オブザーバーの意味とは?
「オブザーバー」の意味は「観察者」「傍観者」です。日本語訳から「横から見ている人」のイメージは浮かべられますが、いったいどのような場面で何をどのように見る人なのかなど、どのような役割があるのか「オブザーバー」の使い方をご紹介しましょう。
オブザーバーの由来
「オブザーバー」は、英語「observer」に由来し、発音の通りのカタカナ語です。英語 「observer」は、動詞「observe」の名詞形です。「observe」の意味は「陪席する」「観察する」です。
動詞「observe」に、英語「run」の名詞形「runner」や英語「play」の名詞形「player」などのように、人を意味する英語の接尾語「er」が付いて、日本語の意味は「傍観者」「立会人」「観察者」です。
英語「observer」の略語は「obs」と表記されます。たとえば、会議のメンバー表や、インタビュー記事や議事録などの発言者の表記に使われることがあります。
オブザーバーの特徴
「見ているだけの人」という意味の「傍観者」である「オブザーバー」は、ただ偶然同席した人というわけでしょうか。「オブザーバー」の使い方は「オブザーバー」の漢字表記である熟語「傍観者」を分解して調べるとわかりやすいでしょう。
「オブザーバー」の漢字表記である熟語「傍観者」の「傍」
オブザーバーの日本語訳、漢字の「傍観者」の「傍」は「かたわら」で、そば、横を意味します。「傍」を使う熟語には「傍観」「路傍」などがあります。「傍観」の意味は「そばで眺めること」「当事者でない立場・態度で見ること」です。
とくに、「当事者でない立場」という意味の使い方をされる点が重要でしょう。また「路傍」は、道端のことで、メインロードのわきという意味です。
「傍」の類語に「側」があります。「側」の場合、西側・東側というように対立関係や反対の意味がありますが「傍」には対立の意味はありません。つまり「オブザーバー」も、当事者に対して対立する意見を持ったり、対立する立場に立つことはありません。
「オブザーバー」の漢字表記である熟語「傍観者」の「観」
英語由来のカタカナ語の「オブザーバー」の日本語訳、漢字の「傍観者」の「観」は「見る」を意味しますが、ただ見えているときに使う漢字ではなく、目的をもって見ているときに使われる漢字です。
「観」を含む熟語には「観察」「観光」などがあります。「観察」の意味は「よく見ること」「対象の実態をしるために注意深くみること」です。「観光」も、訪ねた場所の名所などを見るために出向くという意味です。どちらも「~ために」という目的を持って見ることを表す使い方をされています。
「オブザーバー」の漢字表記である熟語「傍観者」の意味
つまり「傍観者」の英語由来のカタカナ語の「オブザーバー」には「目的を持って、ただ見ている人」という意味があります。特に、会議や機関においては「見ているだけという立場の人」という役割があります。
それでは「オブザーバー」にはどのような「目的」があるのでしょうか。けんかの野次馬であったり、枯木も山の賑わいと評される場合の枯木であったりするような、何もしない傍観者やわき役であるだけなのでしょうか。
オブザーバーの役割
オブザーバーは、会議に出席して、会議の進行や公正性を見ます。自分自身が、その場で、公正であるかどうかについて意見を言ったり、もっと公正にと促すことはしません。オブザーバーの位置は、そのような意見を言う立場にはありません。
オブザーバーは、早く情報を得たいとか公正であるように見張りたいという意図がある依頼者に要請されて出席するので、報告を促された場合には、あるがままに報告します。
つまり、オブザーバーが出席している以上、会議を誰かに都合よく進めて、誰かが強引に利益を得るような議事進行はしにくくなります。オブザーバーの出席が、会議に緊張感をもたらし、不都合や不公平の歯止めになるのです。それでは、主なオブザーバーの役割を、細かく検討してみましょう。
会議の監視役として
オブザーバーは、会議が公正に行われないことで不利益が生まれないように監視したい立場にある会社や部署、時には、国などが出席させて、オブザーバーの依頼者もしくは派遣者になります。
オブザーバー自身は、議決に参加したり、意見を主張したりすることはありませんし、ファシリテーターのように議事進行に関わることもありません。
会議後、出席の依頼者にあたる自分の会社や部署に戻って、上司などに、問題点の有無を報告します。その報告をもとに、オブザーバーの依頼者は、後で参加者に質問することで、状況を改善することが期待できます。
新人のスキルアップの一環として
新入社員や新参のメンバーは、会議の議題やプロジェクトに詳しくないでしょう。なるべく早いうちに担当の要件に詳しくなる必要がありますから、会議などを見学して自分の仕事について学びます。
この場合は、新人研修の一環として、オブザーバーとして臨席します。監視役というよりは、見学者としての立場にあると言えます。おそらく、その会議には、上司も参加しているので、報告書を書くことはあっても、議事進行や決定事項等については、出席した上司や先輩も了解していることになります。
また、そのようなオブザーバーとしての会議への参加を重ねたのち、知識も増え、場にも慣れて、一人前の立場で、意見を言い、議決に参加するような社員になっていくことでしょう。
会議の進行状況の把握のため
会議の進行状況や議事決定の過程を知っておく必要があって、議決権はなくてもオブザーバーとして臨席することがあります。
会議での決議は、その後の方針に大きく影響するので、会議の流れの一部始終を知っておくことは、その後の競争や行動の有利の種になります。また、会議での決定事項に不利益や不審点があった場合には、議事進行の過程を細かく知っていた方が追及しやすく、有利です。
それで、議決する権利はなくても、重要事項が決定されるまでの過程を把握するために、オブザーバーとして参加するというケースが生まれます。
会議の議事進行は、先手必勝の要件においては、他の出席者よりも早く報告される必要があります。オブザーバーは、そのための伝令役としての役割を持って会議に参加することもあります。
また、会議での決定事項についてどのように決定されたのかを知っておくことで、後で自分にとって不都合な決定事項があったときに、追及することができるので、決定までの流れを知っておきたいという立場の人も、オブザーバーとして参加することがあります。
そのような立場でのオブザーバーは、いち早く不都合点について対策したり、追及の方針を練ったりします。
海外におけるオブザーバー
国連関係のニュースでも「オブザーバー」という言葉は良く耳にします。国際連合の会議は、国連参加国で討論されますが、国連参加国以外で、決議案の作成や討論に参加できる特定の国々や機関があります。国連オブザーバーと呼ばれ、バチカン市国、NGOなどが公認されています。
オブザーバーの使い方
先述のように英語由来のカタカナ語の「オブザーバー」には、監視者としてや、研修のためなど、いくつかの目的や立場がありますが、実際に「オブザーバー」という言葉は、どのような状況や文章、会話に登場するのでしょうか。いくつかの例文の中で見てみましょう。
例文①
「オブザーバー」の陪席の意味での使い方の例文をご紹介しましょう。この例文は、国際関係において公的に使われる用語の説明をする文章です。
「国際連合総会オブザーバーは、国連加盟国と同様に認められている国連非加盟国です。国際連合総会に参加して意見を言うことを許されています。けれども、オブザーバーは、投票権は持ちません。」
この場合のオブザーバーは、国連加盟国がまず上位にあり、オブザーバーとして出席する国連非加盟国は、陪席者の意味の「オブザーバー」になります。
陪席は、身分や地位が上位にある人と同席することです。陪席者は、特別に出席することを許された立場にあるもので、発言はできますが、議決権や発議権はありません。
例文②
監視するという意味の使い方の「オブザーバー」の例文をご紹介しましょう。この例文は、国際的に資源保護を目指される協定などがある中で存在する「オブザーバー」の役割について説明している文です。
「水産資源は限りがあります。かつお・まぐろ資源の持続的な利用のためには、科学的な根拠に基づく資源管理が必要です。そのため、どのような量まで獲ってよいかなどを把握するためのデータ集めをし、漁獲実態や輸出入について監視をするために、オブザーバーが漁船に乗り込むことがあります。」
例文③
見習う・見学という意味の使い方の「オブザーバー」の例文をご紹介しましょう。この例文は、ひと通り研修を重ねた新入社員が、研修の最後のフォローアップとして、オンブズマンとしての見学を命じられることを紹介しています。
「新入社員諸君は、次の会議にオブザーバーとて出席してください。どのような議題がかかっていて、議事進行がどのように行われていくのかなどを含め、近い将来、議決にも参加できるように、よく見て学んでください。」
例文④
助言者としての役割を意味する使い方の「オブザーバー」の例文をご紹介しましょう。この「オブザーバー」は「アドバイザー」の意味合いに近い意味を持ちますが、やはり「アドバイザー」とは違います。
「引退や退職をした立場にある者が、会議や教習などにオブザーバーとして参加することがあります。経験を重ねた知識をもって参加し、意見を求められたり、助言したりするアドバイザー的な役割をします。」
このアドバイザー的な役割を期待されて出席するオブザーバーは、発言はできますが、最終的には議決に関与することはありません。ただ「オブザーバー」の存在の威圧感は、票の動きに影響することがあるかもしれません。一票を投じる立場にある人は、忖度することなく、判断する必要があります。
オブザーバーの注意点
それでは、先輩や退職者などが寄り添って助言する立場になる「アドバイザー」には「オブザーバー」と違った特徴があるのでしょうか。
「オブザーバー」も「アドバイザー」も、英語由来のカタカナ語として似た響きですし、同じように使われるイメージがあるのではないでしょうか。
「オブザーバー」と「アドバイザー」の二つには、はっきりとした違いがあり、どちらの立場で依頼されても、注意する必要があります。また、会話や文書の中で使うときにも、意味や役割をよく理解して、誤用しないように注意が必要です。
他にも「オブザーバー」の響きに使いイメージのある「オンブズマン」との混同が良く見られます。こちらの違いも理解しておきたいものです。
オブザーバーとアドバイザーの違い
「オブザーバー」には監視、見学、伝令としての役割などがありますが、意見を述べる権利やチャンスはほとんどなく、議決にも参加しません。
他方の「アドバイザー」の意味は、助言者、支援者です。「アドバイザー」は豊富な経験と専門的な知識を持つ人がが依頼され、主観的な立場で意見が言えます。企業や部署、ひいては個人でも「アドバイザー」に、利益を得るための指導や、不利益が起こらないための助言を期待しています。
「アドバイザー」の立場に就くときには、案件についての深い知識と判断力と助言を伝える説得力が必要とされますから「アドバイザー」の役割をよく知って、専門知識についてだけでなく、人間力も深めておかなければなりません。
オブザーバーとオンブズマンの違い
「オブザーバー」と同じカタカナの「オ」から始まる言葉の「オンブズマン」も「オブザーバー」と混同されがちな言葉でしょう。「オブザーバー」も「オンブズマン」も、その意味の中に「監視」という役割が出てくるので、さらに混同の原因になっています。
「オンブズマン」とは「代理人」という意味で、英語ではなく、スウェーデン語のombudsmanです。もともとは、スウェーデンの議会オンブズマンの仕組みに起源を持ち、一般市民の立場を代弁し、国民に代わって行政活動を監視します。
つまり、「オンブズマン」は「オブザーバー」と違って、発言する立場にあるので「オブザーバー」の役割とは大きく異なります。
オンブズマンは、国民や市民に代わって発言し、国政や行政の中で公認された重要な役割を果たします。また、国民からの行政機関への苦情を調査したり、行政機関と協議したりして処理する働きをします。「オンブズマン」は「オブザーバー」と違い、かなり行動的な立場にあるので、注意しましょう。
アメリカでは、議会だけでなく、一般企業、とくに新聞社で、社内オンブズマンと呼ばれるものがあり、紙面報道に対する外部からの苦情や指摘を受けて、社内の動きを監視し改善する役割を持ちます。アメリカ英語の「オンブズパーソン」は、男女を区別しないために生まれた英語です。
オブザーバーは傍観者という意味
英語由来のカタカナ語の「オブザーバー」は「傍観する人」「監視する人」「陪席者」「見学者」などの意味があります。「オブザーバー」には発言権や決議権はありませんが「オブザーバー」の存在によって、会議に緊張感がもたらされ、公平に進行させる効果が期待されます。
「オブザーバー」は、目的があって派遣されるので、ただ見学者として会議に出席するのではなく、会議の流れをしっかりと見守って、たくみな言い回しに惑わされることなく議事進行を把握する必要があります。
「オブザーバー」の意味を先の例文での使い方を見て理解し、当事者のどちらかの意見に偏って見るのではなく、公平に見守るべき立場にあることを理解しましょう。