「朱書き」の意味
「朱書き」と見て、何を表しているのかすぐに理解できない人も少なくありません。言葉としては、あまり一般には使う機会はない朱書きですが、実は、生活にかなり密接した存在で、誰しも何度となく使用しているものです。
朱書きには2種類あり、間違った使い方をしてしまうと意図が伝わらなかったり、悪い印象を与えてしまうこともあるため注意が必要です。そこで、この「朱書き」について読み方から正しい書き方を、例を交えながら解説していきます。
「朱書き」とは
朱書きの一つ目の使用例は、年賀状の「年賀」や、「速達」「折曲厳禁」など、郵便物などの封書へのマーク付けです。郵送しない場合でも用いることがあり、最たる例では履歴書などがあたります。封筒の重要性を示すために行います。
もう一つの朱書きの使い方は、書類の書き損じを訂正や、添削する際にも使われます。何かの契約普段なにげなく行っている行為も実は朱書きだったということもあるでしょう。いずれも赤いペンで行い、他の文字に埋没することを防ぎます。
目立たせて注目されるように促す
「朱書き」とは、完結にまとめると「扱う封筒の重要性」を配達員及び、受取人に知らせるための印のことです。目立たせて注目してもらうことが目的であり、「開封しなくても一目で中身が相手に伝わるようにする」ために行います。
書類の訂正に使う「朱書き」も同じく、同じ色では紛れてしまうので、訂正箇所がわかりやすくなるようにあえて違う色で強調させます。基本的に黒のペンで書かれることが多いので、より目につくように赤色でマーキングします。
「朱書き」の読み方
封書の重要性を相手に示す目的で封筒に付ける「朱書き」ですが、送り仮名を付けずに「朱書」という書き方をする場合もあります。それぞれの読み方の違いや、朱書きの他の言葉への言い換えについても併せて解説していき、「朱書き」の語源についても紐解いていきましょう。
読み方:しゅがき・しゅしょ
朱書きの読み方は主に「しゅがき」とされます。送り仮名を付けずに「朱書」と書いた場合には「しゅしょ」と読ませることもありますが、基本的には同じ読み方をします。実際には赤以外のものもありますが、それらも総じて「朱書き」であり、色によっての呼び分けはありません。
「朱書き」の語源
昔の筆記用具では筆に墨汁か、この赤い液体「朱液」が使われていました。身近な例だと、書道教室などで講師が赤い文字などを書かれたのを目にする機会もあるでしょう。かつては、朱液を用いることで、黒の墨汁より目立たせていました。
厳密には朱と赤は別の色ですが、当時は赤のことを「朱」と呼んでいたため、赤を使うようになった現在でも「“朱”書き」と言われています。因みに「朱」の字には“あか”の読み方もあるので間違いであるとも言い切れません。
「朱書き」の他の言い方
朱書きは「添え書き」或いは「添書」とも言い換えられ読み方はそれぞれ“そえがき”“てんしょ”です。「添え字」「添え筆」などと呼ばれることもあります。これは所謂「追伸」的な意味にも使われることもあるので気を付けましょう。
また封筒にマーキングする朱書きは、特に「外脇付け」とも呼ばれることもあります。似た語に「脇付け」というものがあるのですが、それは全く別物なので混合しないように注意してください。読み方は「そとわきづけ」となります。
「朱書き」の種類
朱書きの意味と読み方について説明してきましたが、ここからは朱書きそのものの使い方や書き方を解説します。まず、朱書きは大きく分けると、書類の間違いを訂正する場合と、封筒に重要性を示すマークを付けるときの2種類に分類されます。
そして、封筒に付ける印は、その意図を伝えたい相手や書類の内容によって書き方や、書く文字が変わってきます。いずれの使い方も読み方は変わりませんが、用法は違いがあるので、それらについて一つひとつ例を挙げて説明していきます。
封筒の内容の明示
「○○在中」や、宛先人以外開封してはいけない「親展」などがあります。「在中」は封筒の中身を見なくとも内容がわかり、重要な書類であることを示唆します。「(書類の内容)在中」の形で書き、例とするなら「履歴書在中」がポピュラーでしょう。
「親展」は受取人に対して、届いた封書をどのように扱うかを示します。他にも「重要」や、開封を急いでもらいたい時などの「至急」があり、郵送先での封書の処理が円滑に進むように朱書きをしてアピールするのです。
封筒の取扱いの指示
「速達」「折曲厳禁」なども朱書きの一つです。これらは配達員へのメッセージとして封筒に示します。郵便局員が大事な書類を手荒に扱うかもしれません。注意書きとして朱書きを入れることによってそれを避けることが目的です。
普通ハガキもルールにのっとり「年賀」と朱書きすれば年賀状に使えますが、これも朱書きの効果です。年賀ハガキも朱書きがデフォルトで使われているので、「年賀」と書くことで同等の扱いとなり、元日以降の配達となります。
間違いの訂正
書類を訂正する時は、書類捏造と取られないように修正液を使わず、「あえて見えるように」線を引いて訂正をします。「朱を入れる」「朱入れ」とも呼ばれ、それぞれの読み方は「しゅをいれる」「あかいれ」となります。
基本的に2本線を上から引いて文字を消しますが、削除ではなくあくまで「訂正」なので、線を引いて消すだけではなく、その上に訂正印を押し、正しい文字も記入します。このときに同じ色を使うと紛れて分かりにくいので、違う色を使いましょう。
「朱書き」の封筒の書き方
封筒に朱書きをするときの注意点ですが、筆記用具は基本的には何を使っても問題はありません。しかし、全体のバランスを見る必要はあります。例とするなら宛先などは細いボールペンなのに、朱書きが太いマジックでは明らかに浮いてしまいます。
そのような形になると、マナー違反になってしまうので少し問題です。この場合にはどのように対処すればいいのか、ケースバイケースではありますが、無難に乗り切るコツと、正しい朱書きの書き方について説明します。
①赤いボールペンで書く
筆記具についてはとくに決まりはありません。しかし、注意点として宛名より目立ちすぎてもいけませんが、目立たなさすぎても朱書きの意味がありません。宛名などはボールペンで書くことが多いので、同じボールペンを使うのがベターでしょう。
サインペンなどを使う場合はにじみやすい水性のものは避け、油性のマジックを使い裏写りしないように注意しましょう。また、文字がつぶれないようにも気を付けてください。目立たせるのが目的ですが、目立ちすぎもNGとなります。
②封筒の位置は左下
朱書きを記入する位置は、宛名と同じ面に書き、書く位置は縦書きなら左下に、横書きなら右下に書きとされます。または縦でも横でも「左下」とする、ともされています。基本的に、宛名よりも下に書くイメージを持てば問題ないでしょう。
書き方は、向きが縦書きなら宛名は、右上から左下に向かい、横書きは右上から左下に向かうので、その末尾に入れる感じです。文字は宛名と同じ向きに揃え、宛名を縦書きに書いた場合には縦向きに、横書きならば横書きで朱書きを入れます
③定規を使って四角形に囲む
朱書きは文字だけではなく、四角い枠で囲んで完成です。フリーハンドでは曲がってしまったりきれいな線にならないこともあります。雑な線では誤解を与えたり、心象を悪くする恐れがあるので、面倒でも定規を使い、まっすぐ線を引きましょう。
履歴書などの応募書類を送る際は、囲いの四角が曲がっていたり、線が斜めだったり、端がちゃんとついてないかった場合、マイナス評価につながるので最新の注意が必要です。形が「台形」や「平行四辺形」にならないようにも気を付けましょう。
「朱書き」の訂正例
書類などを制作しているときに、書き間違いがあった場合は、修正液を使わずで線を引いて文字を消し、訂正を入れる方法をとらないといけないこともあります。その書き方について解説していきますが、会社などによっては独自のルールを設けている可能性もあるので留意ください。
訂正部分に赤色二重線
重要な書類の場合、修正液を使わず修正前の状態が後からわかるように定規を使って二重線を引くなどして修正します。この方法を「見え消し」と呼びます。修正したい部分に、赤い色の二重線を引きその上に訂正印を押し、近くに修正後の文字を記入します。
訂正印がない場合は通常の印鑑も問題ありません。二重線は赤ではなく、黒で引いた場合は削除の意味を示すことになります。文字は一部を訂正・修正・削除できますが、金額の場合は全体に対し修正を行う必要があります。
文字の訂正をする場合
文字を書き間違えた場合に内容を修正する時の朱書きの書き方ですが、例えば「固定電話」を「携帯電話」に書き換えるとします。このとき「固定電話」を全部消す必要はなく、訂正する場所だけ書き換えれば問題ありません。
この場合なら、書き換えが必要な「固定」の部分を赤色の線で消して、すぐ近くに「携帯」と訂正後の文字を書き添えます。このときに書類が縦書きのものなら右横に、横向きの文書ならば上の方に訂正した語句を記入します。
脱字の修正
朱書きには誤字の訂正だけではなく、抜けた文字を補修する役割もあります。この場合は文字を線で消さずに、縦書きの場合には右側、横書きであるなら上のスペースに抜けた文字を朱書きにて欠けた文字を記入することで補わせるのです。
先の例で言うなら「携帯電話」の「帯」が抜けて「携電話」となったときには、この部分を消すのではなく、“携”と“電話”の間くらいに「帯」の字を挿入させます。この際に、「かぎかっこ」などを付けて文字を目立たせましょう。
数字の訂正をする場合
数字に対して朱書きをするとき時の書き方ですが、訂正する部分に該当する一部の文字、一文字単位で朱書きが行えた文字の時と違い、数字を訂正するときは、訂正したい数字全体を消して書き換えなければいけません。
例えば、10000を20000にする場合、“0000”は同じですが、1だけ消して、2に書き換えればいいわけではないと言うことです。訂正は赤色で行うのが一般的ですが、「赤字」を連想されるので数字の場合は避けられる傾向にあります。
「朱書き」の注意点
朱書きの書き方の基本は抑えましたが、それだけではまだ十分ではありません。社会人として、朱書きの使い方や、言い換えの方法、読み方を知るのも重要ですが、そもそも何のために朱書きをするのか、に立ち返りましょう。
ここからは朱書きを行う上での気を付けたいポイントについて解説します。これらをしっかりと把握しておかないと、社会人として重大なマナー違反を犯してしまうかもしれません。そうならないためにもきちんと確認をしてください。
①人名を「朱書き」で書かない
相手への心遣いとして、人名を朱書きすることは避けたほうが良いと言われます。「名前を赤い字で書かれると寿命が縮まる」という言い伝えや、「血」や「死」を連想されたりなどあまり良いイメージがありません。
他にも戦時中の「赤紙」や死刑執行のサイン、罪人の名前や、武士が果し状を書く時や、絶縁状や血判状宛先としても赤い文字が使用されたと言われます。墓石に存命中に名前を入れる「朱入れ」も墓をイメージされるなどと理由は多くあります。
②「朱書き」はスタンプも可
朱書きは必ずしも手書きにしなければならないわけではありません。自筆に自信が無いのならハンコやスタンプでもちゃんとしたものならば使用することができるので、利用するのも一つの手段です。注意点は欠けやズレ、インクの付ムラがないようにするなど、普通にハンコを押すときに準じます。
③「朱書き」は“赤”でなければいけない?
封筒に行う添え書きの色は、実は赤色でなくてはいけないわけではありません。目立つように「赤色(朱色)」で記すことが多く、故に「朱書き」と呼ばれるわけですが、「黒」や「青」を使用してもかまいません。理由は目的でが「赤で書くこと」ではなく、目立たせることだからです。
「朱書き」は見た時に分かりやすくしよう!
朱書きの由来や読み方、書き方、そして注意点についてここまで解説してきました。朱書きには2種類あり、封筒の取り扱いを促すものと、文書の訂正に用いられるものです。いずれも書類に対し行うもので、目的は目立たせることが第一です。
読み方は「しゅがき」ですが、送り仮名が無い場合は「しゅしょ」の読み方をされる場合もあります。他の言い換えに「添え書き」や、封筒に書くものは「外脇付け」が、訂正の場合には「赤入れ」などがあります。
朱書きは相手のためにするもの
封筒の内容を伝える場合も、訂正に使うときも、それを明確にしなければいけません。基本的に赤で記入しますが、人名と数字に関しては避けるようにするのが一般的です。そのため赤以外の「朱書き」も存在しますが、すべて「朱書き」で統一されています。
何故朱書きをするのか、それは書類が渡っていく「相手のために」するものだ、と言うことです。そのことを念頭に置けば、自ずと適切な使用法が身について行くでしょう。そしてそれは社会人としてのマナーの一つであるとも言えます。