「ご無沙汰しております」の意味とは?
「ご無沙汰しております」は「ご」「無沙汰」「しております」の三つに分けて考えます。さらに「無沙汰」は「無」と「沙汰」に分けて考えます。「沙汰」は「便り」や「知らせ」を意味しますので、「無沙汰」で「便りや知らせがない」ことを意味します。
「無沙汰」に相手を敬う「ご」と「しております」という謙譲語をつけることによって、「ご無沙汰しております」は長い間訪ねたり便りを出さなかったことを丁寧に相手に詫びる意味になります。
「ご無沙汰しております」の対義語・類義語
「ご無沙汰しております」の対義語に該当する日本語はあまり見かけません。一方で「ご無沙汰しております」と似た意味で使われる類義語は幾つかあります。
「お久しぶりです」「お変わりありませんか」「お元気でしたか」などは「ご無沙汰しております」と同様、暫く間があいて相手に会ったり、連絡をとる際の冒頭の挨拶として一般的に使われます。それぞれ微妙な使い方の違いはあります。「お久しぶりです」と「ご無沙汰しております」の違いについては後で触れます。
「ご無沙汰しております」の使い方・例文
次に「ご無沙汰しております」の具体的な使い方を見ていきましょう。「ご無沙汰しております」は敬語としての謙譲語です。へりくだって相手を敬う挨拶文ですから、目上の人や取引先などに使って問題ありません。「ご無沙汰しております」は暫く連絡をとっていない相手などに使う挨拶ですので、日常的に付き合いのある同僚などには使いません。
「ご無沙汰しております」はどのようなシチュエーションで、どのような使い方をするのが適切なのでしょうか。以下で具体的な例文を見ながらその使い方を考えます。
「ご無沙汰しております」の例文①
「大変ご無沙汰していております。愛媛商事の松山でございます。その後お変わりありませんでしょうか。」
例文はビジネスの取引相手に対して久しぶりに連絡を取るシーンで使う冒頭の挨拶です。「ご無沙汰しております」の後に自分を名乗り、「その後お変わりありませんでしょうか」といった相手を気遣う言葉をつければ丁寧になります。
「ご無沙汰しております」の例文②
「ご無沙汰しております。数年前本社の営業部でお仕えさせて頂きました愛媛一朗でございます。この度は栄転誠におめでとうございます。」
例文はかつて本社の営業部で仕えた上司が栄転したので、そのお祝いの言葉を伝える際の冒頭挨拶文です。サラリーマンは辞令一枚で部署や勤務地が変わります。油断していると、親しくした人とも音信不通になりがちです。機会があるごとに何らかの便りを交換し合うことは非常に重要で、その際「ご無沙汰しております」は冒頭挨拶に仕える便利な言葉です。
「ご無沙汰しております」の例文③
「こちらこそご無沙汰しております。私の方は相変わらずで、家内を含めて元気にやっています。また機会がありましたら是非松山の我が家にも足をお運びください。」
例文は離れて暮らしている友人や親類から久しぶりに便りがあった際、相手への返事として使う挨拶表現です。このように「ご無沙汰しております」は返事として相手に返す場合に使っても問題ありません。
「ご無沙汰しております」の例文④
「大変長らくご無沙汰しております。松山の空港整備プロジェクトでご一緒させて頂いた愛媛太郎でございます。この度は一つお願いがあってご連絡させて頂きました。」
例文は以前ある仕事で付き合いがあったビジネス上の関係者に、新たな願いごとをしようとしています。ビジネスにおいてはこちらはよく記憶していても、相手がそうであるとは限りません。長い間連絡をとっていない相手に連絡をする場合には、まず自分を思い出してもらうことから始めましょう。
「ご無沙汰しております」と「お久しぶりです」の違い
「お久しぶりです」も「ご無沙汰しております」と同じように、長い間会っていない相手に使う挨拶文です。通常あまり使い分けを意識しないで使うことが多いですが、「お久しぶりです」と「ご無沙汰しております」は微妙にニュアンスが違います。その違いは伝えようとするこちらの「思い」です。
お久しぶりですは「前に会ってから長い時間がたってしまいましたね」という意味
「ご無沙汰しております」は連絡をとらなかった自分を相手に対して「詫びる」という思いがありますが、一方の「お久しぶりです」の方は「前に会ってから長い時間がたってしまいましたね」という意味で、やっと会えて「うれしい」という思いがあります。
もう一つ気をつけたいのは、「お久しぶりです」は電話やメールでは連絡を取り合っていても実際に会うのは久しぶりという場合にも使えます。「ご無沙汰しております」はこのようなケースでは使いませんので、気をつけましょう。
「ご無沙汰しております」を使う際の注意点
次に「ご無沙汰しております」を実際に使う際の注意点を見ていきましょう。「ご無沙汰しております」はどれ位の期間があいたら使うのでしょうか。また相手からの返信に使ってもいいのでしょうか。その他「ご無沙汰しております」と一緒に使ったら効果的な表現も紹介します。
「ご無沙汰しております」は2~3ヶ月以上期間があいたら使う
「ご無沙汰しております」は通常2~3ヶ月以上相手との接触が途切れた場合に使うのが適切です。もちろん2~3ヶ月は厳密に考える必要はなく、1ヶ月程度で使っても特に違和感はありません。もし1年以上期間があくような場合には、単に「ご無沙汰しております」だけでなく、頭に「大変」や「非常に」をつけると詫びる気持ちが効果的に伝わります。
「ご無沙汰しております」はいつも会っている同僚などへの挨拶では使えない
「ご無沙汰しております」は会社などで日常的に付き合いのある同僚などには通常使いません。いつも顔を合わせている仕事仲間と、たまたま2~3日会ってないときなどに「ご無沙汰しております」と言われると、相手は面食らってしまいます。「ご無沙汰しております」は使いやすい言葉ですが、このような場合は使わないようにするのが無難です。
「ご無沙汰しております」は返事の挨拶にも使える?
相手から「ご無沙汰しております」との便りが届いたり、会って挨拶されたらどのように返事をしたらいいのでしょうか。その場合も、「こちらこそご無沙汰しております」と返事しても構いません。もし目上の方から「ご無沙汰しております」と挨拶されても、とまどわず「こちらこそご無沙汰して失礼しております」と返事しましょう。
「ご無沙汰しております」と一緒に使う言葉
「ご無沙汰しております」はそれだけで使うのではなく、続けて「お変わりありませんか」や「お元気でしたか」「いかがお過ごしですか」などの相手を気遣う言葉を添えると、よりこちらの気持ちが効果的に伝わります。相手やその場の雰囲気で適切な言葉を選ぶように心がけましょう。
「ご無沙汰しております」はメールにも使える?
「ご無沙汰しております」は直接会って挨拶する場合だけでなく、電話やメールで使っても構いません。メールはビジネスシーンで毎日大量に処理されますので、メールの件名に「ご無沙汰しております。○○の件でメールしました。愛媛土木松山次郎です」といった使い方をすれば相手の目にとまりやすくなります。
「ご無沙汰しております」の由来・歴史
「ご無沙汰しております」の意味は「ご」「無沙汰」「しております」に分けて考えましたが、中心となる言葉は「沙汰」です。ここでは、「沙汰」を中心に「ご無沙汰しております」の由来や歴史を考えてみましょう。「沙汰」の使い方としては「地獄の沙汰も金次第」などの使い方もあり、「沙汰」の由来を知ることでこれらの使い方もわかります。
「ご無沙汰しております」の由来
「沙汰」の「沙」は「砂」の意味で、「汰」は「洗ってより分ける」の意味です。つまり、「沙汰」は砂の中から砂金をより分けるように、善悪をより分ける意味で使われていました。「地獄の沙汰も金次第」の「沙汰」は善悪の裁きの意味なのです。
「沙汰」は「善悪の裁定」の意味が次第に広く使われるようになり、「ことの善し悪しの評判・便り」の意味でも日常語として慣用的に使われるようになりました。「音沙汰」や「無沙汰」はこのように元の意味から派生した言葉です。
「ご無沙汰しております」の歴史
「沙汰」という言葉が歴史的にいつから使われていたかは定かではありませんが、中世には「決定」「命令」「処理」を表す言葉として広く使われていたようです。やがて「政務を司ること」や「年貢を納める」意味などにも使われるようになり、「報告」「通知」の意味から「便り」「知らせ」「噂」の意味で一般用語として使われるようになりました。
「ご無沙汰しております」の英語表記
「ご無沙汰しております」の英語表現は「It has been a long time.」です。省略して「It's been a long time.」としても構いません。日本語の「ご無沙汰しております」と「お久しぶりです」の違いのようなニュアンスの違いを英語で表現するのは難しく、大抵はジェスチャーや声のトーンで違いを出すことが多いようです。
より丁寧に表現したい場合は、後ろに「sir」をつけるのが一般的です。もちろん「sir」は男性向けで、女性の場合は「ma'am」を使います。またより詫びる気持ちを強く表したい場合は、「Sorry for being a stranger.」という表現もあります。
「ご無沙汰しております」は「長い間連絡をとらないで申し訳ない」という意味
「ご無沙汰しております」の意味や使い方などを例文も交えて解説しました。「ご無沙汰しております」は「長い間連絡をとらないで申し訳ない」という詫びの気持ちを表した挨拶表現です。久しぶりに会ったときにこちらから話しかけてもいいですし、相手から「ご無沙汰しております」と挨拶された際、返事の言葉として使っても構いません。
直接の会話だけでなく、電話やメールで使っても失礼にあたらない、ある意味で便利な表現ですが、「お久しぶりです」などとの使い分けにも注意しましょう。