ガバナンスの意味とは?
ガバナンスの意味をご存知でしょうか?「書籍のタイトルで見聞きしたことがあるけれど、意味までは知らない」「企業に関連する意味?」など本来の意味までは詳しく知らない場合が多いです。
ガバナンスは、予算委員会での政府の釈明答弁や大企業会見、コメンテーターの見解でも「組織のガバナンスが〜」とよく耳にします。
ガバナンスとは、「統治」「支配」「管理」という意味です。企業や政府などの組織体制では統治という機能が健全な運営をしていく上で大切なポイントになってきます。
上記の意味である以上、ガバナンスは大企業などの大きな組織体制のみに作用する言葉ではなく、中小零細企業などの中小規模の組織体制においてもしっかり機能しなければならない概念です。
今回はそんなガバナンスについて徹底解剖。ガバナンスの由来から、特徴、コンプライアンスとの違い、例文を用いた使い方、注意点について順に紹介していき、ガバナンスを深く掘り下げていきます。
ガバナンスの由来
ガバナンスの意味が理解できました。ではガバナンスという言葉はどこからきた言葉なのでしょうか?まずはその語源から紐解いていきます。
ガバナンスは外来語の英語で「governance」と書きます。「governance」の語源は古代ギリシア語の「kubernan」、そしてこれを翻訳したラテン語の「gubernare」という意味になります。この「gubernare」のは船を「操舵する」という意味合いが強い言葉です。
「船を操舵する」という表現は当時何をさしているのかというと、国家を運営する際の比喩として表現されてきました。このような経緯から「governance」の元々は古代ギリシアに起源するということになります。
「governance」の言葉自体が登場した時代が中世ヨーロッパになります。13世紀にフランスで「gouvernance」という言葉が使われました。それが14世紀に英語圏に流入して現在使われる「governance」となりました。
しかし、13〜14世紀に急速に認識が広がったフランス語「gouvernance」も英語の「governance」もその時代を節目にして当分使われなくなりました。当時は古めかしい旧体制から脱する機運が強まっていたこともあり、その時代に使われていた上記用語は姿を消します。
ただ、20世紀になると急遽「gouvernance」「governance」が急遽表舞台に復活し、現在21世紀至ります。なぜ急遽使われるようになったのかは定かではありません。
ガバナンスの特徴
外来語ガバナンスが古いルーツに因んでおり、歴史ある言葉であることが理解できましたが、ガバナンスはどういう特徴があるのでしょうか?
ガバナンスは昨今急激に見聞きするようになった言葉です。それは「コーポレートガバナンス」という言葉が日本でも取り沙汰されてきたということも一因にあります。
グローバル社会と言われ、世界の各国と比較されることが当たり前になった現在。そんな中、日本で注目を集めているガバナンス。その特徴を2つに分けてご紹介していきます。
コーポレートガバナンスが注目されている
「コーポレートガバナンス」という言葉をご存知でしょうか?「企業統治」という意味で知られている言葉です。より具体的に紹介しますと「不正競争を防止し、競争力と収益力を上げ、企業価値を高めていく企業体制のあり方」という意味を持ちます。
「コーポレートガバナンス」を考えるに当たって、常にテーマとなるのは「会社はだれのものか?」という問に集約されます。
株式会社は株主が出資し、取締役を選定し、配当を受けることから株式会社の所有者は株主であると会社法で定められていますが、そこには企業所有者の建前と現実の問題が横たわっています。
日本では企業所有者は従業員であるとする気風が強く、それは対アメリカや対ドイツより顕著です。その理由には、年功序列と終身雇用のシステムが存在します。
日本のシステムは入社当時の初任給は薄給ですが、企業への勤続年数が上がるにつれ、給料がベースアップし、やがて退職時に多額の退職金をもらう仕組みです。それは「未来の自分に投資をしている」という発想を生じさせ、投資分を回収する必要に駆られざるを得ないシステムです。
この発想は賛否両論あるのですが、少なくても1960年代からの高度経済成長期には好作用していました。企業がメインバンクから設備投資の融資を受け、メインバンクが企業統治をマネージメントしていたからです。
しかし、1980年代になると、メインバンクからの借り入れ金の返済も完了し、企業とメインバンクとの間のパワーバランスが逆転することになりました。
第三者からの監視の目も緩くなり、コーポレートガバナンスが不在のまま、現在にいたるのですが経営トップが高齢化しても、モノ言えぬ従業員という問題が顕在化する中、自浄作用も効かず、景気の腰折れを招き、日本企業の世界的な競争力の低下の問題も提起されています。
このように、日本のコーポレートガバナンスはこれまでの景気の好況・不況の中で利いていたり利いていなかったりしながらも現在にいたります。
現在においては、その統治体制の主体が問われ「不正競争を防止し、競争力と収益力を上げ、企業価値を高めていく企業体制のあり方」に適った姿かどうかという問題が依然解決されていないテーマとなりその意味が問われています。
不況局面の長期化でガバナンスは悪化している
先述の「コーポレートガバナンス」に通じるもう1つの特徴として、「日本は不況局面の長期化でガバナンスは悪化している」という点が挙げられます。大きな要因としてはガバナンスを担う取締役会の機能不全が挙げられます。
取締役会は株式会社の意思決定の最高機関です。いわば「コーポレートガバナンスの最後の砦」になります。この取締役会がその本来の機能を果たさなければ、企業価値は上がるどころか、先行きのリスクから低下していくことになります。
その機能不全がもたらす企業への弊害としては、「トップの独裁化」「主導権争いによる企業の迷走化」「規律が弛緩していることによる不祥事の顕在化」「不祥事の発生を隠蔽することによる、さらなる企業イメージの悪化」などが挙げられます。
ガバナンスとコンプライアンスの違い
ガバナンスの意味、由来、特徴を順を追って見てきましたが、ガバナンスと似た言葉が存在します。「コンプライアンス」です。次は「コンプライアンス」について見ていきます。
ガバナンスは「統治」「支配」「管理」という意味でしたが「コンプライアンス」はどういう意味をもつことばなのでしょうか?以下よりご紹介いたします。
コンプライアンスは法令遵守という意味
「コンプライアンス」は「法令遵守」という意味です。「コンプライアンス」はのガバナンスと同じく、語源は英語で「compliance」と書きます。「コンプライアンス」は全ての企業が守るべき法律・命令という重要なキーワードをカタカナで表した外来語です。
「コンプライアンス」は組織の法令を守らせる意味をもっていることからも、企業が先行きのリスクを回避するためにとても大切な概念です。
ガバナンスと意味が混同されがち
外来語「コンプライアンス」はともすると、ガバナンスと混同されがちな言葉です。それぞれが違う意味を持っているにも関わらず、混同される理由の1つに「同じテーマ」を取り扱っていることが多いからです。それは企業・組織の不祥事です。
企業や学校などでの組織は不正競争や不正会計、詐欺、パワハラ、セクハラ、いじめなどの諸問題が常に現実として存在しています。そういう問題が起きるたびにガバナンスとコンプライアンスがセットで論ぜられます。
つまり「ガバナンスが利いていないから、このようなコンプライアンスが守れない問題が起きる」と言った論調です。ガバナンスが利き、コンプライアンスが守られる社会が、企業価値や教育水準が向上する要因となります。
「コンプライアンス」はこのようなケースで今後もセットで出現することが見込まれますので意味を混同しないよう、ご留意ください。
ガバナンスの使い方
それでは今、外来語ガバナンスを実生活でどのように使うことができるのでしょうか?冒頭でも紹介したようにガバナンスはさまざまなメディアでも取り上げられている言葉です。
外来語ガバナンスは、現在組織体制を敷いている企業だけではなく、チームなどの団体にも当てはめられる使用範囲が広い言葉です。
ガバナンスが利いているかどうかという視点を持つことは、その組織の統率力に左右されるだけに、ガバナンスは一般ユーザだけではなく組織体制側も看過できない意味合いの言葉になっています。
そのような背景を踏まえた上でガバナンスの使い方を4つの例文を用いて紹介していきます。今後の生活で活用する際にぜひご参考いただければ幸いです。
例文①
外来語ガバナンスの使い方の1つの例文として、企業の取り組みが上げられます。先述したように「コーポレーガバナンス」が例文に使われています。
「コーポレートガバナンスの強化が目下弊社の喫緊の課題です」このように企業の取り組みをオフィシャルでアナウンスする場合にガバナンスを使うケースです。
ガバナンスの取組みをしっかりるする事で、業務効率化や不正抑止につながり、先行きのリスクが回避され、投資がなされることで株価の下落を阻止し、結果企業イメージが向上し、企業の価値の向上も見込まれます。
例文②
外来語ガバナンスの使い方の2つ目の例文として、「コーポレートガバナンス実現への取りまとめた原則」が上げられます。金融庁と東京証券取引所が取りまとめ2016年6月から適用を開始した「(コーポレート)ガバナンスコード」という言葉です。
「(コーポレート)ガバナンスコード」はいわばコーポレートガバナンスのガイドラインでコーポレートガバナンスが実現するための手引書を意味しています。
「(コーポレート)ガバナンスコード」は先述したように日本企業の国際的な競争力が削がれている現在、国を上げてテコ入れしている意味合いもあります。
「昨今、日本の企業体制は新たな局面に突入した。(コーポレート)ガバナンスコードの遵守がコーポレートガバナンスの健全な運営に資する」このような使い方ができます。
(コーポレート)ガバナンスコードの遵守は義務ではありませんが、今後の成長率をあげるためには、指針を理解し、正しい運営に心がけることが大切です。
例文③
外来語ガバナンスの使い方の3つ目の例文として、企業の不祥事などでの会見が上げられます。二重契約などの不正契約が常態化することでなどで、社会問題になる中、渦中の企業が記者会見を行い際に「ガバナンス:という言葉が使われます。
「企業体制のあり方を問われたが、経営陣の刷新までは言及しておらず、ガバナンスの機能不全は深刻だ」新聞・テレビ・ラジオ・WEBなどで頻繁に取り上げられます。
ただ、ガバナンスの機能不全もしては不在のままの企業だけではなく、ガバナンスが不十分で今後取り組みを強化していこうとしている企業は、その取組の過程で、加熱報道などのメディアスクランブルで足元を救われることも問題視されている点です。
例文④
外来語ガバナンスの使い方の4つ目の例文として、政府のガバナンスが上げられます。これは「パブリックガバナンス」という側面と、政府が官僚を統治し機能的に国を治めるという2つの意味があります。
「パブリックガバナンス」とは政府や地方公共団体が適正に運営することを国民が規律づけることを意味しております。「パブリックガバナンスの観点から情報開示し、業務が適正に運営されているか、我々は知っておく必要がある」という使い方ができます。
後者は国会審議での政府への質問などで「しっかりとしたガバナンスが働いておらず、官僚が政府に忖度したことがこういった問題にまで発展したのではないですか?」などの使い方ができます。
ガバナンスを使う際の注意点
ガバナンスを私たちが使う際に注意することは何でしょうか?ガバナンスはコーポレートガバナンスをはじめ、多くの組織体制で使う事ができる言葉です。営利団体であってもなくても共通していることがあります。以下の点がガバナンスを使う際にご留意いただきたいポイントになります。
その意味が損なわれる恐れがある
ガバナンスは先述の通り「統治」「支配」「管理」という意味ですが、そのガバナンスはいつでも利いている状態であるとは限らないということです。現時点でガバナンスが利いていても、将来ガバナンスが損なわれる可能性が孕んでいるリスクが大きいものです。
「ガバナンスが損なわれるかもしれない」その将来のリスクに備える意識を持つ事がガバナンスが利いている状態にする第一歩となります。
監視機能の意味を忘れないようにする
もっとも「コーポレートガバナンス」でも述べたように、現在の日本では「ガバナンスが不在」になっている企業が散見されます。その不在な状態が、売り上げの低下のリスク、資本比率の低下のリスク、賃金水準の鈍化のリスクを招き、企業価値を低下させることにつながります。
上記のような様々なリスクを回避に健全なガバナンスを運営するために、株式会社であれば株主総会のみならず、取締役会の機能回復や社外第三者の監視役などの存在をもって、監視機能を意味付けることは非常に大切になってきます。
株式会社以外の組織体制でも、その組織体制が健全に運営されているか?おもわぬリスクで足元を掬われないように、従業員だけではなく、第三者機関がしっかり監視することが大切です。
ガバナンスとは統治と言う意味
ガバナンスの意味、由来、特徴、コンプライアンスとの違い、例文を用いた使い方、注意点を紹介してきました。ガバナンスは日本では世界的には後手に回っており、結果競争力の低下、教育水準の低下のリスクを孕んでいます。
ガバナンスが健全に働いているか?という認識の大切かをご理解いただき、ガバナンスという言葉を今後の生活で使っていく上で本記事がその一助になれれば幸いです。