「杞憂」の意味と由来とは?ビジネスシーンでの使い方や英語表現もチェック!

「杞憂」の意味と由来とは?ビジネスシーンでの使い方や英語表現もチェック!

「~という予測は杞憂に終わった」。新聞や小説などでよく見かける表現ですが、意味や由来となると少しわかりにくいかもしれません。ビジネスシーンでも使える杞憂の意味と類語、対義語についてお伝えしますので、正しい使い方を身につけておきましょう。




記事の目次

  1. 1.杞憂の意味とは
  2. 2.杞憂の由来
  3. 3.杞憂の類語
  4. 4.杞憂の対義語
  5. 5.杞憂の使い方
  6. 6.杞憂の注意点
  7. 7.杞憂は「つまらない心配事をする」という意味

杞憂の意味とは

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杞憂とは、「起こりそうもないことについてあれこれと気に病むこと」という意味の言葉です。杞憂に終わる、杞憂に終わった、などと使われることが多く、日常語としてはややかしこまった印象があります。

杞憂の由来

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「杞憂」はもともと四字熟語が由来で、「杞人憂天」というかたちで使われていました。この四字熟語の由来はさらに、古代中国の故事にさかのぼります。

かつて、古代中国には杞という国がありました。その国の人々はとても心配症で、絶えず「いつの日か取り返しのつかない災いが起きて、天地がひっくり返るのではないか」と気に病んでいたそうです。

杞の国の人が天変地異を憂える、ということから「杞人憂天」という故事成語が生まれ、それが転じて「杞憂」の由来となった、と言われています。

杞憂とは「無駄な心配」のことであり、ただたんに何かを気にかけたり、現実的な不安にとらわれたりするという意味ではありませんので注意が必要です。

杞憂の類語

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故事成語が由来となっており、「起こるはずもないようなことをいつまでも心配する」という意味のある杞憂ですが、類語には何があるのでしょうか。

日常会話としてはあまりなじみのない杞憂のおもな類語について、正しい使い方とともに見ていきましょう。

取り越し苦労

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杞憂の代表的な類語で、意味や使い方も比較的シンプルです。取り越し苦労もまた「つまらない心配事」という意味を持つ言葉であり、「旅行中に台風がくると思っていたけど、取り越し苦労で良かった」と使います。

杞憂も取り越し苦労も、意味としては「取るに足らない心配」ということで同じなのですが、取り越し苦労としてはニュアンス的にやわらかい雰囲気があり、日常会話にも取り入れやすい、という違いがあります。

ただ、目上の人の心配を安易に取り越し苦労で片付けると場合によってはしつれいにあたりますので、正しい使い方をしっかりと把握しておきましょう。

強迫観念

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強迫観念とは、たとえば外出先で「家の鍵をしっかりと閉めたかどうしても気になる」というように、特定の行為に対して気が取られてしまい他のことが手につかなくなる状態を表します。

度が過ぎれば強迫観念症として診断され、治療の対象になりますが、家の鍵程度のことであればどなたにも少なからずあてはまるのではないでしょうか。

意味的にも杞憂の類語ではありますが、杞憂よりも強迫観念のほうが「より具体的な事柄にとらわれている」という意味が強くなり、比喩的な使い方として「間違った信念」の類語としても用いられることがあります。

懸念する

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杞憂のように、何かを深く心配する、という意味の類語としては懸念が挙げられます。杞憂も懸念もややかしこまった表現ですが、類語でありながら基本的な使い方としては若干の違いがあります。

どちらかというと懸念のほうがやや日常語に近く、無駄な心配というよりも単純に何かを気にかける、将来の困り事についてあれこれと予測をめぐらせる、という意味が含まれています。^

また、懸念材料という言葉はあっても杞憂材料という言葉はないことから、類語ではありながらも使い方が完全に同じ類語ではないことがわかります。

懸念も日常語としてはやや堅めの表現であることから、杞憂と同じくビジネスシーンで用いられる言葉と言えるでしょう。

英語では何という?

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中国の故事成語が由来となっている杞憂ですが、英語にも類語があるのでしょうか。結論を言うと、杞憂の直接的な英訳は「groundless fears」となります。

fearsは不安や心配事の意味があり、「根拠がない」を意味するgroundlessと組み合わせることによって「根拠のない不安」という意味になります。

その他の英語表現としては「imaginary fears」などがありますが、いずれも目の前にない不安、心配事という意味があり、使い方としてはそれほど変わりません。

杞憂はビジネスでも使える?

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堅苦しいイメージのある杞憂という表現ですが、ビジネスシーンではどのように使われるのでしょうか。使い方を意味から推測していきましょう。

杞憂をビジネスシーンで使う場合は、クライアントや取引先に対して、何か良くないことをあらかじめ伝えておく、というような使い方になります。

ちなみに、杞憂は口語ではないため、基本的にはビジネス文書やメールなどでの使い方がメインとなります。

杞憂の対義語

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杞憂の基本的な意味や使い方、類語について詳しく見てきたところで、ここからは杞憂の対義語を意味、使い方に分けて見ていきましょう。プライベートやビジネスシーンでの誤用を防ぐうえでもぜひ役立ててください。

楽観する

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目の前に起きていないことについてあれこれと気に病むのが杞憂の意味なら、目の前の現実をポジティブにとらえ、「何とかなるさ」と考えるのが楽観するということです。

楽観とは、すでに将来的にある程度予測される事柄をどのようにとらえるか、ということがポイントになっており、現実に起きそうにないことまでいつまでも気に病む杞憂とは意味としても対義語の関係にあります。

暢気

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あれこれと取り越し苦労をする、という意味がある杞憂の対義語としては、暢気が挙げられます。暢気な人は将来不安なことがあってもネガティブにはなりませんから、その意味でも対義語になっていると言えます。

ただ、「暢気な人」とは言えても「杞憂な人」とは言えないように、完全な意味での対義語として使うのは少々無理があるようです。

明日は明日の風が吹く

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杞憂の由来が中国の故事成語ということで、日本のことわざの中で対義語を探してみました。「明日は明日の風が吹く」はまさしく取り越し苦労を戒めることわざであり、つまらない心配事を吹き飛ばす意味があります。

英語での対義語は?

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杞憂の英語での対義語はあるのでしょうか。日本語の対義語は楽観、暢気などであり、「つまらない心配事なんか忘れて毎日をポジティブに楽しもうよ」という意味になります。

英語では、ビートルズの名曲のタイトルにもなっている「Let it be(あるがままで)」が意味としては近いのかもしれません。

また、英語ではありませんが「ケ・セラ・セラ」もポジティブな意味を持ち、つまらない心配事なんかしないで楽観的に生きようよ、というメッセージが込められています。

杞憂の使い方

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ビジネスでもプライベートでも、杞憂のような故事成語をさりげなく使えると印象ががらりと変わるものです。ビジネスでも使える杞憂の主な例文と正しい使い方をいくつか御紹介していきますので、ボキャブラリーをさらに広げましょう。

例文①

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「センター試験まで風邪をひくか不安だったが、杞憂に終わってよかった」。こちらが杞憂のオーソドックスな例文になります。センター試験という将来の出来事について先々から不安になっているという意味で杞憂の例文になっています。

例文②

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「息子の東京での活躍を見て、父親は自分の反対が杞憂であったと悟った」。こちらは心温まる例文です。この例文のように、杞憂は「終わった」という動詞とセットで使うのが基本的なかたちとなります。

例文③

「小松左京氏は著書の中で日本沈没を予言していたが、それはある意味で杞憂に終わらなかったようだ」。これはエピソードとしても実際に残っている例文です。

少々余談になりますが、小松左京氏はベストセラー小説「日本沈没」の中で日本全体が首都圏から崩壊していく様子を描いており、SF作家の想像力にはあらためて感嘆する、という声も寄せられました。

例文④

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「中南米に進出した支店の売上が芳しくなく倒産の予測も流れているが、杞憂に終わることを祈るしかない」。ビジネスでも使える杞憂の例文です。

また、クライアントやビジネスメールでは「杞憂かとは存じますが」などの前置きをつけたうえで用件を伝えるかたちが使い方としては一般的であり、ひとつの定型文として定着しています。

杞憂の注意点

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杞憂はビジネスでもプライベートでも使える意味の広い言葉ですが、反面、使い方に注意が必要な表現でもあります。失礼な印象を与えないためにも、杞憂を使ううえでの注意点について見ていきましょう。

目上の相手には使わない

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杞憂はビジネスでも使える表現ですが、目上の相手に対して使うのはおすすめできません。それには、日本特有の年功序列の考え方が関係しています。

経験を積んでいる目上の相手は思慮深く、些細なことでは思い悩まない、という考え方があり、目上の相手に対して杞憂を安易に使うと「その悩みは小さいことですよ」と指摘しているのと同じことになってしまいます。

ビジネスシーンで失礼にならないように、杞憂の本来の意味と正しい使い方についてしっかりと把握しておきましょう。

杞憂は「つまらない心配事をする」という意味

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杞憂の由来は中国の故事成語であり、「起こりもしないことをいつまでも心配する」という意味があります。「杞人憂天」という言葉が短縮されて使われるようになった言葉です。

悲観、懸念、取り越し苦労など類語も多く、ビジネスシーンでもプライベートでも使える意味の広い言葉ですので、失礼にあたることのないよう、正しい使い方をしっかりと把握しておきましょう。

立石芳樹
ライター

立石芳樹

ゲームとグルメが趣味のウェブライターです。家ではサブスクリプションで映画ばかり見ています。お笑いも好きで、気が向いたらチケットを予約してライブにも行きます。オカルトと恋愛が苦手です。暮らしに役立つ情報を幅広く発信しています。よろしくお願いいたします。

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