訃報の意味とは?
「訃報」という言葉をご存知ですか?「意味や読み方がわからない」「たまに見かける言葉」など、あまり頻繁には見聞きすることはありませんが、たまに、「メールで訃報が届いた」というシーンも日常生活を送る上で遭遇したりします。
「訃報」は「人の死亡の知らせ」を意味する言葉です。「死亡の知らせ」ということもあり、普通のお知らせとはその意味合いは、趣を異にしています。
今回はそんな「訃報」について徹底紹介。「訃報」の由来から、特徴、種類、使い方、注意点について順に紹介していきます。突然の「訃報」が届いた際も慌てず、故人を静かに悔やむ時間を大切にできるように「訃報」のあれこれをマスターできるよう特集していきます。
訃報の由来
意味合いを確認できたところで、「訃報」の由来はどこにあるのでしょうか?馴染みある言葉であるが故に日本では古くから使用されてきた可能性があります。
そこで「訃報」の漢字の成り立ちを確かめるため「訃」「報」に分けてそれぞれの漢字を紐解いていき、由来を辿っていきます。
それぞれの漢字の意味
まずは、「訃」。この漢字は形声文字で、訓読みの読み方は「(つ)げる」「(し)らせ」です。形成文字で、意符である取っ手のある刃物を表す象形と口を表す象形である偏「言」と占いで、亀の甲羅や牛の骨を焼いたことで生じた割れ目を表す音符である旁「卜(読み方:ホク)」から成り立ちます。
「言」は上記から、つつしんで言うという意味が生まれ、「卜」は上記から「占う」という意味が生まれましたが、ここでは「赴(読み方:フ)」の漢字に通じていて、「急いでいく」という意味として使われています。
つまり、「訃」は上記の部首の組み合わせで「いそいでいう」という意味が生まれ、現在知られる意味となりました。
つぎは、「報」。この漢字は会意兼形声文字で、訓読みの読み方は「(むく)いる」「(しら)せる」です。意符である刑具を表す象形である偏「幸」と占いで、王命のしるしを手に持つ意符・音符の「𠬝(読み方:フクかたホウへ)」から成り立っています。
上記から、罪人に罰を加える意味を表すようになり、「むくいる」という意味が生まれ、転じて「こたえる」から「しらせる」という意味が派生していきました。
つまり、「訃報」は「訃」「報」のそれぞれの意味「いそいでいう」「しらせる」から、現在の「死亡の知らせ」という意味が生まれました。
上記を踏まえて、「ご連絡お待ちしております」の「ご連絡」と「お待ちしております」それぞれの使用時期を辿った歴史を以下より、ご紹介していきます。
訃報の歴史
「訃報」の使用時期の由来を辿る文献は過去の作品で確認する事ができます。理論物理学者・科学啓蒙家で歌人の石原純が「アララギ発行所」から1919年(大正8年)に発表した「左千夫先生への追憶」という作品です。下記の一説を紹介します。
「翌年先生の訃報を私はスイスのチューリッヒで受けとったのであったが、そのとき私はそこの山腹の下宿の高い窓から、呆然として町の向こうの青い湖水の面を見おろしながら、孤り離れて遠い思いに浸らないわけにはゆかなかった」
少なくても今から約100年前には既に「訃報」という言葉が使われていることが上記の文献から窺い知ることができます。
訃報の特徴
「訃報」の意味と由来が理解できたところで、「訃報」の特徴にはどんなものが上げられるのでしょうか?「訃報」は「死亡の知らせ」という意味であることは先述しましたが、特徴はこの意味と関係性があります。
上記を踏まえて「訃報」の特徴を以下に紹介いたします。「訃報」とはどんなものなのか?その全体像を把握していただければ幸いです。
お知らせの機能の意味
「訃報」の特徴の1つに「お知らせの機能の意味」があると言う事です。故人となった場合に身内はいち早く、関係者に連絡をして故人になったことを「お知らせ」します。
「お知らせ」する方法は電話の他、メール・FAX・ハガキ・新聞広告、などさまざまです。特に親しい人には電話で速やかに故人になったことを知らせる必要があります。
返信やお悔やみの言葉
「訃報」の特徴の2つ目は「お知らせ」に対する返信やお悔やみの言葉があげられます。返信には「お知らせ」で届いた上記の伝達手段で返信することが可能です。メールでくればメールの返信で、ハガキでくればハガキの返信でも失礼では有りません。
また、「お知らせ」が来たけれどどうしても出席する事ができないん場合は、「弔電」という返信方法があります。「弔電」は電報の1種で、電信施設を利用して、故人を悼む意思表示をすることができます。
訃報をお知らせする対象者
訃報の特徴とひと通り把握することができましたが、先述した「訃報」をお知らせする対象者について、その送る範囲を故人との関係においてどのくらいまでに定めればいいのでしょうか?以下にその目安をご紹介していきます。実際にお知らせする際に参考にしていただければ幸いです。
特に定めはない
個人として、訃報を送る範囲には特に定めはありません。喪主である親族が故人の生前の意思を汲んで、訃報を極力親族だけにしたり、交友関係を大切にしていた故人であれば、過去のさまざまな人間関係を確認し、関係者に訃報する事が故人を遺志に叶うものであったりと様々です。
一般的な意味では
個人の「訃報」を送る範囲は、先述の通り、地域性や故人の遺志、喪主の意思も関係してくるので一概には言えませんが、一般的な基準があります。
それは「同居していない故人の親族」、「故人が仕事をしていた会社関係者」、「親しい友人や知人」上記3つ、特に「親族」には「訃報」を伝えるケースが多いことがあげられます。
現在では親族間の確執がある場合に、故人の遺志から、その遺族の意思で「訃報」を送らないケースもあるので、上記はあくまで参考程度の一般的なケースとしてお知り置きください。
法人として、「訃報」を送る場合には上記のような個人的理由によって送るかどうかの判断は、必ずしも妥当ではありません。
法人格の社員が故人になったことは、故人が属していた会社と取引先との先々の関係性にも関わってきます。必ず会社全体の総意として判断し、「訃報」を送る範囲を決定する必要があります。
訃報の使い方
それでは、「訃報」という言葉は私たちの実生活でどのように使うことができるのでしょうか?「訃報」の例文を下記にケース別でご紹介します。
各例文とも「句読点」や「死」にまつわる言葉、「畳語」などの表現などの使用を控えていることも確認していただきながらその使い方をご参考ください。
例文①
「訃報」の使い方の1つの例文として、メールなどの訃報が上げられます。表題などで「訃報のお知らせ」が使われています。
「父〇〇は 〇〇月〇〇日に永眠しました なお葬儀は故人の遺志により親族だけで相済ませる所存です 生前中のご厚情に深く感謝いたします」上記例文の冒頭に「訃報のお知らせ」の表題、末文に「差出人の住所、氏名」を記載します。
例文②
「訃報」の使い方の1つの例文として、ハガキなどの訃報が上げられます。表題などで「訃報のお知らせ」が使われています。
「父〇〇は 兼ねてから療養中でしたが、〇〇月〇〇日に永眠しました なお葬儀は故人の遺志により親族だけで相済ませる所存です 略儀ながら書面にてお知らせ申し上げます」上記例文の冒頭に「訃報のお知らせ」の表題、末文に「日付、氏名」を記載します。
例文③
「訃報」の使い方の1つの例文として、社内メールなどの訃報が上げられます。表題などで「訃報のお知らせ」が使われています。
「営業部〇〇さんは かねてから先般のご病気で療養していましたが 〇〇月〇〇日に永眠しました こころから哀悼の意を表すとともに 謹んでお悔やみ申し上げます」上記に加え、「訃報のお知らせ」の表題を入れます。
また、会社葬を執り行う場合には上記の文に続けて「なお通夜および葬儀、告別式は下記になりますのでお知らせいたします」と記載し「通夜・葬儀日時と会場住所及び連絡先」を記載します。
例文④
「訃報」の使い方の1つの例文として、電話での「訃報」が上げられます。故人の親しい知人や友人へ「訃報」を直接伝達します。
「〇〇の妻です。この度〇〇は、一昨日に残念ながら。生前は本当に入院中などよく話し相手になってもらいありがとうございました」直接亡くなった表現を伝えなくても、故人になる方が闘病したいた際に頻繁に会っていた親しい人であれば、「訃報」であることは伝わります。
ただ、故人になることが突然だったり、知人が故人と久しくしていた場合には、相手にしっかりと「死亡」を伝える(死亡と言わないで永眠などの表現で)ことが必要です。
訃報を送る際の注意点
「訃報」を送るで気をつけなければならない点はどこにあるのでしょうか?以下に「訃報」を送る際の注意点をご紹介していきます。実用につながる大切な部分なので、実際に「訃報」を送る際、参考になれば幸いです。
伝えるタイミングに注意する
電話・メールなどの「訃報」はどのタイミングで出すべきでしょうか?知らせるタイミングに躊躇する場合がままあります。
「由来」で「訃報」の「訃」が「いそいで知らせる」という語源であることは、先述しましたが、「訃報」は身内が故人となった時点で速やかに伝達することが大切です。
特に親しくしていた方へ直接電話などで伝えることは、速やかに伝達でき、かつ故人が生前親しくしていた間柄の点からも理に叶う伝達方法です。
敬語表現に注意する
「訃報」を送る際に気を付けるべき特徴としては、敬語の使い方です。特徴や例文でも紹介してきましたが、「訃報」の送る側は故人に一番近い親族が送るのが普通です。亡くなった故人は送る側にとって「身内」であるため敬語を使わないようにすることがポイントです。
訃報は「死亡の知らせ」という意味
「訃報」の意味、由来、特徴、敬語、使い方、注意点を順を追って見てきました。「訃報」は「死亡の知らせ」という意味でその知らせを通じて、故人と関係者をかつての関係に結びつける存在です。
「訃報」を受け取った方はその故人を悼み、供養する。故人にとって一番安らかなる旅立ちのきっかけとなるべき存在が「訃報」です。