貫徹の意味とは?
貫徹とは、「始めから終わりまでを貫き通す」という意味を持った言葉です。初志貫徹という四字熟語が有名で、そこから意味を理解している人も多いのではないでしょうか。ちなみに、同じ音を持った言葉に「完徹」というものがあります。
「テスト勉強で完徹した」などのように使うことのある言葉ですが、こちらはまったく眠らなかった状態を指しています。今回の貫徹とは字も違いますので、混同しないよう注意しましょう。
貫徹は2つの「貫き通す」という意味を持つ
貫き通すという意味を持った貫徹という言葉ですが、その意味は大きく2つに分けることが出来ます。ひとつ目は、自分の意思や主張を貫き通すというものです。初志貫徹は、まさにそれを指す言葉と言えるでしょう。要求を貫き通す場合にも使われます。
意味として2つのパターンが挙げられますが、日常的に使われているのはほぼ、このひとつ目の意味だと考えてもいいでしょう。では、もうひとつの貫徹はどんな意味を持つのでしょう。
貫徹の2つ目は、弾丸や矢などによる物理的な「貫き通すこと」という意味もあります。そういったものが目標物を貫く力を指す「貫徹力」という言葉もあります。例えを挙げれば、砲弾の構造説明には、こちらの物理的意味を指す貫徹が使われるのを見ることが出来るでしょう。
かなり専門的な使い方をする意味なので、ほとんどの人は使わずに一生を終える可能性もあります。そういう意味もあるんだということを、頭の片隅に置いておきましょう。
「初心」貫徹ではない!
貫徹といえば初志貫徹が頭に思い浮かぶ人は多いでしょうが、その熟語を正しく使えているでしょうか。日本語には読みや意味の似た言葉がたくさんあり、つい気付かないうちに間違って使ってしまっている場合もあります。社会人になっても堂々と間違っているのは、恥ずかしいものです。
初志貫徹の初志を、「初心」と間違えている人はいませんか。似た言葉ではありますが、両者のニュアンスは微妙に違うのです。一体、どこが違うのでしょう?
「初志」とは、最初に自分の中で定めた目標や思いのことを指します。対しての「初心」は、最初に思い立った時に感じた純粋な気持ちのことを指すのです。たとえば仕事や学業で迷った時、初心に返るといいと言われています。初心に返るとは、最初に感じたピュアな気持ちを思い出すことです。
初志と初心は、かなり微妙なラインで意味が違います。初心貫徹でも意味が通るような雰囲気はありますが、あくまで初志貫徹です。言葉は正しく使うよう心掛けましょう。
貫徹の意味の由来
貫徹という言葉に貫き通すという意味があるのは、ご紹介した通りです。では、なぜこの言葉が、そういう意味を持つに至ったのでしょうか。日本語は便利なもので、言葉を形作っている漢字を見れば、その意味が分かるようになっています。
貫徹という言葉を「貫」と「徹」に分け、それぞれの文字が持つ意味を紐解いていってみましょう。意味をしっかりと理解することで、正しい使い方も出来るようになるものです。
文字から考える貫徹の意味
貫徹の「貫」には、ご存知の通り「つらぬく」という意味があります。この漢字の成り立ちを見ると、上部分は「物に穴を開けて貫き通す」様を表し、下部分は、かつて貨幣として使われていた「子安貝」を表していると言われています。それぞれに意味のある部分が、この漢字を形成しています。
貫徹の「徹」には、「とおる」「とおす」「突き通す」といった意味があります。このことからもうひとつの「かんてつ」に関わる徹夜という言葉を考えると、その意味もよく分かることでしょう。
貫徹の類語
貫徹には、大まかに見て「貫く」という意味があることは分かりました。そんな貫徹には、多くの言葉と同じように、似た意味を持つ類語が存在します。貫徹の類語と言われて、何か思い付くものはあるでしょうか。
こちらでは、貫徹を含んだ熟語としてよく使われる「初志貫徹」を例に挙げ、その類語をご紹介していきましょう。ちなみに初志貫徹には、最初に決めたことを貫き通すという意味があります。
類語①終始一貫
初志貫徹の類語としてまず思い付くのが、この「終始一貫」という言葉ではないでしょうか。態度や言動が始めから終わりまでずっと同じである、また、主義や方針を変えないでいるというのが、この類語の持つ意味です。先ほどご紹介した初志貫徹と、意味としてはほぼ同じです。
使い方の例としては、「彼は終始一貫して、その考えを変えようとはしなかった」「彼女は一度不公平だと思ったら、終始一貫抗議を止めなかった」などというものがあります。
類語②徹頭徹尾
「徹頭徹尾」もまた、初志貫徹の類語の一つと言えるでしょう。この熟語に使われている「徹」に突き通すという意味があるのは、先ほど触れた通りです。頭を突き通し、尾を突き通すと考えれば、そこに初志貫徹と同様の意味が浮かび上がってくるはずです。
つまりこの熟語にも、「最初から終わりまで貫く」というニュアンスがあるのです。初志貫徹の類語として挙げるに相応しい言葉と言えるのではないでしょうか。
類語③首尾一貫
「首尾一貫」も、初志貫徹の類語と言える熟語です。首尾とは言葉が示す通り、首から尾までを指します。先にご紹介した徹頭徹尾と似た構成であることが分かります。首から尾を貫くという様から、始めから終わりまで主義主張を貫き通すという意味になります。
始めから終わりまで無理を通そうという人もいるでしょうが、そういう場合には使えない表現です。間違った意見に固執することは、筋が通っていることとは違うのです。
類語④頑固一徹
終始一貫や徹頭徹尾には、始めから終わりまで突き通すという意味があります。突き通すということは、そうしようとする強い意志を表現してもいるのではないでしょうか。このことを踏まえると、「頑固一徹」という熟語もまた、初志貫徹の類語として挙げて然るべきです。
頑固一徹とは、一度決めた態度や方針を変えずに最後まで貫き通すという意味です。それはまさに、初志貫徹と同じ意味と言えるでしょう。
しかし、ここで注意したいのが、意味はほぼ同じですが、頑固一徹は褒め言葉としては相応しくない点です。気心の知れた友達や同僚同士で「本当に頑固一徹だよな、見直すよ」と冗談めかして言うのは問題ないでしょう。うっかり、仕事の現場で上司相手に言ってしまわないようにしましょう。
「●●さんは頑固一徹で、改めてすごいと思いました」と褒めたつもりでも、相手を苦笑いさせてしまうだけです。よかれと思って使うなら、頑固一徹以外の言葉を選ぶといいでしょう。
貫徹の使い方
貫徹という言葉は、実際の文章内ではどのような使い方をするのでしょう。主義や主張を曲げないという意味合いの貫徹には、どちらかといえばポジティブなニュアンスが含まれていると言えるでしょう。特に仕事の現場では、こうという筋が通っていないことは、よしとされない部分もあります。
こちらでは、主に仕事の現場で用いられる貫徹という言葉の例文を挙げ、そこからその使い方を学んでいきましょう。正しい使い方を知っているだけでも、周りから一目置かれる可能性はあります。
例文①
「この事業を成功させるべく、貴社の要求を貫徹したいと思っております」という例文は、事業成功のために取引先が示した要求をやり通したいといった意味になります。貫徹の使い方として、「したい」や「する」という形があることを覚えておくといいでしょう。
この例文の中で貫徹が使われることで、相手が並々ならない覚悟で要求をやり遂げようとしてくれていると感じることが出来ます。相手に信頼を持たせるためには、効果的な使い方と言えるでしょう。
例文②
「結局、そのプロジェクトのためには初志貫徹して取り組むことが最適だと分かった」という例文はどうでしょう。こちらでは、初志貫徹という使い方で例文を挙げました。あるプロジェクトを立ち上げる、あるいは成功させるためには、最初に決めたやり方で貫くのが一番だという例文です。
仕事の上では、多くの場合に初志貫徹が求められると言われています。何かをやり遂げるということには、やはり、これだけは曲げないという強い信念が必要だということでしょう。
例文③
「会社としての信念を貫徹することは、実際の仕事の現場では簡単なようで難しい」この例文で貫徹という言葉は、会社の掲げる信念をこうしなければならない、「ずっと曲げずに守り続ける」のが難しいという意味の使い方をされています。
こうでありたい、こうでなければならないということは、時には理想通りにはいかないものです。だからこそ、それを貫徹出来るよう努力することに意味があるのではないでしょうか。
例文④
「成功までの道のりが困難だと思われるその事業には、初志貫徹の精神を持って取り組むべきだ」こちらも、初志貫徹を用いた例文です。何か大きなことをやり遂げるには、やはり最初から最後までしっかりと貫くように努力することが大切なのです。それを教えてくれる、例文ではないでしょうか。
仕事では初志貫徹が求められる
仕事上で見られる例文をご紹介してきましたが、仕事の現場では、本当に「貫徹」であることが求められているのでしょうか。最近の世の中はどちらかといえば臨機応変であることを求めている傾向にありますし、それを思うと、仕事上での初志貫徹は頑固一徹ではないのでしょうか。
物事に対して柔軟であることは確かに重要ですが、やはりそこには、ぶれのない思いが求められるのも事実です。相手によって態度や主張を変えることは、臨機応変とは言い難いのです。
本当の臨機応変さとは、貫徹の中にこそあるとは言えないでしょうか。誰に対しても何に対しても揺れないものを持っていることが、ビジネスの世界では重要視されているはずです。ぶれない人間の方が、信頼を勝ち取るのは明白です。そしてその信頼こそ、仕事をする上で大切になってくるのです。
仕事で重要な信頼を得るには、まずは貫徹であることです。そのことを胸に、日々頑張っていきましょう。
貫徹の英語表現
貫徹を英語で表現するには、どんな単語や熟語が使われるのでしょうか。英語には、日本語における貫徹をそっくりそのまま表現する言葉はありません。そのほとんどが、意味の上では同じというものになります。また、別の表現を加えて、貫徹に近い意味を持つものもあります。
英語圏の友達と交流したり、取引先と英語でやり取りすこともあることの多い時代です。貫徹を英語でどのように言うのかは、知っておいて損はないでしょう。
accomplish
accomplishは、「なし遂げる」という意味を持つ英語です。She couldn't accomplish that.で、「彼女は、それを成し遂げられなかった」という意味になります。仕事や計画などを忍耐や努力を以てなし遂げるというニュアンスがあり、それが日本語の貫徹に繋がる言葉です。
英語の中では、どちらかといえば形式ばった単語になります。普段の会話では、あまり使われないと言えるでしょう。
carry through
carry throughは、「やり通す」という意味を持った英語の熟語です。He will carry the task through to the end. で、「彼はその仕事を最後までやり通すだろう」という意味になります。この例文の場合、to the end(最後まで)を付け加えることで、より日本語の貫徹に近い意味になります。
こちらの英語表現は、犯罪などをやり通す場合にも使われます。そういう意味では、日本語の貫徹とは少し違うと考えるべき部分もあると言えます。
achieve
achieveには、「やり遂げる」という意味があります。I could't achieve my dreams.「私は夢を叶えられなかった」という例文を挙げることが出来ます。achieveには目的を達成するという意味合いもあります。
realize one's original intention
貫徹を使った代表的な熟語である初志貫徹を英語で表すと、realize one's original intentionとなります。直訳すると、「●●にとっての最初の意図・目的を実現する」という意味になる言い回しです。これを意訳すると、「初志を貫徹する」という意味になるのです。
You must realize your original intention.で、「初志貫徹せよ」という英語表現が完成します。ぶれがちな相手をたしなめる時に、この英語を使ってみるといいでしょう。
貫徹は最後までやり通すという意味
このように、貫徹という言葉には、人が何かをやり通す、やり遂げるという意味が込められています。初志貫徹という熟語が表しているように、何か最初に思ったことを、最後まで変えずにやり遂げることは美徳とされています。
時に不器用にも映るその行動はしかし、人生においては無駄にならないはずです。計画や目的を持ったら、それを貫徹することを目標と定めましょう。きっと、あなた自身のためにもなります。