送辞の言葉ってどう書くの?
年が明けると、卒業を意識する学生も多いです。卒業式で感動をよぶのが「送辞」と「答辞」です。なかでも、在校生から卒業生へ送る最後の言葉として、送る言葉が「送辞」になります。
部活での思い出や、お世話になった卒業生へ送る言葉であり、卒業式のなかでも在校生へ感謝とエールを送る感動的なシーンになるでしょう。しかし、実際に送辞を送ることができるのは、在校生を代表する1名のみです。
また、選ばれた在校生は年が明けてから頼まれることも多く、どのような言葉をつづればいいのか頭を悩ませる生徒も少なくありません。そこで今回は、送辞の書き方や流れ、使う時候の挨拶など例文をふまえながら書き方を解説していきます。
送辞とは
「送辞」とは、その名の通り人を送り出すための「送別の挨拶」です。多くは、在校生が卒業生へ送る挨拶として卒業式で用いられることが多く、送辞と聞くと卒業式をイメージするでしょう。
しかし実際には、「送辞」は遠くへ転勤になる同僚や先輩にも送り出す言葉として用いても問題のないものです。とはいえ、現代では卒業式の定番の流れともいえるので、「送辞」としてかしこまった形で社会人が使用する機会は少ないでしょう。
まずは、送辞とはどういったものなのか、どういった流れで本番を迎えるものなのかお話ししていきましょう。
学校などの卒業式で卒業する人に送る
先述したように、送辞は卒業をする人へ向けて、在校生が送る挨拶になります。学校の卒業式のプログラムのひとつとしても常套されるものであり、しきたりのひとつとしてとらえてもいいでしょう。
また、部活などの送別会で後輩が卒業する先輩へ向けて、部の集まりで「送辞」を送るケースもあります。基本的に在校生から卒業生に向けて、送る挨拶文であると認識しておきましょう。
先生に一度見てもらおう
送辞の書き方としては、まず先生に相談することから始めてください。学校には、歴代の送辞が保管してあり、参考になる例文がいくつもあるはずです。コピーをもらえたりするため、先生に一度頼んでみましょう。
また、伝統やしきたりがある学校もあるため、まずは今までどのような流れの送辞が送られてきたのか、ルールはあるのかなど先生に確認をしてから、構成を考えていきます。
送辞の大まかな書き方の流れとしては、「①過去の送辞を確認する②ルールなど決められた伝統など先生に確認③送辞を書く④先生にチェックしてもらう⑤清書をする」といったものになります。
送辞の完成後は、感情を込めながら声に出して時間内に読み込む練習をしていきます。文章では問題ないものの、声に出すと発音しにくいものや、言い間違えをしやすい言葉を見つけることも多いです。よりいい原稿に近づけることができるので、読む練習をしましょう。
送辞の内容構成
送辞は、必ずしも決まった書き方や構成があるわけではありません。しかし、一般的に次のような書き方で作成すると流れもスムーズになります。
「①時候の挨拶②お祝い・卒業生との思い出③卒業生への感謝と激励④日付・自分の名前」といった4つの構成になります。それぞれの構成の解説と例文をご紹介していきましょう。
季節の挨拶
卒業式での送辞は、校長先生や来賓の方々も来ている公な場です。そのため、挨拶といっても「こんにちは」などといったフランクな言葉は適切ではありません。
送辞の始まりも姿勢を正すような、「時候の挨拶」から始めると公に適した挨拶文を作りやすいでしょう。また、選ぶ時候の挨拶としてもその年の状況に合ったものを選ぶことができれば、よりベストな時候の挨拶といえます。
例文としては、「窓から見える雪も溶け始め、春の暖かさを感じる季節となりました」や「川沿いにある桜の蕾も膨らみ、春の訪れを感じる季節になりました」などがあります。
雪の多い地方であれば、雪の溶けの残りと春を感じる言葉を入れるのがおすすめです。また、卒業シーズンに桜と共に春の訪れを感じる地方であれば、桜に注目するなど自然の春を盛り込みましょう。
ただし、卒業式当日の天気を示唆するような内容は、臨機応変に対応することを求めらます。当日の天候によって挨拶文を変えなくてはいけないため、注意が必要です。
御祝・思い出
時候の挨拶のあとは、卒業生へのお祝いの言葉と思い出を書きます。お祝いの言葉は必須事項であり、なくてはいけません。
「卒業生の皆様、本日はご卒業おめでとうございます」「澄んだ陽ざしのなか、このようなよき日に、○○名の皆様がご卒業さえれること、心よりお祝い申し上げます」などといった一文を添えましょう。
お祝いの言葉を添えたあとは、卒業生との思い出の部分を盛り込みます。卒業生との思い出は、送辞のなかでもメインの部分であり、行事や部活、日常生活での思い出を送辞に込めます。
卒業生との思い出といっても、ひとりひとりとの思い出を語るのではなく、卒業生全体に対する思い出を言葉にしましょう。例文として、以下を参考にしてください。
「部活動や委員会活動、課外授業では時には厳しく、時に優しく指導してくださいました。特に体育際での皆様が見せてくれた団結力のあるダンスは決して忘れません」など、在校生から見て卒業生はどうだったのか含めるようにしましょう。
感謝と激励
卒業生との思い出をつづったあとは、卒業生への感謝と激励を述べます。まずは感謝を述べる例文として、以下を参考にしてください。
「卒業生の皆様、これまで本当にありがとうございました」「卒業生の皆様、これまで私たちをリードしてくださり、本当にありがとうございました」送辞のなかでは、シンプルではあるものの、ストレートに感謝を述べることも大切です。
また、「叱咤激励をしながら、私たちを導いてくださりありがとうございました」といったように、怒られたことも感謝しているということを伝えるのもおすすめです。
感謝の言葉を述べたあとは、送り出す卒業生のために、以下の例文のように激励の言葉をのつづりましょう。
「卒業生の皆様、4月からは高校生となります。新しい学校、新しい友人、新しい環境を迎え困難に直面することもあると思います。しかし、先輩たちの果敢に挑む姿を見てきた私たちは何も心配していません。力強く前に邁進されることを固く信じております」
卒業生は慣れ親しんだ校舎を出て、新しい世界へ向かいます。在校生としてできる限りのエールを送りましょう。
日付・自分の名前
感謝と激励の言葉を述べた後は、次の例文のように送辞の最後に送辞を送る卒業式の日付と、自分の学年・組を述べます。「令和〇年〇月〇日在校生代表〇年〇組〇〇〇〇」と、実際の卒業式では、凛々しく最後まではっきりと告げると送辞としても締まりが出るのでおすすめです。
卒業する先輩方への感謝を伝える言葉はたくさんあります。以下の記事も例文として参考にしてみてください。
送辞の書き方
ここからは、送辞の内容の書き方についてふれていきます。送辞の構成としては、先述したような流れが一般的ですが、内容に個性が出ても問題ありません。
しかし、卒業式という公の場であることと、在校生代表として全卒業生へ向けて送る言葉であるため、気をつけなくてはいけない点もあるので、合わせて解説していきます。
誰に向けて書くかを明確にする
送辞を書く前に、明確に意識しておきたいのが「誰に向けた内容であるか」です。送辞の芯になる部分であるため、誰に向けた送辞であるのかがブレた書き方だと、感謝や激励といったものが伝わりにくくなってしまいます。
卒業式には、卒業生はもちろん、その保護者や在校生・先生・来賓といった卒業生に関わる方々が出席しています。卒業生であれば、ここまでの学校生活を支えてくれた方々への感謝を述べるため、出席されている方全員に向けて答辞を作成することも多いです。
しかし、在校生が送る「送辞」は、あくまでお世話になった先輩への感謝と激励を述べた書き方にします。原稿の内容に「こうしなければいけない」という決まりはありませんが、誰へ向けた送辞なのかを明確に意識して作成しましょう。
自分らしい言葉で書く
送辞は卒業式という公の場で読む送る言葉であると、何度も述べました。しかし、いくら公で伝える送る言葉であるからといって、堅苦しい言葉ですべてまとめなくてはいけないかといえば、そうではありません。
公的文章のような堅苦しいだけの内容や言葉では、卒業生への感謝やエールは伝わらないでしょう。書き方としては、卒業生の後輩のひとりとして、学生らしく自分の言葉で伝えることが大切です。
主役はあくまで卒業生です。部活動や行事のエピソードなど、卒業生とふれあった時間を思い浮かべながら作成してください。
添削してもらい書き直す
「できた!」と思って、そのまま清書するのは大変危険です。自分で作成した文章は、とくに第三者として確認することが難しく、誤字脱字、表現がおかしい部分には気がつきにくいものです。また、表現として適さない部分があったとしても、修正することが難しいことはよくあります。
送辞が完成したら、まずは先生に見てもらい添削してもらいましょう。国語の先生であれば、文章の力も長けているため、良い点・悪い点を明確に指摘し、アドバイスをもらえるかも知れません。
歴代の送辞を述べた先輩と同じように、作成した送辞は学校の歴史として残るものでもあります。適切な言葉で卒業生を送り出せるよう、送辞を作成したら、確認の意味でも先生に指示をもらうようにしてください。
送辞で使える例文
ここからは、送辞で使える本文と締めの言葉の書き方として例文をご紹介していきます。送辞などといった公の場で話すような文章を考えたことがないという人も多く、引き受けたはいいものの、なかなか筆が進まないという人もいるでしょう。
これからご紹介する例文は、ここまで解説した構成を基に作成したものになります。先述した構成の流れでは、卒業生との思い出の部分にあたり、送辞のイメージがわきやすいものを例文としましたので、ぜひ参考にしてください。
本文の例文
①「卒業生の皆様、本日はご卒業おめでとうございます。先輩方には、私たち在校生が入学した当初より、時に厳しく時に優しく高校生という青春の時代を導いてくださいました。
とくに、毎年行われる○○高校の伝統行事である体育祭の応援合戦は、日々一緒に練習を重ね切磋琢磨することによって、学年やクラスという垣根を超えて一致団結できるのだと教えていただきました。
また、3年生だけで企画立案して行う文化祭も、その企画力・運営力そして実行力に圧巻されたともに憧れを抱き、先輩方の背中から学ばせていただいたものが数多くあります」
②「○○高校へ入学した2年前、卒業生の先輩方を目にしたのは部活動の紹介などのオリエンテーションです。生徒会活動・部活動の紹介など、まじめな話であるものの時に笑いを交えながら、私たちの緊張をほぐしてくれたのを今でも鮮明に覚えています。
年齢にしてたった1歳の差ではありますが、当時から先輩方の背中は本当に頼もしく、憧れの存在でした。また、体育祭や文化祭など、生徒自身で企画し実行する行事が多いわが校では、率先して学校の活動に参加し、熱心に取り組む姿にたくさんのことを教えていただきました。
③「2年前の今頃、まだランドセルから指定カバンになったばかりの私たちにとって、先輩方はとてもまぶしく見えました。急に大人びた制服と環境に戸惑いを感じながら、必死に環境に慣れようとしていた私たちに、優しく指導し導いてくれたのを今でも覚えています。
また部活動では、先輩後輩のあり方からチームワークやチャレンジ精神の大切さを、言葉で課ではなく姿勢で見せてくださった姿に、励まされ今日まできました。
締めの言葉の例文
①「○○高校で先輩方と学んだ2年間という日々は、私たちにとってかけがいのないものであり、先輩方は私たちの誇りです。
今先輩方は、希望と不安を抱え新たな道へ進むもうとしています。○○高校で過ごした3年間で培った経験を基に、希望を絶やさず邁進してください。私たち在校生も、先輩方から学んだことを後輩たちに伝えていきたいと思います。
最後になりましたが、今まで数々のことを指導いただきありがとうございました。卒業生の皆様のご活躍をお祈りし、送辞としたします。令和〇年〇月〇日在校生代表○○○○」
②「卒業生の皆さんには、感謝してもしきれません。精神的にも頼りにしていた先輩方が卒業されると思うと不安な気持ちもありますが、これまで教えていただいたことを胸に、後輩たちにつなげていきたいと思います。
卒業生の皆様は、これから新しい道へ進みます。大きな期待と不安を胸に抱えていることでしょう。この○○中学校で培った経験をもとに、体に気をつけて頑張ってください。在校生一同、心より応援しております。令和〇年〇月〇日在校生代表○○○○」
③「先輩方には、部活動や行事などで大変お世話になりました。これからは私たち在校生が、先輩方のように後輩を導いていく番です。先輩方のたくましい背中を手本とし、○○高校の伝統を受け継いでいきたいと思います。
この春から新しい進路へ進む卒業生の皆様の多くは、新しい環境への不安を期待を胸に抱えている方も多いと思います。しかし、私たち在校生が知っている先輩方であれば、力強く明日へ進んでいくと信じています。
卒業生の皆様の新しい道が、明るい光で照らされますよう在校生一同心よりお祈りし、送辞の言葉とさせていただきます。令和〇年〇月〇日在校生代表○○○○」
送辞で使える時候の挨拶
実は、送辞の印象は冒頭の時候の挨拶で決まるといっても過言ではありません。在校生代表にとって、卒業式という大舞台かつ先輩方が主役という状況では、絶対に失敗できないと緊張してしまう方も多いです。
失敗しないためのポイントの一つとして、時候の挨拶の書き方を情景がイメージできるような素敵なものにするというのがあります。
時候の挨拶が美しく、それでいて卒業を感じさせるような言葉をつむぐことができれば、聞いている卒業生や保護者の意識を傾け、印象に残る感動的な送辞に1歩近づくでしょう。
そこで、先述した時候の挨拶よりも、季節を感じることができる送辞の挨拶を寒さが残る情景と桜をイメージさせる情景を基にご紹介します。
寒さが残る頃の挨拶
雪が降る地方の卒業式を行う3月は、まだ雪が降り雪解けが始まったばかりということも多くあります。ときには卒業式当日に大雪が降るということもあるくらい、卒業式と雪は切っても切り離せないものです。
雪の降らない地域には向かない時候の挨拶にはなりますが、雪国と言われる地方であれば、以下の例文のような時候の挨拶文を参考にしましょう。
①「学校から見える山に残る雪が、少しずる溶け冬の終わりを告げています。おぼつかなかった足元もしっかりと踏みしめることができ、春の訪れを感じる季節になりました」
②「校庭の雪もとけ、木々には新しい芽が伊吹きはじめました。時折吹く風が今までと違ってあたたかく、新しい春の訪れを告げています」
雪が降る地方では、「雪」をキーワードに学校から見える景色の違いや、春を感じさせ自然についてふれると、美しい情景が浮かぶはずです。
雪は卒業式の時期には残らない、けれどまだまだ寒さが身に染みるという地方で時候の挨拶の書き方は、次のような例文を参考にしていきましょう。寒さが厳しい冬から、春になり気温や風邪が変わったという情景を表現すると、季節の移ろいが伝わりやすいでしょう。
①「厳しい冬の寒さが和らぎ、木々には新しい芽が春はまだかとゆっくりと息吹いています。風もあたたかく、春の訪れを感じられるようになりました」
②「朝はまだまだ冷え込みますが、高く澄んだ空からいつの間にか暖かな陽ざしを感じられる季節になりました」
桜関連の挨拶
卒業式のシーズンに、桜の季節を迎える地方では、時候の挨拶の書き方として例文のように「桜」をキーワードに入れる方法もあります。桜は多くの人が旅立ちや出会いを連想させるものであり、卒業式にはぴったりといえるでしょう。
①「いつの間にか寒さが和らぎ、暖かさに喜びを感じる季節が訪れました。桜の花が咲き始め、校庭が鮮やかに彩られています」
②「うららかな春の日差しを感じることも多くなり、学校にある桜の花は今か今かと花開くのを待ちわびているように、蕾がふくらんでいます」
日本を代表する桜は、季節を表現した時候の挨拶にはうってつけの情景です。また咲いて散ってしまうという点からも、卒業というセンチメンタルな部分を刺激してくれるはずです。
また、学校から見える景色や校庭に桜の木があれば、卒業生としても桜と耳にするだけで学校の情景を思い浮かべやすいため、進んで取り入れていきましょう。
時候の挨拶には、ビジネスシーンで使われている挨拶文も例文として役に立ちます。以下の記事では卒業シーンで使用できる時候の挨拶も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
送辞の挨拶はしっかり準備しよう!
ここまで、学校の卒業式で送る「送辞」の構成や書き方を例文と共に解説してきました。送辞は、時候の挨拶で始まり思い出と感謝を伝え、卒業生へのエールで終わります。
卒業生にとって卒業式は学校で過ごす最後の時間です。卒業までのさまざまな思い出に思いをはせながら卒業式を迎えています。在校生としても、卒業生との思い出を振り返り、感謝を述べる最後の機会です。
卒業生との最後の思い出が良き日となるよう、素敵な時候の挨拶から始まる思いのこもった送辞を送るように、この記事を参考に作成してください。