切磋琢磨の意味とは?
ライバルや仲間と共に競い合いながら成長することをよく「切磋琢磨してがんばる」といいます。スピーチやスポーツなどでもお馴染みのフレーズですがその意味を正しく理解できているのでしょうか?
何気なく使用していると、思わず間違った使い方をしているかもしれません。そこで「切磋琢磨」の意味や由来を紐解き、類語、対義語をあげ、例文と共に使い方、そして英語表記も併せて解説していきます。是非参考にしてください。
「仲間どうし互いに励まし合って学徳をみがく」という意味
切磋琢磨の意味ですが、辞書を引くと「仲間どうし互いに励まし合って学徳をみがくこと」とあります。“仲間同士”というところがポイントで、「一人孤独に目標に突き進む」のではなく、周囲と競い合いながら、互いに指摘や批判を繰り返し、共に自身を向上させていく、という意味となるわけです。
構成す漢字を見ると、「切る」は骨や象牙などを切り出すこと、「磋(みが)く」はかんなやヤスリ等を使い滑らかにする様を指し、「琢(みが)く」はハンマーやノミで宝石など鉱物を整形する様子を、「磨(みが)く」は砂や石を使って磨き上げること示します。
よって4文字全てが「加工して良い状態にする」という意味合いの漢字が連なっている言葉なのです。また、「切磋」や「琢磨」のみで用いることもあります。
切磋琢磨の対義語・類語
言葉の意味をしっかりとわからずに使用すると思わぬ恥をかいてしまうことがあります。そこで切磋琢磨への理解を深め、より効果的な使い方ができるように類語と対義語をそれぞれいくつか紹介しましょう。
対義語
「磨き上げる」という言葉が由来の切磋琢磨の対義語となると、やはり「努力しない」「がんばらない」という意味を持つ言葉になります。ただ、使い方次第ではシンプルに切磋琢磨を使うよりワンランク上の活用法ができるでしょう。
対義語①酔生夢死
酔生夢死(すいせいむし)は、何もせずに、ただむなしく一生を過ごすこと、という意味です。切磋琢磨と同じく中国の古典を由来に持ちますが、自分を高めることもせず、生きている意義を見出すこともなく、ぼんやりと無自覚に一生を送ることを表します。
対義語②無為無策
無為無策(むいむさく)は、計画がたてられず、対策や方法が何もないため、ただ腕をこまねいている状態を指す言葉です。切磋琢磨と違い、なす術もなく、ただただ傍観していることや、なにもしないでぶらぶらしていることも意味します。
対義語③飽食終日
飽食終日(ほうしょくしゅうじつ)は一日中、食べてばかりで何もせずに、お腹一杯食べて日を過ごし、食べるだけでむなしく一日を終えてしまうことを意味する四字熟語です。勤勉に励む切磋琢磨とはまるで別の言葉と言えます。
対義語④(ライバルを)蹴落とす・出し抜く
この言葉は意味的には切磋琢磨に似たイメージがあるかもしれませんが、類語とはなりません。切磋琢磨が「自らを律し高める」というプラスの意味に対し、この言い回りだとどうしてもネガティブな表現となるからです。
類語
切磋琢磨を使おうと思っても、微妙にニュアンスが違うときなど、無理な使い方をして意味が通らなかったり、相手に不快な思いをさせてしまうことも少なくありません。その場合は違う類語を用いることで自分の意思を伝達することができます。
類語①砥礪切磋
切磋琢磨と共通する部分が多い類語に、砥礪切磋(しれいせっさ)が挙げられます。「能力を高めるために努力すること」という意味や、構成する漢字も「砥」「礪」「磋」には磨くという意味がありとても類似する四字熟語です。使い方もほぼ同様で、言い換えには最適な言葉です。
類語②精励恪勤
精励恪勤(せいれいかっきん)の意味は、「精励」は力を尽くして努めること、「恪勤」はまじめに一生懸命勤めることとなります。
簡潔に言えば「とてもがんばる」という意味になり、誰かと競い合うなどは含まれないことが切磋琢磨と異なる部分です。またこの類語であればその意味から目上の当たる人にも使うことができます。
類語③刻苦勉励
この刻苦勉励(こっくべんれい)という類語は、「非常に苦労して、仕事・勉学などにはげむこと」の点で切磋琢磨と同じ意味を持ちます。
切磋琢磨よりも、より過酷な修練を重ねるイメージの言葉です。しかし、どちらかといえば「独りで打ち込む」の方が近い雰囲気があるともいえます。
類語④勤倹力行
勤倹力行(きんけんりっこう)はあまりメジャーな言葉ではないでしょうが、これも切磋琢磨の類語一つといえます。意味は「まじめにがんばる」「勤勉に励みつつましやかに努力をする」などです。使い方としては個人の行いを指す言葉なので、自身にも相手にも使用できます。
類語⑤修行・鍛錬・研鑽
これらの類語は「自分を高める努力」を示す語群です。単に「がんばってきた」と伝えたいならこれらを使うとスマートかもしれません。
他にも「トレーニング」や「練習」「特訓」と言い換えても良いでしょう。しかし、使い方によっておかしな文になることもあり得るので適宜使い分ける必要もあります。
類語⑥競い合う・しのぎを削る・(互いに)高めあう
ライバルたちと共に成長しあってきたという意味を伝えたいときにはこのような類語で表すこともできます。こう表現することで、自分の努力だけではなく、仲間と共にがんばってきた、というニュアンスとなり、協調性なども加味した言葉使いにすることができます。
切磋琢磨の使い方・例文
よく耳にする四字熟語である「切磋琢磨」ですが、いざ使うとなると状況によって使い方が若干変わることもあるので、本当に使い方があっているのか、不安が過ることもままあります。
そこでいくつか使用例を記載します。シチュエーションに応じ使い分けやアレンジが必要な場合もありますのでご留意ください。
例文①
一つ目の例文は「仲間と互いに切磋琢磨することでクラブ活動の成績を上げていった」の様に、「励ましあう」といった意味の使い方です。勿論「しのぎを削る」でも構いません。しかし「良いライバルがいた」というイメージになるようにしましょう。
例文②
「新卒社員が切磋琢磨し出世レースを勝ち上ろうとしている」のような使用例では、まさに闘い、競い合う様を描写できます。相手、というよりも自分を高め、ライバルに勝つためにがんばっている状況でしょう。「精一杯の努力」をした、などの意味を持つ類語を当てれ分かりやすいでしょう。
例文③
「何があってもくじけることなく切磋琢磨を続ける」という使い方をするときは相手がどうこうではなく、別の類語で示すなら「鍛錬・修行」といった自分を磨き上げる様を表す表現です。目標に向かって打ち込んできたときに使います。
例文④
「大きな目標のため切磋琢磨できる環境に身を置く」と使えば、例えば良い学校に進むために仲のいい仲間に囲まれた居心地が良い学校を飛び出し、厳しい塾など自分を鍛えられる、周りと競い合える場所に行くことで自分のレベルを上げるようにする、という状況で使えます。
切磋琢磨を使う際の注意点
「切磋琢磨」は大変良い言葉で、素敵な意味を持っている言葉なのですが、時と場合によっては使うことをはばかられることもあります。どのようなときに切磋琢磨を使えないのか、間違った使い方をしない為にも言葉の意味などを再確認し、検証してみましょう。
1人では使えない
ライバルと争い競い合う場合に使う言葉なので、1人で黙々とストイックにがんばるときに使うのは、少しおかしな表現となります。相手がいてこその「切磋琢磨」です。そう考えると、「自分を高める」だけではなく「相手も高める」との意味も含まれる言葉であるといえるでしょう。
目上には使えない
目上の人に対して、この「切磋琢磨」という表現は控えるべきでしょう。何故ならば「お前とはライバルどうしだ」と言っているようなものだからです。目上の方を相手に、自分が「成長させてもらう」気持ちはあっても、決して「相手も成長させる」スタンスでアプローチすべきではありません。
実力が同等でなければ使えない
互いに競い合い高めあうのが切磋琢磨の意味なので、どちらかが一方的に成長する環境ならば切磋琢磨の意味からは逸脱するでしょう。メジャーリーガーと野球少年では切磋琢磨することはできない、ということです。
意味だけではなく漢字の間違いに注意
「せっさたくま」は通常は、切磋琢磨が使われますが、切“瑳”琢磨とも書きます。「磋」と「瑳」に部首の違いがありますが、読みも意味も当然同じです。因みにどちらも「みがく」が訓読みになります。
また「琢」の字は「豚」「啄」「涿」など似ている漢字も多く、あまり書かないため書き間違える可能性があるので注意しましょう。
切磋琢磨の由来・歴史
切磋琢磨の使い方や、類語・対義語を学ぶことで、より正確にこの切磋琢磨の意味を知ることができました。ここからはこの語の持つ歴史や、由来となった出来事について説明し、切磋琢磨の生まれた経緯を振り返ります。
由来
切磋琢磨という言葉の出典は、そのものズバリではなく、孔子が編纂したとされる中国最古の詩歌集「詩経」に掲載された1編「衛風(えいふう)・淇奥(きいく)」の「如切如磋 如琢如磨」が由来とされます。
切磋琢磨の元々の意味
衛の国の第十一代君主である武公を優れた細工品の技巧に喩えて「道徳・学問に勉め励んでやまない」人物だ、と褒め称える一文です。書き下し文は「切るが如く磋(みが)くが如く、琢(う)つが如く磨(と)ぐが如し」となります。
歴史
由来となった中国の古典にある原文そのものの意味だと、様々な素材を加工しみがく様子を表しますが、そこに真意として孔子は、「他者と競い合いながら努力を重ね自己研鑽に励むことで自分の能力や資質を高めること」を表現しています。
その孔子が込めた意図を解釈し、そこから意味を転用され「道徳や学問に務め、励み、精神・人格を磨き、向上する」という現在の様な使われ方がされるようになりました。
切磋琢磨の英語表記
切磋琢磨を無理矢理英語に直訳しても「Cutting sharpen beat polish」と意味不明な技術的な話になってしまい伝わりません。何を伝えたいのかしっかりと意味をおさえ、伝えたいニュアンスを意訳的にとらえなければ相手は理解できないでしょう。
下記に切磋琢磨の意味合いとして通用しそうな英語表現を掲載します。完全一致ではないかもしれませんが、伝いたい意図は相手に通じるものをセレクトしているので参考にしてください。
英語表記①encourage each other
encourage each otherは「互いに励み合う」と訳すことができます。ライバルと高めあうという意味で、切磋琢磨と一致している一文です。To work hard and encourage each other(互いに励み合い頑張る)のように使います。
英語表記②improve ourselves through competiton
Competitionは所謂「コンペ」を指し、「競争・競合」を、Improveは「刺激」を意味する英語です。お互い意見や案を出し合い、競争を通じてお互いを高めあう、自分たちや案を向上させることは、切磋琢磨のそれと符合します。
英語表記③tries to improve
Improveは改善という意味の英語で、Triesはtryの複数形になります。つまり「改善に挑戦」のような意味となり、切磋琢磨の「腕を磨く・成長する」などの部分にちょうどフィットする語句といえるでしょう。
使い方はHe tries to improve himself as a man.(男性として自分自身をより良くしようとしている)となります。
英語表記④We are rivals but good friends.
これはイングランドのプロフットボーラーが残したコメントです。内容としては「よきライバルであり、友でもある」という意味になります。切磋琢磨には「友達やライバルと競い合う」という意味があるのでピッタリのコメントと言えます。
切磋琢磨は「仲間とお互い成長できるようにがんばる」という意味
切磋琢磨の由来を振り返り、類語や例文を示しながらその語の持つ意味を解説してきました。中国の古典由来の言葉で、意味は「一人ではなくみんなで」「一生懸命がんばる」この二つが重なって「切磋琢磨」といえます。
英語表現は直接には難しく、間接的に上記の二つの意味を持たせ、かつ「フレンドシップ」に則った表現ができれはよりGoodでしょう。
「人と一緒に励ましあって力を身に付ける」という意味の「切磋琢磨」です。間違った使い方をしないように意味合いに気を付け、時には他の類語に置き換えながら正しい使い方を身に付けていきましょう。