体脂肪率は全体重の脂肪の割合のこと
人間の身体を構成する成分は筋肉、骨格、内臓、体水分、体脂肪などにに大きく分けられます。体脂肪率とは身体、つまり全体重のうち体脂肪の占める割合のことです。
ここでは、体脂肪率はもちろん、BMIや体脂肪率の平均の見方、肥満の判断基準、運動、食事改善にわたり、体脂肪との付き合い方について述べていきます。
体脂肪率の計算方法
体重に占める体脂肪の割合、体脂肪率(%)の計算方法ですが、体脂肪率=(体脂肪の重量(kg)÷全体重(kg)×100で求めることができます。しかし、計算方法がわかっても、実際の体脂肪の重量がわからなければ、体脂肪率を求めることはできません。
体脂肪率を求めるためには別のアプローチが必要です。そのために必要になるのは体脂肪計や体組成計です。しかし、体脂肪計や体組成計は直接体脂肪の重量を測定して、体脂肪率を求めているわけではありません。
筋肉などの電解質を多く含む組織は電気を通しやすいですが、脂肪は電気を通さないという性質をもっています。その性質を利用し、体に微弱な電流を流して電気の流れやすさ(電気抵抗値)を測定することで体重に占める体脂肪の割合を推定し、体脂肪率を出しています。
体脂肪率は肥満の判断基準ではない
タイトルの通り、体脂肪率は肥満の判断基準ではありません。医学的な見地からも体脂肪率と健康障害のリスクとの間に明確な相関はみられていません。
体脂肪は多すぎると健康を害する内臓脂肪と、ついていてもほとんど問題にはならない皮下脂肪の2つに分類されます。
体脂肪計や体組成計で測定される体脂肪率には内臓脂肪だけではなく、皮下脂肪の量も反映され、両者は区別されていません。したがって、体脂肪率が高くても一概に健康障害のリスクが増すとは言えないのです。
肥満の基準になるのはBMIの数値
自分の体にどれくらいの体脂肪があるのかの指標として体脂肪率のほかに、BMIが用いられます。肥満の基準として一般的に使われているのはBMIの数値です。
BMIとはBody Index Massの略であり、国際的に通用する肥満を判定する指標として用いられています。歴史は古く、ベルギーの統計学者アドルフ・ケトレーがBMIを提唱しました。
体重(kg)を身長(cmをmに換算)の2乗で割ったものが、BMIです。同じ性別で同じような体重で身長をもつ人でも、個人の遺伝的素質、運動量や食習慣などによって体脂肪や筋肉の量が違うので完璧なものではないですが、計算式が簡単であり世界中で用いられています。
体脂肪率の平均と見方
体脂肪率は低ければ低いほどいいと思われている方も多いですが、そうではありません。体脂肪は人間が生きていくのには必要なエネルギーの貯蔵庫としての役割を果たしています。
他にも外部の温度の変化を遮断して体温を一定に保ち、暑さや寒さから守ったり、外部からの衝撃に対してクッションとして内臓を守ったり、人間の体の機能を正常に保つホルモンの分泌するなどの大切な役割をもっています。
このようになければ困るものですが、内臓脂肪のような形で体につき過ぎるのも健康に害を及ぼします。適切な体脂肪の量をコントロールするためにも日本の体脂肪率の平均を知っておきましょう。男女で違いがあり、その辺を含め以下、平均体脂肪率について解説していきます。
男性の平均体脂肪率
男性は女性に比べたら体脂肪率の標準範囲が低いですが、筋肉の割合と相関しているものだと考えられています。男性の場合は女性に比べたら平均的に筋肉量は多いです。筋肉量が多い分、相対的に平均的な体脂肪率は女性よりも低い傾向にあります。
そうなる理由はホルモンが関係しています。男性に多く分泌される男性ホルモン、テストステロンは筋肉を増強する働きをします。
したがって、テストステロンが多く分泌される男性は女性に比べて平均的に筋肉量が多く、その分体脂肪が減り、体脂肪率が平均的に低いのです。
男性も年齢が高くなるにつれて、体脂肪率の平均的な標準範囲が高くなってきますが、年齢が高くなるにつれてテストステロンの分泌が衰えると同時に基礎代謝も落ちるので、平均体脂肪率が上昇していくと考えられています。
女性の平均体脂肪率
女性は男性と比べたら、体脂肪率の標準範囲が高いですが、女性の場合は体脂肪率が低すぎることに男性以上に注意が必要です。
日本の女性は痩せることに脅迫概念があり、ダイエットに熱心です。体脂肪率も平均的に欧米の女性よりも低く、痩せすぎる傾向にあります。
体脂肪は卵巣から女性ホルモンの分泌を促進する働きがあります。低すぎる体脂肪率は無月経や低月経に繋がって妊娠しずらくなったり、ホルモンバランスを崩して免疫機能の低下を招き、体調不良や風邪をひきやすくなったりなど悪影響が大きいです。
女性に多く分泌される女性ホルモン、エストロゲンは皮下脂肪の貯蓄を促す働きがあります。平均的に男性よりも体脂肪率が高いだけではなく、女性にお尻やふとももなど下半身に脂肪がつく洋ナシ型体型が多いのもこのためです。
特に女性は妊娠や出産時のエネルギーを蓄える必要があり、平均体脂肪率が男性よりも高くなっています。特に骨盤周辺を妊娠や出産の負荷から保護するために子宮周りに皮下脂肪がつきやすくなっています。
エストロゲンは同時に脂肪の燃焼を促して代謝を活性化したり、内臓脂肪の蓄積を抑制する働きがあります。女性の方は閉経後の更年期以降はエストロゲン分泌が急減し、内臓脂肪がつきやすく男性のようなリンゴ型肥満(内臓脂肪型肥満)になりやすいので特に要注意です。
肥満の判断基準とBMIの関係
BMIは肥満の判定基準として世界共通で用いられているもので、体重と身長が分かれば、体重(kg)÷身長(m)の2乗で算出できる非常に簡易的なものです。日本肥満学会では、男女ともに統計的に最も病気になりにくいBMIの数値は22とされています。
BMIは体重と身長だけで算出するために、体についた筋肉と脂肪の割合、その脂肪が皮下脂肪なのか内臓脂肪なのかは判別できません。そこがBMIという指標の限界です。
ただし、BMIに体脂肪率などを組み合わせれると、BMIという指標の解釈の幅を大きく広げることが可能です。
例えば、BMIが低くても体脂肪率が高ければ決して痩せているわけではなくて、隠れ肥満と呼ばれる状態であり要注意であることも、BMIが高くても体脂肪率が低ければ、体重があっても筋肉量によるもので、アスリート体型であることが分かります。
肥満度はBMIで測れる
肥満度はBMIで測れます。日本肥満学会およびWHOがBMIの数値ごとの肥満度の判断基準を提示しています。日本肥満学会は肥満を脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態でBMIが25以上のものだと定義づけています。
ただし、日本肥満学会ではそのBMIが25以上の状態であっても医学的に減量を要する状態だと限らなことも言及しています。BMIの数値だけではなく、体脂肪率や内臓脂肪の量、その他臨床的な所見を総合的に見ていく必要があります。
肥満症とは
BMIが25以上で肥満とされた中で、医学的な減量もしくは治療が必要な状態のことを肥満症といいます。日本肥満学会が定義づける肥満症はBMIが25以上で以下の2つの条件のうちいずれかを満たす状態です。
①肥満に起因し関連して減量を要する健康障害がある。ただし、その健康障害は減量により改善する、あるいは進展が防止される障害であること
②その肥満が健康障害を伴いやすい高リスク肥満であること。ウエスト周囲長のスクリーニングにより内臓脂肪蓄積が疑われ、腹部CT検査によって確定診断された内臓脂肪型肥満をもつこと
体脂肪率・BMI・体重を比較すれば筋肉量が分かる
体脂肪率やBMIや体重と同様に、健康管理や運動、トレーニング、生活習慣改善や管理に欠かせない指標として筋肉量および筋肉率が上げられます。筋肉量および筋肉率は体重および体脂肪率が分かれば計算により割り出すことが可能です。
BMIと体重と筋肉率と体脂肪率を比較することで、自身の体型をより把握し理解することができます。身長において体重が著しく重いときは、BMIの数値が高く出て肥満度が高いと判断されあますが、その体重の増加は筋肉量によるものかもしれません。
筋肉と体脂肪以外にも骨や内臓、水分なども体重に加算される重量ですが、それらはトレーニングによって筋肉が増えるとか、ダイエットによって体脂肪が減るというような極端な変化はしません。
体脂肪率やBMIなどの様々な指標がでてきましたが、一つの指標をもって判断せずに、複数の指標で俯瞰的にみて、自身の肥満度や健康状態などを判断することが大切です。
日本人の平均BMI
厚生労働省の平成27年度の「国民健康・栄養調査」によれば、肥満者とされるBMIが25以上の割合は最近10年において男性では有意な変化がみられない一方で、女性では有意に減少していることが示されています。
女性の平均BMIは男性の平均よりも低いです。BMIが18.5未満のやせの割合は、女性のほうが男性よりも多いという傾向が著しく表れており、最近の傾向としては若い女性以上に70歳以上の高齢者の女性に顕著であることが言えます。
特に女性の場合はダイエットとか太り過ぎが良くないということが頭にあり、平均的に女性のほうがBMIは低いという傾向に表れていることが考えられます。
BMIが著しく低い、つまり著しい低体重は健康を害し、また重度の拒食症や摂食障害につながる危険があります。BMIを目安にしつつ、自身の体重や体脂肪率なども含めて適切な水準にあることを常日頃確認し健康に留意しましょう。
体脂肪をコントロールする方法
体脂肪をコントロールする方法はさまざまですが、一般的に取り組まれるのは食事改善や栄養管理など食事からのアプローチと、筋肉トレーニングや有酸素運動、無酸素運動といった運動からのアプローチです。
どちらか一方ではなく、両方をバランスよく行うことが望ましいとされています。有酸素運動、無酸素運動、食事改善の項目にわたり、以下解説していきます。
有酸素運動
有酸素運動とは長時間を負荷をかけて繰り返し行う運動のことを言います。筋肉を収縮するときに酸素を消費します。酸素を消費することで効率よく脂肪と糖をエネルギーに変えるので、脂肪燃焼効果が高いです。
有酸素運動の例としては、ジョギング、ウォーキング、サイクリング、水泳などが上げられ、規則正しく長時間にわたり行いやすいと言えます。
まず血液中の糖質が消費されますが、有酸素運動を続けて一定時間を経過した後に、体内に貯蔵された内臓脂肪や皮下脂肪などの体脂肪もエネルギーとして消費していくようになるとされています。
一定時間の目安は20分くらいです。ただし、今までの研究により、血液中に糖質が存在する運動開始直後から体脂肪が消費されていることが明らかになっています。毎日20分きっちり続けることがしんどいとしても、5分、10分の短い時間でも日々継続することが大切です。
無酸素運動を
無酸素運動は短い時間に大きな負荷をかけて強い力を発揮する有酸素運動よりも短時間かつ運動強度が非常に高い運動です。具体的には短距離走やウェイトリフティング、筋トレなどがそれに該当します。
筋肉を動かすエネルギーを酸素を使わず、直接糖から生み出します。乳酸を生成して疲れやすいので、有酸素運動は20分以上の長時間に対して、無酸素運動はせいぜい1~3分程度しか持続できません。
無酸素運動中には成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは代謝を高め、体脂肪を分解を促進する働きがあり、体脂肪をエネルギーに変えやすい環境を整えます。
また、成長ホルモンは細胞の分裂増殖ならびに再生を促す働きをするので、筋肉自体の増強につながり基礎代謝を上げます。
無酸素運動そのもの自体が体脂肪を消化する効果は薄くても、有酸素運動の前に無酸素運動を行って組み合わせることで、有酸素運動の脂肪燃焼効果が飛躍的に高まると言えます。
食事改善
体脂肪をコントロールするためには、運動に加えて、健康的な食習慣が必要不可欠です。3食バランスの良い食事を取ることを心がけましょう。
3食といえば、朝食、昼食、夕食ですが、どれかを抜いて2食にするというのはお勧めできません。例えば、1日の睡眠が8時間として、起床して活動している時間は16時間くらいです。3食食べるのであれば、食間の時間は5~6時間くらいになるはずです。
3食を2食にして、食間が空き過ぎることになり、過度な空腹により無駄な間食をとったり、過食をすることに繋がります。激しい間食や過食のたびに、血糖値の急上昇が起こり、脂肪を溜めこみやすくなり、脂肪を溜めこみやすい体質になります。
ただし、3食を取ることは大切ですが、食べ過ぎないように注意をしましょう。食べる量の目安として腹8分目を順守することを心がけましょう。
何も考えずに食事の総量を減らすだけでは筋肉量自体の減少も招きます。人間の体に必要な3大栄養素、炭水化物、脂質、たんぱく質に加え、野菜や果物、海藻、キノコなどでビタミンやミネラル、食物繊維などをバランスよく取りましょう。
特に食物繊維が豊富な副菜類から先に摂取することが大切です。食物繊維は不要な脂質などの排泄を助けるほか、食後の血糖値の上昇を抑える働きをします。
よく噛んでゆっくり食べることが大切です。スマホをいじりながらの「ながら食べ」は自分が食べたという実感に乏しく、食べる量が増えることに繋がりやすいです。
ながら食べをせず、ゆっくり噛んで食べることで満腹中枢が刺激され満腹感も得られ、過食が防止できます。また、宴会やパーティーといった多数が集まる食事の場ではアルコール類やそれに付随する揚げ物などのおつまみなども摂取しすぎないことにも注意が必要です。
体脂肪率が平均より高い=肥満とは限らない
体脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があり、健康にリスクがあるのは内臓脂肪です。体脂肪率が平均よりも高いとしても、それが皮下脂肪であれば、健康上のリスクはほとんどありません。
問題になるのは内臓脂肪です。体重が正常もしくはBMIが平均的もしくは低くて、スマートにみえても体脂肪率が高く内臓脂肪の多い隠れ肥満と呼ばれる状態の人は多くいます。
一見痩せてるようにみえても、内臓脂肪までが少ないとは限りません。内臓脂肪の蓄積は生活習慣病をはじめとしたさまざまな疾患の引き金となるので注意が必要です。
自身の体脂肪率やBMIなどの数値、内臓脂肪のレベルや筋肉量などに目を配り、有酸素運動に無酸素運動を取り入れるトレーニングや適切な食事を心がけ、各々のベストな体脂肪との付き合い方を模索し、健康維持に励みましょう。