「凡庸」の意味とは?
「凡庸」とは、「すぐれた点がなく平凡なさま」または「そういうひと、凡人」を意味します。読み方は「凡庸」と書いて「ぼんよう」と読みます。「ぼんよう」という表現を人に対して使うと、馬鹿にしていることになりますので注意しましょう。
「凡庸」の由来
「凡庸」は「凡」という漢字と「庸」という漢字が組み合わさってできた二字熟語です。それぞれの漢字が持つ意味は異なります。「凡」と「庸」、2つの漢字の意味から「凡庸」の由来について考えてみましょう。
「凡」はすべてという意味
「凡」という文字は象形文字(ものの形をかたどって描かれた文字)であり、風を受ける帆の意味を持っていました。風はさまざまな方向から吹くことから、そこから転じて「すべて」という意味を持つようになりました。
「庸」は並という意味
「庸」にはさまざまな意味があります。漢字の作りも、「庚」と「用」からできていて少々複雑です。かつて中国の唐の時代(618年~907年)には「租庸調」という税法の制度があり、「庸」は平民全体に課せられた労役税を意味していました。
「庸」には「雇う」や「功績」といった意味もありますが、平民に課される労役税に関連して、「並」とか「普通」「平凡」といった意味もあり、「凡庸」の場合の「庸」はこれらの意味で使われていると考えられます。
すなわち「凡庸」は「すべてが普通」ということであり、「すぐれた点がなく、平凡である」という意味につながっていくことになります。
「凡庸」の特徴
このように「凡庸」はあまりよい意味では使われません。「凡庸」な人の性格や特徴は人の評価に関わる問題であるので重要です。ここではどういった性格や特徴が「凡庸」だと捉えられるかについて見てみましょう。
多数意見しか言わない
多数意見というのは「みんなの意見」ですから、それ自体良いも悪いもないのですが、常に多数意見ばかりを言って多数派に同調するのは平凡と捉えられがちです。
「凡庸」という評価から抜け出すには、時には多数派の意見とは違った意見を出してみることも効果的です。
何も考えない
思考停止して何も考えていない人も「凡庸」と捉えられがちです。何も考えないのは、正確には「普通以下」であるといえますが、現代の日本人は思考停止に陥りがちです。
こういった思考停止の人たちも「凡庸」扱いの評価を受けています。たとえ多数派と同じ意見であっても、一度は自分の頭で考えてみることをおすすめします。
チャレンジしない
チャレンジをしないということは現状追認で普通であり、「凡庸」であると評価されがちです。一方、チャンレンジすることはリスクを伴いますが成功を手に入れることも可能です。
常にチャレンジするのが良いとも限りませんが、チャンレンジ精神をもって前向きに取り組むと普通とは異なる評価を受けることもあるでしょう。
「凡庸」の対義語
「凡庸」の対義語にはどんな言葉があるのでしょうか。「凡庸」が悪い意味で使われるということは、その対義語は良い意味で使われることが多いということになります。ここでは、「凡庸」の対義語について紹介しましょう。
対義語①非凡
「非凡「は、ずっとすぐれていることを意味します。普通を意味する「凡」という言葉を「非(あらず)」という言葉で打ち消しているので意味は分かるでしょう。「非凡な才能を持っている」などの表現は最大の敬意であるといえます。
対義語②特殊
「特殊」とは、性質や内容が他とは著しく異なることを意味します。「特殊」の「殊」は「こと」と読むことがありますが、「別々になる」という意味です。
「特殊」とほぼ同じ意味の言葉に「特異」という言葉もあります。こちらも他とは特に異なっていることを意味しますので、覚えておきましょう。
対義語③異常
「異常」は、普通と異なる状態を意味しますが、どこか狂っていておかしいというニュアンスを表します。したがって、あまり良い意味では使われません。「異常気象」「異常事態」のような使い方がされます。
対義語④偉大
偉大は、偉くて立派な様子を意味します。「凡庸」が特別に評価すべき能力を持っていないことを意味するのに対し、「偉大」はすぐれた能力や実績を有していることを表します。「偉大な人物」「偉大な功績」のような使い方がされます。
「凡庸」の類語
次に「凡庸」の類語です。「凡庸」の類語にもいろいろとありますが、似たような意味であっても与える印象は言葉によって異なります。あまり良い意味ではないことから、そのあたりのニュアンスの違いまで理解しておくと便利です。
類語①人並み
「人並み(ひとなみ)」とは、世間一般の人と同じ程度であるということを意味します。「並み」というのは「並んでいる」ということであり、「人と同じくらい」ということです。
「人並みの生活」というと世間一般の人と同じ程度の生活水準、すなわち貧乏ではないということを指します。
「人並み」は「人よりもすぐれてはいないが、劣ってもいない」というニュアンスで使われることから、「凡庸」のようにマイナスのイメージはそれほどにはありません。
類語②世間並み
「世間並み」は「人並み」とほぼ同じ意味であり、世間と並んでいること、すなわち世間の人々と同じ程度であるということを表します。「世間並み」についても「人並み」と同様、マイナスのイメージはありません。
類語③平凡
「平凡」とは「これといってすぐれた点がなく、並であること」を意味します。すべてが平らである、すなわち、他よりも抜きん出ていないということです。
「平凡な作品」「平凡な成績」「平凡な日常」など、平凡にはどちらかというとマイナスなニュアンスがあります。
類語④陳腐
「陳腐(ちんぷ)」とは、ありふれていて古く、つまらないことを意味します。「陳腐な表現」「陳腐化している」などの使い方がされます。
「陳腐」の「腐」は「くさる」という意味で、ここから古臭いというニュアンスが出てきます。当然のことながらあまり良いイメージの言葉ではありません。
「凡庸」や「平凡」には「ぼ」(濁点)が、「陳腐」には「ぷ」(半濁点)の音が入っていますが、これら濁点や半濁点の音が入ることにより、言葉がもつニュアンスに一定の影響が加えられています。
「凡庸」の英語表現
「凡庸」の類語の次は英語表現です。「凡庸」があまり良い意味ではないので、英語表現で置き換えることができるのであれば置き換えてしまいたいところです。英語を普段あまり使うことがないかもしれませんが、「凡庸」の英語表現について確認しておきましょう。
「凡庸」の英語①common
「common」は「一般的な」「普通の」「ありふれた」という意味の英単語です。「common」にはあまり悪いニュアンスはありません。
「common sense」はよく使われる表現ですが、「common」+「sense(感覚)」でできており、「一般的な感覚」すなわち「常識」という意味を表します。
「凡庸」の英語②mediocrity
「mediocrity」は「平凡」「並」「凡人」という意味の名詞です。発音は「ミィーディィアクラァティ」となります。
名詞として使う場合は「mediocrity」ですが、形容詞として使う場合は「mediocre」(発音はミィーディィオゥカァ(ル))となります。
「凡庸」の英語③average
「average」は「平均的」という意味です。日本語で「アベレージ」といっても意味が通じるほど日常用語として知れ渡っています。
野球などで「アベレージヒッター」というと高い打率でヒットを量産する人(例えばイチロー選手のようなバッター)を指すので、日本語としてのアベレージという表現は悪いニュアンスで使われることはあまりありません。
「凡庸」の使い方
「凡庸」というと「平凡」よりも少し高尚な言い回しです。少し日本語に堪能な人でないと意味が分からないという人もいるでしょう。ここでは例文を示しながら、「凡庸」の使い方について確認しておきましょう。
例文①凡庸な人物である
例文①は「凡庸」を人の性格や特徴に使う例です。自分のことを表現するのであれば謙遜していることになるのでさほど問題はありませんが、人に対する評価として「凡庸」と表現する場合には注意が必要です。
例文②この1年は凡庸な成績で終わってしまった
ほかより特段すぐれた点がなく、ありふれた普通の成績の場合、例文②のように「凡庸な成績」などと表現したりします。このほかにも「凡庸な〇〇」という表現は無数に存在しており、「凡庸な表現」「凡庸な作品」「凡庸な容姿」「凡庸な実力」など挙げればきりがありません。
例文③凡庸性の高い作品である
「凡庸な〇〇」のほかにも「凡庸性」という使い方がされる場合もあります。「凡庸性がある(ない)」「凡庸性が高い(低い)」といった使い方です。
「凡庸性の高い作品」とは「世の中にありふれていて、特段すぐれた点がなく普通すぎる」といった意味になります。
「凡庸」の注意点
「凡庸」と似た漢字に「汎用」があります。「汎用」と書いて「はんよう」と読みます。漢字の作りが似ているので「ぼんよう」と誤読されることも多々ありますが、「凡庸」と「汎用」は全く意味が違うので注意が必要です。
「汎用」は広い範囲で通用するという意味
「汎用」は、広い範囲で通用するという意味です。「汎用性がある」「汎用性が高い」などの使い方がされます。例えばスマートフォンは電話だけでなく、ネット検索、メール、動画鑑賞などあらゆることに使うことが可能なので「汎用性が高い」アイテムということになります。
「汎用」は褒め言葉で使うことが多いのに対し、「凡庸」は悪い意味で使うことが多い言葉です。間違って使わないよう注意しましょう。
「凡庸」は平凡という意味
「凡庸」について紹介しました。意味が分かりにくい言葉ですが、何気なく使うと周りから凄いと評価されるかもしれません。しかし、あまり良い意味では使われませんので、使うシーンについては細心の注意を払いましょう。