「拙い」の意味とは?
普段はあまり使う言葉ではないでしょうが、「拙い」と言い方があります。この「拙い」とはどういう意味なのか、意外に分からないものです。そこで、「拙い」の意味を辞書なども参考にしながら解説していきます。
意味①巧みでない
「拙い」の代表的な意味から紹介します。「巧みでない」「下手である」「技術が劣っている」という意味です。この意味なら知っているという人もいるでしょう。実際に、ビジネスシーンなどでよく使われる意味であり、最も一般的な意味です。
意味②運が悪い
「拙い」の第二の意味は、「運が悪い」「運に見放された」ということです。「武運拙く討ち死にする」という言い方がありますが、「武術の運が悪い」ということで、あえなく死んでいく様子を表しています。
意味③卑怯である
これは、「拙い」を古語にした「拙し」の意味ですが、「卑怯である」「臆病である」「意気地なしである」ことを表します。古い文章に登場する言葉ですが、現代ではこのような意味で使われることはまずありません。
「拙い」の読み方
「拙い」と書いて、普通は「つたない」と読みます。実はもう一つ読み方があって、「まずい」とも読みます。というと、「味がまずい」という言葉を思い浮かべる人も多いでしょうが、両者の意味には全くつながりはありません。
「拙い」の対義語・類義語
「技術が劣っている」「下手である」などの意味がある「拙い」にはぴたりと合う対義語や類語がいろいろあります。その対義語と類語をいくつか学びますが、それによってより「拙い」の意味がはっきりとしてくるでしょう。
「拙い」の対義語①うまい
「下手」の対義語は「うまい(巧い)」です。ということは、「拙い」の対義語も「うまい」です。「拙い文章」を反対の意味にすれば「うまい文章」ということになります。このくらいの対義語ならだれでも思い浮かぶでしょう。
「うまい」という言葉は大変便利で、いろいろな使い方ができます。「うまい絵」「うまい文章」という形容詞的な使い方から、副詞的に使って「うまく書けた」「うまくできた」などのように用途が広いです。
「拙い」の対義語②上手
「うまい」も「上手」も同じような意味です。したがって、「上手」も「拙い」の対義語です。「拙い手でパソコンを操作する」を逆の意味にすると、「上手にパソコンを操作する」ということになります。これも簡単な対義語です。
「拙い」の対義語③巧妙
「巧妙」とは、「やり方が優れていて、巧みである」ということです。「拙い」の意味が「技術が劣っている」「巧みでない」ということですから、ちょうど「巧妙」が対義語になります。「人形を巧妙に操る」などのような使い方がされます。
「拙い」の対義語④器用
世の中には器用な人がいますが、その器用の意味は「細かい作業を巧みにやる」ということです。「器用」の対義語は「不器用」ですが、「拙い」も対義語の列に入れてもいいでしょう。「巧みでない」の反対の意味だからです。
「拙い」の類語①稚拙
「稚拙」とは、「経験が不足していて、未熟である」という意味です。「経験が不足」という点は「拙い」の類語ではありませんが、「未熟」という部分は同じ意味です。したがって、「稚拙」を「拙い」の類語としてもいいでしょう。
「拙い」の類語②下手
「拙い」の意味が「下手である」と解説したことで分かるでしょうが、この「下手」そのものが類語となります。「下手な絵」「下手な字」などのような使い方がされますが、「拙い絵」「拙い字」と言い換えても同じ意味です。
「拙い」の類語③未熟
「未熟」とは「まだ熟していない」ということですが、人間に使う場合は、「まだ技術不足で、通用しない」という意味になります。これも「拙い」の類語です。「拙い」に「技術が未熟である」という意味があるからです。
「拙い」の使い方・例文
「拙い」の意味が分かってもそれだけでは十分でなく、どう使えばいいかが重要となってくるので、使い方の例文を紹介しましょう。実際に使う場合に役に立つ例文をいくつか取り上げるので、ビジネスシーンなどで応用ができます。
例文①
ビジネスシーンではいろいろなテーマについて説明する機会もあるでしょうが、そのような場合の「拙い」の使い方の例文です。「拙い説明で申し訳ありませんが、意は尽くしたつもりです」。
この例文の場合、「拙い」と言って、自らを謙遜しています。「拙い」という言葉を使う場合、このように謙遜の意味を交える場合がかなりあり、ビジネスシーンでも頻繁に登場する言い方です。
例文②
「拙い文章ではございますが、ひとまずまとめさせていただきました」という例文があります。この例文もビジネスシーンに出てきそうですが、何らかのレポートでも作り、それを遠慮しながら提出したのでしょう。
この例文でも謙遜の態度が表れています。ビジネスシーンでは自分のやったことを自慢するということはあまりありませんから、この例文のように控えめに表現して、提出することが多くなります。
例文③
同じようなビジネスシーンでの例文はいくつもあります。たとえばこんな例文です。「山田君の話し方は拙かったが、気持ちは十分にくみ取れる」。この場合は、山田君の話し方自体は未熟で、下手であるが、意気込みは十分に伝わったという意味です。
「話し方が拙い」と言われるのはうれしものではありませんが、大事なのは気持ちです。気持ちがそこそこ伝われば、少しくらい話し方に欠点があっても、ビジネスシーンでは許されることがあります。
例文④
英語力を「拙い」という言葉で形容できます。その使い方は、「私の拙い英語力で、うまく相手に言いたいことが伝わったかどうか自信がない」です。国際化が進んだ日本のビジネスシーンでは英語が必須とも言われていますが、まだ「拙い英語力」の人もいます。
ただ、「拙い英語力」でも通訳を使えば意味は伝わるので、必ずしも困ることはありません。それでも、東京オリンピックが近づいている時にあっては、英語力が「拙い」よりも「巧み」なほうがいいことは言うまでもありません。
例文⑤
目上の人に意見を言う場合、「拙い」という言葉を使えば、響きが柔らかくなって、いい感じになります。その場合は、「拙い意見ではございますが、こちらの案のほうが顧客のイメージがよいかと存じます」のような例文となります。
目上の人に意見を言うには勇気が必要ですが、少しでも謙虚な姿勢を示せば、あたりがソフトになります。それができるのが「拙い」という言葉で、「拙い意見」とすることで、遠慮しながらも意見を言うという意味になります。
例文⑥
あまり頻繁に使う表現ではありませんが、「拙い知識」という言い方があります。これは、「無知である」「知らない」「不勉強である」ということを謙虚にお詫びする場合の言い方で、ビジネスシーンで用いられることがあります。
「拙い知識」を使った例文は、「拙い知識で恐縮ですが、そのシステムはどのような場面でも使えるのでしょうか」などのようになります。これは、「不勉強で申し訳ありませんが」というお詫びの意味になり、その前置きを置いて次の質問に移っています。
例文⑦
未熟であったり、能力が足りなかったりする人のことを「ふつつか者」と言いますが、この「ふつつか者」を「拙い者」と言い換えることができます。その場合は、次のような使い方になります。「拙い者ですが、今後ともよろしくお願いします」です。
「ふつつか者ですが」を言い換えた「拙い者ですが」は、自己紹介でよく使われます。自己紹介で自分を謙遜しながら示す場合に適した表現となります。試しに一度使ってみると、うまい自己紹介ができるでしょう。
「拙い」の英語表記
「下手である」「技術が劣っている」「巧みでない」という意味の「拙い」に合う英語表現があります。英会話や英語の文章を書く場合に、「拙い」をどう表現すればいいか迷ったら、これから紹介する訳語を使うといいでしょう。
poor
「貧乏である」という意味の「poor」という英語がありますが、もう一つ意味があって、「下手である」ことも表します。たとえば、「poorly written」と副詞的に用いれば、「下手に書かれた」という意味になります。つまり、「poor」は、「拙い」の英語訳です。
clumsy
「clumsy」とは、「不器用な」「ぎこちない」という意味の英語です。したがって、「技術が劣っている」という意味の「拙い」とは似ています。そのために、「拙い」を「clumsy」と訳しても全く問題はありません。
unskillful
「unskillful」は「skillful」の対義語で、その意味は「下手な」「拙劣な」ということです。この意味を見ればもうお分かりでしょうが、「拙い」の英語訳にぴったりです。「unskillful actor」などのような使い方がされます。
「拙い」は巧みでないという意味
ここまで、「拙い」の意味をはじめ、対義語・類語、使い方・例文などさまざまな面を紹介しました。「拙い」にはいくつか意味がありますが、基本的な意味は「巧みでない」「下手である」などです。実際に、この意味での使い方が一番多く、よく耳にします。