紆余曲折の意味とは?
「紆余曲折」という言葉の意味をご存知ですか?「道の曲がりくねり?」「折れ線グラフ」「意味も読み方不明」など、意味を半分知っていたり、言葉自体を詳しく知らない場合が多いケースも散見されます。
まずは読み方から。「紆余曲折」は、「うよきょくせつ」と読みます。聞いた事がある言葉で、話し言葉として使われていることが理解できます。
「紆余曲折」とは、「道の曲がりくねり」「事情が込み入っていていろいろ変わる事」という意味です。このような意味なので、公道や私道などの歩道や車道、日常生活のあれやこれやに色々と応用が聞く言葉です。
「紆余曲折」の意味が理解できれば、話し言葉、書き言葉で「紆余曲折」の言葉を目にするたびに内容の真意を深く理解できるきっかけになります。
今回はそんな「紆余曲折」について徹底紹介。「紆余曲折」の対義語と類義語、使い方、多事多難との違い、注意点、由来・歴史、英語表記、漢字表記について順に紹介していき、「紆余曲折」をマスターできるよう特集していきます。
紆余曲折の対義語・類義語
まずは「紆余曲折」の対義語・類語から。「紆余曲折」という言葉にはどんな対義語・類義語が存在しているのでしょうか?
「紆余曲折」はその意味「道の曲がりくねり」「事情が込み入っていていろいろ変わる事」から、人生を長く生きれば生きるほどこの言葉の意味に近くことになる身近で味わい深い言葉です。
私たちの生活は、常に幸・不幸、物事の良し悪しに何かと左右されています。環境だったり、人間関係だったりのアップダウンを繰り返しながら日々を営々と生活しています。
そんな人生と寄り添うように存在する言葉「紆余曲折」の対義語・類義語を知ることは、「紆余曲折」の意味づけをより明確にする契機となります。以下から「紆余曲折」の対義語・類義語を紹介していきます。
物事が順調に進んでいる意味
まずは「紆余曲折」の対義語から紹介していきます。「紆余曲折」はいろいろな曲がりくねりを経てきたという言葉のニュアンスがその意味の中に含まれています。
これに対し、紹介する対義語は「順風満帆」です。対義語「順風満帆」は表題でも触れている「物事が順調にすすんでいること」を意味する四文字熟語です。対義語「順風満帆」の読み方は「じゅんぷうまんぱん」と読みます。
「順風満帆」は物事が順調にいっている意味ではありますが、自分で言うとあまりに奢り昂る印象を抱かれます。他人が評価して「あなたは(彼・彼女は)順風満帆だね」と使う形が自然な使い方です。
楽しいことも辛いこともあるの意味
次に紹介する言葉は「紆余曲折」の類義語です。その類義語は「山あり谷あり」が当てはまります。この類義語「山あり谷あり」は「楽しいこともあれば辛いこともある」を意味します。
現在でも「山あり谷あり、いろいろあったけど、今は無事で生活している」などという言葉でも頻繁に使われている語です。
ただ類義語「山あり谷あり」は言葉のニュアンスとして「紆余曲折」のように「込み入っていていろいろ変わる」という形容ほど、複雑に入り組んでいる感はありません。
紆余曲折の使い方・例文
それでは「紆余曲折」という言葉は私たちの実生活でどのように使うことができるのでしょうか?私たちは生活の中で遭遇する毎日の出来事を蓄積し、経験として培います。
そして、私たちがそれを「経験値」として今後の生活に昇華し応用させていくことで、より人生が味わい深く、彩豊かな色彩へと変化していきます。
その過程を経験する途上にはにはさまざまな変化を目撃します。いいこと、悪い事、幸せ、不幸せ、運、不運、さまざまな出来事を経験することが「紆余曲折」の言葉の真意に近づきます。
上記を踏まえて「紆余曲折」の例文を下記にケース別でご紹介します。ぜひこの際「紆余曲折」使い方をご参考いただければ幸いです。
例文①
「紆余曲折」の使い方の1つの例文として、ビジネスシーンが上げられます。上司との会話などで「紆余曲折」が使われています。
「俺もいろいろ紆余曲折があって、今のポジションで仕事をさせてもらっているんだ。楽じゃないよ」このように飲み会などの雑談で「紆余曲折」という用語を使うケースです。
例文②
「紆余曲折」の使い方の1つの例文として、プロフィールが上げられます。ホームページなどのポートレートのキャプションで「紆余曲折」が使われています。
「〇〇卒。大手メーカーを20年勤め、〇〇年退社。紆余曲折を経て現在に至る」このように自分の経歴を紹介する文章の中で「紆余曲折」という用語が使われるケースです。
例文③
「紆余曲折」の使い方の1つの例文として、インタビューが挙げられます。著名人がインタビュアーにいままでの人生の遍歴を聞いている際に「紆余曲折」が使われています。
「そうですか。なるほどー。そんないろいろな紆余曲折を経て今があるんですねー」このように相手がメディアを介してのインタビューする話し言葉の中で「紆余曲折」という用語を使うケースです。
例文④
「紆余曲折」の使い方の1つの例文として、書籍が挙げられます。作家が自叙伝や小説で書籍を出版する際、「紆余曲折」が使われています。
「幾多の紆余曲折を経た結果、幻滅を伴うものになった」フィクションでもノンフィクションでも「紆余曲折」という用語が使われるケースです。
紆余曲折と多事多難の違い
次に「紆余曲折」と「多事多難」との違いについて紹介していきます。この「多事多難」は先述したように「紆余曲折」に非常に似た意味の有名な言葉です。
ではどんな違いがあるのかを、以下「紆余曲折」「多事多難」それぞれの意味をそれぞれ比較していきながら違いを説明していき、「多事多難」の使い方を見ていきます。
多事多難は困難や事件が多いという意味
「多事多難」は「困難や事件が多いこと」を意味する語です。対して「紆余曲折」は「道の曲がりくねり」「事情が込み入っていていろいろ変わる事」を意味しています。
上記を比べてみると「紆余曲折」に比べて、「多事多難」は「困難」や「事件」といったマイナス要因しかその経緯に含んでいない言葉であることがわかります。
上記の意味から表現は否定的な内容に終始します。「ここ数年間の多事多難でめっきり老け込んでしまって、嫌になる」など後味の悪い内容になります。
紆余曲折使う際の注意点
「紆余曲折」を使う上で気をつけなければならない点はどこにあるのでしょうか?先述で「多事多難」との違いを説明してきましたが、注意点はこの両者の意味の違いと関係していきます。
上記の点を踏まえて以下に「紆余曲折」を使う際の注意点をご紹介していきます。実用につながる大切な部分なので、実際に「紆余曲折」を使う際、参考になれば幸いです。
片方の意味だけでは使えない
「紆余曲折」を使う上で注意すべきポイントは「片方の意味」だけでは使う事ができないことが大きなポイントです。先述した「違い」で「多事多難」では事件や困難などもマイナス要因で占められていることは先述しました。
「紆余曲折」は「事情が込み入っていていろいろ変わる事」です。良し悪しで見れば、良いことも悪いことも含み、幸、不幸で見れば、幸運なことも不幸なことも含んで使うことで、本来の意味に近しくなります。
「紆余曲折」あると前置きしたのに、本題の話を聞いてみたところ、どちらか一方の意味しか無かった場合は、「あんまり紆余曲折していない」と落胆されるかもしれません。
ただ逆説的に言えば、落胆するくらいの期待が「紆余曲折」の言葉と話の内容にはかかっていることが窺い知れます。
紆余曲折の由来・歴史
「紆余曲折」の意味、類義語、多事多難との違い、使い方がわかったところで、「紆余曲折」の由来はどこにあるのでしょうか?
「紆余曲折」は例文などでご紹介したように、その意味から、通る道の状況、ビジネスシーンを始め、数多くのシーンで使用することができる言葉です。そんな汎用性のある言葉なので、その使用には古い歴史がある可能性も否定できません。
では上記を踏まえて「紆余曲折」の由来と「紆余曲折」が日本で使われていた使用時期を遡り、「紆余曲折」の由来と歴史を掘り下げていきます。
由来
「紆余曲折」は冒頭でも紹介したように「曲がりくねった道」を意味する語として成り立ちました。詳しくは後述する「漢字」に譲りますが、「紆余」は曲がりくねった道、「曲折」は「折れ曲がったり」「曲がりくねったり」することを意味しています。
上記から転じて、「複雑に変化をしている経過」を表す意味となり、本来の原義「道の曲がりくねり」と「事情が込み入っていていろいろ変わる事」という意味が生まれました。
「紆余曲折」の由来が理解できたところで、「紆余曲折」は日本でどのくらいの前から使われていたのでしょうか?その使用時期の歴史を辿ってみます。
歴史
上記の点を辿る資料として「紆余曲折」は過去の文献でも確認することができます。小説家の吉川英治の「江戸三国志」という作品です。1932年(昭和27年)から「報知新聞」に連載されました。下記の一説を紹介します。
「しかし、左程にもない距離に思われても、歩いてみると案外、紆余曲折のあるのが山道の常で、日本左衛門の飄々乎たる姿を、沢辺の向うに見ていながら、三人がそこへ降り着くまでにはかなりな時間がたっている」
上記の文献から「紆余曲折」は、今から少なくても80年以上前の戦後間もない時代には使われていたことが確認できます。
紆余曲折の英語表記
「紆余曲折」は英語でも表現する事ができるのでしょうか?「紆余曲折」はその漢字構成から日本語圏内特有の言葉で英語圏内では使えない表現と認識してしまいがちです。
しかし「紆余曲折」は英語でも表現することができる言葉です。英語では「twists and turns」という表現であわわす事ができます。この英語「twists and turns」は英語圏でも日本語圏同様、プライベート、ビジネスシーンなど様々な日常会話で広く使用することができます。
英語の文章で例をあげると「After many twists and turns」とすれば、「紆余曲折があり」という句になり、本文に効果的につなげる橋渡しになります。
英語「twists and turns」は英語の単語「twist」と「turn」から成り立っています。「twist」はひねり、「turn」は曲がりという意味です。
紆余曲折の漢字
最後に「紆余曲折」のそれぞれの漢字の成り立ちを確認していき、各漢字が現在知られる「紆余曲折」の意味としてどのように機能しているかを紹介していきます。
まずは「紆」から。訓読みで「紆がる(まがる)」「紆げる(まげる)」「紆げる(まげる)」「紆る(めぐる)」「紆わる(まつわる)」「紆ぼれる(むすぼれる)」と読む事ができます。
「紆」は会意文字で、偏の糸と、長いという意味を持つ于(読み方:ウ)とから成り立っています。糸のように長い意味が語源です。そこから転じて、「糸のように道が曲がりくねる」という意味が生まれました。
つぎに「余」。この語は訓読みで「余る(あまる)」「余す(あます)」と読む事ができます。この語には二つの成り立ちがあり、「紆余」の「余」はその中の一つである形声文字の意味で使われています。
「余」は意符である「食」と、音符である「余」(読み方:ヨ)とから成りたちます。食物がありあまるというのが語源で、そこから「あまる」意味になりました。
そして「曲」。この語は訓読みで「曲げる(まげる)」「曲がる(まがる)」と読む事ができます。象形文字で、木や竹などで作った「まげもの」の形にかたどっていることから「まげる」「まがる」という意味が生まれました。
さいごに「折」。この語は訓読みで「折る(おる)」「折(おり)」「折れる(おれる)」と読む事ができます。
「折」は会意文字で、旁である「斤」と木が切れた様を表す偏から成り立っていて、「扌」は誤り伝わった形で今に至っています。おので木を切る語源から「おる」「おれる」という意味が生まれました。
このように「紆余曲折」を構成する漢字は、それぞれが本来の意味に因んでいることが上記により確認する事ができます。
紆余曲折はいろいろ変わるという意味
「紆余曲折」の意味、対義語と類義語、使い方、多事多難との違い、注意点、由来・歴史、英語表記、漢字表記を順を追って見てきました。「紆余曲折」は「道などの曲がりくねり」から「事情が込み入っていていろいろ変わる事」を指す語として広く使われるようになりました。
込み入った事情は、幸運で良いこともこともあれば悪い、不運なこともあるなので、「紆余曲折」の話を聞いた相手方は「共感」することができるわけです。そんな味わい深い言葉「紆余曲折」を実生活で活用されることがあれば幸いです。