「知見を深める」の意味
実際に見て知ることや、見て知った知識のことを「知見」といいます。知識として知っていたことを実際に体験したり、今まで知らなかったことを新たに体験することで知見を得ることができます。ビジネスでは知見を深め、自分のスキルを高めることが自己の向上につながります。
日常会話の中では「知見を深める」という言い方がよく使われますが、具体的にはどういった意味で、どういう使い方をされるのでしょうか。知見を深めるの意味や使い方、例文、「知見を広める」との違いなどを詳しくご紹介します。
今まで以上に奥深く知っていくこと
知見を深めるとは、物事を今まで以上に奥深く知っていくことを意味します。1つのことに対して専門的な知識や経験の積み重ねが、自分のスキルを高めていきます。漠然と毎日を過ごすのではなく、常に新しい発見を見つけるために日々アンテナを張り巡らせ、向上心を維持することが重要です。
今ではインターネットでさまざまな知識を得ることができます。しかし、知識として得るだけでは知見を深めることにはなりません。なぜなら、自分で経験し、自己のスキルとして昇華させなければ身につかないからです。
知見とは
知見には見て知ること、見聞きして得た知識の意味があり、「実際に何かを見て知識を得ること」「何かを見たり聞いたりして得た知識」のことをあらわします。それ以外にも、物事に対する見方や考え方という意味もあり、「~的知見」という言い方がよくされます。
また、知見は仏教用語の「智見」からきているという説もあります。智見とは、仏教の考え方をもとに事物に対する正しい認識や見解をあらわす言葉です。
「知見を深める」の使い方
「知見を深める」とは、1つの物事に対しての理解度を高めることです。では、具体的にどのような使い方が正しいのでしょうか。間違った使い方をすると相手に誤解されたり、自分が恥ずかしい思いをすることにもなります。なんとなく使っていた人も、この機会にぜひ正しい使い方を覚えましょう。
人が自分の見識を深める場合に使用
知見を深めるの使い方としては、自分に対してと他人に対しての使い方があります。たとえば、自分の立場を踏まえて専門的な知見を深める場合、「~として知見を深める」といいます。また、ある事柄について自分の経験や知識が増えることを、「知見を深くする」といいます。
一方、自分が何かを教える立場で相手に経験や知識不足を感じて、相手に行動させる場合には「知見を深めさせる」という言い方をします。さらに、誰かの知識や知恵が優れていることを評価するときには、「知見が深い」といいます。
知見を深めるの類義語
ところで、知見を深めるとよく似た類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、知見を深めるの類義語として、「知見を広める」「熟知する」「精通する」の3つの言葉についてみてみます。
知見を広める
知見を深めるが知識を縦に掘り下げるイメージなのに対し、知見を広めるは知識の幅を横に広げるイメージです。それまで全く知らなかったことを、経験によって新たな知識を身につけることです。知見を深めるとはよく似ていますが、少しニュアンスは違います。
熟知する
「その図書館の司書は、所蔵されている多くの書物の内容を熟知している」というように、細かいことをよく知っている「熟知する」という言葉があります。これは、知見を深めるという言葉と同じ意味を持つといえます。熟知することでアドバンテージのあるビジネス戦略を立てることができます。
精通する
ある事柄を単に知っているだけでなく詳しく知っていること、物事によく通じていることを「精通する」といいます。「~に明るい」とか、「~を知り尽くしている」というような言い方をする場合もありますが、これも知見を深めると同じような意味を持つ言葉です。
「知見を深める」の例文
知見を深めるという言葉は、「知見を深めるのには時間がかかる」や、「専門知識の知見を深める」などという使われ方をします。
それでは、シチュエーション別では「知見を深める」という表現が実際にどのように使われるのかを、「ビジネス」「天災」「研修会」「研究」の4つの例でご紹介します。
ビジネス
例文の1つめは「趣味に関する知見を深めることは、特定の場面で使えるだけでなく、時としてビジネスでも役に立つ。」です。
一芸に秀でた人は、その知識と経験を特定の場面で高く評価されます。しかし、1つの知識や経験は特定の場面だけではなく、思わぬ場面で効力を発揮することがあります。たとえば、ビジネスの商談で先方と趣味の話で盛り上がり、今後の取引へとつながる可能性もあります。
天災
例文の2つめは「過去の天災から得られた情報をもとに知見を深め、防災や減災への対応力向上を図った。」です。
普段は防災の意識が薄い人も、大きな災害の後はその重要性を痛感し知見を深めようとします。本来であれば日ごろから意識しておくことが重要ですが、時間の経過とともにその意識も薄れていきます。天災はいつ自分の身に起こるかわかりませんので、日ごろから知見を深めるようにしましょう。
研修会
例文の3つめは「今回の研修会は、知見を深めるのに大いに役立った。」です。企業では定期的に社員研修会が行われています。勤続年数や役職によって、その都度必要な知識の習得には欠かせません。日常業務から離れ、今後の業務に必要な知識を短期間で集中して知見を深めることができます。
また、よその団体が開催している社外セミナーを受講することも「知見を深める」ことになります。自分の仕事に直接関連のあるものもあれば、趣味としての領域や一般常識の範疇のセミナーもありますが、自分の視野や可能性を広げるのに役立ちます。
研究
例文の4つめはより一般的な使い方といえますが、「その研究は、環境問題に対する知見を深めるのに大いに貢献した。」です。
理系であれ文系であれ、研究者は1つのことに対して、より詳しく知ろうと努力します。研究者でなくても、自分の専門分野のことにはトコトン追究する努力は欠かせません。
知見を深める以外の知見を使った例文
知見を深める以外にも、「知見を得る」や「知見を活かす」、「知見を広げる」、「知見がない」など「知見」を使ったさまざまな表現が存在します。知見を使ったほかの例文も覚えておくと、いざというときに役立ちます。
「知見を深める」と「知見を広める」の違い
知見を深めるに似た言葉として「知見を広める」という言葉があります。その違いは、知見を深めるというのが今まで以上に奥深く知っていくことに対し、知見を広めるというのは幅広い知識を得ることを意味します。
また、知見を深めるは自分と他人の両方に対して使いますが、知見を広めるは自分の知識や経験の範囲を広げる意味で使うという違いがあります。
「知見を広める」の意味
知見を広めるとは、それまで全く知らなかったことを見聞きし、これまでの自分の経験や知識の範囲をより広げることです。「世界各国を旅して知見を広める」というような使い方をします。また、さまざまな書籍を読んだり、いろいろな人の意見を聞くことでも知見を広めることができます。
知らなかったことを知って知識を付ける
知見を広めるとは「知らなかったことを知って知識を付ける」ことです。今の知識をより奥深く知っていくことを意味する知見を深めるという言い方とは微妙に違いがあります。知見を深めるのか、広めるのか、使用する場合はその違いを押さえて話すことが重要です。
知識と知見の違い
ここまで、知見を深めることはより深く知ることだと説明してきました。それでは、知識を深めることと、知見を深めることは何が違うのかという疑問もでてきます。ともに、ある物事について知っていること、理解していることという点では同じです。
ただ、「知識」が情報元にインターネットや書籍などを含むのに対し、「知見」が調査や研究、経験などによって実際に見て知識を得るという点に違いがあります。
「知見を深める」は今まで以上に知ること
知見を深めるとは、1つの事柄について今まで以上に深く知識や経験を蓄積することです。知見を深めるという行動は、自分の向上心を高め、前向きな学びの姿勢を作り出してくれます。人は学ぶことで常に進化を続け、成長していきます。
どんなにAIが発展しようとも、人対人の人間関係はなくなりません。知見を深めると知見を広めるの違いでもわかるように、言葉はニュアンスで伝わり方が大きく変わってきます。人間関係を円滑にし、知識を今以上に向上させるためにも、ぜひ正しい使い方を身につけるようにしましょう。