手袋の正しい数え方・単位
言葉の読み方や意味など、一見してもすぐに分からないことや意外と知らない事を見つけると楽しいものです。今回は、「手袋」の数え方について、さまざまな数え方の単位があるのでご紹介します。
そもそも、数え方の単位というものはそれぞれに意味を持っています。そのために、単位ごとに数え方に意味が変わってくるのですが、そこまで使い分けている人はあまり居ません。
片手での数え方の単位、軍手やグローブ、手袋での数え方の単位、英語ではどのように数え方の単位があるのか、などなど。手袋やグローブ、軍手などのさまざまな数え方を一つ一つご紹介してまいります。ぜひ最後までお付き合いください。
両手で数える
手袋や軍手の数え方について、もっとも一般的な数え方としては両方の手袋をひとまとめとして数える数え方です。手袋の片手での単位もあれば、手袋両方での数え方にもいくつかの単位があります。
手袋や軍手はそのなかでも、2つをワンセットとした単位の数え方をもっています。2つの対になる意匠をもった物を保護する法律が「意匠法」の中で定義されており、手袋はその意匠法の中で左右両方で一組とした数え方として定められています。
双
数え方に対して「~匹」「~羽」のような、日本語で付けられる漢字や言葉を「助数詞(じょすうし)」と呼びます。二つのものが一つとして数えられる助数詞はとてもたくさんあり、手袋にももちろん定義されています。
そのなかの一つが「双(そう)」です。この場合の手袋の数え方は「一双(いっそう)」「二双(にそう)」となります。双という漢字は雙を元にしており、2羽のつがいの鳥を手に持った状態を表した言葉が語源となっています。
対
こちらも手袋や軍手のような2つで1つの組み合わせとして認識される単位で、「対(つい)」です。言葉としても「対になっている」というように使われることがあり、手袋としての数え方も「一対(いっつい)」として数える単位となります。
この「対(つい)」は他にもいくつかの物に定義されており、手袋だけでなく「竹馬」の数え方や「夫婦茶碗」の数え方、「箸」の数え方や「屏風」の数え方などにも用いられています。
組
こちらも手袋や軍手だけでなく非常に多数に使われている数え方です。二つ以上の物をひとまとまりとして数える場合に使われる数え方で、「組(くみ)」には他の単位と少しだけ違った意味をもちます。
手袋や軍手のように2個で一つとしてセットでの数え方だけでなく、不特定多数のグループを作った場合などでも適用できる数え方である点です。明確な決まりが無い場合の数え方として「組」を適用することが正しい組という単位の使い方なのです。
揃い
「揃い(そろい)」という単位の数え方で、手袋を数える方法です。手袋のように対として機能するものもあれば、ひな人形のように「五人囃子」の5体でワンセットとして数えられる、というような、揃って初めて1つと数える場合の数え方です。
使い方としては「一揃(ひとそろ)い」「二揃(ふたそろ)い」と呼び、甲冑などの全身の装備全てが揃って一揃いのように用いられてきました。この場合は「組」とは違って明確に基準が設けられている点が数え方のポイントです。
足
足とはついていますが、こちらも手袋の数え方としてはマイナーな単位の一つです。「足(そく)」は左右で一揃いのものを数える際に使用する数え方で、一部地域では「手袋をはく」という言葉が残っていることから、このような数え方が残されています。
「はく」という漢字についてですが、身体の一部もしくは全体を保護するために着用する行為を「穿(は)く」として呼ぶ時代があり、その名残とされています。ですが、今では手袋は「身に着ける」という認識が一般的です。
グローブなど片手のみの場合
では、同じ手袋の仲間であるグローブはどうなのでしょうか?野球で使われるグローブはたった一つの片手だけで意味を成します。また、ゴルフなどで着けるグローブもまた片手で意味を成します。
この場合に正確に事象を表す単位として適切なのは「枚(まい)」です。手袋とは違い、片手で意味をなすグローブは他にも「個」や「つ」で数えられることもあります。ただ、非常に曖昧な表現になります。正確を期する場合は「枚」が良いでしょう。
手袋の仲間の数え方・単位
手袋やグローブ、軍手などといった「手にはめて使うもの」の仲間についての数え方に違いはあるのでしょうか?続いては、手袋やグローブ、軍手と同じように手に着けてつかう道具たちの数え方についてまとめていますのでご紹介します。
ミトンの数え方
「ミトン」とは、手袋にとてもよく似ていますが指を入れる箇所が「親指側」と「それ以外の指」で分かれているタイプの手袋の事です。
数え方というのは「概念」ですから、ミトンも手袋と同じように「双」や「揃い」で数え、片手だけではグローブと同じように「枚」や「個」「つ」で数えます。
軍手の数え方
軍手の数え方ですが、実は手袋とはすこしだけ考え方が違います。なぜなら「右手用」「左手用」の片手の概念が分けられていないタイプの手袋として使われることが多く、また販売業界専門の数え方が含まれるからです。
そのため手袋の数え方に加えて、「打(ダース)」や「デカ」という数え方が加わります。英語を頻繁に日本語として取り入れる文化が醸成されてきた日本では、英語の dozen を表す漢字として「打」が充てられました。
また、販売されている軍手には、ロットを意味する単位として「デカ」が用いられています。これは軍手10双につき1デカという意味を表しており、片手として枚数でいえば20枚を意味する単位となっています。
ゴム手袋の数え方
となれば、使い捨てのゴム手袋やビニール手袋はいったいどのように数えれば良いのでしょうか?こちらもまた使い方としては二枚一組で使用することが一般的なので「双」でも良いのでは?と思いがちですが、実は違います。
「双」という単位には綿などの丈夫で比較的使いまわしの効く素材で作られている物にあてがわれる単位なので、使い捨ての手袋であるビニール手袋やゴム手袋には当てはまらないのです。
正確な数え方としては、単体で「枚」として数えられます。とくに箱などにまとめた形で販売されているものは、片手単位で「枚」表記されている物が多く、勘違いのないようにしたいものです。
手袋の英語での数え方・単位
日本語において、手袋の数え方はこれほどまでに多くの単位や考え方がありますが、英語ではどのような数え方があるのでしょうか?両方セットでの数え方だけでなく片手だけの数え方などについてご紹介します。
両手セットの英語での数え方
英語での手袋の数え方ですが、両方の手を表す手袋では「a pair of gloves(ア ペアー オブ グローブス)」として表記します。対になるアイテムを表現する場合、英語では「pair(ペアー)」として表記します。
手袋は二つでワンセットなので、もともと表記が「gloves」と複数形で表記されます。二つ以上の場合は「two pairs of gloves(トゥー ペアーズ オブ グローブス)」として pair を複数形として表記します。
片方の英語での数え方
では、手袋の片方だけを意味する数え方はどのように変化するのでしょうか?そもそも手袋の単体を意味する英語は「glove」となります。しかし、このままでは野球のグローブのような片手だけで意味を成す物になります。
そのため、正しく英語で「片方だけの手袋」を指したい場合は「an odd glove(アン オッド グローブ)」として英語表記します。
手袋の中国語の数え方・単位
続いて、翻って中国語ではどのようにして手袋を数えるのでしょうか?英語のように複数の文字列を組み合わせて意味をつくりだす言語体系とは違って、中国語は日本語の元となった漢字を元にしているので、非常によくにています。
しかし、国が違えば考え方も違うように、全く別の漢字を使って一つの単位として扱っています。では、どのような単位で手袋を数えているのでしょうか。
両手セットの中国語での数え方
中国語で手袋を数える単位で、日本にもっとも馴染みが深いのは「双」です。中国語では対になるものを数えるときは、概して「双」をつかって数えます。また、二つで一つを意味する数え方に「双」や「副」を用いて数えます。
一組の手袋としての表現方法は「一副手套」や「一双手套」として数えます。数が増えればそのまま漢数字を増やして表記します。両目や羽などの表現方法としても、同じような表記が用いられます。
片方の中国語での数え方
もともと二つで一組として数える手袋のようなもののうち、片方だけを数える場合、中国語ではどのように表記するのでしょうか?その答えは「只」を用いることで表現します。別の表記方法として「隻」があります。
「隻」もまた、対になった物のうちの片方だけを数えるために使われる単位で、それぞれの使い方としては、「三隻黒手套(三枚の黒い手袋)」や「一只鸭子(一羽のアヒル)」のようにして表記します。
手袋と足袋の数え方・単位の違い
ここまでは手袋の数え方について解説してまいりました。片手だけの数え方や、両手での数え方、英語表記や中国語表記などで述べてきましたが、似たような考え方をもつものとして「足袋(たび)」についてはどうでしょうか?
「足袋(たび)」もまた、手袋と同じように二つで一つとして使うものですし、綿などの使いまわしのきく比較的丈夫で使い捨てなどの使い方をすることも、一枚一枚が基本的に左右が決まっています。
ここからは、そんな「足袋(たび)」の数え方についてご紹介します。「足袋(たび)」もまた、「意匠法」によれば手袋と区分としては大きな違いがありません。しかし、歴史的な背景からか考え方に微妙な違いがあるので、知っておいてこしたことはないでしょう。
足
「足袋(たび)」と同じく靴下や靴などにもいえる事ですが、足に穿くものとして「一足」「二足」として数える方法がもっとも一般的に用いられる数え方です。それぞれに「いっそく」「にそく」と呼んでいきます。
ちなみに、助数詞の読み方は少々特殊で、三足は「さんそく」だけではなく「さんぞく」とも読みます。十足は「じっそく」とも「じゅっそく」とも読み、七を「しち」と読むのと同じように、状況によって読み方が異なる点に注意しましょう。
双・両
身に着ける左右対称のものという括(くく)りでは、「足袋(たび)」も手袋と同じように「双」を用いて数えます。また手袋とは違って、普段から身に着けることの多い「足袋(たび)」は「両(りょう)」という単位での数え方も用いられます。
「両(りょう)」という単位は、二対で一対となる「装束」を数える際に用いられる単位です。奈良平安時代の礼服には、日本の紐を橋の上で結び合わせる足袋の一種である、「しとうず」という履物があります。
「しとうず(襪・下沓)」は沓(くつ)の下に穿く履物なので、布二枚を縫い合わせて作られていました。足袋にも似た見た目でしたが、底もなければ留め具もない履物として現代につたわっています。
現代の日本では、足の指のところで分かれているものを「足袋」と呼び、別れていないものを「しとうず」として、それぞれ「両」で数えています。
枚・半足・片方
続いては、片方である場合の数え方です。足袋も手袋と同じように、元々が二対であるものを片方だけ数える場合は、「枚」を用います。こちらも手袋と使い方は基本的に変わりません。同じように1枚2枚と数えていきます。
また、場合によっては「半足(はんそく)」という単位で数えられることもあります。しかしこの数え方はあまり一般的ではなく、近年になって新しく開発された「半足袋」というくるぶしまでの足袋との混同が起きるため、あまり一般的ではありません。
そうした理由から、足袋や靴下の片方だけをを数える方法としては「枚」や「片方」などといった呼び方が一般的な使われ方として浸透しています。あくまでも知識として留めておくと良いでしょう。
手袋は両手セットで数えるのが基本
日本語としての数え方だけでなく、英語や中国語においでの手袋の数え方についてご紹介してまいりました。様々な商品を取り扱う中で、手袋を取り扱う場合は基本的には、右手と左手を1セットとして数えることが一般的です。
何らかの理由で、手袋を複数取り扱うようなことがあるのであれば、片手ずつの数え方ではなく、両手で一双のようにして数える方が間違いが少なくなります。正しく計上することで、後々の混乱を防ぎましょう。
また、数え方ひとつひとつにも日本が歩んできた歴史を感じさせることもあり、正しい数え方を知っておくことで日本人としてあるべき姿なのではないでしょうか。