「重々承知」の意味
言葉にはそれぞれ異なる意味があり、「重々承知」もまた独特の意味を持っています。特に日本語は類語や対義語など種類も多く、その状況によって使い方や表現が変化するケースもあります。
世界中に存在する言語のなかでも、日本語は正しく使っていくために深い知識を求められます。つまり正しく言葉を使うためにまず大切なのは、その言葉の意味を正確に理解することです。
言葉の意味を理解することは大きなメリットがあります。具体例としては、自分が会話や文章を作成する時などに、その言葉が適切な状況で使われているか判断の基準にすることができるので、間違った日本語を使うミスを減らすことができます。
今回は、「重々承知」という言葉に焦点をあてて、基本的な意味を理解することから正しい使い方を学んでいきましょう。
十分に理解していること
重々承知は、「十分に理解していること」を意味する言葉です。なにかしらの物事や対象に対して深く理解していることを伝える時に使います。
重々承知というのは、「重々」と「承知」というふたつの単語が組み合わさっていることが特徴です。つまり「重々」と「承知」がそれぞれ持っている言葉の意味が「重々承知」とひとつの言葉に組み合わさることではじめて「十分に理解していること」という意味を持ちます。
「重々」の意味
「重々」とは「おもおも」や「じゅうじゅう」、「かさねがさね」といったように幾つか読み方に種類があります。意味としては「同じことを繰り返すこと、またはそのさま」や「十分」「よくよく」といったなにかしらの表現を強める時にも用いられる言葉のひとつです。
「重々承知」の場合、「重々」は「十分」「よくよく」といった表現を強める時の使い方と同じ役割を持っています。
「承知」の意味
「承知」は「なにかや誰かの願いや要求を聞いたり、引き受けること」や「心のうちや内容といった旨を承る、知ること」を意味する言葉です。「重々承知」の意味を比較していると、「承知」は「理解している」ことを伝える時に用いる表現であることがわかります。
そのため、「承知しております」など「承知」だけでも敬語で用いられる機会の多い言葉のひとつです。
「重々承知」の類語
「重々承知」は他の言葉に比べると「十分に理解していること」と意味がひとつに限られているため、使い方が簡単な言葉のひとつでもあります。しかし日本語には似たような類語がたくさんあることから、「重々承知」にも似たような表現が幾つかあります。
正しい使い方をマスターするには、言葉の意味だけでなく類語の意味もしっかり理解することで、敬語など状況や場面によって使い分けできるようにしていきましょう。
百も承知
「重々承知」の類語として挙げられるのが、「百も承知」です。この「百も承知」というのは、「十分に理解、承知していること」を意味する言葉です。「十分に理解していること」の意味を持つ「重々承知」と比較してみると、かなり近い意味を持っていることがわかります。
厳密に言えば、ふたつの言葉に大きな違いはなく、守らなければいけない使い分けのルールなどもありません。しかし上司やビジネスなどにおいて敬語として表現することを目的とした場合は、「重々承知」を使う方が良いとされています。
その理由としては、「重々承知」の方が表現が上品で柔らかいとされているからです。もちろん、意味や使い方として「百も承知」も間違いではありませんが、敬語として使う場合は「重々承知」の方が無難と言えます。
「重々承知」の使い方
上司や部下などビジネスの場面において敬語の使い方は特に重要視されます。社内だけでなく社外でもしっかり敬語をマスターするためには、その言葉が敬語として使えるのか、使えないのかといったことも理解しなければいけません。
また、言葉によっては敬語で使う時に表現が変わってくるものもあります。「重々承知」が敬語として使うことができるのか、そしてその使い方を解説していきます。
「重々承知」は敬語ではない
まず理解しておきたいのが、「重々承知」は敬語表現ではないということです。敬語というのは「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三つに分けられているのですが、「重々承知」はふたつの言葉が組み合わさっている言葉なわけですから、どのカテゴリにもあてはめることができないというのが理由です。
そのため、「重々承知」は敬語かそうでないのかという疑問に対しては「敬語ではない」ということになっています。しかし敬語として使っていいいか悪いかという疑問に対しては「使っても問題なし」とされています。
つまりビジネスにおいて敬語として「重々承知」を使う時は、その時の状況や使う相手を考えて臨機応変に対応していった方が良いと言えるでしょう。
使うことでより丁寧な表現になる
「重々承知」という意味には、物事や内容に関して十分に理解していることを示す時に用いる表現であることがわかります。こういった表現にはほかにも「わかった」「知っている」といった言葉があり、理解度を示す表現という点を考えるとその種類は豊富です。
ではなぜ「重々承知」という言葉を用いるかというと、より丁寧な表現になるからです。また、「わかった」という表現と比較しても、「重々承知」の方が理解度が深い印象を与えることができます。
そういった点において、「重々承知」の使い方のポイントはビジネスなどフォーマルな場で使う機会が多い言葉であることが特徴です。
目上に使う場合
ビジネスの場面において上司と敬語で言葉を交わす機会は多くありますが、そういった時に「重々承知」は使用しても問題ないとされています。ただ相手は目上の立場なわけですから、敬語を使う時もより丁寧な表現を心掛けるようにすると良いでしょう。
具体的には、「重々承知」に「です」や「ます」といった丁寧語を必ず付け加えることです。「重々承知」そのものは敬語に該当しない表現ですので、尊敬語や丁寧語に当てはまる表現を使用することで、ビジネスにおける敬語表現の使い方を工夫していきましょう。
目下に使う場合
部下など目下の立場となる人にも、「重々承知」は敬語として使用しても問題ありません。この時の使い方も、相手が「どの立場の人なのか」ということと「重々承知そのものは敬語ではない」ことを意識していきましょう。
目下の人に敬語を使う場合は、「謙譲語」を使うのがルールです。そのため、具体的な例としては「重々承知している」「重々承知していることだが」といったような使い方ができるでしょう。必要に応じて、ビジネスの場面において目下の人に対して「重々承知」を使ってみてください。
「重々承知」を使う時の注意点
「重々承知」を使う時に注意しなければならないのは、理解している物事や対象を書き連ねる時に不自然な言い回しにならないようにすることです。例えば「あなたのフィアンセとお会いしていないことは重々承知しておりますが」といった文章の場合、「会ったことがない」という事実は「深く理解する」必要はありません。
また、「先日の事故に巻き込まれ多大な損害を被ったのは重々承知おりましたが、建物が全壊したことは知りませんでした」といった文章も不自然です。理由としては「事故の詳細」を「深く理解している」と表現しているのに、その詳細である「建物が全壊」したことを知らないのは矛盾するからです。
会話や文章として「重々承知」を使う時には、自分がなにに対して理解しているのか明記するだけでなく、前後の内容に矛盾してないかなども気を付けるようにしてください。
丁寧な表現が逆効果になることも
「重々承知」という言葉はもともとが丁寧な表現となっており、どちらかというとビジネスなどフォーマルな場面で用いる機会が多い言葉です。もちろん日常的な会話において使用しても問題はないとされています。しかしその丁寧な表現が、日常的な会話においては重苦しい印象を与えてしまうことがあります。
また、丁寧な表現をすることを意識しすぎて「重々承知」を多用してしまうと、かえって軽い印象を与えてしまうこともあります。そのため、使い方には注意が必要な言葉です。
「重々承知」の敬語表現
「重々承知」は厳密に言うと敬語ではありませんが、表現のひとつとして用いることは問題ないとされています。しかし敬語に該当しない言葉だからこそ、ビジネスの場面などにおいては適切な使い方が求められます。
特に目上の人など使う状況や立場によって、ビジネスの場面では失礼にあたる使い方をしないように注意しましょう。
目上には「重々承知しております」
ビジネスの場面において、目上の人に「重々承知」を使う場合は丁寧語と含めるようにしましょう。具体的には、「重々承知しております」や「重々承知しています」といった使い方ができます。基本的には「重々承知」と語尾に「です」や「ます」といった表現を組み合わせると無難です。
より丁寧な表現をしなければならない時は、「重々承知しております」の方が良いでしょう。
この「重々承知しています」や「重々承知しております」は目上の人だけでなく目下の人にも使用することができます。ビジネスの場面において、どの相手に使うかを考えながら表現を変えていきましょう。
またそのほかにも、目上の人に使う敬語表現としては「重々承知しておりますが」や「重々承知の上」といったものもあります。「重々承知しておりますが」はなにかをお詫びしたり、断ったりするときに用いることが多く、「重々承知の上」はなにかを頼んだり要求する時に用いることが多い傾向にあります。
またより丁寧な表現を使いたいなら、「重々承知いたしました」を使うと良いでしょう。もともと別の敬語表現である「承知いたしました」と組み合わせさることで、より丁寧な表現にすることができます。
それぞれのフレーズによって使える場面が限られてくるものもありますが、基本は「相手は自分にとって目上の人である」ことを前提に適切な表現を選んでいきましょう。
「重々承知」のビジネスメールで使える例文
「重々承知」は敬語ではありませんが用いることはマナー違反にはならないので、ビジネスメールの文章としても使用することができる言葉です。
しかし会話と同じように、ビジネスメールにおいても目上や目下といった立場や内容によっても使い分けていく必要があります。紹介していく例文を参考にしながら、相手に良い印象を与えられるようなビジネスメールを作成していきましょう。
目上の人に対する例文
目上の人に対してビジネスメールを送るときも、基本的に「重々承知」と「です」「ます」を組み合わせることで丁寧な表現になります。ただこの時に注意してほしいのが、「おります」や「いたしました」といった言葉は使用しないようにしましょう。
こちらはどちらもビジネスメールにおいては謙譲語になりますので、目上の人に使用する表現としてはマナー違反です。
例文としては「今回の件に関しましては、重々承知いたしました」や「お客様からいただいたご意見は重々承知しております」といった使い方をするとよいでしょう。
この「重々承知しております」を使用する時に注意してほしいのが、「何に対して十分に理解しているのか」をしっかり説明しておくことです。「重々承知しております」だけでは相手になにも伝わらないので、説明不足にならないように注意しましょう。
依頼やお願いをする時の例文
依頼やお願いをする場合は、まずは相手に対して気遣う言葉を記して配慮する気持ちを伝えることが大切です。具体的な表現としては「お忙しいところ」や「ご多忙中恐れ入りますが」、「事情は重々承知しておりますが」といったものがあり、相手や状況によって適切なものを使っていきましょう。
そのうえで、「お忙しいところ重々承知しておりますが、今回の案件にてお願いしたい件がございます」や「ご迷惑をおかけしますことを重々承知しておりますが、どうぞよろしくお願いいたします」といった使い方ができます。
相手に対してお願いする立場であることを忘れないように、「重々承知しております」以外にもより丁寧な表現を使うことを意識した文章を作成することを意識しましょう。
謝罪などをする時の例文
謝罪やお詫びをするときにも、「重々承知」は使用しても問題がない言葉です。この時は自身が頭を下げる立場となりますので、「重々承知しております」など謙譲語と組み合わせた文章を作成するようにしましょう。
また、「重々承知しております」には謝罪の表現がないので、「心よりお詫びいたします」や「誠に申し訳ございませんでした」といった文章を加えるようにしましょう。
例文としては、「今回の不手際は重々承知しております。今後はより努力して再発防止に努めたいと存じます。誠に申し訳ございませんでした」といった使い方ができます。
断る時の例文
ビジネスの場面で相手になにか仕事など頼まれた案件を断るときも、必要であれば「重々承知」という言葉を使うことができます。この時、せっかく相手に対して断りの返事を入れるわけですから、その点を配慮した文章を作成することを意識するのがポイントです。
そういった相手に対し配慮していることを伝えたい時に、「重々承知」という言葉を使うと良いでしょう。例文としては「現状は重々承知しておりますが、今回のお誘いは辞退したく存じます」といったような文章が作成できます。
「重々承知」の英語表現
「重々承知」を英語で表現するとき、言葉そのものを表す単語がないので、それに近い表現や意味を持った単語や文章を使用することになります。このとき、使用する英単語や文法によってもまたニュアンスが異なることもありますので、使う時は十分に注意したほうがよいでしょう。
「重々承知」を英語で表現する時は、使用する英単語や文法そのものの意味や使い方をしっかり理解することで、相手に対してしっかり表現できるようにしていきましょう。
~に気付いていることを意味する英語
「重々承知」は「十分に理解している」という意味があります。そのため、英語で表現する場合はもっとも近い意味合いとなる「~に気付いている」といった表現をする英単語を使うと良いでしょう。またそのほかにも近い表現がありますので、その場に応じて適切な使い分けをしていきましょう。
「重々承知」の英語表現①be very aware of~
「重々承知」の英語表現の1つ目として紹介するのが「be very aware of~」です。この表現に含まれる「be aware of~」は「~に気づいている、理解している、知っている」といった意味を持っています。そのため、「十分に理解している」ことの意味を持つ「重々承知」を英語で表す時に用いられるポピュラーな表現のひとつです。
なぜ「be aware of~」に「very」を加えるかというと、そうすることで「重々」を表現することができるからです。「very」と似た表現のひとつに「so」という単語がありますが、どちらかというと「very」が今回の場合は適切と言えます。
理由としては主観的な表現に用いるのが「so」で、客観的な表現として用いられるのが「very」というのが一般的だからです。内容や状況にもよりますが、ビジネスなどフォーマルな場において「重々承知」を英語で表す場合は、「very」を使用した方が良いでしょう。
「重々承知」の英語表現②fully understand
「重々承知」の英語表現の2つ目として紹介するのが「fully understand」です。これはふたつの単語からなっている言葉であることが特徴です。「fully」には「十分である」「完全である」といった意味があり、「understand」には「わかる」「知っている」「理解している」といった意味があります。
そのため、「十分に理解している」ことの意味を持つ「重々承知」と似たニュアンスを持った言葉であることがわかります。
「重々承知」の英語表現③Noted.
「重々承知」の英語表現の3つ目として紹介するのが「Noted.」です。こちらは厳密にいうと「メモをする」「書き留める」といった意味がありますが、その他にも「心にとめる」といった表現をすることがあります。
そういったことから、「Noted with thanks.」というビジネス場面で使うフレーズも存在します。意味合いとしては異なるように思えますが、「重々承知」という英語表現として用いても問題はありません。
「重々承知」の英語表現④Certainly・Absolutely
「重々承知」の英語表現の4つ目として紹介するのが「Certainly・Absolutely」です。「Certainly」は「承知しました」という意味を持つ単語です。「重々承知」と少しニュアンスが異なりますが、英語として表現するうえでは同じ意味として相手に伝わります。
ただ正確に「重々」承知していることを強調したいのであれば、「Absolutely」を使うと良いでしょう。こちらは「Certainly」をより強調した表現となり、言葉の意味としては「Certainly」を使う方が正解です。
英語表現においては「Certainly」と「Absolutely」は似た意味合いを持っていることから、どちらを使っても間違いではありません。また「重々承知」は多用しすぎたり、カジュアルな場では表現としては重過ぎるので、その場に合わせて使い分けていきましょう。
「重々承知」は十分に理解していること
「重々承知」は特にビジネスなどフォーマルな場面で使う機会が多い言葉のひとつです。しかし厳密には敬語ではありませんから、その相手や状況を見極めて使い分けることが大切です。特にビジネスメールにおいてはなにを目的としたメールを送るかによって、謙譲語や丁寧語の組み合わせには注意が必要です。
また、英語表現も近いニュアンスを持った表現がたくさんあります。自分がなにを伝えたいのか考え、「重々承知」の意味て照らし合わせながら正しく使っていきましょう。