無慈悲の意味とは?
「無慈悲」という言葉の意味を知っていますか?「非情?」「漫画のタイトル」「読み方からわからない」など、その意味を含めて言葉自体を詳しく知らないケースが多いです。
まずは「無慈悲」は、「むじひ」と読みます。たしかに「無慈悲」は日常会話の人間関係のあらゆるシーンで、または「漫画」「小説」などの活字の世界で多々見かける言葉です。
「無慈悲」とは、「思いやりの気持ちがないこと」「あわれみの心がないこと」という意味です。こういう意味なので、私たちの生活に密接に関わっている言葉です。
「無慈悲」の意味が分かれば、「無慈悲」の言葉を目にするたびにこの先の展開が予想でき、より深い読解をすることができます。
今回はそんな「無慈悲」について徹底解剖。「無慈悲」の類義語、使い方、不親切との違い、注意点、由来・歴史、英語表記、漢字表記について順に紹介していき、「無慈悲」を完全に把握できるよう特集していきます。
無慈悲の類義語
まずはじめに「無慈悲」の類義語からです。「無慈悲」という言葉、この言葉にはどんな類語が存在しているのでしょうか?
「無慈悲」はその意味「思いやりの気持ちがないこと」「あわれみの心がないこと」から、「人間の心そのもの」を示唆している言葉です。私たちは直接の対面であってもなくても毎日いろいろな人と関わって生活しています。
その毎日の関わりの中で、「無慈悲」という言葉は、その1つ1つの行動が「思いやりの心がない」「あわれみの心がない」振る舞いになっていないか?測る事ができる、自分または他人にとって身近な存在の言葉です。
そんな身近な言葉「無慈悲」の類語を知ることは、「無慈悲」の意味づけをより明確にする契機となります。以下より「紆余曲折」の類語を紹介していきます。
思いやりや同情心がない意味
では早速「無慈悲」の類語の紹介です。その類語は「無情」が当てはまります。この類語「無情」は表題通り「思いやりや同情心がないこと」を意味します。
現在でも「無情な雨が降ってきた」「無情にその願いを突き放した」などという言葉でも頻繁に使われている語です。
ただ類語「無情」は仏教語で「精神や感情の心のはたらきがないもの」という意味もあります。草や土、木などです。この場合は別な解釈となりますので、ご留意ください。
そっけないという意味
次の「無慈悲」の類語は「冷淡」が当てはまります。この類語「冷淡」は「思いやりがなく、そっけない」「関心をしめさない」を意味します。
現在でも「冷淡な態度でムカついた」「冷淡で無関心を装う」などという言葉でも頻繁に使われている語です。ただ類語「冷淡」は言葉のニュアンスとして「冷たさ」が入っています。それは「無慈悲」よりも心のさまを形容しており、直接的な表現です。
平気で苦しめるという意味
最後の「無慈悲」の類語は「残酷」が当てはまります。この類語「残酷」は「人や動物にたいして思いやりがなく、平気で苦しめる」を意味します。
現在でも「残酷な仕打ち」「残酷でみていられない」などという言葉でも頻繁に使われている語です。ただ類語「残酷」は言葉のニュアンスとして、能動的な言葉です。「残酷」は「無慈悲」よりも非人間的で熾烈な意味合いを含んでいます。
無慈悲の使い方・例文
では「無慈悲」という言葉は私たちの実生活でどのように使用することができるのでしょうか?「無慈悲」は態度に現れるものなので、毎日の生活に身近であることは先述しました。
私たちは自分が「無慈悲」に振る舞ったり、「無慈悲」に振舞われたり、「無慈悲」な対応を目撃したり、あらゆるシーンで「無慈悲」と関わり合いながら生活しています。
もっとも「無慈悲」ではなく「慈悲深く」常にありたいものですが、仕事中で多忙だったり、別なことに熱中していたり、寝ていたりと常に平明な心ではいられないのが日常です。
上記を踏まえて「無慈悲」の例文を下記にケース別でご紹介します。「無慈悲」の使い方をご参考いただければ幸いです。
例文①
「無慈悲」の使い方の1つの例文として、ビジネスシーンが上げられます。上司との業務連絡で「無慈悲」が使われています。
「先日提出してもらった稟議書は無慈悲にも却下された。すまんが次回に廻してくれ」このように対面でも電話やメールでも業務連絡で「無慈悲」が使われるケースです。
例文②
「無慈悲」の使い方の1つの例文として、プライベートなシーンで上げられます。悩み事を打ち明けた会話野中で「無慈悲」が使われています。
「そんな心中察するにあまりあるお願いを無下にするなんて、なんて無慈悲な人なんでしょう」このように個人的な込み入った話の中で「無慈悲」が使われるケースです。
例文③
「無慈悲」の使い方の1つの例文として、ゲームが上げられます。ゲームタイトルやゲームを紹介するキャッチコピーで「無慈悲」が使われています。
「冷酷無慈悲にもあなたを襲ってくる恐怖がここに」などのキャッチコピーや「無慈悲な笑顔」という人気ゲームのタイトルのように「無慈悲」が使われるケースです。
「無慈悲」を使う事で、ホラーやサスペンスを想起させることができ、実際に興ずるゲーム自体の世界観をイメージすることができます。
例文④
「無慈悲」の使い方の1つの例文として、漫画の世界が上げられます。漫画のタイトルで「無慈悲」が使われています。
「女は無慈悲に笑う」「無慈悲な8bit」「伯爵の無慈悲な選択」「無慈悲なアナタ」など漫画の世界でもタイトルで「無慈悲」が使われているケースです。
このように、ビジネスでもプライベートの会話のような現実の世界でも、ゲームや漫画などの架空の世界でも「無慈悲」は使う事ができる言葉です。
無慈悲と不親切の違い
使い方を一通り確認できたところで、「無慈悲」と「不親切」との違いについて紹介していきます。この「不親切」は「無慈悲」に非常に似た意味の言葉です。
ではどんな違いがあるのかを、以下「無慈悲」「不親切」それぞれの意味をそれぞれ比較していきながら違いを説明していき、「不親切」の使い方を見ていきます。
配慮が行き届かないという意味
「不親切」は表題のように「配慮が行き届かない」を意味する語です。対して「無慈悲」は「思いやりの気持ちがないこと」「あわれみの心がないこと」を意味しています。
上記2つの言葉を比べてみると「無慈悲」に比べて、「不親切」は「あわれみの心をもっているかいないか」を問わず、配慮することが何らかの理由でできない場合にも使う事ができる言葉であることがわかります。
上記の意味を踏まえると「不親切」の言葉は「あわれみ」という人間の心についてまでは踏み込んでおらず、本人は「慈悲深い」対応をしているつもりでも、他人から「不親切だなー」と映る場合も想定されています。
無慈悲を使う際の注意点
「無慈悲」を使う上で気をつけなければならない注意点はどこにあるのでしょうか?「無慈悲」は仏教用語と関連しているが故に注意すべきなポイントがあります。
上記の点を踏まえて以下に「無慈悲」を使う際の注意点をご紹介していきます。実際の使用につながる大切なポイントなので、実際に「無慈悲」を使う際に、以下を参考にしていただけば幸いです。
仏教用語では使えない
「無慈悲」を使う上で注意すべきは、表題の「仏教用語」としては使う事ができないことが大きなポイントです。「仏教用語と関連している言葉なのに仏教用語では使えない?」と疑問が上がるところですが、その理由は「無」の取り扱いに関連しています。
詳しくは後述しますが、たしかに「慈悲」という言葉は、「いつくしみ、あわれむ心」としての意味の他、原義には「仏や菩薩が衆生をあわれみ、苦を取り除き、楽を与えようとする心」という意味も存在しています。
上記を踏まえれば、それを打ち消す接頭語「無」を付け加えれば、仏教用語としても意味が通じると認識しがちではあります。
しかし、「無」は現在私たちが認識している「ない」という意味以外にも、仏教用語としての意味も存在しており、「事物も事象も全く存在していないこと。悟りの境地」という意味でも使われております。
仏教用語としての「無」は現在私たちが知る「無」とは違い、意味合いが大きく異なるため、「無慈悲」のような使い方はできないのでご留意ください。
無慈悲の由来・歴史
「無慈悲」の意味、使い方、類語・対義語、忖度との違い、注意点がわかったところで、「無慈悲」の由来はどこにあるのでしょうか?
「無慈悲」は例文などでご紹介したように、ビジネスを始め、日常の多くのシーンで使う事ができる身近な言葉です。何より人間の心のありようを指しているなので、現在の小説や漫画だけではなく、日本では古くから使用されてきた可能性もあります。
上記を踏まえて「無慈悲」の語源と「無慈悲」が日本で使われていた使用時期を辿っていき、「無慈悲」の由来と歴史を深堀していきます。
由来
「無慈悲」の由来を知る上で、まずは「慈悲」という言葉を取り上げる必要があります。この「慈悲」という言葉はどんな意味を持っている言葉なのでしょうか?
「慈悲」は「あわれみ。なさけ」という意味です。「慈悲」は元々は仏教用語で、後に私たちが普通に生活を送る日常でも使われるようになりました。
仏教用語としての「慈悲」の「慈」「悲」それぞれは同格の漢字で「慈」はあらゆる人に注がれる「友愛」を原義としています。「悲」はあわれみ、同情の意味である「嘆き」を原義にしています。
上記から仏教用語では「仏や菩薩が衆生をあわれみ、苦を取り除き、楽を与えようとする心」を意味していると言われています。
このような経緯から「慈悲」は「いつくしみ、あわれむ心」の意味として使われるようになります。そしてこの「慈悲」に否定を表す接頭語「無」が付いて、今日知られる「思いやりの気持ちがないこと」「あわれみの心がないこと」という意味を持つ「無慈悲」という言葉となりました。
「無慈悲」の由来が理解できたところで、「無慈悲」は日本でどのくらいの前から使われていたのでしょうか?その使用時期の歴史を辿っていきます。
歴史
上記の点を辿る資料として「無慈悲」は過去の作品でも確認することができます。小説家である正宗白鳥の「入江のほとり」という作品です。1915年(大正4年)「太陽」に発表されました。下記の一説を紹介します。
「彼れの英語の発音を試験したり、彼れの英文について無慈悲な批評を下したりしたがるそぶりを見せて驚かす者がなくなるのだ。」
上記の文献から「無慈悲」は、今から少なくても100年以上前の大正の時代には使われていたことが確認できます。
無慈悲の英語表記
「無慈悲」は日本語圏だけではなく、英語圏でも使われている言葉なのでしょうか?ビジネスでも国際化がすすんでいる現在、汎用性のある「無慈悲」を英語でも使えれば、覚えておいて損はありません。
その問いの答えとして、「無慈悲」は日本語だけでなく、英語でも表現する事ができます。まずは英語の「marciless」という単語です。「無慈悲な・残酷な」という意味です。
または、英語の「heartless」という言葉もあります。「無情な・冷酷な」という意味です。さらに、英語の「ruthless」という単語もあります。「残忍な・容赦のない」という意味です。
すべての英単語の語尾に「less」がついて否定の接尾語がついているのがわかります。本来は「mercy(慈悲)」「heart(心)」「ruth(ルースという女性の名前)」という意味です。
無慈悲の漢字
最後に「無慈悲」のそれぞれの漢字の成り立ちを確認していき、各漢字が現在知られる「無慈悲」の意味としてどのように機能しているかを紹介していきます。
まずは「無」から。訓読みで「無い(ない)」と読む事ができます。「無」は象形文字で、両手を広げて「舞う(まう)」人の形をかたどっています。そこから転じて、「ない」という意味が生まれました。「舞」は「無」から分化した漢字です。
つぎに「慈」。この語は訓読みで「慈しむ(いつくしむ)」と読む事ができます。この語は形声文字で「心」と、音符「茲」(読み方:シ)とから成ります。愛情をかけるという語源から「いつくしむ」という意味が生まれました。
最後に「悲」。この語は訓読みで「悲しい(かなしい)」「悲しむ(かなしむ)」と読む事ができます。この語も形声文字で「心」と、音符「非」(読み方:ヒ)とから成る。いたみかなしむという語源から「かなしい」「かなしむ」という意味が生まれました。
つまり「無慈悲」は「慈」「悲」という「いつくしみ」「かなしみ」という人間的な「思いやりがある温かい心」が「無い」と否定された言葉として解釈する事ができます。
無慈悲はあわれみの心がないという意味
「無慈悲」の意味、類語、使い方、不親切との違い、注意点、由来・歴史、英語表記、漢字を順を追って見てきました。「無慈悲」は「思いやりの気持ちがないこと」「あわれみの心がないこと」の意味は、その由来でも紹介した「慈悲」という「あわれみの心」を語源としています。
相手の心情を察する「慈悲深い、思いやりのある心」が人間関係を豊かにすることは言うまでもありません。いましがたの対応が「無慈悲」であるか?本記事をきっかけに確認してもらえれば幸いです。