往来の意味とは?
「往来」の読み方は「おうらい」です。一般的には「行ったり来たりする様子」を意味する言葉として、日常生活の中で頻繁に使われています。
そのほかにも「行ったり来たりする場所・道路」「人と人との交流」「思考や感情が見え隠れする」など非常に多くの意味を持つ言葉です。
そのため「往来」のもつ意味を完全に理解して、正確な使い方を実践する人は多くありません。そこで「往来」のもつ意味や類語、使い方などのほか英語表記について解説します。
往来の類義語
「往来」は様々な意味を持つ言葉です。そのため、単に言葉の意味を暗記するだけでは、例文の中で正しい使い方を実践することはできません。
「往来」の使い方を正しくマスターするには、類語との相違点から言葉のもつニュアンスを理解することも大切です。そこで、「往来」の類語(読み方)の意味や使い方、例文などを紹介します。
行き来
「行き来」の読み方は「ゆきき」です。「行ったり来たりする様子」を表す意味では「往来」の類語だと言えるでしょう。「往来」がやや堅い表現の使い方であるのに対し、「行き来」はやや砕けた使い方となります。
ただし「行き来」には「人と人との交流」「思考や感情が見え隠れする」といった意味では使われませんので注意しましょう。
「行き来」の例文
「行き来」を用いた例文は「年末は人の行き来が多くなります。」「お盆の高速道路は行き来が多いので、運転には注意しましょう。」などとなります。
「行き来」は例文のように「人」だけでなく「モノ」が動く際にも使う言葉です。したがって、「荷物が間違って行き来してしまった」などの例文にも使えます。
人付合い
「人付合い」の読み方は「ひとづきあい」です。「人と人との交流」を表す意味では「往来」の類語と言えるでしょう。なお「往来」はかしこまった場面で用いるのに対し、「人付合い」はフランクでわかりやすい表現となります。
ただし「人付合い」は「行ったり来たりする(場所)」「思考や感情が見え隠れすること」といった使い方だと意味が通らなくなりますから注意しましょう。
「人付合い」の例文
「人付合い」を用いた例文は「人付き合いが多いのも考えものだ。」「将来のためにも人付合いは大切にしたいものだ。」となります。
「人付合い」は例文のように単体で用いることが可能です。しかし「往来」に単体で置き換えると意味が通らなくなります。
したがって、例文の「人付合い」を「往来」に置き換える場合、「人の」を付して「人との往来が多いのも考えものだ。」「将来のためにも人との往来は大切にしたいものだ。」が適当です。
去来
「去来」の読み方は「きょらい」です。「思考や感情が見え隠れする様子」を表す意味では「往来」の類語だと言えるでしょう。ただし「去来」には「過去と未来」といった意味が含まれている点が「往来」とは異なります。
また「去来」は「行ったり来たりする」の類語として置き換えることができますが、「人と人との交流」といった意味では使えませんので注意しましょう。
「去来」の例文
「去来」を用いた例文は「心に去来する悲しみがあります。」「街並みには人々が去来していた。」となり「往来」に置き換えが可能です。
また、「過去と未来」といった意味を含んだ例文としては「僕の心に様々な思い出が去来した。」となります。この場合「往来」に置き換えると、意味は通りますが表現が弱くなりますので注意しましょう。
往来の使い方・例文
ここまで解説してきたとおり「往来」は「行ったり来たり」「人と人との交流」「思考や感情が見え隠れする」といった意味を表す言葉です。しかし、単に言葉の意味を理解しただけでは十分とは言えません。
大切なのは日常生活やビジネスシーンにおいて、正しいか使い方ができるか否かです。したがって、数多くの例文に接して様々な使い方をマスターすることが必須です。そこで「往来」の正しい使い方や例文について紹介します。
例文①
例文「人の往来が激しくなってきたので、ひとまず撤退しよう」は「往来」にある「人やモノが行ったり来たりする様子」を表す使い方です。
この使い方では、人やモノが目の前を流れている様子を表現しています。したがって、人やモノが一か所に集まるといった様子を表す場合には使うことができません。
例文②
例文「往来で遊ぶと交通事故に遭う確率が高くなってしまいます。」は「往来」がもつ、人やモノが行ったり来たりする「場所・道路」の意味を用いた使い方です。
この使い方だと、人やモノが目の前を流れている様子ではなく、その「場所・道路」を表現しています。非常に紛らわしい使い方ですから、前後の文脈をもって判断しましょう。
例文③
例文「親戚との往来がなくなるのは、とても寂しいことです。」は「往来」がもつ「人と人との交流」の意味を用いた使い方です。
この使い方の場合、基本的には人やモノといった目に見えるものではなく、人間関係を表現しています。ただし、例文によっては「人」と「人間関係」がダブルミーニングとなっている場合もありますから注意しましょう。
例文④
例文「心に往来する哀しさや寂しさを抑えるには大変難しい。」は「往来」がもつ「思考や感情が見え隠れする」の意味を用いた使い方です。
この使い方は人の心に中に現れるを表現しています。ただし、一つの感情は長く続いている様子ではなく、様々な感情が行ったり来たりしている様子を表現している点がポイントです。
往来と従来の違い
「往来」と間違いやすい言葉に「従来」があります。「往」と「住」の文字の形が似ていること、両方とも「来」を用いているのがその理由です。
また、「往」が「住」の文字に似ていることから「じゅうらい」と読み方を間違える人も少なくありません。しかし、「往来」と「従来」では意味や使い方が全く異なります。そこで「往来」と「従来」の違いについて解説します。
従来は「以前」という意味
「従来」の読み方は「じゅうらい」です。その意味は「以前」「これまで」「今よりも前」になります。一般的には、時間軸を表す表現方法とした使い方です。
例文としては「従来から対応していません。」となります。したがって、文字の形は似ているものも「往来」とは全く意味が異なりますから、混同しないよう注意しましょう。
往来を使う際の注意点
往来は「行ったり来たり」「人と人との交流」「思考や感情が見え隠れする」などを表す言葉です。言い換えれば、人やモノ、感情などが1か所に「留まらない」ことを意味しています。
したがって、人やモノ、感情などが1か所に集まる(=集合)様子を表す意味では使えません。そこで「往来」を正しく使う際の注意点について解説します。
往来は「集合」の意味では使えない
「往来」は多くの人やモノ、感情などが行き来する様を表現する言葉です。ただし「集まる」もしくは「とどまる」といった意味は含まれていません。「往来」は目の前を通し過ぎてゆく様子を表しているのです。
人が集まる様子を例文にすると「多くの人々が集合している。」になります。これを「往来」に置き換えると「多くの人々が往来している。」となり、全く違う意味の例文になりますから注意しましょう。
往来の由来・歴史
「往来」は古くから使われている言葉であり、日常生活においても頻繁に用いられています。しかし「往来」の由来や歴史について熟知している人は多くありません。
「従来」の由来や歴史を掘り起こすことで、さらにその意味を理解することが可能です。そこで「往来」の由来・歴史について解説します。
由来
「往来」は「往」と「来」に分けることができます。「往」の漢字には「ゆく」「すすむ」といった意味があります。一方の「来」には「くる」「やってくる」の意味です。
したがって、2つの漢字を合わせることで「行ったり来たり」を表現する言葉となります。つまり、「往来」は2つの漢字が持つ意味が由来となっていることがわかります。
歴史
「往来」の歴史は非常に古く「わうらい」という言葉で、古い書物にもたびたび登場します。ただし、「行ったり来たり」という意味では同じであるものの、古典では現代においてあまり使われない使い方がなされていました。
例えば平安時代に書かれた「宇津保物語」では「手紙」「書簡」、鎌倉時代に書かれた「平家物語」では「贈答品」意味で登場しています。
往来の英語表記
「往来」を英語表記すると「traffic(=トラフィック)」です。英語の「traffic」には「往来」のほかに「交通」「運輸」「貿易」といった意味があります。したがって、日本語と英語ではほとんど意味は変わりません。
ただし英語の「traffic」には日本語の「人と人との交流」「思考や感情が見え隠れする」といった意味は含まれないので、英語での使い方には注意が必要です。
往来は「行ったり来たり」という意味
「往来」は「行ったり来たり」という意味で古くから使われている言葉であり、英語では「traffic」となります。正しい使い方をマスターするポイントは「行ったり来たり」するのは人に限らないことを理解することです。
つまり「往来」には「モノが行ったり来たりする様子「人と人との交流」「思考や感情が見え隠れする」といった意味が含まれ、古典では「書簡」「贈答品」といった使い方もなされていました。
ただし「往来」は多くの人やモノ、感情が「1か所に集まる(=集合)」いった場面では使えません。あくまでも「行き来する」ことが前提となるのが「往来」です。