ザンギの名前の由来
まず「ザンギ」について説明していく中で、その名前の由来についてご説明します。「ザンギ」の語源はどこから来たのか、その変遷をお話しするとともに、「ザンギ」が北海道のどこで誕生したのか、その歴史についてもご紹介していきます。
名前の由来は中国のザージー
実はこの「ザンギ」という言葉の由来は、様々な説が存在しています。特に、中国語で鶏の唐揚げを意味する、「炸鶏(ザージーまたはザーチーともいう)」に、幸運の「運(ん)」を間に入れて、「ザンギ」と呼ばれるようになったとされる由来が有力な説とされています。
その他、鶏の唐揚げを意味する「炸子鶏(ジャーズージー)」が訛って変化し、「ザンギ」の由来になったという説も存在します。
一方、調理する際に鶏肉を骨ごと「散切り(ざんぎり)」にするからという説。そして、愛媛県今治市の郷土料理である「せんざんき」という鶏のから揚げがあり、その料理が北海道の開拓時代に移住してきた人によって伝わってきたのではという説があります。
発祥の地は北海道・釧路の鳥松
では、次に「ザンギ」はどこで生まれたのでしょうか。「ザンギ」は北海道の釧路市というところで誕生しました。
釧路市は北海道の東側に位置し、大きな漁港があるため新鮮な海産物が獲れることで有名です。海だけでなく、動植物とした自然にも大変恵まれた風土を有しています。世界自然遺産にもなった釧路湿原はご存じの方も多いのではないでしょうか。
「ザンギ」はこの釧路市「鳥松(とりまつ)」というお店が発祥と言われています。元々このお店は漁港近くで焼き鳥屋を営んでいました。
その鳥松が1960(昭和35)年頃に、ブロイラー(鶏肉を調理する器具)の売り込みがあったことをきっかけにして、1羽丸ごとをぶつ切りにして揚げたものを出しました。それが後の「ザンギ」になったとされています。
ザンギと唐揚げにハッキリとした違いはない
ここまで「ザンギ」の誕生についてご紹介してきました。次に、「ザンギ」と「唐揚げ」の違いについてです。「ザンギ」と「唐揚げ」の違いは?と聞かれて、ピンと来る方は少ないのではないでしょうか。実際に見た目を比較しても、違いはわかりにくいです。
そんな中で「ザンギ」と「唐揚げ」には違いがあると言及する人もいます。その違いをいくつかの観点からご紹介していきます。指摘されている違いに注目して、比較してみてください。
作り方が違うという意見がある
1つ目に、「ザンギ」と「唐揚げ」は作り方が違うという意見があります。具体的には衣をつける段階の手順です。「唐揚げ」は鶏肉に味の付いた粉を付けて揚げるのに対し、「ザンギ」は先に鶏肉へ直接下味を付けてから揚げます。つまり、味の付け方が粉か鶏肉かの違いです。
この違いが後述する「ザンギ」と「唐揚げ」の味の違いにも影響していると言えます。詳細については次の項目でご説明します。
味付けが違うという意見がある
先ほど述べたように「ザンギ」と「唐揚げ」は味付けの行程に違いがあります。味付けの順番が異なることで、もちろん味そのものにも影響してくると言えるでしょう。
例えば、「ザンギ」は予め醤油やタレ、スパイスなどを用いてしっかりと漬け込み揚げるため、味が濃い目になります。鶏肉を漬け込むことで、鶏肉へ味が染み込み、より濃厚になっているのです。濃い味が好きな方は「唐揚げ」よりも「ザンギ」の方がより好みの味と言えるでしょう。
一方、「唐揚げ」は味付きの粉をさらっと全体にまぶし付けるのみなので、長期間漬け込んだ「ザンギ」と比べて味があっさりとするのは、容易に想像できます。
方言だと思っていたという意見がある
最後に「ザンギ」と「唐揚げ」の違いはほとんどなく、ただ地域による方言の違いだという考え方もあります。
ご存じのとおり「ザンギ」は北海道の釧路市で誕生した食べ物なので、「ザンギ」という言葉ももちろん北海道発祥の言葉です。そのため、「ザンギ」は本州の方でいう「唐揚げ」を北海道弁にした言葉だと思っている方も多いです。
特に北海道に住んでいる方はそういった認識の方が多いでしょう。北海道で食べる機会がある際はぜひ「ザンギください!」と注文してみてください。
ザンギの作り方
ここまで「ザンギ」と「唐揚げ」の違いについてお話ししてきました。では、次は実際に「ザンギ」の作り方についてご紹介します。
「唐揚げ」との違いでも話題に上がった、味付けの行程についてもしっかりとご紹介しますので、ぜひ違いを意識してみてください。作り方はシンプルでそこまで難しくないので、おいしい「ザンギ」をご自宅でも作ってみましょう!
鶏肉に下味をつける
鶏肉を適当な大きさに切り分けた後、「ザンギ」の作る上で肝とも言える下味を付けていきます。下味は、醤油とショウガ、ニンニクで付けていきます。今ではチューブ状のショウガとニンニクも販売されているので、簡単に準備できるでしょう。
ただし、ショウガとニンニクはすりおろしたものの方がより風味が出てうま味が増すので、おすすめです。面倒ではありますが、ひと手間加えるだけで格段においしくなります。
しょうが・にんにくは直前につけこむ
前述で、ショウガやニンニクはすりおろした方が良いとお話ししましたが、すりおろす際は漬け込む直前にしましょう。
ショウガやニンニクといった香りの強い食材は、余り早い段階ですりおろしてしますと風味が飛んでしまいます。すべての風味が飛んでしまう訳ではありませんが、折角であればすりおろし特有の風味はより多く残しておきたいです。
漬け時間は長いほうが良い
漬け込みの下準備ができた後は、実際に切り分けた鶏肉を漬け込みます。漬け時間はできるだけ長めの方が良いでしょう。具体的には最低でも2時間は漬け込みます。
十分に味を染み込ませたい場合は、前日の夜から仕込みをしても大丈夫です。より長い時間漬け込むことで、鶏肉へ下味がしっかりと染み込み、醤油やショウガ、ニンニクの風味が「ザンギ」のおいしさをさらに引き立てます。
衣は片栗粉が一般的
じっくりと時間をかけて下味を付け終わったら、衣をつけていきます。衣に用いるのは片栗粉が一般的です。
片栗粉は揚げる直前にまぶすように注意してください。まぶした後に時間を空けてしまうと、片栗粉が鶏肉や調味料の水分を吸い、カラッと揚げることが出来なくなってしまいます。また、片栗粉は鶏肉に均一かつ適当な厚さでまぶすよう意識します。
多すぎると衣が厚くなり、少ないと素揚げのようになってしまいます。片栗粉は一気にまぶそうとせず、鶏肉1つずつ丁寧にまぶす方がいいでしょう。
二度揚げする
衣をきれいにまぶした後はいよいよ揚げていきます。揚げる際のポイントは油の温度に注意することです。
高温すぎると焦げてしまう可能性があり、そこにばかり目が行ってしまうと中まで火が通っていないこともある。逆に低温すぎると、火は通るもののカラッと揚げることが出来なくなってしまう。鶏肉にしっかり火が通り、かつカラッと揚がる温度にしなければなりません。
しかし、理想的な温度管理はなかなかできるものではありません。そこでおすすめなのが二度揚げすることです。
1回目は150℃くらいの低温で鶏肉に火が通るように揚げ、一度引き揚げた後、2回目に170℃くらいの中温で揚げます。1回目は鶏肉に火を通すようじっくりと、2回目は衣の水分を飛ばすように軽くサッと揚げるイメージが適切です。
ザンギと似た食べ物
「ザンギ」の他にも鶏肉を揚げた料理はたくさんあります。次は他の鶏肉を揚げた料理をご紹介していくとともに、「ザンギ」との違いについてお話ししていきます。意外とはっきりした違いを理解していない方も多いでしょう。この機会にその違いを区別できるようにしてみてください。
ザンギと竜田揚げの違い
代表的な鶏肉の揚げ物料理として「竜田揚げ」があります。「竜田揚げ」は紅葉の名所である奈良の竜田川から来ていると言われています。「竜田揚げ」の色がきれいに色付いた紅葉の色に似ていたからだそう。
「竜田揚げ」は醤油やみりん、酒などで下味を付け、片栗粉をまぶして揚げたものです。お気づきの通り、「ザンギ」の作り方と非常に似ています。実は「竜田揚げ」は「ザンギ」とほぼ同じものであると認識されていることが多いです。
その一方で、形の違いも一つの考えとして存在しており、「ザンギ」は一口サイズの丸型が多く、「竜田揚げ」は紅葉の葉のように長方形を成している場合が一般的です。
ザンギととり天の違い
「とり天」はどうでしょうか。「ザンギ」と似たものなのかと言うと、「とり天」は全くの別物になります。
「とり天」は「鶏肉の天ぷら」なので、片栗粉などで衣は出来ておらず、粉に卵と水を加えた衣を使用し、どちらかと言うとふわっとした集めの衣が特徴です。下味を鶏肉に付けるという部分は同じですが、衣が全く異なっています。
また、「ザンギ」は出来上がりの味が濃い目なため、さらに食べる際に味を付けることはそこまで多くない一方で、「とり天」は軽い下味付けなので、天つゆや酢醤油を付けて食べます。
ザンギは釧路発祥の鳥を片栗粉で揚げたもの
いかがでしたでしょうか。「ザンギ」・「鶏の唐揚げ」についておわかりいただけたでしょうか。ザンギの名前の由来、発祥の経緯、ザンギとから揚げの違い、作り方、と様々な方面からご紹介してきました。この記事を読んでザンギが食べたくなった方も多いのではないでしょうか。ぜひ、北海道で食べる機会があった際には「ザンギ」と注文してみてください。