英語は正しい音読方法によって効果が発揮する!
文章の読み方には「音読(おんどく)」と「黙読(もくどく)」の2種類があります。「音読」とは声に出して文章を読むことで、中学や高校の英語の授業で、英文を音読した経験がある方は多いのではないでしょうか。
英語の学習には「音読」が非常に効果があると言われていますが、何も考えずにただ声を出して英語を読むだけでは効果は半減してしまいます。適切な正しいやり方で「音読」することが効果を100%発揮する方法です。
「黙読」とは声にしないで黙って読むことです。英語の学習には音読が効果があるからといって「黙読」が学習方法として良くないという訳ではありません。
「黙読」には黙読の良さがあります。声を出さずに心静かに読むことにより、頭の中で思考を巡らせながら読むことができるという利点があります。
慣れないうちは声を出す音読は、何となく気恥ずかしい感情がともない、そのことに気を取られて身が入らないことがあります。
そのような場合は最初は声を出さずに黙読をして、心の中で音読をするように心がけるのがコツです。そのうち次第に声を出す音読に慣れてきます。
英語の音読による効果
中学や高校の英語の授業では音読をしたけれど効果があったと感じた方は少ないのではないでしょうか。それは何も考えずに先生に言われるまま、ただ声を出して読んでいたからです。
では英語を学習する際、正しい「音読」をすればどのような効果があるのでしょう。またどのようにすれば効果が上がるのでしょう。
また声を出して読む「音読」と、黙って読む「黙読」とではどのように効果に違いがあるのでしょう。音読で英語を学習するメリットとデメリットも合せて紹介します。
速読力が身につく
英語の文章を声を出さずに黙読している場合は、少し不慣れな単語や言い回しが出てきたときには、無意識のうちに読み返しています。それに比べ声を出して読む「音読」をしているときは基本的に読み返しはしません。
つまり文章を読み終えるスピードが「音読」の方が早くなります。また読み返しをしないことにより単語や文節を早く理解する習慣が身に付き速読力が増します。黙読の場合は何度も読み返せるという甘えから早く理解する習慣が付きにくくなります。
音読の場合は、多少意味があやふやな単語をそのままにしてしまうというデメリットがあります。しかしこれは英語と日本語の表現方法の違いを理解することで解決できます。
日本語は一つ一つの単語の意味を認識して文章を解釈する言語ですが、英語の表現方法は一つ一つの単語の意味よりも、文節の言い回しや流れで全体の意味を理解する言語です。つまり少々意味が分からない単語があっても全体で解釈できればOKです。
前述の音読の「あやふやな単語をそのままにしてしまう」というデメリットは、英語を習得する上では、逆に速読力を身に付けるというメリットに変ります。
リスニング力の向上
英語の文章を黙読すると、どうしても英語を日本語に翻訳してから解釈しようとしてしまいます。この翻訳して理解しようとする行為が、英語力を身につけるにはデメリットになります。
英語の文章を音読してどんどん前に進むことにより、翻訳する時間を与えないで「英語を英語のままに理解する」という習慣がつきます。この「英語を英語のままに理解する」ことが英語力を付けるには非常に大切なやり方です。
英語を翻訳せずに英語のまま理解することは、読む力(リーディング力)だけでなく、耳で聞く力(リスニング力)の向上につながります。つまり音読には英会話の基本になるリスニング力を付ける効果があります。
単語を正しい状況で使うことができる
日本語で「飲む」にあたる英語は一般的には「drink」ですが、飲み方によって英語の場合は単語がたくさんあります。日本語の場合は、チビチビ飲もうがガブ飲みしようが全て「飲む」という文字で表現します。
英語の場合は、少しずつチビチビ飲む場合には「sip」を使い「He was sipping his coffee.(彼はコーヒーをすするように飲んだ)」のように表現します。
直訳では同じ「飲む」ですが、コーヒーはガブ飲みする飲物ではないので「飲む」という動作でも「drinking」を使わずに「sipping」を使います。
またビールをごくごくと一気に飲むような場合には、英語では「gulp(ガルプ)」を使い「He is gulping down the beer like hell!(彼はビールをすごい勢いで一気飲みしている)」のように表現します。
このように英語では飲み方によって使う単語が違います。日本語に翻訳してしまうと全て「飲む=drink」になってしまい正しい英語表現にはなりません。
英語の文章を「音読」することは、日本語に翻訳するひまを与えずに全体の意味をイメージとして捉える効果があるから学習に向いていると言われるのです。
つまり音読することは、英語をできるだけ英語のまま、文章全体のイメージで理解する習慣が付くので、状況によって変る英単語を正しいく使い分けることにつながる効果があります。
英語の発音が良くなる
英語の文章を声を出して音読しただけでは、その発音が正しいかどうかは分かりません。たとえば我流の発音で手振り身振りを交えて話せば何とか通じるかも知れませんが、正しく伝わっているかは疑問です。
音読することで英語の発音のニュアンスはつかめますが、それはあくまで我流の発音で実際に相手に通じる英語になるとは限りません。そのためには英語を話す音声教材を参考にすることをおすすめします。
言葉は相手に言いたいことを伝える手段です。身振り手振りは言葉が通じないときのサポート手段です。言葉で伝えるためにはその言語の正しい発音の特徴を知ることが基本原則です。
つまり「音読」することは発音の基本を学ぶこと、音声教材を聞くことはその発音が正しいかどうかを確認することです。英語の発音を良くするためには「音読」と「音声教材」両方を併用することをおすすめします。
英語の音読のやり方
英語学習で音読することは、文章を目で見ながら声を出して発音するので、単語や文節が目と耳から入るので記憶に残りやすい学習のやり方です。
また英語は単語の意味を理解するのはもちろん大切ですが、色々な言い回しで表現する言語なので、文節や文章の意味を全体的に捉えるやり方が必要です。
英語の文章を全体的に理解するには音読は効果的な学習方法です。また音読には、ただ声を出して読むだけでなく、より効果が上がる実際のやり方やコツがあります。主な音読のやり方を5つ紹介します。
スラッシュリーディング
英語学習の初心者におすすめの音読のやり方にスラッシュリーディング法があります。スラッシュリーディング法とは文字通り英語の文章に、スラッシュ「/」を入れて読むやり方です。
たとえば「I'm going/ to see/ a horror film/ with Tom.(私はトムとホラー映画を見るつもりです)」のように意味のかたまり(文節)ごとにスラッシュを入れて読むのがコツです。
このように「/」で区切ることにより視覚的に意味を理解しやすくなります。また日本語の文章は「主語+目的語+動詞」の語順で構成されますが、英語は「主語+動詞+目的語」と語順が違うのがこのやり方でよく理解できます。
日本人が英語を理解するのに妨げになるのがこの語順の違いです。日本語の通常の文章では動詞は最後にきますが、英語の場合は主語のすぐ後に動詞がきます。
スラッシュリーディングのやり方で、動詞と目的語の語順を入れ換えることなく英語そのままの表現を視覚的に捉えて、音読と合わせることで瞬時に理解しやすくなります。
リピーティング
英語の「リピート(repeat)」は「繰り返す」「復唱する」という意味で、英語学習方法のリピーティングはリピートの名詞形でその意味の通り「復唱して学習する」という最も基礎的でよく使われる学習のやり方です。
リピーティングは教材のもとになる音声を聞いた後、その発音をまねながら復唱するように英文を読むやり方で、音声教材を注意深く聞いて確認しながら発音することで正しい発音を身につけることができる初心者におすすめのやり方です。
Read&Look Up
「Read&Look Up」という英語の音読学習法は、多くの授業や教室で実践されている学習のやり方です。「Read」は読むという意味で「Look Up」は見上げるという意味の英語です。
「Read&Look Up」法を授業などで行う場合は、先生の「Read」という合図で教材の文章を一度音読します。そのあと「Look Up」の合図で顔を上げ教材を見ないで覚えた英文をそらで音読します。
重文や複文など複雑で長い文章の場合は、スラッシュなどで文章をいくつかの短い文節に区切り、Read&Look Upを繰り返して音読します。一人で学習する場合にも応用できます。
最初に教材を見て音読するときに、覚えるために集中力が必要なので注意深く読む習慣がつきます。また意味や文法の理解がないと覚えにくいので英語の文章解釈に効果があるおすすめの学習法です。
オーバーラッピング
オーバーラッピングもよく使われる音読学習法で、教材の音声に合せて同じスピードで英文を読む方法で意外に難易度が高い学習法で中級者以上の方におすすめのやり方です。
英文の意味がある程度理解できていないと、教材の音声スピードについて行けません。意味を考えながら読んでいては間に合いません。
逆にこのオーバーラッピングがスラスラとできるようになれば、英会話でもスムーズに言葉が出てきて、話が上手にできるようになる練習法です。
シャドーイング
シャドーイングは上級者向きの難易度の高い音読学習方法で、英語の音声教材を聞きながら音読するところはリピーティングやオーバーラッピングと似ています。
しかし違うところはシャドーイングは音声教材を流したままにして、「シャドウ(shadow/影)」のように、同時ではなく後を追いかけて音読するところです。
自分が発音している間にも、英文の音声はどんどん先に流れて行きます。かなり集中力がないとできない練習法です。シャドーイングは同時通訳者の訓練にも使われる方法で、音読にかなり慣れてきた上級者におすすめの学習方法です。
英語の音読の手順とコツ
前の章では音読の一般的な学習方法を紹介しました。しかしいざ音読をやって英語をマスターしたいと思っても、何から始めたらたら良いのか迷う方も多いのではないでしょうか。
もちろん自分のレベルや目的に合った学習方法を取入れるのがベストです。それを見つけるための手助けとして、おすすめの学習方法や具体的な手順、コツを紹介します。
①文章を黙読
音読は声を出して英文を読むことで、目と耳から英語を理解する学習方法です。といっても最初から声に出して音読するのは気が引けるものです。
まず黙って文章を目で見て読む「黙読(もくどく)」から始めることをおすすめします。まず黙読しながら心の中で声を出して読むことから始めるのが音読に抵抗が無くなるコツです。
また初心者が最初から音読しようとすると、声を出して読むことに気を取られて英語の意味を理解することが疎(おろそ)かになってしまいます。音読する前に黙読して文章全体の意味を把握してから音読することをおすすめします。
②わからない単語を調べる
次におすすめする手順は、黙読した英語の文章の中にわからない単語があったなら辞書でまず調べることです。意味がわからないまま音読しても学習効果は上がりません。
意味がわからなければ、せっかく音読して文章を記憶しても、どんな場合に使って良いのかがわかりません。結局「宝の持ちぐされ」になってしまいます。
まずわからない単語を辞書などで調べ意味を理解してから音読すれば、英文全体の解釈も早くなり上達するコツです。
③文章の音声を5回聞く
単語の意味や言い回し表現の仕方を確認したら、次のステップは音声教材のCDなどで実際の発音を聞くのが学習のコツです。音声は5回ていど聞くのがおすすめです。
まず最初の1回目は全体の発音を何となく理解するように聞きます。次に息継ぎのポイントやリズム、アクセント、イントネーションなどを聞きます。これらを理解するためには最低5回ていど繰り返して聞くことをおすすめします。
④文章を区切ってリピーティング10回
これまでのポイントやコツは、音読学習を効果的にするための準備運動・リハーサルです。これからが実際の音読の本番です。まず前に紹介したリピーティングをします。
リピーティングは音声を流して、教材の英文を音読することですが、最初の段階では英文を最後まで通して音読するのは少し難易度が高すぎます。
テキストの英文をスラッシュ「/」などでいくつかに短く区切って、音声もスラッシュのところで一度止めて少しずつ音読をします。これを10回ていど繰り返して練習します。
このように初心者の方は短い文節に区切って、ゆっくりと練習するのが音読に慣れるコツです。また文節に区切ることで英語表現の語順や言い回し方の特徴も理解できるので一石二鳥の効果があります。
⑤全体の英語音読10回
短い文節ごとの音読練習をしたならば、次のステップは文章を最後まで通して音読をします。1回音声を最後まで聞いたら5回音読を繰り返します。これを1セットにして2回繰返せば音読を10回することになります。
1回目のセットでは、英文全体の音声を1回聞いて音読を5回くり返すことで、まず文章全体の流れや意味、言い回しを把握します。
2回目のセットでは、発音のアクセントやイントネーションまで細かくチェックします。ここまでマスターすれば英語学習の中級者と言えます。
英語を上達するコツはこのように順を追って学習することです。早くマスターしたい気持ちは分かりますが無理な高飛びはケガの元です。
⑥シャドーイング5回
⑤番までのステップがマスターできたなら次はシャドーイングを5回ていど繰り返します。シャドーイングは前述の音読のやり方のところで紹介したように上級者向きの音読学習法です。
シャドーイングは音声の英文を流しながら、音源を止めることなく後を追うように発音する高度な練習法です。このシャドーイングのコツをマスターできれば同時通訳などにも活かせます。そのくらい難易度の高い学習法です。
初心者の方は音読の手順とコツの①〜⑤までを何度か繰り返して音読に慣れてからシャドーイングに挑戦してください。
⑦オーバーラッピング5回
音読学習法の最後の仕上げがオーバーラッピングです。これも前に紹介したように非常に難易度の高い練習方法です。
オーバーラッピングは英語の音声を聞きながら、そのスピードに合せてオーバーラップするように同時に発音する練習法です。ヒアリング能力とスピーキング能力が高くないとついて行けません。
同じ英文だけでなく、色々な英文をそれぞれ5回ずつオーバーラッピングを練習して、最終的にどのような英文にも対応できるようになれば英語の音読学習法をマスターしたと言えます。
英語の音読教材選びのポイント
英語の音読教材を選ぶ際のポイントは、自分のスキルや学びたい方向性にあったものを選ぶのがベストです。
自分の現在のスキル以上のものを選ぶと理解に手間取り、学習スピードが遅くなったり学習意欲を失う結果になることがあるので要注意です。
また音読用の教材は、音声サンプルと英文テキストと日本語の全文訳が揃っているものがおすすめです。もちろん自分のスキルレベルに合っていることが前提です。
目的に合うものを選ぶ
スキルに合っているものも大切ですが、学習目的に合った教材を選ぶのも大切なポイントです。たとえばTOEICや大学受験など、英語の試験勉強のための教材ならばその試験の参考書または参考書を基にした教材を選ぶのがベストです。
また英語の基礎を学びたい人は、意外に中学校の教科書が役に立ちます。中学校の教科書には日常的な会話に必要な単語とフレーズはほぼ載っています。
中学3年までの教科書をしっかりと音読すれば、英語の基礎や基礎的な英会話はマスターできます。このように目的にあったものを選ぶようにしましょう。
すぐに理解できるもの
また教材はすぐに理解ができるもの、現在の自分のスキルに見合って簡単で分かりやすいものを選ぶのがコツです。
何故ならば先にも紹介したように、難解な教材だとその時点でつまずいてしまい、学習意欲やモチベーションが保てません。無理をしないで理解しやすい教材を選ぶようにしましょう。
テキストは1冊
もう一つテキスト(教材)は1冊にしぼりましょう。音読用のテキストが色々あると迷いが生じて混乱してしまいます。また結局どれも中途半端になる可能性があります。
むしろ1冊のテキストに添ってしっかりと勉強したほうが効率もよくなり、理解も早く深くなります。自分に合ったテキスト1冊にしぼるのがベストです。
英語の音読におすすめの本
英語の音読を学習するには、前に「スラッシュリーディング」や「リピーティング」「シャドーイング」「オーバーラッピング」などを段階をふんで順にマスターして行くのがベストと紹介しました。
それらの音読学習を実践して行くためにおすすめの本(教材)を3つほど特徴などを合せて紹介します。
音読パッケージトレーニング
森沢洋介氏著による「音読パッケージトレーニング」シリーズは人気の一押しの本です。効果的な音読の仕方が、こと細かく解説されていてやり込む価値のある1冊です。
リピーティング用の音源も付いているので、構文を理解しながらリピーティングすることで確実に力がつく教材です。ただ初心者には難しい部分もあり、例文の難易度にも多少バラツキがあります。
スーパーエルマー
TOEICのリスニング対策に人気の教材に「スパーエルマー」があります。ニュース記事をテキストに使っているのが特徴で、英語の文章を英語のまま前から理解していくのに適した教材です。
付属の音源CDは、意味のかたまりや文節ごとに区切ってあるので、スラッシュリーディングにおすすめの教材です。
英会話・ぜったい・音読
「英会話・ぜったい・音読」は中学校レベルの基礎的な文法を中心に書かれているので、初心者や英会話の入門書としておすすめの1冊です。
会話形式のダイアログが多く、文章も簡単なものが中心で、ジャンルも多彩なので楽しく使いやすい教材です。また英語学習には音読が非常に効果があることが実感できる本でもあり、シリーズは全6巻発行されています。
英語の音読は反復練習が大切!
英語を学習するには音読が非常に効果があること、また音読のやり方には色々な方法があり、手順を踏んでひとつずつ階段を上るようにクリアして行くことの大切さを紹介してきました。
英語学習の音読は何度も何度も反覆練習をして、日本語に訳すのではなく、英語を英語のまま理解できるようになることがマスターする秘訣です。