自制心の意味とは
自制心とは、自分の気持ちや感情をうまくコントロールするということを意味しています。「自制心を鍛える」「自制心がない」「自制心を養う」といった言葉があるので、いままで一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。
人間とは本来、私利私欲で自分勝手な生き物です。自制心は、そのような己の欲望や感情をコントロールすることであり、「自分を制限する」という言葉からとられています。
欲望・感情を自分で抑えてコントロール
では「自分を制限する」ことについて具体的に見ていきましょう。自分の中には、いろいろな欲望や感情が渦巻いています。「○○したい」という欲望だったり、さまざまな感情(喜怒哀楽など)だっだりします。自制心は、これらの欲望や感情を抑えて、コントロールすることです。
自制心・強い人の特徴とは
このように、自制心が強いというのは、自分の欲望を抑えることであり、周りからは自分に厳しいと捉えられ、よい評価を受ける傾向があります。逆に自制心が弱いとうことは、わがままで自分勝手、自分に甘いと捉えられ、周りからの評価は低くなりがちです。
自制心の強い・弱いは、外形的な行動になって現れてきます。では、自制心が強い人の特徴について見てみましょう。
①健康
「よく食べて、よく動く」が健康の秘訣であると言われます。しかし、よく食べることとよく動く(運動する)ことは必ずしも比例しません。食事は好きだが運動は嫌いという人はたくさんいます。健康を維持するには、食事や運動の自己管理が必要になります。
「今日は運動が億劫だから」とか「今日は好きなものを好きなだけ食べよう」という考えを頻繁に持つ人は健康にはなれません。逆にいえば、健康であることは、このような考えを抑制することができる人の特徴と言えます。
②飲酒量を調整できる
飲酒にはアルコール依存症があるように、アルコールを摂取したいという強い欲望が生じることがある飲み物です。依存症の人でなくても、アルコールの誘惑は時に強烈です。「今日は飲酒はやめておこう」と思っても、アルコールを前にするとついつい飲んでしまったり、一杯だけのつもりが何杯も飲んでしまう、そんな経験をしたことがある人も多いはずです。
逆に、これらの経験がない人は飲酒の誘惑に勝てる人ですので、自制心が強い特徴といえるでしょう。
③欲しい物を我慢できる
「浪費癖」とか「買い物依存症」という言葉があるように、自分の欲しいものをどんどん買って、自他ともに生活を困らせる人たちがいます。これも欲望です。何でもかんでも欲しいと思ったものを買っていたら生活が持ちません。そのために借金したり、ひどい場合には窃盗に走ったりと、自分(家族)の生活を壊してしまう人すらいます。
まだ、正式な精神疾患といえるレベルではないようですが、自制心が欠けている(あるいは負けている)状態を指すことに違いありません。欲しいものを欲するなとは言いませんが、欲しい物を我慢できることは、自制心が強い特徴であることは間違いありません。
④二度寝しない
朝、一度目を覚ましても眠くてまた眠ってしまう、そんな二度寝の経験をしたことがこれまでに一度や二度はあるでしょう。二度寝の誘惑は、睡眠の量や体調も関係してくるので、必ずしも悪とは言いません。しかし、一度起きたのに、またそこから1、2時間も寝てしまっては1日を台無しにしかねません。
二度寝は、寝る前や起きた後の行動などで短時間に限定することができます。二度寝をあまりしないことは、自制心が強く、きちんと時間を意識できる人間の特徴です。
⑤ダイエットに成功
ダイエット方法にもいろいろありますが、一般的には精神や身体に負荷がかかるものです。食べ物を制限するにしても、運動を定期的に行うにせよ、自分をコントロールする必要があります。
例えば、ダイエット中の人が菓子類を前にして我慢する姿はまさに「自制心VS欲望」が葛藤しているシーンです。ダイエットに成功することは自制心が欲望に勝つ人の特徴といえるでしょう。
⑥イライラしない
イライラするのは欲望ではなく感情の部類です。喜怒哀楽でいうところの「怒」の感情といえるでしょうか。他の感情はそれほど抑え込む必要はありませんが、「怒」の感情はなるべくなら抑えた方が周りにもありがたいところです。
何か周りで起こっていて、それが自分にとって都合が悪いことであっても、怒らずイライラしないでいられることは、自制心が強い人の特徴です。
自制心がない人の特徴とは
次に自制心がない人の特徴について紹介しましょう。といっても、上述の自制心の強い人の反対の行動を思い浮かべてもらえば、おのずと自制心がない人の特徴もわかるはずです。
自制心がないというのは自分をコントロールできないことですから、野球のピッチャーに例えると、いわば「ノーコン(ノーコントロール)」のピッチャーであって、チームメイトや場合によっては相手バッターに迷惑を掛ける人です。
①さぼり癖がある
学校の授業に出るのが面倒くさくて、授業を休んでしまった、そんな経験をしたことがある人は少なくないでしょう。授業に限らず会議や行事など、出席する義務があるにもかかわらず、出席することが負担であるという場合、そこから逃げだしてしまおうという欲求がでてきてしまいます。
そのような欲求にすぐ負けてしまい欠席を続ける人は、いわゆる「さぼり癖がある」状態です。言うまでもなく、自制心がないことによって、このような状態に陥ってしまっているのです。
②借金を作る
買い物やギャンブルで生活費を浪費してしまい、借金を行うケースも自制心が弱い特徴です。物を買いたいとか、ギャンブルをしたいという自分の欲に負けて、借金を作っているからです。しかし、借金を作ること自体は自制心が弱いとは限りません。家を建てるのに住宅ローンを組む人が自制心がないとは言えません。このケースでは借金が必要なケースです。
何のために借金を行う必要があるかを理解しているかどうかが問題です。浪費癖のある人は、物欲に負けて借金をしているに過ぎず、自制心がないケースが多いといえます。
③約束を破る
「約束は守らないといけない」とは、小学校のころに習う道徳であり、いまさらあらためて言うまでもない道理でしょう。しかし、世の中には約束が守られないことが多々あります。これらには必要性があって破られる約束もあるでしょうが、多くは理由もなく何らかの欲求に負けて破られるケースが多いでしょう。
④言う事がころころ変わる
自制心がない人というのは、強い心を持っていない、何かに流されやすい性格の人です。そういう性格の人は得てして、言うことがその時々でころころ変わることがあります。
もちろん、単に自分の意見を持っていないがために、周りの人の意見を採用してしまうという人もいるでしょうが、自分の意見を持ちながら、その意見を適当に変えてしまうのは、自制心がない特徴といえるでしょう。
⑤体形がだらしない
体形がスラっとしていたり、筋肉隆々の人は、自律的な行動をとっている人がほとんどです。逆に、自分の好きなものばかりを食べていたり、暴飲暴食する人は、体形がだらしなく、身体が緩んでしまっています。すべてがそうだとは言えませんが、体形がだらしないのは、自制心がない特徴といえるケースが多いでしょう。
⑥すぐにイライラする
何か自分にとって不都合なことが起きると「イラッ」とくる、その気持ちは分からなくはありません。しかし、周りに迷惑なほどにイライラする人は困りものです。そういう状況にも動じず、自分をコントロールして、冷静に対応できる人は尊敬できるし、頼りがいもあります。感情に任せてイライラする人は、自制心が弱く、周りにとっても迷惑な存在です。
自制心・鍛える方法とは
のちほど紹介するように自制心がある人には多くのメリットがもたらされる一方、自制心がない人には多くのデメリットがのしかかります。自制心を鍛えると、自分の欲望に負けず、より大局的な視点で行動を起こせるようになります。自制心のメリット、デメリットの前に、どうすれば自制心が鍛えることができるかを紹介しましょう。
①スケジュール管理
決められたことを守ることは大事ですが、その一つにスケジュール管理があります。スケジュールを立てるとよいのは、毎日の生活の中で、自制心が自ずと鍛えることができる点です。別の欲求があっても、スケジュールがあればそれを守ろうという気持ちが働くでしょう。こうして、自制心が養われていきます。
まずは、毎日のスケジュールを立てて、いつ何をするか手帳なり、スマホのアプリなどで管理して、そのとおりに活動できるよう頑張ってみましょう。
②自分のルールを作る
「毎朝起きたら必ずジョギングする」「毎週○曜日はお酒を飲まない」「一日一善」など、何でもよいので、自分のルールを作って実践してみるようにしましょう。もちろん、自分の欲望を助長しないルールにすることが大事ですが、最初から厳しいルールにしてしまうと守ろうという意欲も薄れてしまうので、はじめは守れそうなルールにするのがよいでしょう。
慣れてきたら少しずつハードルを上げていきます。成功体験を増やすことで、ルールを守ろうという意欲につながっていきます。最終的には、ルールに沿った、かなり自分に厳しい人間になれるようになるでしょう。
③食事にメリハリをつける
食事は生きる上での基本なので、何でも制限すればよいわけではありません。おいしいものが食べられず、逆にストレスを抱えて病気になってしまっては元も子もありません。食べるときは食べ、運動するときは運動する、間食は極力しないなどのメリハリをつけた食生活を行うことに意味があります。
④早寝早起き
「早起きは三文の徳」といわれるように、朝早く起きるとよいことがあるといわれています。朝起きて少し経ったあとが最も脳が活性化している状態であり、その時間帯に仕事や勉強がはかどったりすると言われています。
早寝早起きは時間をコントロールする上での基本でもあり、自制心を鍛える上でぜひやってもらいたい行動です。
⑤欲しい物は我慢
欲しい物は我慢することは自制心が鍛えられます。「そんなの当たり前じゃないか」と思われるでしょう。しかし、我慢しすぎるのも考えものです。本当に必要なものであれば手に入れればよいともいえます。
何でもかんでも欲しいものを手に入れようとするのは節操もないので、何か課題を設けてその課題がクリアしたらほしいものを買うとか、真に必要なものだけを手に入れるなどにすれば、自制心を鍛えることで効果的でしょう。
⑥周りの人に公言
私利私欲はわがままで、周りからみると恥ずかしいと思われる状態です。自分では何とも思わないかもしれませんが、周りの人に「毎日○○を食べている」とか「○○が欲しいと思っている」などと公言してみてはどうでしょうか。客観的に自分がどういう状態であるかを指摘してもらえば少しは自制しようという気持ちが芽生えてくるはずです。
できれば、家族とかに言うよりも、親友とか好きな人の意見を聞いてみる方が、自制心を鍛える上での効果が高いと思われます。
自制心のある人のメリットとは
自制心を鍛える方法がわかったところで、自制心を鍛えるとどういうメリットがあるのでしょうか。自分の欲望がコントロールできるということは、自分よりも他人の希望を優先することができることであり、結果として他人に感謝されたりして、より多くの人に喜んでもらえる機会が増えるということになります。
①生活が上手くいく
自制心があると、ルールを守れたり、決められたスケジュールをきちんとこなすことができたりするようになり、仕事や私生活が円滑に進行します。周りの人の評価も高くなり、尊敬の対象として見られることもあるでしょう。結果として私生活やビジネスが上手くいくことにつながります。生活がうまくいくには、「自分に厳しく、他人に優しく」です。
②人に迷惑を掛けない
平気で約束を破ったり、借金をしたりして生活を壊したりするのは、迷惑の最たるものです。自制心があると、自分が規律正しい生活を送れるようになり、他の人に迷惑をかけることはなくなります。それどころか、他の人の模範になり、他から尊敬の念をもって接してもらうことも多くなります。自制心が強いことは自他に何かとメリットをもたらすのです。
③人から尊敬される
元プロ野球選手のイチロー選手を思い浮かべてもらったらよいでしょうか。イチロー選手は自分に厳しい印象がありますが、偉大な成功を収めただけでなく周囲から敬意をもって見られています。自制心がある人は自分を成功に導くだけでなく、「他人を高みに導いてくれる」と考えられ、尊敬の対象になります。
自制心のない人のデメリットとは
では、逆に自制心がない人にはどういうデメリットがあるのでしょうか。上記のようなメリットの反対のこと、すなわち、生活が上手くいかなくなる、周りに迷惑をかけるということがデメリットになりそうです。ここでは、具体的に想定されるデメリットの内容についてあげてみます。
①信用が無い
自制心がない人の特徴で挙げたように、言うことがころころ変わったり、さぼり癖があったり、約束を守らない人ということになると、もう信用しようにもどこを信用したらよいのかわかりません。この手のタイプは、ビジネスでも私生活でもあまり関わりたくない部類の人です。人間関係もまともに構築できなくなります。
②カード破産
浪費癖や買い物依存症の人が借金だらけになってしまい、返済が追い付かなくなってしまうと、最終的には自己破産(カード破産)の手続きをとることになります。借金は帳消しになりますが、自己の財産は処分されて、借金返済に充てられます。一定期間、ブラックリストに載るので借り入れ等は制限されます。細々とした生活を送っていく必要があります。
③ギャンブルでお金が無い
ギャンブル依存の人にも同様のことが言えます。お金の使い道が、買い物なのかギャンブルなのか違いです。いずれにしても病的な現象です。ギャンブルの場合はお金を増やしたときの快感が、買い物の場合は高価なもの(欲しいもの)を手に入れたときの快感がまとわりつき、またギャンブルで勝ちたいとか、また買いたいという衝動をもたらすのでしょう。
お小遣いの範囲でやるのならともかく、生活費まで費消するようになると、極めて危険で、周りにも迷惑を与えるデメリットになります。
④病気の悪化
自制心がないと、お金にルーズになったり、時間にいいかげんになったりと自堕落な生活になってしまい、ストレスを抱えることも多くなります。ストレスを抱えると病気になったり、すでに病気を持っている人はそれが悪化したりすることにもなります。自制心を鍛え、健康的な生活を送れるようになるのが理想的です。
⑤家庭崩壊
自制心がないと自己破産をもたらしたり、家族に対して暴力的になったりしてDV被害を引き起こすなどして、家庭崩壊につながるケースも出てきます。後者の場合、家庭崩壊に加えて犯罪として警察に検挙される可能性もあります。自制心を鍛えることができないと、ときには人生を意味のないものにしてしまう危険性があります。
自制心・英語表現とは
自制心は、英語で表現すると、「self‐control」となります。英語で「自分」を意味する「self(セルフ)」と、英語で「支配する」とか「制限する」という意味をもつ「control」が組み合わさってできた単語です。自制心のほかに、「自己制御」という意味で「self‐control」の英語を使うことがあります。
自制心という日本語は硬い印象があり、セルフコントロールという英語で表現することも多く、実際ビジネスの世界などでは、英語で使用されるケースが目立ちます。英語の表現も覚えておくと便利です。
日本人にも通じる表現が出来る
セルフコントロールという英語のほかに、よく使われる英語表現を紹介しましょう。「自制心を失う」という意味の英語表現は、「lose self‐control」、「自制心を示す」の英語表記は「display self‐control」、「自制心を鍛える」の英語表記は「tarin self‐control」になります。
また、「Please have a little self-control」で「少しくらい自制心を持ってください」という意味の英語表現になります。
自制心の類語
自制心は日常生活でよく行われている精神活動ですが、実際にはそれほど頻繁に使用される言葉ではありません。自制心ではなく別の単語で置き換えられて使用されることも多いようです。では、どんな言葉が代用されているのでしょうか。ここでは、自制心の類語について紹介しましょう。
意志
「意志」は、「ある行動を取ることを決め、かつそれを引き起こし、持続させる心的機能」「物事を成し遂げようとする積極的な心の状態」を意味します。「意志が強い」とか「意志が弱い」という使い方をします。ちなみに、「意志」は英語で「will」となります。
自制心は意志の一形態と考えられますが、自制心が自然と身についている人からすれば積極的な心の状態を伴わないこともあります。特に意識することなく自制することができる状態にまでなれることが理想でしょう。
精神力
「精神力」は精神の強さ、気力のことです。英語では、「mental strength」と表現されます。自制心を鍛えるには、精神力が必要です。自制心は、自分の欲望や感情に支配されない状態であり、それはまさに精神力そのものだからです。
精神力の類語に、集中力とか注意力という言葉もありますが、こちらは「精神を集中させて物事の本質を見極める能力のこと」であり、自制心とは若干意味が異なります。
自制心の意味とは感情・欲望を自分で抑える事
今回は、自制心の意味について紹介しました。感情や欲望を自分で抑えることは簡単なようで難しいことです。周りから自分がどう見られているかを意識して、他人に模範を示そうとできれば自制心も増してくるはずです。自制心を鍛えることで、人生を成功に導けるようになってもらえたら幸いです。