京都弁「はんなり」の意味
「はんなり」という言葉を聞いたことがある人は少ないでしょう。それもそのはずで、「はんなり」は京都の言葉です。したがって、意味を知っている人はさらに少ないでしょうが、京都に関する書籍や雑誌、サイトなどに載っている場合もあります。それはともかく、意味がわからなければ前へ進めませんから解説しましょう。
意味①華やかで上品・気品を兼ね備えている
「はんなり」にはいくつかの意味がありますが、まず「華やかで上品・気品を兼ね備えている」ことを表します。かなり質のいい言葉であり、肯定的な意味で使われます。人を褒めるには最適な言葉で、そう言われた場合は素直に喜べばいいでしょう。京都には、舞妓さんや芸者などがたくさんいますが、その人のことを「はんなり」という場合もあります。
意味②明るく鮮やか
もう一つの「はんなり」の意味は、「明るく鮮やか」ということです。第一の意味にも通じますが、もともと「はんなり」は「花なり」や「華なり」から来た言葉であると言われているので、「明るく鮮やか」という意味が出てきたのでしょう。この意味も人を褒めるのに使い、好意的な気持ちを表すのに向いています。
「はんなり」には、「上品さ」「気品」「華やかさ」「明るさ」「落ち着き」「鮮やかさ」「気取りがないこと」などいい意味がたくさん含まれています。それだけポジティブな言葉であり、人でも物でも高く評価していることになります。
意外に使われていない「はんなり」
京都の言葉である「はんなり」は、京都の人がよく使うように思えますが、実際にはあまり使われることはありません。日常会話で「はんなり」を使う人はほとんどいません。一部の年配の人が使用する場合はありますが、それは例外で、今は珍しい言葉になっているので、意味を知らない人も多いです。
「はんなり」という京都の方言はあまり使われないだけに意味を間違っている人も多いです。本来の「華やかで上品・気品を兼ね備えている」や「明るく鮮やか」という意味ではなく、「かすかな」とか「柔らかい」という意味だと思っている人もいます。
「はんなり」の類義語
いくつかのプラスの意味がある「はんなり」には、類義語があります。その類義語を一つ一つ紹介していきますが、類義語を見ればより「はんなり」の意味への理解が深まるでしょう。京都の人でさえ意味や使い方を知らないケースもある「はんなり」の類義語を学んで、その雰囲気をつかんでください。
たおやか
「たおやか」とは、姿・形・動作がしなやかで優美なさまを表す言葉です。その意味には「上品さ」や「淑やかさ」などのニュアンスも含まれます。「たおやかにたなびく柳」や「たおやかな舞」などのような使い方がされます。その意味と使い方においては「はんなり」の類義語ですが、「明るい」「華やかな」という意味の類義語ではありません。
ほっこり
あまりよく使われる言葉ではありませんが、「ほっこり」という言い方があります。意味は、「ホカホカと暖かい」「色つやがよく鮮やか」ということです。第一の意味は「ほっこりとした焼き芋」「ほっこりとしたお話」のような使い方がされますが、これは「はんなり」の類義語には当たりません。むしろ第二の意味のほうが類義語に近いです。
まったり
「まったり」を「はんなり」の類義語として見出しで示していますが、正確には違います。「まったり」とは「味がまろやかで口に広がる様子」という意味や「ゆっくり」「のんびり」という意味はありますが、「上品さ」や「華やかさ」を表す言葉ではありません。あえて言えば語感が似ているというくらいで、それだけで類義語とは言いにくいです。
しなやかな
「しなやか」には2つの意味があります。まず「柔軟で弾力がある様子」ということであり、次に「優美でたおやか」なことを表します。第一の意味は「はんなり」の類義語ではありませんが、第二の意味には類義語的な要素があります。ただ、ここでも「明るい」とか「華やか」という意味はないので、完全な類義語ではありません。
こうとな
「はんなり」と同じような京都の方言に「こうとな」があります。京都以外の人は知らない言葉でしょうが、この「こうとな」を「はんなり」の類義語にしようと思えばできます。ただし、意味に少し違いがあって、「こうとな」とは「地味で上品な様子」を表します。一方、「はんなり」は、「華やかで上品な様子」を表現する言葉です。
淑やか
「淑やか」の意味は、「言葉遣いや物腰が上品で落ち着いている」ということですが、その意味は「はんなり」の「上品」「気品がある」に通じます。したがって、「淑やか」は「はんなり」の類義語です。「淑やか」と言われた女性は、「はんなり」と言われた女性同様に素直に喜べばいいでしょう。
意外に見つけにくい類義語
「はんなり」の類義語を学んで理解を深めましょうという説明をしましたが、こうしてみると意外に類義語を探すのが難しいことがわかります。「はんなり」には広い概念があるので、それにぴったりの類義語はなかなか見つかりません。したがって、ここに挙げた類義語だけでは物足りなく感じるかもしれません。
「はんなり」の対義語
「はんなり」の類義語を探すのに苦労しましたが、対義語はどうでしょうか。「華やかで上品・気品を兼ね備えている」や「明るく鮮やか」を表す「はんなり」にはいろいろな対義語がありそうです。やはり順番に紹介しますが、類義語よりも対義語のほうが少し見つけやすいかもしれません。
てんこつ
京都の言葉である「てんこつ」の意味をご存じの人はいないでしょう。その意味は、「無骨」「無粋」ということです。「華やかで上品」という意味の「はんなり」とは好対照の言葉であり、対義語と言えます。とはいえ、全国で展開している言葉ではないので、対義語とは言ってもピンと来ないかもしれません。
無骨
「無骨」にはいろいろな意味がありますが、その中に「洗練されていない」や「スマートさに欠ける」が含まれます。「洗練されていない」ということは、「上品さ」を表す「はんなり」の対義語と考えていいでしょう。よく「無骨な人」などのような使い方がされますが、これにはいい意味はなく、人を低く評価する時の表現です。
無粋
男女の関係の機微が理解できない人のことをよく「無粋な人」と表現します。また、何の情緒も感じられないものを指して「無粋な建物」などと言います。このように「無粋」には悪い意味がありますが、「華やかで上品」な「はんなり」とは意味が対照的です。厳密な意味での対義語ではないかもしれませんが、あえて挙げてみました。
野蛮
「野蛮」とは、「粗暴でデリカシーがない」という意味ですが、これはちょうど「上品」の対義語になります。ということは、「はんなり」の対義語と考えてもいいでしょう。「はんなり」の「華やか」という意味の対義語ではありませんが、一部の意味は反対になっているからです。この「野蛮」は、「野蛮な人」「野蛮な行為」などのような使い方がされます。
地味
「はんなり」とは、「上品で華やか」であることですが、この「華やか」という意味の対義語を探してみると、「地味」という言葉があります。「地味」とは、「目立つ点がないこと」「けばけばしくないこと」という意味で、「華やか」とは対象となる言葉です。したがって、「はんなり」の片方の意味の対義語です。
簡素
「簡素」も「華やか」の対義語です。「簡素」の意味は、「質素なこと」「無駄がないこと」「飾り気がないこと」ですが、「華やか」に比べて、ずいぶんシンプルさが感じられる言葉です。そういう意味では、「はんなり」の対義語と言えるでしょう。使い方は、「簡素な部屋」「簡素化」「簡素な生活」のようになります。
シンプル
「シンプル」は英語の「simple」が語源で、その意味は「簡単」「単純」「飾り気がない」「素朴」ということです。この意味のうち、「飾り気がない」「素朴」というのが「はんなり」の対象となる言葉と見ていいいでしょう。「シンプル」という言葉の使い方はいろいろありますが、「シンプルな装い」「シンプルなデザイン」などの例があります。
「はんなり」の使い方
「はんなり」の意味、類義語、対義語がわかったところで、今度はその正しい使い方を見てみましょう。京都の方言である「はんなり」の使い方は、京都以外に在住の人にはわからないでしょう。しかし、京都在住の人でも若い人を中心に「はんなり」を使わなくなっているので、使い方を知らない人も多いでしょうから、ここで紹介します。
色に対して使う
「はんなり」には、「明るく鮮やか」という意味があるので、色に対して使うことができます。たとえば、「はんなりとしたいい浴衣の色ですね」と言えば、浴衣の色を褒めていることになります。なお、「はんなり」と言った場合、淡く薄い色を連想する人もいるようですが、必ずしもそういう色だけとは限りません。
人に対して使う
「あの人ははんなりした人ですねえ」という使い方がされた場合、「上品」「気品がある」「落ち着きがある」という意味になります。人に対して「はんなり」を使う時は、「華やかな」という意味はなく、その人の内面の優れた様子を表現します。なお、「はんなり」は女性に対して使用する言葉で、男性は対象になりません。
物に対して使う
「はんなり」は物に対しても用いることができます。使い方は、「はんなりした柄のいいバックですね」のようになります。「はんなり」には「上品」「気品がある」「華やか」「明るい」などいろいろな意味がありますが、それら全体が当てはまるような場合に使うといい褒め言葉になるでしょう。
味に対して使う
ちょっと変わった「はんなり」の使い方もあります。それは味に対して使う場合で、「上品さ」「気品さ」「優しさ」などが感じられる食べ物や飲み物にぴったり合います。例文は、「はんなりした味わいのコーヒーですね」です。また、「はんなりした甘みが感じられるお菓子ですね」などのようにも使えるでしょう。
動作に対して使う
人の動作に対して「はんなり」と言うことができます。その場合は、動作が「上品」「優美」「淑やか」という意味で使われることが多いです。「はんなりした動きをする舞妓さん」のように使えます。「はんなり」はどちらかというと、洋装の女性よりも和装の女性を形容するのに用いる機会のほうがたくさんあるようです。
人の動きに対して「はんなり」を使えると説明しましたが、その表情を言い表すこともできます。「はんなりとした笑顔が素敵な女性」と言えば、「上品な笑顔」「気品のある笑顔」「明るい笑顔」などいろいろな意味があります。
話し方にも「はんなり」を当てはめることができます。「はんなりとした話し方をする女性だった」と言えば、「上品さ」や「気品」「淑やかさ」が感じられる話し方で、好感が持てるという意味になります。このような女性は誰からも好かれます。
「はんなり」の英語表現
いろいろな意味を持つ「はんなり」という京都の言葉ですが、それにふさわしい英語表現があるのか考えてみましょう。「はんなり」を英語に訳す和英辞典はありませんが、その意味から適切な英語訳を見つけることができます。いったいどんな英語訳があるのか興味があるでしょうから、一つ一つ見ていきましょう。
華美な・豪華なという意味を持つ
「はんなり」の「華やかさ」という意味を英語に訳す場合、ぴったりの言葉があります。「gorgeous」という言葉で、その意味は「華麗な」「豪華な」「きらびやかな」「魅力的で美しい」です。「She is gorgeous.」と言えば、「彼女は美しく、魅力的だ」とか「華やかな美しさがある」ということになります。
gorgeousの使い方
「はんなり」は主に女性に対して使う言葉ですが、英語の「gorgeous」は男性にも使用できます。「He is gorgeous.」と言っても、英米人は何の違和感も抱きません。
英語の「gorgeous」には、「素敵な」という意味もあります。この意味をもとにスタイルや装い、雰囲気などを表現できます。スター相手に「gorgeous」と言えば、「華やかな」「豪華な」という意味にも取れますが、「格好よく素敵」というニュアンスのほうが強いです。
人や物以外に、景色や物にも使えるのが英語の「gorgeous」です。たとえば、「gorgeous town」と言うと、「素敵な町」という意味になります。また、「gorgeous party」は、「素晴らしいパーティー」ということです。
素晴らしい・見事なという意味で表現
「素晴らしい」「見事な」という日本語を英語にした「spectacular」という言葉もあります。その意味には、「素晴らしい」や「見事な」のほかにも、「壮観な」「豪華な」「劇的な」なども含まれています。これも「はんなり」の英語表現とは言えますが、どちらかというと「gorgeous」のほうが訳語としては近いようです。
上品な・気品があるという意味での表現
「はんなり」には、「上品」「気品がある」という意味がありますが、この英語訳はいろいろあります。いくつか例を挙げると、「elegant」「graceful」「polite」「exquisite」「distinguished」などです。実際に使う場合は、どの言葉を選べばいいのか迷う場面も出てきそうですが、どれも人を褒めるのに適した形容詞です。
「はんなり」は華やかで上品なことを意味する
ここまで、「はんなり」の意味、類義語、対義語、使い方、英語表現などについて解説しました。「はんなり」は京都の方言で、その意味は「華やかで上品」ということです。この言葉の対象は、色、人、物、味、動作などですが、最高の褒め言葉であり、対象の人や物を高く評価する時に使われます。