「オデッセイ」の意味
あなたは「オデッセイ」という言葉を、聞いたことはありますか?なんとなく、聞いたことがあるような気がするといった人が少なくないのではないでしょうか?
それに「オデッセイ」は、なんとなくカッコいいものに名前がついているような気がしませんか?「そういえば車に、「オデッセイ」って名前のものがあった」とか「映画に「オデッセイ」っていうのがあった」と思いつく人はいるでしょう。
ではなぜ、車や映画に「オデッセイ」という名前がついたのでしょうか?それを知るには「オデッセイ」という言葉が持つ意味や語源が重要になってきます。
意味①長い冒険
「オデッセイ」には、主に2つの意味があります。「オデッセイ」の1つ目の意味は、「長い冒険」というものです。「オデッセイ」は英語で「odyssey」と書きます。これはギリシャ語から派生した言葉で、そもそもは「オデュッセイア」と言いました。この「オデュッセイア」は古代ギリシャの長編叙事詩です。
意味②放浪の旅
「オデッセイ」にはもう1つ、「放浪の旅」といった意味もあります。古代ギリシャの長編叙事詩「オデュッセイア」は、古代ギリシャの詩人ホーメロスによる遠征神話として伝承されてきました。
「オデュッセイア」を語源として、詩の経緯や内容から、長く、果てしない冒険や旅といった意味が、「オデッセイ」についたと考えられています。
そうした語源と意味から、宇宙で長く放浪するような映画や、長距離を快適に走ることを謳う車などに「オデッセイ」の名前がつけられるにいたったのでしょう。
「オデッセイ」の語源
「オデッセイ」の語源は、古代ギリシャ文学最古期にあたる時代に生まれた長編叙事詩「オデュッセイア」から来ています。
「オデッセイ」の語源となった「オデュッセイア」は、その前に記された「イーリアス」の続編にあたります。「オデッセイ」の語源となる「オデュッセイア」は、紀元前8世紀頃に吟遊詩人が吟唱する作品でした。この作者はホーメロスと言われています。
古代ギリシャの人物の物語
「オデッセイ」の語源となった「オデュッセイア」は「ムーサの祈り」という句から始まります。
「あの男のことを私に語ってください。ムーサよ。数多くの苦難を経験した「あの男」を」という言葉から始まります。
「あの男」とはオデュッセウスのことを指します。「オデッセイ」の語源となった「オデュッセイア」は、オデュッセウスが経験した苦難の物語が語られていきます。ムーサが朗読者であり、ムーサが語り部であるという構図です。
「オデッセイ」の語源となった「オデュッセイア」は壮大な物語です。語源から考えても自慢の製品ができた時に、企業が名づけたいと考えるような言葉だと言えるでしょう。
「2001年宇宙の旅」の原題も「オデッセイ」だった
「オデュッセイア」を語源とした「オデッセイ」は、さまざまなものの名前につけられています。そのどれもが偉大な語源と意味に遜色ない、素晴らしい作品だったり製品だったりします。
ところで「オデッセイ」という言葉に漠然と、宇宙をイメージする人も少なくないのではないでしょうか?「壮大な旅」という意味と「宇宙」は相性のいい言葉と言えるのではないでしょうか?
あなたはアーサー・C・クラークが著したSF小説「2001年宇宙の旅」を知っていますか?名前だけは聞いたことがある人も多いことでしょう。
この「2001年宇宙の旅」の英語の原題は「2001:A Space Odyssey」と「オデッセイ」の名前がついています。壮大な物語に相応しい語源の言葉をタイトルにつけたと言えるのではないでしょうか?
「2001年宇宙の旅」は映画化もされました。映画の全部のストーリーは知らなくても、最後にボーマン船長が人類を超越した存在、スターチャイルドに進化を遂げるラストシーンは、記憶にある人も少なくないのではないでしょうか?
この映画は1968年に公開されました。古いSF映画と思えないほどの完成度で、今もファンが多い映画の1つです。興味深い点は、この作品は映画が先に作られ、小説はのちに発表されたいうところです。
その結果、映画と小説はストーリーが少し異なっています。邦訳は1968年で、タイトルは「宇宙のオデッセイ2001」でした。
当初は「オデッセイ」という言葉がタイトルに入っていたということになります。1977年に「2001年宇宙の旅」とされ、ハヤカワSF文庫から刊行されました。
「オデッセイ」車に込められた意味
日本人であれば、特に車好きでなくても「オデッセイ」という車があることを知っている人が多いのではないでしょうか?「オデッセイ」はホンダから出ているミニバンの人気車種です。
「オデッセイ」は1994年に生産が開始され、5代のフルモデルチェンジを経て、今もなお人気な車の1つになっています。国内新車販売台数では、累計で1,050,000台に上っている車です。
ホンダはなぜ、この車に「オデッセイ」と名付けたのでしょうか?その意味と開発の歴史を見ていきましょう。
ドキドキする冒険旅行を楽しむように
「オデッセイ」は「オデュッセイア」を語源として、「長い冒険旅行」の意味があります。この意味から「長いドライブでも、家族や仲間が皆一緒に、ワクワクドキドキの冒険旅行が楽しめるように」という願いが込められ、「ホンダ・オデッセイ」は誕生しました。ホンダの売り上げも長い期間支えてくれている人気のミニバンとして不動の地位を誇っています。
「ホンダ・オデッセイ」は1994年から生産が開始されました。「ホンダ・オデッセイ」以前、ホンダには上級ミニバンやRV車がありませんでした。
そこでホンダは「ホンダ・アコード」の生産ラインと車台を活用したミニバンの開発に取り掛かりました。「ホンダ・オデッセイ」は「ホンダ・アコード」の車台が流用されました。
ミニバンはスライドドアが人気ですが、「ホンダ・オデッセイ」ではスライドドアを断念しなければなりませんでした。
しかしそこがかえって、他のファミリー向けの車種と一線を画した車になりました。ファミリー向けの車でありながら、スポーティな形状とドライブ感を生み出すと、人気の源になったと言われています。
「オデッセイ」映画の意味
「2001年宇宙の旅」以降、「オデッセイ」は宇宙をイメージしやすい言葉となっています。「オデッセイ」の名がついた映画が他にもあります。
火星を舞台にしており、その名もずばり「オデッセイ」で、巷では実話をもとに作られた映画なのではないかと話題になっています。
この「オデッセイ」という映画は、実話をもとにして作られたものなのでしょうか?映画「オデッセイ」の舞台は火星です。人類は火星に降り立ったのでしょうか?
火星でサバイバル生活をするSF作品
もしも宇宙に1人だけ取り残されたら、どうやって生き抜いていけばいいのでしょうか?映画「オデッセイ」は、主人公が火星に取り残されるお話です。誰もいない火星で主人公はさまざまな方法を使って生き延びていきます。
はらはらする展開と、火星のすごさがわかる映画です。まずストーリーを見ていきましょう。有人火星探査ミッション・アレス3が、火星の荒れ狂う嵐によって計画が中止となります。
ミッションには6人が参加しており、撤退を余儀なくされますが、その1人のマーク・ワトニーが火星の暴風に吹き飛ばされ、死亡したと判断されてしまいます。しかし、ワトニーは奇跡的に生きていました。たった1人火星に取り残されます。
地球と火星の交信手段はありません。さらに、次に火星に有人探査機が送り込まれるのは4年後です。火星では食料も水も、絶望的に足りません。あまりに過酷な火星の状況を直視しながら、ワトニーは生き延びることをあきらめません。
やがて、火星でワトニーが生きていることを知ったNASAは、危険を承知で前代未聞の救出プランを実行します。絶体絶命の危機に陥ったワトニーの運命を「オデッセイ」というのなら、単なる冒険は「オデッセイ」と呼ぶわけにはいかないようにも見えます。
この「オデッセイ」ですが、実話なのではないかと言われているのを知っていますか?実話だとしたら、火星で生き延びて帰還した主人公のモデルはもっと有名になっていいはずでしょう。
映画「オデッセイ」は実話なのか?
結論から言うと「オデッセイ」は実話ではありません。実際、人類はまだ火星に降り立ってはいません。火星には2018年にインサイトという火星探査機が打ち上げられています。
「オデッセイ」の原作は「火星の人」というアメリカのネット小説です。著者が2009年から自分のホームページで「火星の人」と題して連載をしていました。読者から「まとめて読みたい」という要望が出て、2011年にkindleで出版がされました。
最低価格の99セントで売り出しました。すると発売3カ月で3万5000ダウンロードを記録し、SF部門の売り上げトップ5になりました。
日本でも翻訳され、Amazonkindleで1166円で読むことができます。99セントとまではいきませんが、文庫なら中古で安く購入することができるでしょう。
映画「オデッセイ」の原題と邦題
「火星の人」の原題は「The Martian」です。これは「火星」「火星の」「火星の住民」といった意味なので、「火星人」といった意味になります。もともと火星に取り残されて、火星人として暮らしていった結果、脱出できた男のストーリーです。
したがってタイトルが「火星人」でも意味の上では問題ないでしょう。日本語版「火星の人」は俗に知られる頭でっかちで8本足のエイリアンと間違えないように、つけた邦題なのかもしれません。
映画「オデッセイ」も原題は「The Martian」です。もとになったSF小説をそのまま流用した結果でしょう。小説が大人気で、完結する前に映画化交渉が進んだという経緯もあります。
人気にあやかるためにも、映画のタイトルを変更する意味を映画会社は感じなかったでしょう。邦題を「オデッセイ」にした理由は、パンフレットに掲載されています。1つは頻繁に使用されているデヴィッド・ボウイの「スターマン」に対する思いです。
もう1つは宇宙において長期にわたる冒険と帰還を描く映画として、SF映画の名作である「2001年宇宙の旅」の原題の「A Spase Odyssey」をリスペクトしたものです。こうした意味や背景から、配給会社は映画のタイトルを「オデッセイ」として興行しました。
「オデッセイ」を使用したもの
ギリシャの長編叙事詩である「オデッセイ」の名称は、小説、映画、車にとどまらず、さまざまな世界で使われているのをご存じですか?
「オデッセイ」の語源の素晴らしさから、企画開発した自分たちの商品に「オデッセイ」という名をつける企業は他にも多いと言えるでしょう。それでは他にどんな製品に「オデッセイ」という名前が付けられているのでしょうか?
スーパーマリオオデッセイ
スーパーマリオと言えば、ファミコン時代からゲーム好きに長いこと愛されてきたキャラクターです。スーパーマリオにはさまざまな種類があります。
その中でも、ニンテンドーSwitch用に開発され、2017年10月に発売された「スーパーマリオオデッセイ」が、とても人気です。スーパーマリオの開発者はどういった意味で「オデッセイ」という名前を付けたのでしょうか?
「スーパーマリオオデッセイ」は、移植版、リメイク版を覗くと、2002年に発売されたニンテンドーゲームキューブ用ソフト「スーパーマリオサンシャイン」以来、15年ぶりの新作となりました。
スーパーマリオの新作を待ち望んでいたファンたちにとって、スーパーマリオが「オデッセイ」の意味通りに大冒険をするこのゲームを楽しんでいるのではないでしょうか?
ゲーム機・オデッセイ
ゲームの世界では「オデッセイ」という言葉は特別な意味を持ちます。そもそも家庭にゲーム機がある時代というのは、最近の話です。かつて「オデッセイ」という名のゲーム機があったことをご存じですか?
ドイツ生まれのユダヤ人ラルフ・ベアが開発し、マグナボックス社から1972年9月に発売された、世界初の家庭用ゲーム機の名前が「オデッセイ」です。コントローラーはジョイスティックではなく、パドルコントローラーが使われていました。
現在のビデオゲームについているようなボタン類はありません。残念ながらゲーム機「オデッセイ」は日本では発売されませんでした。
次世代機の「オデッセイ2」が1982年9月に発売されました。当時の価格は49800円でした。日本独自のソフトが発売されることはありませんでした。この「オデッセイ2」はファミコン登場以前の高級輸入ゲーム機の意味に位置付けられています。
オデッセイ・ゴルフのパター
ゴルフに詳しい人なら、キャロウェイゴルフ社のパターが「オデッセイ」という名称がつけられていることを知っているでしょう。ゴルフのパターはグリーンでボールをカップに入れる時に、なくてはならないものです。
「オデッセイ」のパターは、さまざまな形状のものが売られています。「オデッセイ」という言葉が意味する通り、壮大なゴルフコースでラウンドを回る上で、とても重要なものです。
キャロウェイゴルフの「オデッセイ」を愛用している日本人プロゴルフプレイヤーには石川遼や上田桃子らがいます。
「オデッセイ」の名がつくドラマ
「オデッセイ」という言葉は、宇宙を舞台にしたドラマに好んで使われてきました。2002年7月からアメリカで放送された「オデッセイ・ファイブ」というドラマは、スペースシャトル「オデッセイ」のクルーたちの物語です。
大気圏外でのミッション中に地球が消滅するというショッキングなストーリーから始まり、5年前の過去に送られて地球消滅の原因を探り始めるという話でした。
しかし、スペースシャトル「ディスカバリー」号の爆発事故の影響で、20話で打ち切りになってしまいました。
フィクションに登場する「オデッセイ」
「オデッセイ」という名称は映画やテレビドラマのタイトルだけではありません。テレビドラマやアニメに登場するさまざまなものに、「オデッセイ」という名称が付けられています。
まずSFテレビドラマ「スターゲイトSG-1」と「スターゲイトアトランティス」に登場する宇宙戦艦が「オデッセイ」という名称でした。
また、SFテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」に登場する宇宙ステーションも「オデッセイ」の名称がつけられていました。さらにSF映画「オブリビオン」に登場する宇宙船の名前も「オデッセイ」というものでした。
実在した「オデッセイ」①アポロ13
「オデッセイ」という言葉は、フィクションに出てくる宇宙船や、宇宙ステーションの名称にとどまりません。実在するものにも、「オデッセイ」という名は付けられてきました。
アポロ13号を知っていますか?1970年4月に行われたアポロ計画の1つで有人飛行を目指しましたが、途中で事故に遭い、ミッション中止を余儀なくされました。さまざまな危機的状況を乗り越え、乗組員全員が地球に帰還しました。
これは「アポロ13」という映画にもなりました。このアポロ13号の司令船が「オデッセイ」でした。
実在した「オデッセイ」②火星探査機
映画「オデッセイ」に見る通り、「オデッセイ」という言葉と火星は切っても切れないつながりがありますが、実際に火星に向かった探査機の名前にも「オデッセイ」という言葉がついていました。その名も「2001マーズ・オデッセイ」です。
アメリカ航空宇宙局(NASA)によって送られた火星探査機です。火星の地表の組成を調べるのが、主な目的でした。
基本ミッションが終了しても、後続の火星探査機「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」や「フェニックス」の通信を中継する役目を果たしました。
主な搭載機器はガンマ線分光計、熱放射撮影カメラ、火星放射線環境測定器などです。このように、宇宙開発の現場では、多くの「オデッセイ」が現実に活躍しています。
「オデッセイ」の英語表記
次に「オデッセイ」の英語表記について、見ていきましょう。「オデッセイ」を英語で書くと「odyssey」となります。英語の意味は先述した通り、「放浪の旅」や「長い冒険」といった意味になります。
それでは英語で「odyssey」は日常会話でよく使われているのでしょうか?「旅」や「冒険」の意味には「trip」や「travel」といった英語はよく知られています。
「trip」や「travel」といった英語の代わりに「odyssey」を使ってみると、ちょっとカッコいい英語を話した気になるのではないでしょうか?しかし注意が必要です。
長編叙事詩「オデュッセイア」の英語読み
先述した通り、「オデッセイ」はホーメロスの長編叙事詩「オデュッセイア」の英語読みです。
ホーメロスの叙事詩は、ギリシャ文化成熟期前の先ギリシャ文化とも言うべき時代にエーゲ海混成民族の口伝で伝えられてきた壮大な物語です。
トロイア戦争の凱旋途中に起きた、10年にわたる漂泊の物語です。さらに「オデュッセイア」は「イーリアス」という長編叙事詩の続編作品にもあたります。
このような壮大な物語の意味を持つ「odyssey」を、日常英語で使う機会は、あまりないと言えるでしょう。
長期の冒険・放浪の旅を意味する
通常の旅行のことを言う意味でなら「odyssey」という英語ではなく、「trip」や「journey」といった英語を使うのが適切とされています。
では、知らない土地に出かけたり、子供が探検に出たりする「冒険」の意味には「odyssey」は使われないでしょうか?日常で使われる英語で冒険は「adventure」と言います。また、「risky attempt」や「hazard」といった英語もあります。
英語の熟語で見てみると「冒険する」は「run a risk」や「take a chance」といった言い方をすることが多いようです。日常会話で「odyssey」という英語を使う機会はないと考えていいでしょう。
「オデッセイ」は長い冒険を意味する言葉
「オデッセイ」という言葉の意味するものは、壮大で長きに渡る冒険です。「オデッセイ」の意味を知れば、「オデッセイ」という名称をつけた企業の製品、映画、小説といったものに感じられる意味もまた変わってくるのではないでしょうか?「オデッセイ」の意味を知って、作品やアイテムの深さを味わいましょう。