「不手際」の意味とは?
「不手際(ふてぎわ)」は「手ぎわが悪く、物事対応の結果が劣っている」という意味です。ビジネスシーンで「不手際」は、ミスやトラブル、不祥事の原因になる可能性が高いことを意味します。つまりスキルが足りないという意味です。
スキルが足りないとトラブルの原因になりやすい理由は、トラブルの多くは確認不足から起こります。ビジネスでスキルが足りないという意味は、仕事が雑になり効率が悪いという意味になります。
つまり仕事が遅いので時間的に余裕がなくなり、確認不足が起きてミスやトラブルの不手際を起すという意味です。このようにビジネスではミスやトラブルを総称する意味で「不手際」を使います。
「不手際」本来の意味は「手際が悪くスキルが足りない」という意味ですが、スキル不足は時間に余裕がない状態を生み、確認不足を起こしトラブルや不手際の原因になります。
ビジネスでミスやトラブルなどの不手際は、会社や得意先などに多大な迷惑をかけることになり会社の信用にも関わります。
また不手際を起こすと、謝罪のために詫び状や始末書や顛末書(てんまつしょ)を書く事態にもなりかねないので「不手際」の意味はしっかり押さえておきましょう。
「不手際」の類語
「不手際」と意味が似ていて同じような使い方をする言葉を類語と言います。または類義語、同義語と呼びます。
「不手際」は「手ぎわが悪く対応が拙い(つたない)」という意味ですから、この意味に近い言葉が類語になります。「不手際」の類語にはたくさんの言葉がありますが、その中から主な類語5つを選んで意味や使い方などを紹介します。
「不行き届き」の意味
「不行き届き」とは「注意が行き届かない」「気がきかない」という意味で「監督不行き届き」のような使い方をします。「注意が行き届かない」ことは不手際に繋がるという意味で類語になります。
例文では「今回のトラブルは、担当者の監督不行き届きが原因になっています」「マニュアル徹底の不行き届きが、ミスや不手際を引き起こしトラブルを広げてしまいました」のように表現します。
ただ「不行き届き」は「注意が行き届かない」場合に使う言葉なので意味や使い方が「不手際」に比べ狭いところに違いがあります。
「不手際」の場合は意味や使う場面がもっと広くなります。このように類語には「不手際」と意味に微妙な違いがあるので、言い換え表現をするときには注意しましょう。
「不始末」の意味
不始末は「タバコの火の不始末から火事になる」と言うように「後始末のしかたが悪い」「人に迷惑がかかるような不都合な行いをする」という意味です。
「不手際」を起こせば、人に迷惑をかけることになります。そこが似ているので類語になります。ビジネスでは不手際が引き起こした結果(トラブル)の意味合いで「不始末」を使います。
例文では「このような不始末は、管理体制が悪いことに起因するので、再度繰り返さないために管理の強化を実施します」「納期が遅れた不始末は、製造工程に問題があるので、工程の見直しが必要」のような意味の使い方をします。
類語の「不始末」と「不手際」との意味の違いは、後始末の悪さでトラブルが起きた状況や結果を「不始末」と言います。トラブルの原因になった手際の悪さや人のスキル、体制を意味するのが「不手際」です。
つまり類語の「不始末」はトラブルの原因を「後始末のしかたの悪さ」に重きを置いていて、「不手際」はトラブルの原因を起こす人的な手際の悪さや体制の悪さに重きを置いているところに微妙な意味の違いがあります。
「手抜かり」の意味
「手抜かり」という類語は「手続きや方法などに欠陥がある」という意味です。ビジネスでは、対応や対処の仕方に欠陥や落ち度があればトラブルになるという意味で「手抜かり(不手際)があればトラブルになる」のように使えるので類語になります。
例文では「弊社の対応に手抜かりがあったため、多くの方に誤解を与えてしまった」「人事部の選考規定に手抜かりがあったため、不適切な人材配置が行われてしまった」のように、手続きや対応にミスがあったという意味で「手抜かり」が使われます。
また「今回のプロジェクトは、社運をかけた大仕事です。社員一丸となり手抜かりの無いようにお願いします」のように注意喚起や叱咤激励(しったげきれい)をする意味合いの使い方をすることができます。
つまり「手抜かりは」は「不手際」と同じような意味で使う場合と、社員の気持ちを奮起させる時に、注意や激励するための意味と両方で使える類語です。
「失態」の意味
類語の「失態(しったい)」は「失敗して体面を失うこと」または「面目を失うようなしくじりやミス」という意味です。「失態を演じる」のように使うことから、単に失敗をするというより「失敗を演じてしまう」のように、嘲笑を受けるようなレベルの失敗をしてしまうという意味です。
例文では「急いで仕事をしたので、確認を怠り失態を演じてしまった。周りのビジネスメンバーに合わす顔がありません」「失態を演じないようにと、考えれば考えるほどプレッシャーがかかります」のように表現します。
また「皆から笑われるような失態は演じたくないのが当然です。そのためには仕事をした後には必ず確認することを忘れないことです」「失態を恐れていると、何事にも臆病になってしまいます。もっと前向きに考えることが必要です」のような例文もあります。
このように「失態」は、失敗やミスを犯すという意味では「不手際」と似ていますが、「不手際」より人間的で精神的な意味を多く含んでいる類語です。
落ち度
落ち度は「あやまちや過失、手落ち」という意味で「当方の落ち度を認める」や「手続き上に落ち度があった」のような使い方をする類語です。
「当方の不手際を認める」「手続き上に不手際があった」のように「落ち度」と入れ替えても、全く意味が変わらず違和感がない非常に似ている類語です。
しかし「この度の落ち度は、マニュアルに不備があった点です」の例文のように「落ち度」は、あやまちや欠点そのものを指し示しているので、この例文に不手際を入れ替えると少し違和感が生まれます。
「この度の不手際は、マニュアルに不備があった点です」より「この度の不手際は、マニュアルに不備があったことに起因しています」の言い換えの方が意味がしっくり伝わります。
つまり「落ち度」は欠点そのものを表し「不手際」は、落ち度となったげ原因を意味するところに微妙なニュアンスの違いがあります。
不手際の類語には、この他にも「非力」「手違い」「不器用」「稚拙(ちせつ)」「ぎこちない」「つたない」「下手」「スキル不足」など数え上げればキリがありません。
どの類語も技術や適正に欠如している意味を表しています。興味のある方は意味や使い方を調べてみてください。新しい発見があるかもしれません。
「不手際」の使い方・例文
不手際は「手ぎわが悪く、物事に対する対応の結果が劣っている」という意味で、ビジネスではトラブルの原因になるため最も避けねばならないことです。不手際には大きく分けて、人的不手際、システムや機器による不手際の2つがあります。
しかし人間は完全では無いので、どうしても不手際を起こしてしまいます。その場合にビジネスシーンでは謝罪のために「謝罪文」や「始末書」「顛末書」を書くことが要求されます。それは社内だけでなく社外に及ぶこともあります。
そんな場合に直面して慌てないために「不手際」を使った例文や使い方を、上記の2つのケースに合わせて紹介します。いつどんな時にそのような事態になるとも限りません。ここでしっかり「不手際」の意味と使い方を習得しておいてください。
例文①人的不手際
人的不手際によるトラブルの謝罪文は「弊社の経理担当者の確認不足により、貴社への振込が遅れるという不手際を起こし、誠に申し訳ございませんでした」
また「この度は弊社事務担当の者が、他社宛の書類を貴社に送るという不手際を起こし誠に申し訳ございませんでした。本メールにて正しい書類を添付いたしますのでご確認のほどお願い申しあげます」の例文のように使います。
人的不手際に関する使い方には、謝罪文ではないのですが「自分の不手際を他人やシステムに責任転化するのは、ビジネス常識として許されない行為です」「誰でも失敗することはあります。最も大切なのは不手際を起こした時に誠心誠意謝罪と対応することです」のように表現することがあります。
人的不手際を起こした場合には、まず自分や当方の非を認め、誠心誠意相手に対して謝罪することと対応が大切です。それがお互いの信頼関係や会社そのものの信用につながります。ビジネスでは人と人との信頼が最も大切なことです。
例文②システムの不手際
ビジネスで不手際の原因になるのは、前述の人的な場合だけではありません。社内のシステム上の問題、連携や連絡のミス、機械や製造工程の不具合、などが考えられます。
「貴社への商品の納期が遅れるという不手際がおきましたこと、深くお詫び申し上げます。原因は弊社のS工場の製造ラインの機械の故障により、生産が半日ほどストップしてしまったことです」の例文は機械の不具合による不手際の謝罪文です。
また「受注部と出荷部の連絡システムに不具合があるのに気づかず、仕様書と違う商品を発送するという不手際を起こしてしまいました」の例文はシステムと人的なミスが重なった場合です。
「貴社への振込金額に不手際が生じ大変ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。弊社経理部には、請求書は二重確認するというシステムや規定が無いためミスが起きてしまいました」これはシステム上の問題が人的不手際を起こした例文です。
このように不手際が起きた場合は、相手に対してきちんとお詫びや謝罪の気持ちを表し、合わせてその理由などを伝えることが信頼につながる大切なことです。
「不手際」と「過失」の違い
「過失」は「不手際」と意味が非常によく似ている類語で、違いがほとんどわからない言葉です。使い方もお詫び状や謝罪文の中で使え、前述の例文の「不手際」を「過失」に言い換えても意味が通じる言葉です。
しかし、違う漢字が使われているには意味に何らかの違いがあるはずです。違いを検証するために「過失」の意味や使い方を詳しく調べてみましょう。
「過失」は「あやまち、欠点」という意味
「過失」は「不注意などによって生じたしくじり、ミス」または「欠点」という意味があります。過失を起こす原因には、体調不良や睡眠不足、悩み事や考え事をして集中力が欠けている場合、スキルが足りない場合などが考えられます。
例文では「私の過失により、会社に多大なる損失を与えてしまいましたこと、誠に申し訳なく心よりお詫び申し上げます」のように表現し「不手際」と入れ替えても意味が変わらず違和感がありません。
例文を見る限りでは「過失」と「不手際」の違いを見つけることができません。強いて違いがあるとすれば「不手際」を起こす原因は、人的不注意とシステムや機器の不具合です。
一方「過失」の場合は、不注意を起こす個人の精神的な状態「体調不良や睡眠不足、悩み事や考え事」など集中力を欠くことに原因の重きを置いています。
この点が微妙にニュアンスが違うところです。過失は精神状態だけでなくスキル不足でも起きます。システムや機器の不具合でも過失は起きます。つまり「過失」は個人の精神状態に原因の重きを置いている点以外は、「不手際」とほとんど意味に違いがない言葉と解釈して良いのではないでしょうか。
「不手際」のビジネス対応
不手際でミスやトラブルを起こした時点で、信頼は半分失われています。ビジネスでは信頼関係が最も重要です。不手際は会社に対して多大な損失を与えます。社内だけでなく取引先など社外にも迷惑が及べば事態はさらに深刻です。
会社間の取引や信頼関係にも影響します。その失いかけた信頼を取り戻すためにはビジネス対応が鍵を握ります。対応が悪ければ信頼関係にヒビが入ります。
ですから不手際を起こしてしまったならば、なるべく早く謝罪文を上司や得意先に送り誠意を伝えるという対応が大切になります。また謝罪文には、お詫びの意味だけでなく原因や今後の対応策を入れることも必要です。
不手際の影響の大きさの程度によっては、始末書または顛末書(てんまつしょ)などにより、謝罪だけでなく経緯や発生の原因、二度と起こさないための対策などを詳しく伝えるビジネス対応で信頼を回復することが非常に大切です。
例えば上司に宛てる場合は「今回の私の不手際で、多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。原因は私の確認不足によるミスでございます。今後再発防止のため他の人の確認などの二重チェックを必ず実施いたします」
このように、まず謝罪をしその後に原因や再発防止の対策を述べることで誠意を持って真摯に対応していることを伝えることができます。言葉遣いは詫びる気持ちを忘れずに、上から目線にならないよう敬意を持った表現にする注意が必要です。
社外の得意先などに宛てる場合は、基本的に謝罪、原因、再発防止策の3点を盛り込むことは同じですが、社外の人にとっては自分の会社のことを詳しく知らない方が多いので、独りよがりの弁解の意味にならないように詳しく説明する必要があります。
しかし相手が読むのに疲れるような、くどくどと長ったらしい表現は逆に失礼になるので、簡潔な文章で(社外の)誰が読んでもわかりやすく敬意を持った言い回しにする必要があります。ただしお詫びの気持ちを忘れないで書くことが大切です。
特に社外に対する文書は、会社を代表して書いているという意識が必要です。一個人や担当者が書いた謝罪文でも相手は会社の意向として捉えます。内容が不適切な場合には会社の体質が疑われてしまいます。
取引先と自社との信頼関係を回復するために、会社を代表して「不手際」に対応しているという意識が大切になります。この意識があれば文章の内容や意味に誠意を込めることができます。あくまで不手際は自社の責任という意味を忘れないようにしましょう。
「不手際」の英語表記
不手際を英語ではどのように表記するのでしょう。英語には日本語の「不手際」のように一つの単語で様々な解釈ができるような単語がありません。英語の表現はもっとシンプルで直接的です。
例えば「mistake(間違い)」「error(エラー)」「failure(失敗)」「wrong doing(間違った行い)」 など直接的な意味の単語(名詞)を使ったフレーズや言い回しで「不手際」に近い意味を表現します。
また使う場面によって「bungle(ヘマをする)」「handling(対処、取扱い)」「butchery(ドジ)」などを使う場合があります。つまり英語には「不手際」を直訳する単語がないために、いろいろなフレーズや文章の流れで「不手際」の意味を表現します。
不手際の英語例文
「不手際」を表現する英語例文を紹介します。「I am terribly sorry about my mistake.」は「私の間違い(mistake)を深くお詫びします」のように表現して「不手際」を謝罪します。「mistake」の代わりに「error」や「failure」を使っても同じ意味になります。
自分の行いや行為を謝罪するときは「I am terribly sorry about my wrong doing.」と「wrong doing」を使います。このように英語では謝る内容(対象)によって単語を使い分けます。
「We are so shamed of ourselves such bungled handling to our customers.」を直訳すると「顧客に対する我々の稚拙(ドジな)な対応を大変恥じております」という意味になり、不手際を恥じながら謝罪する意味を表現する英語例文です。
また「I apologize for the mistake in the information that we provided you.(弊社からの案内に不手際があったことを深くお詫び申し上げます)」
「There is no use trying to excuse myself for the payment delay.(ご返済の遅れた不手際に、弁解の余地がございません)」のように英語では不手際を表現します。
「I sincerely apologize for all the trouble I have caused.(不手際により多大なご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません)」などの英語例文のように、場面や状況により使う単語やフレーズを変えて表現するのが英語表記です。
このように英語と日本語では意味の表現の仕方が根本的に違います。ビジネスで英語を使う場面や、英語を学習するときには、この違いを念頭に置くことが大切になりますので心に留めておきましょう。
「不手際」は「手際が悪い」という意味
不手際は「手際が悪い、対応が稚拙」という意味でビジネスではマイナス要素です。しかし言い換えればチャンスにもなり得るのです。対応の仕方次第では、不手際は失いかけた信頼を回復し、逆に信頼を深める機会やチャンスだと前向きに考えてください。
よく「失敗は成功のもと」と言います。「不手際」は成功のもとなのです。不手際は確かにビジネスでは迷惑をかける行為なので良くないことです。しかし人間は完全ではないので必ずミスや不手際を犯します。
そのためには対応の仕方が重要です。謝罪する気持ちと反省を糧(かて)にして前向きに考えることが重要です。これまでの記事を参考にして、不手際を成功に逆転することができれば最高です。