「楽しみにしております」の意味
「楽しみにしております」という言葉について、深く考えたことはあるでしょうか。一般的な敬語として広く使われる言葉ではありますし、実際によく使うという人もいるでしょう。それだけに、今さらよく考えたりはしない表現でもあるわけです。
「楽しみにしております」とは、具体的にはどういう意味の言い回しなのでしょうか。詳しくご説明しましょう。
早く実現することを心待ちに思っている
「楽しみにしています」や「楽しみにしております」というこれらの敬語には、これから起こることを心待ちにしているという気持ちが込められています。「楽しみです」と表現すると、そんな気持ちが途切れる印象にもなります。
言葉の語尾が「しています」「しております」となっているのは、そのことが早く実現するのを心待ちにする気持ちが、実現までずっと続いている様を表してもいます。
「楽しみにしております」の類語
「楽しみにしております」という敬語に、言い換えの出来る類語はあるのでしょうか。類語を知っていてこそ、言葉の表現は広がるものです。いつも同じ表現を使うよりも、類語を知った上でいくつかの言葉を使い回すのがスマートだとも言えるでしょう。
「楽しみにしております」の類語を、あなたは何か思い付くでしょうか。こちらでは、いくつか例を挙げてご紹介しましょう。
心待ちにしています
「楽しみにしております」の類語に、「心待ちにしています」というものがあります。心待ちにするというのは、そのことが実現するのを首を長くして待っているのだという気持ちが入った表現です。単純に「待つ」というのと比べ、期待して待っているという気持ちを表現出来る類語です。
また、「心待ちにする」という表現は大和言葉とされており、これは日本で昔から使われている美しい言葉を指しています。
待ち望んでおります
「楽しみにしております」は、上下関係に左右されずに使える表現です。その類語として挙げる「待ち望んでおります」は形こそ謙譲語ですが、目上から目下に向かって使われるものです。類語だからといって、取引先や上司に使うのはNGです。
「前回の作品はとてもいいものでした。今回もまた、それを超えるようなものをいただけることを待ち望んでおります」のように使います。「楽しみにしております」よりは、期待度が強いと言えるでしょう。
期待しております
例えば、「次のプロジェクトで、お目にかかれるのを楽しみにしております」を「~での、ご活躍を期待しております」と言い換えることも出来ます。これは、「楽しみにしております」の類語のひとつだと言えるでしょう。
この類語でも注意したいのは、目下から目上に対しては使えないことです。間違っても、上司に対して使ってはいけません。
「楽しみにしております」は丁寧で便利な言葉ではあります。しかし、このような類語をいくつか覚えておくと、同じ表現を繰り返してコピペやテンプレートのように感じられずに済みます。たとえ社交辞令での言い回しでも、類語を覚えておくのは損にはなりません。
「楽しみにしております」の敬語は正しい?
日本語の中には時に、定着はしているけど正式な敬語ではない表現も見受けられます。「楽しみにしております」というこの言葉も、ひょっとしてそういう類の表現ではないでしょうか。「楽しみにしております」は敬語として日常的に使われていますが、果たしてそれは正しい使い方でしょうか。
敬語を正しく使うことは、大人のたしなみとも言えます。不安を感じながら使うのではなく、しっかり理解した上で使いましょう。
「楽しみにしています」の敬語表現
「楽しみにしております」は、正しい敬語表現です。正確には、「楽しみにしています」をさらに丁寧にした表現です。「楽しみにしています」という言い回しそのものも、敬語が必要とされる場面で使っても差し支えのない言い方ではあります。
語尾の「います」を「おります」とすることで、いっそう丁寧に表現することが出来ます。それは、「おります」が「います」の謙譲語だからなのです。
謙譲語とは日本語における敬語のひとつで、自分の立場を相手より下げることで、相手を自分より高い位置に持ち上げる表現方法です。類語のレパートリーに加え、こういった敬語表現も、大人のマナーとして覚えておくといいでしょう。
「楽しみにしております」の使い方と例文
「楽しみにしています」と同様、「楽しみにしております」もまた、ビジネスの世界では特によく使われる表現です。それを分かっていても、使い方がよく分からないという人もいるでしょう。こちらでは、「楽しみにしております」をどのように使えばいいのか、例文と併せてご紹介しましょう。
面会の予約を取り付けた場合
例えば、営業にあたって相手方との面会を取り付けたとしましょう。「楽しみにしております」という言葉の中には、その面会を心待ちにしているという気持ちを込めることが出来ます。そしてその面会で出来るだろうビジネスの話を、こちらは前向きに捉えているとの意思表示にもなるでしょう。
顧客との面会を予約した際にも、この敬語表現を使うことが出来ます。自分のランクを下げる謙譲語なので、相手に失礼な言い方にはなりません。
例文
例文としては、「では、面会はその日に致しましょう。お会い出来るのを楽しみにしております」や「11月28日に面会させていただくことになった●●と申します。お目にかかれるのを楽しみにしております」などが考えられます。
「会う」という言葉は、より丁寧にすると「お目にかかる」となり、こちらも謙譲語の表現です。「お目にかかる」という表現もよく使われますので、覚えておくといいでしょう。
次回また会うことを期待している場合
面会を終えた後の返信にも、「楽しみにしております」を使うことが出来ます。その面会が有意義であったこと、可能なら今後も付き合いを続けたいということを、返信の中で表現する手段になります。
「楽しみにしております」は、返信の中で具体的にどんな使われ方をするのでしょうか。例文を挙げて、ご説明しましょう。
例文
メールや書面での返信において、次のような例文を用いて気持ちを表すことが出来ます。「本日はお忙しい中、お時間をいただきまして誠にありがとうございました。近いうちに、またお会い出来るのを楽しみにしております」あるいは、こんな文面を目にしたことはありませんか。
「長らくご愛読いただき、ありがとうございました。また次回作でお会い出来るのを、楽しみにしております」このように、本のあとがきなどでもよく使われる表現なのです。
晴れ姿を見ることを期待する場合
晴れ姿を見るのを期待する時にも、「楽しみにしております」が活躍します。成人式や結婚式などに顔を見せてくれるよう、何らかの招待を受けた場合の返信に使うことが出来ます。晴れ着姿はおめでたいもので、それを目にするのを心待ちにしている、お祝いの気持ちを表す言葉にもなります。
例文
「成人式おめでとう。●●ちゃんの晴れ姿を楽しみにしております」と、親戚など近しい関係の相手に言うことも出来ます。近しい関係の場合は、同じ意味である「楽しみにしています」を使うのもいいでしょう。結婚式の招待状を返送する時にも、よく使われる表現です。
「ご結婚されるとのこと、大変うれしい報告をありがとうございます。会場でお二人にお会い出来るのを楽しみにしております」と書き添え、二人の門出を祝う気持ちを付け加えるのもいいでしょう。
催し物の案内状で送る場合
何かの催しに誘う場合にも、「楽しみにしております」はよく使われます。この言葉の中には、催しに参加してほしい気持ちが込められていると考えることも出来ます。来てくれるととても嬉しいという、主催者の気持ちも入っていると言えるでしょう。例文を挙げて、具体的に見てみましょう。
例文
「来たる11月29日に、~の会を催すことに致しました。会場でお会い出来ますのを、今から楽しみにしております」や「イベントでは皆様に楽しんでいただけるよう、スタッフ総出で頑張ります!お会い出来るのを楽しみにしております」のような例文を参考に、案内状には書くとよいでしょう。
ビジネスで使われることもよくありますが、案内状で使われると少しくだけた印象になります。そのため、「楽しみにしています」を使ってもいいでしょう。
「楽しみにしております」への返信
「楽しみにしております」と言われた時には、どう返信するのがベストなのでしょう。「ありがとうございます」とお礼を言うのも決して間違いではありませんが、「楽しみにしております」の返信としては少し温度差があると言えます。
心待ちにしているという自分の本音を伝えるにも、言葉不足です。では、どのような言葉を使って返信すると、相手に失礼にならずに済むのでしょうか。
こちらこそ楽しみにしています
「こちらこそ楽しみにしています」と返信すると、ありがとうというお礼だけでは表現出来ていなかった、自分も同じ気持ちでいるという意思を伝えることになります。相手が謙譲語で「楽しみにしております」と書いているなら、「楽しみにしています」で返しても差し支えはないでしょう。
こちらこそと付け加えるだけで、「会うのを心待ちにしているのは自分だけではない」と、相手を安心させることも出来るのです。特にビジネスの世界では、一種のマナーと考えましょう。
どうぞご期待ください
催しや商談などにあたって、相手から「楽しみにしております」と言われたらどうしましょう。その時には、「どうぞご期待ください」と答えるのがスマートな返信だと考えられます。「楽しみにしておいてください」と答えたとすると、取り方によっては横柄に聞こえてしまうかもしれません。
その一方で、「ご期待ください」という言葉の中に、その人の自信が含まれていると考える人もいるでしょう。その点を踏まえ、「どうぞご期待ください」と答える必要はあります。
「楽しみにしております」の英語表現
グローバルな時代となり、ビジネス上でも英語でメールのやり取りをすることもあるでしょう。日本語と同じように「楽しみにしております」と言いたい場合、英語ではどのように表現するのかご存知ですか。知らずにずっと避けていたのなら、これを機に英語での表現を覚えてしまいましょう。
2通りの表現方法がある
英語での「楽しみにしております」には、2通りの表現方法があります。ひとつはI'm looking forward to~で、もうひとつはI look forward to~です。toの後には共に、動詞の進行形か名詞が入ります。動詞の原形ではないので、その点は間違わないようにしましょう。
これらの英語表現の意味は同じですが、どこかに違いはあるのでしょうか。英語の例文と共に、詳しく見ていきましょう。
I'm looking forward toの意味
英語でI'm looking forward toとは、どちらかと言えば「楽しみにしております」より「楽しみにしています」に近い意味になります。ビジネス面で使うというよりは、友達同士で用いるカジュアルな英語表現です。フレンドリーな相手になら、仕事上での使用も考えられます。
I'm looking forward to seeing you again.「きみにまた会うのを楽しみにしています」やI'm looking forward to the party.「パーティーを楽しみにしています」のように使います。
英語圏の友達と手紙のやり取りをする際にも、この表現は大変役に立ちます。日本語の手紙にもあるように、英語の手紙にも終わりに書く言い回しがあります。その時に多く使われるのが、このI'm looking forward toという表現なのです。
I'm looking forward to your next letter.「次の手紙を楽しみにしています」と書いて、with love●●「愛を込めて、●●より」と書けば、完璧です。
I look forward toの意味
「楽しみにしております」と英語で言うなら、より最適なのはこちらの表現です。前者よりもフォーマルで、ビジネス向きの英語表現と言えるでしょう。そのために、気心の知れた友達相手にI look forward toを使うことはありません。使い分けに注意しましょう。
I look forward to hearing from you soon.「お返事を心待ちにしております」(英語の履歴書に添える文言)やI look forard to the next meeting.「次の会議でお目にかかれるのを楽しみにしております」という例文が挙げられます。
「楽しみにしております」は正しい敬語表現
「楽しみにしております」は、ビジネス上でも使える正しい敬語であることが分っていただけたでしょうか。今までこの言葉に自信がなかったのなら、これからは安心して使いましょう。類語である「心待ちにしております」も併せて使い、丁寧な言葉遣いの幅を広げるといいでしょう。