節制の意味とは
節制(せっせい)という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。お金がない時に「金欠だから節制しなきゃ」なんていう使われ方でよく耳にすることがあります。
今回は摂生という言葉について紹介していきます。摂生の意味や類語、例文と使い方をはじめ、似た言葉で同じ読み方をする摂生の意味や使い方、節制と摂生の違いについても紹介してきます。
口語では同じ発音になる節制と摂生ですが、それぞれの意味には違いがあります。節制と摂生を正しく使い分けられるようしっかり覚えてください。まずは節制の意味を紹介しますので、ご自身が考える節制の意味が正しいかを確認してみてください。
意味:度を越さないように控える
節制には大きく2つの意味があります。1つは「度を越さないように控える」という意味。もう1つは「欲を抑えてつつしむ」という意味です。似たような意味ではありますが、それぞれの違いを確認すす為に例文で違いを確認しましょう。
まずは「度を越さないように控える」という意味での使い方です。「飲み会でまだ飲める気がするが、翌日にプレゼンが控えているためノンアルコールドリンクに変えた」。この状況は「度を越して酔いすぎないようにアルコールを控えた」状況で、これが節制の1つ目の使い方です。
次に「欲を抑えてつつしむ」という意味での使い方です。「ダイエット中にお菓子が食べたくて仕方ないが我慢する」。この行動は、「食べたい欲を抑えて慎む」状況で、これが節制の2つ目の使い方です。
節制と摂生の違い
節制について、簡単に意味や例文を紹介してきました。ところで冒頭に紹介したように節制と同じ読み方(せっせい)をする摂生という言葉がありますが、摂生の意味についてはご存知でしょうか。また、節制と摂生の意味の違いについてはご存知でしょうか。
同じ読み方ではあるものの、節制と摂生の意味は若干の違いがあります。先ほど節制の意味について紹介しましたので、次には摂生についても紹介していきます。
摂生の意味も節制の意味と一緒に理解し、(口語では同じ読み方なので問題ありませんが)文章で書く際に間違いを犯さないようしっかりと理解し、正しい使い分けができるようにしましょう。
摂生の意味とは
漢字で見る「摂生」という文字からは、イマイチ正しい意味が理解しにくい言葉です。節制は漢字の意味から何となく「節度を持って制限する」という意味が思い浮かびますし、このザックリした解釈でも大きな間違いはないのですが。
摂生という言葉の意味をザックリ理解しようとした場合、どちらかというとよく耳にするのは否定的な言葉としての摂生です。否定的と紹介したのは、否定をあらわす「不」を頭につけた「不摂生(ふせっせい)」という言葉の方が耳にする機会が多いからです。
不摂生という言葉であれば「日頃の不摂生がたたって病気になった」など、日常会話でも使うことがあるのではないでしょうか。不摂生の漢字は節制ではなく摂生です。
ではここからは、摂生の意味について、先ほどと同じように例文を用いながら紹介していきます。不摂生という言葉をイメージしながら確認してください。
意味:飲食に気を配り規則正しい生活を送ること
摂生の意味は「飲食に気を配り規則正しい生活を送ること」です。例えば、アルコールや揚げ物を控え、早寝・早起きを習慣化するようなことを摂生といいます。やり過ぎをなくし生活習慣を良好に保つ姿勢、食事も腹八分目で終わらせ体調を整えるような姿勢が摂生です。
例文としては「摂生を心掛けた結果、アルコールの量がほぼゼロになった」「摂生に努めたら病院に行く機会が大幅に減った」などが挙げられます。普段の生活で自身を抑制し、適度に済ませることです。
さてここで否定の「不」をつけてみましょう。節制は「飲食に気を配り、規則正しい生活を送ること」なので、その反対に「飲食に気を配らず(好きなだけ飲み食いし)、不規則な生活を送ること」となります。いかがですか。日頃使う「不摂生」の意味になりました。
節制の類語
ここまでは節制と摂生の違いやそれぞれの意味を紹介し、例文により理解も深めていただけたのではないでしょうか。しかし、更に節制に対する理解を深めていただくために、節制と近い意味を持つ類語も紹介していきます。
節制と摂生の大きな違いは、摂生にはより健康の事を考えて体に悪いことに対する欲を制する、というような健康面への留意が多分に含まれているという部分にあります。先ほど紹介した不摂生も「摂生」が正しく「不節制」では間違いになりますのでご注意ください。
さてそれでは、節制の意味をより正しく理解していただくため、節制の類語を3つ紹介します。類語を参考にしていただきながら節制の意味を正しく理解し、正しい使い方ができるようになりましょう。
我慢
節制の類語として最初に紹介するのは「我慢」です。この言葉は日頃からよく使われる言葉でしょう。「我慢」には「自分の感情や欲望の赴くままに行動せずに堪える」「辛抱する」という意味があります。
では「我慢」の使い方を例文で確認しましょう。例えば「ダイエット中だから食後のデザートを我慢する」「金欠だから給料日まで飲みに行くのは我慢しよう」などが挙げられます。日頃から使っているような例文ではないでしょうか。
類語として紹介した「我慢」と「節制」の違いは何かというと、「我慢は感情や欲を抑制するなど幅広く使える」のに対し、「節制は主に食欲や喫煙欲などの欲をおさえるときに使う」言葉であるという違いがあります。微妙な違いですが覚えておきましょう。
抑制
節制の類義語として紹介する2つめの言葉は「抑制(よくせい)」です。抑制には主に2つの意味があります。1つめは「意識的に努力して衝動や感情を抑えること」2つめは「進もうとするものを抑えること」です。では、例文で意味を確認してみましょう。
「彼女は自分の思いどおりにならないと、すぐに怒り出すため感情を抑制する必要がある」この抑制は1つめの意味にあたります。自分で努力して感情を抑える必要があるという意味で抑制という言葉が使われている例文です。
次は「コーヒーに含まれているカフェインには眠気を抑制する効果がある」この抑制は2つめの意味で使われています。放っておくとどんどん眠気は増していってしまいますが(進もうとするもの)、それを抑えるという意味で抑制が使われている例文です。
律する
節制の類語として最後に紹介する類語は「律する」という言葉です。律するという言葉は、「何らかの基準をもとに、物事を判断したり考えたり、処理する」という意味があります。先ほどまでと同様に「律する」の使い方を確認してましょう。
最もよく目にする使い方は「自分を律する」ではないでしょうか。この使い方では「自分に厳しい基準を設け、その基準に基づいて行動や判断を行う」ことを意味しています。
具体的な例としては、ダイエットの効果を向上させるために運動する時間を15分から30分に伸ばす。これは「律する」に当てはまる例文です。解りやすく言うと、ややストイックに物事に取組み続けることで、取組んだ事柄に対しては目標を達成するまで守り続けるということでしょうか。
節制の類語として「律する」を紹介しました。文字上では見かけますが、耳にすることは少ないかもしれません。さてここまでは節制の類語を紹介しましたので、次は対義語を紹介します。
節制の対義語
さてでは次に「節制」の対義語をいくつか紹介していきましょう。抑制という言葉には類義語と同じように対義語も多くあります。類義語とともに対義語も確認することで「節制」の言葉の意味をより深く理解してください。
先ほど不摂生という言葉を紹介しました。摂生という言葉に対しては意味が正しく理解されていない場合でも、反対の言葉である不摂生という言葉は使用頻度も高く、説明されれば納得しやすい言葉だったのではないでしょうか。
摂生の反対語である不摂生の意味を理解することで、その意味から否定の意味合いを抜くことで「摂生」が理解できるということもあります。そのため、これから紹介する節制の対義語についても、その言葉の持つ意味から否定の意味合いを抜くことで節制の理解深化に役立つことでしょう。
享楽
節制の対義語として紹介する言葉はやや難しい言葉多く、聞いたことはあるがその意味を正しく理解しているわけではない、そんな言葉が多く含まれています。最初に紹介するのがまさにそのような言葉で「享楽」という言葉です。
読み方は「きょうらく」で「思いのままに楽しむ」という意味があります。(きょうがく)と読んでしまうと間違いで(きょうらく)が正解なので注意しましょう。
では享楽を使った例文を確認しましょう。「人生を享楽する」どこかで見かけたことがあるかもしれません。説明のままですが、「やりたいことをやりたいようにやって人生を楽しむ」という意味です。この「やりたいことをやりたいようにやって楽しむ」の部分が「享楽」の意味になります。
節制は、節度を持って制するという意味なので、この「やりたいことをやりたいようにやる」という部分の真逆なので享楽は対義語ということになります。
放縦
続いて紹介する節制の対義語もやや難しい言葉になってしまいますが、「放縦」という言葉になります。読み方は(ほうじゅう)という読み方で、あまりなじみのない言葉かもしれません。意味は「気ままにしたいことをする」「気ままでだらしないこと」という意味があります。
読み方は濁点のない(ほうしゅう)と読むこともありますが、一般的には(ほうじゅう)と読まれているようです。では例文を確認しながら「放縦」の意味を確認しましょう。
「放縦に暮らす」気ままにだらしない生活を送るという意味です。気ままは良いとして、放縦には「だらしない」というネガティブな意味があるので使い方は要注意。
放という漢字には、自由にするという印象があります。節制は自由とは反対に色々な事を抑制することを意味していますので、放縦も節制の対義語と言えます。
節制の使い方と例文
さて、節制の意味はだいぶ理解していただけたでしょうか。類語や対義語、摂生との違いなど幅広く紹介してきましたので、ここで節制という言葉を使った例文を用い、改めて節制の言葉の意味を確認しましょう。
これまで紹介してきた例文よりも、より身近な例文を紹介していきますので、日常生活でも使うことが出来る例文になっています。記憶の定着を図るためには、インプットした情報をアウトプットすることが大事だと言われています。
せっかく節制の意味を理解していただいたのであれば、是非日常生活の中でアウトプットしていただき、自分の言葉として定着化していきましょう。
節制した生活を送ってきた
最初の例文は「節制した生活を送ってきた」という例文です。この例文は「自分がやりたいこと(欲求)を抑えた生活を送ってきた」という意味になります。この意味から「節制」という言葉は「自分の欲求を抑えた」という意味になります。
例えば、アルコールをよく飲む人がアルコールをほとんど摂取しない生活を送った場合、食べるのが大好きな人が食欲を抑えて食べる量を減らした場合などが「節制した生活を送ってきた」ということに当てはまります。
今年は酒もたばこも節制する
節制を使った例文として次に紹介するのは「今年は酒もたばこも節制する」です。この例文では「お酒を飲みたい欲求、たばこを吸いたい欲求をグッと堪え、お酒の量を減らし、たばこの本数も減らした生活をする」という意味になります。
この例文では「(お酒を)飲みたい欲求、(たばこを)吸いたい欲求をこらえて共に減らす」ということが「節制」の意味として使われているのがわかるのではないでしょうか。
これらの例文から、節制の意味と使い方の理解が深まったでしょうか。最初の例文では「やりたいことを我慢する」、2つめの例文では「お酒を飲みたい気持ち、たばこを吸いたい気持ち」を我慢しています。
2つの例文からわかることは、「節制」という言葉には(いずれの例文でも表現されているように)何らかの欲求をグッとこらえる、という意味が含まれているということです。
節制の英語表現
それでは最後に「節制」の理解を深めるために、他の言語ではどのように「節制」が表現されているのかを確認していきましょう。他の言語で表現されている意味を確認することで理解が深まることもありますし、逆に他国での微妙なニュアンスの違いを確認することもできます。
英語での表現では、使い方によりたくさんの表現があります。もちろん日本語の「節制」にしてもいくつかの類語を紹介してきましたので、英語から日本語に訳そうとした場合にはたくさんの表現があるということになります。
この後「節制する人」を意味する表現について触れますので、他の表現を先に紹介します。1.abstain from(たばこ・酒・楽しみ・快楽など):(たばこ・酒・楽しみ・快楽など)を節制する。2.use moderation in(~を節制する)3.moderate one's smoking(たばこを節制する)
節制する人を意味する表現
では英語で「節制する人」を意味する単語を紹介します。英語では「abstainer」と表現されます。abstainerは名詞で、「節制する人、禁酒家、禁煙家」の意味で使われています。
日本の節制は「欲求を我慢すること」なので、お酒を我慢している人、たばこを我慢している人が当てはまります。abstainerも同様に「禁酒家、禁煙家」としても使われていることから、日本でも英語圏でも節制の意味は同じように使用されていることが分かります。
節制は度を越さないように控えるという意味
今回は節制という言葉の意味や使い方、摂生との違いを紹介してきました。欲求を自我で抑えて生活するのが節制。主に健康面への配慮を含めて規則正しい生活を送ることが摂生。共通する部分もたくさんありますが、大きくはこの様に覚えておけばよいでしょう。
また、英語圏でも節制については同じような意味を持った言葉だということも確認できました。英語で話す機会のある方は、使う機会があれば使ってみてはいかがでしょうか。