「身罷る」の意味・読み方とは?使い方・例文・類語や語源もチェック!

「身罷る」の意味・読み方とは?使い方・例文・類語や語源もチェック!

「身罷る」という言葉はあまり出会う機会がない言葉ですが、相手を立てる意味があり、古い語源を持つ大切な言葉です。まず、「何て読むのか?」そして、「どういう意味があるのか?」今回は「身罷る」について類語、例文、使い方、語源、由来などもあわせてご紹介いたします。

記事の目次

  1. 1.「身罷る」の意味とは?
  2. 2.「身罷る」の類義語 
  3. 3.「身罷る」の使い方・例文
  4. 4.「身罷る」と「身籠る」の違い
  5. 5.「身罷る」を使う際の注意点
  6. 6.「身罷る」の語源
  7. 7.「身罷る」の対象
  8. 8.「身罷る」の別表記
  9. 9.「身罷る」は「人が死ぬ」という意味

「身罷る」の意味とは?

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「身罷る」という言葉を知っておりますでしょうか?ちなみに読み方は「みまかる」と読みます。使う機会はあまり多くなく、「知らない」という方も結構多いので、今回は「身罷る」というテーマで書き進めていきます。

古くは謙譲語として使われておりました。謙譲語とは敬語の一つで、「自らをへりくだり、相手をたてる」という日本独特の文化の一つです。よく聞く謙譲語に「奉る(読み方は、たてまつる)」「伺う(読み方は、うかがう)」などあり、そのグループに属する言葉です。

謙譲語は日本の身分社会である封建社会が産んだ文化で、自らの行為をへりくだるということは外国ご出身の方はよく、「理解できない」と言います。謙譲語は元々今の日本でも馴染が薄くなって来た「主人と従者との培われた主従関係の中で使われてきた言葉」です。

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意味はずばり「死ぬ」ということです。突然の左記の言葉「死」が出てくると驚きます。ですが、同じ意味でも、その驚きや抵抗感を古語である「身罷る」という言葉は和らげる働きがあります。この婉曲的な意味は後述で紹介いたします。

古語「身罷る」は「死ぬ」ことの謙譲語として古くから使われていましたが、ちょっと立ち止まると矛盾点に気付きます。「亡くなっている方がへりくだることはできないのではないか」と。

その答えとして「身罷る」は、古い用法として、へりくだる「行為者側の死の謙譲語」になります。例えると、お亡くなりになった親族側の「死」の謙譲語となります。

「身罷る」の類義語 

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次に「身罷る」という言葉、この謙譲語の意味に似た類語をご紹介いたします。一般的な日常用語ではなく、あまり知れ渡っていない類語をピックアップいたしました。

「身罷る」の類語は「不帰の客(読み方は、ふきのきゃく)となる」「三寸息絶ゆ」「空の煙となる」「儚くなる(読み方は、はかなくなる)」「巨星隕つ(読み方は、きょせいおつ)」「魂尽く」など、その語源が古い類語が実にたくさんあります。

「不帰の客となる」は二度と帰らぬ人となることから、「三寸息絶ゆ」は三寸の間に咽喉があり、咽喉もと三寸の呼吸が止まることから、「空の煙となる」は空に立ち昇る火葬の煙を例えるところから、類語としてそれぞれ意味します。

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「儚くなる」淡くて消え入りやすい、儚いという意味から、「巨星隕つ」は諸葛孔明が戦場で死んだとき、大星が陣中に落ちたという逸話から、「魂尽く」は魂を命に見立て、それが尽きてしまうことから、類語としてそれぞれ意味します。

類語はたくさんあることは理解できました。ちなみに、「死ぬ」の反対は「生まれる」ですが、古くからの謙譲語として使われた語源「身罷る」の対義語はどう表現するのでしょうか?

謙譲語としては「生まれさせていただいた」となりますが、生まれたばかりの赤ん坊が、このような言葉を発することは考えられませんし、身内側がへりくだって「生まれる」を表現する文献も見当たりませんでした。よって、「身罷る」の対義語は存在しません。

「身罷る」の使い方・例文

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では「身罷る」は実際どのように使用できるのでしょうか?この「身罷る」の意味自体は同じでも、状況による使い方が4つに大別できます。次は4つのケースに分けて例文を上げながら、それぞれの「身罷る」を解説していきます。実際に使用する際の参考にしてみてください。

例文①

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一つ目としては、「身罷る」を身内の死を表現した使い方です。例えば、身内で誰かに不幸があった場合を想定すると、身内ではない第三者に対して「〇〇は先日身罷りました」と表現いたします。

ここでの場合の「身罷る」の表現は先述した通り、「謙譲語」としての古くから使われてきた表現です。つまり、故人を含めた身内側として、へりくだり、結果相手を立てるときに「身罷る」という表現を使っておりました。

ただこの場合、「身罷る」の表現が相手を立てる目的は、相手を上位者としての身分の差を示すためではなく、人間関係を円滑にする「社会的なわきまえ」としてです。この目的は現在使われている謙譲語、尊敬語、丁寧語、三つの敬語全てに当てはまります。

例文②

次は、金塊和歌集、古今和歌集などでみられる「身罷る」の表現です。例文としては「安らかに身罷る」「いもうとの身罷りけるときに」などの表現でその使い方を見ることができます。

こちらの「身罷る」の使い方は例文①と似ております。つまり「自己側をへりくだり、相手を立てる」という意味では現代の使われ方と一緒です。

しかし、厳密には今と昔では相手を立てる目的が違います。つまり、社会における人間関係の円滑さに目的をおいた現在と、身分の差を示すこと目的においた昔との、謙譲語としての意味合いの違いと認識してください。

例文③

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3つ目としては、「身罷る」の意味は「死ぬこと」を意味するので、婉曲な表現として使われるケースです。このケースは故人の遺族、場所や状況を鑑みて、使われることが多いです。

葬儀などの場には、故人を偲んで、様々な方は参列されます。その状況で、「死ぬ」「亡くなる」などの言葉を使うことは、あまりに直接的で、場を弁えていないと見做されてしまう可能性があります。多くの人が視聴するテレビ・ラジオなどのメディアでも同じことが言えます。

葬儀で故人の身内と話をする際、「〇〇さんが身罷りましたことは、3日前に知りました」また、テレビでも「〇〇様がみまかられました」という表現で「死」を婉曲的に表現することが、故人の遺族に配慮していることにつながります。

例文④

最後は「身罷る」を「死ぬ」とイコールとして使われるケースです。時代劇などをテレビでみていると、このケースに遭遇します。ある藩の者が同じ藩の身分の者に対して言った言葉を見ていきます。

「殿がみまかられた」このセリフを耳にすると、その発信者と殿との人間関係に頭を巡らせます。まず「身罷かれる」の「身罷る」は尊敬語としては使われません。助動詞「られる」が尊敬語としての役目を果たしています。

「殿が身罷られた」は「殿が亡くなられた」となりますが、「身罷る」自体が尊敬語ではないので、「身罷る」の意味がここではどうなるのかと疑問を抱きます。

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また、「殿が」みまかられたと言っている配下の者は時代劇のストーリーの人間関係として「身内側」であることは考えられないので、謙譲語としての表現でもありません。また、時代背景として、殿の配下の者が同じ配下の身分の者に対して婉曲的に表現する必要性もありません。

つまり、この場合の「身罷る」の意味は、当時の時代の表現として、単純に「死ぬ」という意味として使っていることが推測できます。

「身罷る」と「身籠る」の違い

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つぎに「身罷る」に似た表現に「身籠る」という言葉があります。この「身籠る」は「身罷る」同じ字数であり、「身」と「る」で中の漢字を挟んでいるので、一見すると類語なのではないかと推測してしまいます。ちなみに読み方は「みごもる」と読みます。

答えとしては類語ではありません。むしろ「身罷る」が「死」を意味する言葉に対して、「身籠る」は「生」を意味する言葉で、対義語ではありませんが正反対の意味の言葉です。

「胎児を体内に持つ。妊娠する」という意味

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「胎児を体内に宿す。妊娠する」ことを「身籠る」と言います。「籠る」という意味は「中に入って外に出ない」という意味です。

つまり、「身体の中に入って外に出ない状態」を指して、「身籠る」という意味につながります。身罷るとは違い、おめでたい言葉になります。

「身罷る」を使う際の注意点

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「身罷る」の意味、ケース別の使い方、例文を見てきましたが、逆の視点で、使い方に気をつけるポイントを具体的なケースを挙げながら紹介いたします。

日常生活では、誰にでも「死」という場面は避けられません。今後「こういう場合は使えるのだろうか」という時に是非参考にしてください。

特定の関係性の中では使えない

ビジネスシーンなどでは社内でも、社外でも自分とそれを取り巻く人たちとの人間関係がしっかり構築されている場です。

あなたを起点にすれば、上司は尊敬すべき目上の存在、部下はあなたに指示・指導を仰ぐ存在です。そういった関係性の中で、あなたの親族などに不幸があった場合はどう表現すべきでしょうか?

この場合、あなたは「身内側」となりますので、「〇〇が身罷りました」とへりくだって表現することができます。

あなたの上司や部下の親族に不幸があった場合はいかがでしょうか?あなたが「〇〇様が身罷りましたことを悲しく思います」と発することはNGです。どこが間違っているのでしょうか?

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謙譲語しての「身罷る」以外にも婉曲的に表現することができると先述しました。「身罷る」と婉曲として表現すること自体は間違っていないのですが、「身罷りましたことを」の「ましたことを」がマナー違反です。

この場合、故人やその遺族を配慮して「身罷られまして」とし、尊敬の助動詞をつけて表現することを忘れないでください。

自分の身内以外の故人の「死」を尊敬語を入れることで、その故人・その遺族を尊ぶことにつながります。自分の身内の場合は「身罷る」、自分の身内以外は「身罷られる」という表現を覚えておいてください。

「身罷る」の語源

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「身罷る」の言葉の語源はどこからでしょうか?この言葉の歴史を紐解いて、「身罷る」の語源を見ていきましょう。

先述しましたように、「身罷る」という言葉の語源を辿ると、古今和歌集、金塊和歌集に登場いたします。古今和歌集は、平安時代の勅撰和歌集、金塊和歌集は、鎌倉時代前期の源実朝の歌集で、いずれも時の政権が作成させた、由緒正しい有名な歌集です。

平安時代とは794年から、鎌倉時代は1192年からですので、「身罷る」の語源は古くは今から1200年も前に成立していたことがわかります。「身罷る」は大変古い語源を持つ言葉だったのです。

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ちなみに「身罷る」は「身」と「罷る」に分けられ、「身体」が「この世からいなくなる」と分解することができます。この「罷」の漢字は形成文字の「网(あみ)」+音符「能」で「网(あみ)を取り去ることが原義となっています。そこから「去る」という意味につながりました。

「身罷る」の対象

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「身罷る」は先述した和歌集や俳句にも登場しています。いずれにも「人」に対して「身罷る」が使われておりますが、「人」以外も対象となるのでしょうか?

「身罷る」は「死ぬ」という意味ではありますが、先述した通り、故人や故人の親族などの身内側を尊び、直接的な表現を使わない婉曲した言葉の性質を持っております。

では、婉曲的な意味で「身罷る」を使うとするならば家族の一員とみなしている「愛犬」や「愛猫」などにも使ってもよいという解釈があたかも成り立ちそうです。

現に「ペット斎場」などの専用の火葬場もある位なので、人間の死と同じくらいの悲しみを感じる遺族も存在します。また火葬場での弔いだけでなく、墓を立て、命日にはお参りする人も数多くいらっしゃいます。

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しかし、「身罷る」は人の死を意味する言葉で、「動物」までは含まれていないというのが正しい解釈です。「身罷る」は「死亡する」「亡くなる」を遠回しに表現している用語です。いずれの用語も人格を尊ぶニュアンスが含まれています。

動物に「死亡する」「亡くなる」という表現は使わないように、「身罷る」という言葉も使い方の対象は「人」だけとなります。先述した「身罷る」の類語も「人」だけが対象です。

「生類憐みの令」が発令された徳川綱吉時代でも、動物は特別視される存在ではなく、「人間の子供、老人、病人」が保護の主たる対象であり、その延長線上に「動物保護」があっただけなので、この時代にも動物に「身罷る」などの言葉が用いなかったと推察できます。

「身罷る」の別表記

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「身罷る」に別な表記があるかを調べました。「薨る」と書き、読み方は同じ「みまかる」です。意味は、「身罷る」と同じ意味でありますが、「貴人が亡くなる」というニュアンスを含んでいます。

上記のような訓読み以外に「薨去」、「薨逝」という言葉もあります。「薨去」の読み方は「コウキョ」、「薨逝」の読み方は「コウセイ」。親王や第三位以上の皇族の不幸を二文字で表現する言葉です。

「身罷る」は「人が死ぬ」という意味

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「身罷る」は身近な人の不幸を身近側としてへりくだり、相手を立たせ、本来の意味の抵抗感を和らげる働きがあります。相手を慮る表現として、由緒正しい語源がある、覚えておいて損はない言葉です。

「身罷る」の意味、読み方、類語、使い方、例文、語源、由来、対象を紹介してきました。今後日々生活していく中で、親族や身内の不幸などに出会わねばならない時はこの「身罷る」の使い方を是非参考にしてください。

SDA
ライター

SDA

本記事をお読みいただきありがとうございます。近頃はイベント自粛で何かと我慢な日々ですね。ただ最近は、家の中でも新たな発見があるものだと気づかされました。今後はインドアならではのお役立ち情報があれば、記事の通じてどんどん発信していきたいです。明るく取り組んでいきますのでよろしくお願い申し上げます。

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