「耐える」と「堪える」の意味とは?
「耐える」は、「苦しさ、悲しさなどに屈せず我慢する状態を保つ、こらえる」、また、「他から加えられる力に負けずにもちこたえる様子」という意味があります。
つまり、耐えるには精神的に我慢するという意味合いと、物理的にもちこたえるという意味合いの両方があることが分かります。
「耐える」の対義語・類義語
「耐える」の対義語としては、「屈する」「挫ける」などが考えられます。また、「耐える」の類語としては、意味によって様々な言葉が挙げられます。
「耐える」の苦しさや悲しさなどに屈せず我慢する状態を保つと意味で類語となるのは、「じたばたしない」「うろたえない」「じっと我慢する」「自分を押し殺す」「首をすくめて待つ」「感情をおさえつける」などです。
「耐える」の他から加えられる力に負けずにもちこたえる様子という物理的な意味の類語としては、「耐え忍ぶ」「長持ちする」「頑丈」「劣化しにくい」などが考えられるでしょう。
「耐える」の使い方・例文
「耐える」は日常的にも良く使われる言葉ですが、いくつか使い方・例文をご紹介しておきましょう。精神面を表す言葉としての「耐える」と物理的な意味をもつ「耐える」の両方の使い方・例文をご紹介します。
それぞれ普段何気なく使っている言葉かもしれませんが、実際どんな漢字が使われているかを意識して使っていたでしょうか。漢字を当てはめて改めて例文を見ることでより深く理解できるはず。ぜひチェックしてみて下さい。
例文①
「僕は毎日辛い練習に耐えてこの日を迎えた」という例文では、辛い練習という精神的な負荷を与える要素が苦しみとなり、その苦しみに屈せず我慢する状態を保ったという意味で「耐える」が使われています。
例文②
「寒い日、どしゃぶりの中をひたすら耐えて家まで帰宅した」という例文では、例文①と同じく、精神的な負荷を与える寒さとどしゃぶりという現象に屈せず、我慢したという意味で「耐える」が使われています。
例文③
「理科の実験で使っているフラスコや試験官には数百度の加熱に耐えるガラスが採用されている」という例文では、熱という外部からの物理的な力によって、物干しが壊れない状態が保たれているという意味で「耐える」が使われています。
例文④
「この棒は、60kgの重りをぶら下げても耐えることができます」という例文は、例文③と同じく60kgの重りという外部からの物理的な力に負けずに持ちこたえるという意味で「耐える」が使われています。
「耐える」と「堪える」の違い
「耐える」とおなじ「たえる」に「堪える」があります。「耐える」と「堪える」はどういう違いがあるのでしょうか。2つの「たえる」についての意味や使い方の違いを比べていきましょう。
どちらも混同して使っている方はいませんか?「堪える」の意味が「耐える」とどう違うのか、見比べて使い分けできるようにしてみてはいかがでしょう。
「堪える」は「任務を遂行する」「値がある」という意味
「耐える」と間違いやすい「堪える」には4つの意味があります。ひとつめの「耐える」の意味は、苦しさや悲しさなどに屈せず我慢する、こらえる、辛抱するという意味です。2つめの「堪える」の意味は、他から加えられる力に負けずに持ちこたえるという意味。この2つの「堪える」の意味は、「耐える」と全く同じ意味です。
しかし「堪える」にはこの2つの意味の他にも、負担や任務に対応できる能力・技術が備わっている、という任務を遂行する能力を持つという意味があります。さらに、それをするだけの値打ちがあるという価値があるという意味も持っています。
後半2つの「堪える」の意味は、「耐える」にはない意味で、どちらも、我慢できるという意味から転じて、我慢できるだけの力があるというニュアンスで使用されています。
「耐える」にはない、「堪える」の2つの意味、任務を遂行できる能力を有する、それをするだけの値打ちがあるという意味の使い方・例文を2つ挙げてみましょう。
「あの人はハードな部署のリーダーに堪える人物です」という例文は任務を遂行できる能力を有するという意味で使われています。「このバンドのボーカルの声は聴くに堪えない」という例文は価値がない、値しないという意味で使われています。
さらに、「このフラスコは高温での使用に堪える」という例文は、「理科の実験で使っているフラスコや試験官には数百度の加熱に耐えるガラスが採用されている」と同じような使われ方ですが、「堪える」の例文では、高音での使用という任務に対応できるという意味で使われています。
まとめると、「耐える」は精神的に我慢する、物理的に持ちこたえるという意味で、「堪える」は能力が備わっている、値打ちがあるという意味で、2つは違う意味で使われることがあることが分かります。
「耐える」と「堪える」を使う際の注意点
「耐える」を使う際の注意点として、「耐える」の代わりに「堪える」を使えることはあっても、「堪える」の2つの意味において、「堪える」の代わりに「耐える」を使うことはできないということは覚えてしっかり使い分けしましょう。
また、「たえる」という読み方をする漢字には、「絶える」もありますが、この言葉は「耐える」とは意味の重複の無い漢字です。同じ読み方をする「絶える」と「耐える」の違いと使い分けについても少し触れておきましょう。
「能力や技術が備わっている」「値打ちがある」という意味では使えない
重複になりますが、「耐える」は「堪える」の「負担や任務に対応できる能力・技術が備わっている」、「それをするだけの値打ちがある」という意味では使えません。
「聞くに耐えない声」や「リーダーに耐える人材」といった使い方は間違った使い方です。さらに付け加えると「人通りが耐えた」といった使い方もできません。「耐える」「堪える」「絶える」の3つの「たえる」を上手に使い分けすることが大切です。
「途絶える」という意味では使えない
「耐える」と同じ読み方をする「絶える」には、「耐える」の意味とは全く違った意味があります。「絶える」の意味は、「続いていたものが途中でキレて続かなくなる」、「切れたあと完全になくなってしまう。なくなる。尽きる」、「呼吸が止まる。死ぬ。」の3つです。
例文としては、「仕送りが途絶えた」「人通りが絶えた」「長く続いてきた血筋が絶えた」「命が絶えた」などがあります。
「仕送りが途絶えた」「人通りが絶えた」の例文では、「絶える」は、続いていたものが途中で切れて続かなくなる、とぎれるという意味で使われています。
「長く続いてきた血筋が絶えた」の例文では、切れたあと完全になくなってしまう、なくなる、尽きるという意味で「絶える」が使われています。さらに、「命が絶える」の例文は呼吸が止まる、死ぬという意味で「絶える」が使われています。
このように、「絶える」には、「耐える」と重複する意味はなく、2つの言葉は読み方だけは同じですが、意味は全く違う言葉なので、間違って使わないようにしっかりと使い分けしましょう。
「耐える」の由来・歴史
ここで「耐える」という言葉に使われている「耐」という漢字についてみていきましょう。「耐」という漢字の由来はどこにあるのでしょう。また、漢字の歴史は?など「耐える」に使われている「耐」という漢字について掘り下げてみていきます。
由来
「耐」という漢字は、部首の部分が髭の象形文字で、作りの部分が右手の手首に親指を当て脈をはかるという象形文字の2つから成り立っています。
2つの意味を持つ象形文字が合わさることにより、「ひげのように肘を柔らかくして持ちこたえる」という意味になり、そこから「粘りづよく耐える」という意味を持つようになったと考えられます。
歴史
「耐」という漢字は象形文字の一種とご紹介しましたがもっと細かく分類すると正確には、2文字以上の漢字を組み合わせる会意兼象形文字です。日本で生まれた漢字として国字と言われる漢字もありますが、「耐」は会意兼象形文字であり、その歴史は古く中国で生まれた漢字であると考えられます。
「耐える」と「堪える」の英語表記
「耐える」という言葉の英語表記で最もよく使われるのが「stand」です。これ以上我慢できないという意味で使う時に「I can't stand this anymore.」と言います。
また、痛みや苦しみに耐える場合は「bare」を使います。物理的なん大きな衝撃に耐えると言った場合には「withstand」、さらに、精神的苦痛に耐える場合は「endure」が最適です。
仕方なく耐える場合は「put up with」で、「put up with」には不愉快な言動などを仕方なく耐えるというニュアンスがあります。
忍耐強いという意味の英語は「patient」、許容するという意味の「耐える」の場合の英語は「tolerate 」です。
「耐える」の英語は日本語よりもさらにニュアンスによって細かく分かれていて、使い分けが少々難しくなっています。
一方「堪える」の方は、「耐える」と同じ意味で使われる場合は、同様に「stand」「bare」「withstand」「endure」「put up with」などが使われます。
一方、「耐える」にはない「堪える」の2つの意味、「任務を遂行する能力を持つ」「それをするだけの値打ちがある」という意味は、「be equal」「be fit」「be competent」を使って表現することができます。
「耐える」は「精神的・物理的な状態にこらえる」という意味
いかがでしたでしょうか。「耐える」は「苦しさ、悲しさなどに屈せず我慢する状態を保つ、こらえる」、また、「他から加えられる力に負けずにもちこたえる様子」という意味です。
「堪える」と混同されて使われることも多いですが、「耐える」には「堪える」の中の限定された意味しかなく、「堪える」と同じように使うことはできません。ぜひ違いをしっかり把握し、使い分けできるようにしましょう。