまわないように知っておくと便利です。
見た目
カナブンとコガネムシは一見非常に似ていますが、じっくり観察すると見た目が異なっていることが分かります。カナブンとコガネムシはどの部分が違うのか見分け方を説明をしていきます。両者の違いが分かると、カナブンとコガネムシの見分け方の判断材料になります。
カナブン
カナブンとコガネムシを見分ける際に最初に見るのが大きさです。コガネムシは約17ミリから23ミリの大きさに対し、カナブンが20ミリから30ミリになります。カナブンの方が若干大きいので見分け方の判断材料になります。
カナブンはコガネムシと比べて頭部が四角形になっているのが特徴です。羽の付け根部分に注目すると、綺麗に逆三角形になっているので見分け方の判断材料となります。
幼虫での見分け方ですが、見た目では分かりません。しかし、幼虫をひっくり返してみた場合に、なかなか起き上がれなくもがくようであればカナブンの可能性が高いです。
コガネムシ
コガネムシとカナブンの見分け方ですが、コガネムシはカナブンより小さい個体が多く、体全体が丸みを帯びているのが特徴です。
コガネムシはカナブンと比べて顔の部分も丸みがあり半円形状になっていますので、見分け方で困ったら判断材料になります。羽の付け根部分はカナブンは逆三角形ですが、コガネムシは楕円形で小さいのが特徴です。
カナブンとの生態の違いで、夜行性が多いのがコガネムシです。夜間に街灯に群がっている場合はコガネムシに間違いありません。
幼虫の見分け方ですが、コガネムシの場合はひっくり返したときに、直ぐに体を反転させて元に戻るのが速いです。一方カナブンはゆっくりとしていて、直ぐには戻れずにもがく場合が多いです。
食生活
カナブンとコガネムシの食生活について紹介をしていきます。カナブンとコガネムシはどのようなものを食べているのでしょうか。同じコガネムシ科に属する昆虫なので、きっと同じものを食べていると考えがちですが、実は好む対象が異なる生態であることが分かります。
驚くことに幼虫の時から生態の違いが表れます。幼虫から成虫になるまで、どのような違いがあるのでしょうか。カナブンとコガネムシの食事の仕方も説明していきます。
カナブンのえさ
カナブンのえさは樹液や熟した果実や腐った果実などになります。クヌギやコナラ、シラカシやヤナギなどの広葉樹の樹液を好み、落ちてしまった桃やイチジク、ブルーベリーなどの果実を吸います。幼虫の時は土中に含まれる腐植物や朽木などを食べて成長します。
カナブンの口は筆のようなブラシ型になっており、左右2本持っています。通常時は体内に格納されていますが、食事をするときに口先を樹液や果物に浸します。
筆の先のようになっているため、毛細管現象の要領で樹液や果物の蜜を吸い上げていきます。口先の筆を左右に動かしながら食事をするので、まるで掃き掃除をしているようなイメージです。
コガネムシのえさ
コガネムシのえさはナラやサクラ、ケヤキやシイノキなどの広葉樹の葉っぱになります。インゲン豆や大豆などのマメ科の植物も好物です。また栗やぶどう、柿などの果樹の葉っぱも好んで食べる食用旺盛な昆虫です。
硬い葉脈を避けて柔らかい葉の部分だけを食べる器用さもあります。とにかく食い散らかすので昆虫の中でも葉の食べ方が汚い部類になります。
イモムシなどは葉っぱを奥から手前に食べていくのに対し、コガネムシは自分が留まっている場所から奥へと食べていくのが特徴です。幼虫の時は土の中の見えないところで根っこを食べて成長していきます。
カナブンとコガネムシは害虫?
カナブンとコガネムシは害虫なのでしょうか。カナブンとコガネムシは同じコウチュウ目のコガネムシ科に属しています。見た目も非常に似ているので片方が害虫であれば、もう片方も害虫なのかどうか生態を交えて説明をしていきます。
カナブンは無害
カナブンの幼虫は落葉や朽木を食べて成長していきます。そのため土壌分解をしてくれる益虫になります。有機物を混ぜて土壌中に酸素を供給する役割を担っており、豊かな土を耕してくれています。
成虫になってからも樹木に穴を開けるのではく、筆の先のような口で樹液を吸い上げます。そのため樹木に対しても無害な昆虫になります。
カナブンを鑑賞用で楽しむ
見た目の美しさやフォルムからカナブンを鑑賞用として飼い、生態も観察している方がいます。なかでも人気が高いのが国産のアオカナブンになります。色合いは濃いメタリックグリーンや赤みのあるグリーン、メタリックブルーなど個体によって変化します。
アオカナブンは北海道から九州まで広く生息している種類になり、少し標高の高い山地のような生態系に多く生息しています。広葉樹のニレやクヌギ、ナラやヤナギの樹液をえさとしています。
活動期間は5月から9月下旬になり、捕まえるなら6月上旬から7月中旬がおすすめです。朝方から昼間にかけて活発に活動をします。動きは俊敏で飛翔性も高いため誤って逃がさないように気を付けてください。
飼育方法
カナブンを入れる容器は、カブトムシなどを飼う時の容器と同じで構いません。容器の底には昆虫用の黒土マットがよいです。ケース底から約10センチほど入れたら、上から少し押してください。そのうえから約3センチほどふんわりと黒土マットを敷きます。
温度管理は約20度から25度が丁度よいでしょう。えさは市販の昆虫ゼリーで構いません。カナブンの生態を考え、ケースの中に樹皮や木片を設置して隠れやすい場所もつくってあげましょう。
ケース内の湿気ですが、霧吹きで黒土マット全体に吹きかけてください。表面が湿る程度で大丈夫です。頻度は2日から3日に1回おこなう程度で構いません。
コガネムシは害虫
コガネムシは植物にとって害虫となります。コガネムシによって植物の生育が悪くなり、野菜や果樹においては品質低下も招いてしまう厄介な害虫になります。
ガーデニングにおいては手塩にかけた草花たちに影響を及ぼし、場合によっては枯れてしまう可能性もあります。植物にとっても園芸愛好家にとってもコガネムシは宿敵といってもよい害虫です。
幼虫
コガネムシの幼虫は植物にとって重要な根を食べてしまう厄介な害虫です。幼虫は土の中に潜んでいるので、見つけづらいことも被害を大きくさせてしまう原因です。
土がふわふわになっていたり、土がトンネル状に盛り上がっていたらコガネムシの幼虫を疑ってください。
植物は根を傷つけられると土から養分を吸収できなくなります。成長も遅くなり徐々に弱っていきます。コガネムシは繁殖力が強く食欲も旺盛なため、沢山卵を産み付けます。もし幼虫の大量発生を許してしまうと大事な草木や果樹が枯れてしまうことがあります。
成虫
コガネムシの成虫は植物の葉っぱや花を食べ尽くしてしまう害虫です。葉っぱは硬い葉脈を残し食べつくされるので、無残な網目状になってしまいます。
十分な光合成もできなくなり、茎の成長にも影響してしまいます。花部分も花びらごと食べてしまうので、鑑賞用で育てたバラなどは美観が損なわれてしまいます。
葉や花びらが食べられた跡があったり、葉っぱや土の上に3ミリくらいの黒い粒があったら、コガネムシの仕業の可能性が高くなります。
コガネムシの駆除方法
コガネムシは、メタリックで光沢があるので見た目は綺麗な昆虫ですが、植物やガーデニングをする際に厄介な害虫になります。
成虫だけではなく、土の中で生活をする幼虫の時から植物に害を与えるため駆除をする必要があります。また、繁殖力が非常に高いため、見つけられずにいるとどんどん増えてしまい大事に育てている草花や、果樹が食い荒らされてしまいます。
幼虫は見えない土中で植物の根っこを餌にします。成虫は葉脈を残し葉っぱを全て平らげてしまいますので最後には枯れてしまう可能性があります。では、どのようにしてコガネムシを駆除していけばよいでしょうか。具体的な駆除方法や防御策を挙げて紹介をしていきます。
見つけたらそのまま取り除く
コガネムシは基本的に目視で確認をします。苗木をくまなく確認しコガネムシの成虫がいたら捕まえて駆除します。捕まえる際はゴム手袋などをした方がよいでしょう。万が一目に入ってしまったら大変なので、準備可能でしたらプラスチックの保護メガネがあると尚よいでしょう。
なぜならコガネムシはこげ茶色の液体を出す種類がいるからです。かなり強烈な臭いを発します。例えるならば生臭いかつをのような臭いなので素手では駆除しないようにしてください。
鳥などに捕食されないようにするための防御手段ですが、衣服に付いてしまうとなかなか取れません。白いシャツに付いてしまうと色も落ちないため大変です。
直接触るのが嫌な場合
コガネムシを直接触ったり捕まえたりするのが嫌な場合は、フェロモントラップがおすすめです。コガネムシのオスはメスが放つフェロモンに引き寄せられる習性があります。この習性を利用して捕獲し駆除をおこないます。
コガネムシをおびき寄せる誘引剤と専用のトラップが販売されています。誘引剤を専用トラップに入れて、対象の草木や果樹の側に設置をするだけです。フェロモントラップを使用すれば、直接触ることなく捕獲と駆除が可能になります。
但し、デメリットもあります。フェロモントラップは効果が1ヶ月から2ヶ月程度であること。そして専用トラップと誘引剤を合わせて1万5千円程度の費用が掛かることです。
ペットボトルを使った駆除方法も!
コガネムシを直接触りたくない場合、ペットボトルを使用した捕獲方法があります。やり方はペットボトルの先端に漏斗を取り付けます。安定するように接続部はテープなどで留めて固定してください。
コガネムシを見つけたら割り箸などの棒で漏斗へ落としてください。落としたコガネムシをペットボトルの中に押し込めば直接手で触らなくても捕獲することができます。落ちたコガネムシはペットボトルから出ることはできません。
ペットボトルを使った捕獲方法でも、念のため手袋を付けて行ってください。可能であれば保護メガネも準備し万全の体制で捕獲しましょう。
効果的な薬剤
コガネムシを駆除するために効果的な薬剤をしようしてはいかがでしょうか。害虫であるコガネムシには有機リン系の薬剤が効果的です。
薬剤は種を播く前の土壌に散布するしてください。産卵のために飛来してくるコガネムシへの効果が期待できます。土壌に混ぜ込む方法もよいですが、土壌の表層に播くとガス効果を発揮し殺虫力が増します。
無農薬での対策方法
薬剤でコガネムシを駆除する方法の他に、無農薬でコガネムシ対策をする方法があります。薬剤は効果が高く使い勝手も良いですが、果樹などの場合は可能であれば無農薬でおこなうと安心です。
そんなときは無農薬での方法をおこなってみてはどうでしょうか。どのようなやり方でコガネムシに対抗するのか具体的な方法を紹介していきます。
針葉樹皮を混ぜる
コガネムシを無農薬で駆除する方法のひとつに、用土へ針葉樹皮を混ぜ込む方法があります。コガネムシは針葉樹が苦手です。そのためスギやマツなどの針葉樹のチップを用土へ混ぜ込んでおくと効果を発揮します。
土を交換する
コガネムシの無農薬対策のひとつに土の交換が挙げられます。これはコガネムシの幼虫対策にもなります。コガネムシの幼虫を発見したら、土の中にも卵があると認識するようにしましょう。
羽化すると幼虫となってしまい草木の根を食い荒らしてしまいます。すべて新しい土へと変えてコガネムシの卵を除去するようにしてください。
水に入れる
害虫であるコガネムシの幼虫対策で、水に入れる方法があります。水を溜めた容器に鉢植えを丸ごと入れてください。幼虫は水の中では生きることができないので、苦しくて這い出てきます。
這い出して浮き上がってきた幼虫だけを取り除き駆除してください。水に入れた鉢植えは、土を追加して整えてあげてください。根腐れを起こさないように水に入れておく時間は適度にしましょう。
椿の油粕を使う
無農薬でコガネムシを駆除する方法に、椿の油粕を土に混ぜる方法があります。椿の油粕には天然の界面活性剤であるサポニンが含まれています。
サポニンには殺菌作用があるため害虫であるコガネムシに効果があります。水溶性なので水に溶かして霧吹きで吹きかけても構いません。
椿の油粕は害虫駆除と抑制にも役立ちますが、植物と共存している根圏微生物を増加させ活性化させます。根圏微生物は土壌環境を整え、肥料効率も高まるので一石二鳥の効果があります。
発生の予防
コガネムシは一度発生してしまうと駆除するのに時間がかかってしまいます。そのため発生させないような予防対策が重要になります。どのようなやり方をすればコガネムシの発生を予防できるのか紹介していきます。
ネットを張る
コガネムシの発生させない、寄せ付けないために鉢底ネットを使用します。プランターで草木や果樹を育てている場合に有効な予防策になります。
プランターの土の上から鉢底ネットを被せて、産卵にくるコガネムシを防ぎます。プランターの形に合わせ、鉢底ネットをハサミなどでカットし敷き詰めてください。重ねて敷き詰めるとズレにくいのでおすすめです。脱着も簡単におこなえるので、雑草が生えたとしてもすぐに対応ができます。
土の状態確認も容易で、水やりも鉢底ネットの上からおこなって構いません。大事に育てている植物を枯らさないようにコガネムシ予防は大切な作業になります。
対抗植物で対抗
コガネムシを発生させない、寄せ付けない予防策のひとつに対抗植物を一緒に育てる方法があります。草花や草木、そして野菜やハーブの中にはコガネムシが苦手とする種類が存在しています。
草花ではフレンチマリーゴールドやパンジー、アジサイやケイトウ、ヒエンソウなどになります。草木はニシキイモやトネリコ、ツゲの木やイチイ、ビャクシンなどになります。野菜ではニンニクや玉ねぎ、西洋ねぎが挙げられます。
ハーブではキャットニップやミント、タンジーやチャイブ、センテッドゼラニウムなどになります。コガネムシ対策の強い味方となってくれるので、一緒に育てて予防に役立ててください。
カナブンとコガネムシの大きな違いは害の有無
カナブンとコガネムシはコウチュウ目コガネムシ科に属している昆虫です。見た目も生態も似ているので、見分け方を知らないと判別が難しい昆虫になります。
しかし両者には決定的な違いがあります。それは益虫か害虫かの違いです。カナブンは植物に傷をつけることもなく無害な昆虫です。幼虫の時は土壌を豊かにする働きを担っています。成虫になってからも幹に傷をつけることなく樹液を吸う昆虫です。
対してコガネムシは幼虫のときは植物の根を食べて傷つけ、成虫になると葉っぱや花びらを根こそぎ食べてしまう厄介な害虫です。見た目は似ている両者ですが、このように決定的な違いである、害の有無が存在しているのです。