一献の意味とは?
「一献」という言葉は飲み会の席や新聞、小説等の書籍でたまに見かける言葉です。「一献を傾ける」「どうぞご一献」等の使い方をしますが、一体「一献」にはどんな意味があるのでしょうか。この記事では「一献」の意味やその由来についてご紹介します。
「一献」には「一杯の酒を酌んで飲むこと」「一番最初の酒」「酒の振る舞い」という意味があり、主に誰かと一緒に酒を飲む席で使われることが多い言葉です。「一献」はお酒を酌むことを丁寧な言い回しで表現した敬語的な言葉とも言えます。
一献の由来
「一献」という言葉が出来た由来をご紹介します。「一献」の「献」には、「お客人にお酒や料理でおもてなしをする」という意味があります。昔には、おもてなしの席でお客人にお酒を三杯薦めるというのが礼儀とされており、そのことを「一献」と呼んでいました。
時代が変わって現代では、お酒を振る舞うこと行為自体を「一献」と呼んでいますが、本来はおもてなしの礼儀、作法の言葉だったのです。
ちなみに昔のおもてなしの席では、一献(三杯)毎に料理が一品出されるという形式となっており、次の一献ではまた違う料理が出されていました。このことから現代では食事に出す料理やメニューのことを「献立」と呼んでいます。
一献の特徴
「一献」という言葉には、礼儀や作法の意味合いが含まれています。ただお酒を酌むことを「一献」とは呼ばず、「一献」と呼ぶ行為にはいくつかの条件があります。ここでは「一献」という言葉が持つ特徴をご紹介します。
「一献」という言葉は主に職場での目上の人との酒の席やゲストを招いて開く食事の席で使われることが多い言葉です。どんな場合のことを「一献」と呼ぶのかしっかりと把握して、相手に無礼のないようにしましょう。
丁寧な言い回しの言葉である
まず「一献」という言葉には敬語的な意味合いが含まれているということを覚えておきましょう。「一献」には「盃にお酒を満たすこと」という意味がありますが、この表現には敬語的で丁寧な言い回しをしてるという言葉遣いといしての特徴があります。
なので「一献」と呼ぶ場合は、主に目上の人に対してお酌をする時にふさわしい言葉です。敬語的で丁寧な言い回しですが必ず目上の人でなければならないということはありません。目下の部下に対して使っても問題ない表現です。
通常は最初の一杯目のことを一献という
「一献」という言葉を使う場合、基本的には最初の一杯目にだけ使います。何度も「一献」と表現するのは実は間違いで、「一献」と言う場合は最初の一杯目か、もしくは回数を限定するのが基本です。
なので実際に「一献」を使う時は、「まずは一献」等、相手に対して最初の一杯目を薦めるのに使うのが正しい使い方です。ビジネスシーンでは相手の盃が空く度に「さぁご一献」と使うことが多いですが、実はそれは間違いです。
一献の類語
「一献」という言葉には「一杯の酒を酌んで飲むこと」「酒を振る舞うこと」という意味があります。「一献」は敬語的な丁寧な表現なので、類語を使ってもっと崩した表現にも出来ます。ここでは「一献」の類語にはどんな言葉があるのかをご紹介します。
「一献」の類語は、どんな意味合いで使うのかによって表現する類語が変わってきます。お酒の席等のビジネスシーンではマナーや言葉遣いは大切な要素です。意味合いをしっかりと捉えて正しい表現で使うようにしましょう。
一杯
シンプルに「一杯」と表現しても大丈夫です。「一杯」には様々な意味がありますが、「一献」の類語としての意味では「少し酒を飲むこと」という目的で使われます。
「一杯」と「一献」はほとんど同じ意味を持つ類語同士です。違いがあるとすれば、「一献」は目上の人に使う言葉なのに対し、「一杯」は同格か目下の人に使う点です。ビジネスシーンで目上の人と食事をする時は「一献」を使うようにしましょう。
酒肴
酒肴(しゅこう)と読みます。意味は「酒と、酒をのむ時に食べる料理のこと」です。「一献」には昔ながらの「おもてなしの席」という意味合いがあるので、「酒肴」も「一献」の類語と呼べます。
「酒肴」という言葉を使う時は、「酒肴でもてなす」「ささやかな酒肴」といった使い方をします。酒そのものや料理自体を指すのではなく、酒席そのものを指す意味合いで使われます。
一献の使い方
一杯の酒のことを指す「一献」という言葉ですが、この言葉には適した使い方があります。単純に酒を酌むことを指す言葉ではなく、マナーや敬語としての意味合いも含まれているのできちんとした使い方をしなければなりません。
ここでは「一献」という言葉の正しい使い方をご紹介します。ビジネスシーンではよく「一献」を間違った使い方をしていることが多いです。マナーや礼儀が大事なビジネスシーンで恥をかかないよう正しい「一献」の使い方をしましょう。
例文①お礼に是非一献差し上げたく存じます
「お礼に是非一献差し上げたく存じます。」という「一献」の使い方は、「ちょっとした酒のもてなし」という意味での「一献」の使い方です。主にビジネスシーンで使われる「一献」の使い方で、相手へのお礼や褒美として食事の席を設けることを指します。
「一献」は敬語的で丁寧な言い回しなのでビジネスシーンで使うにはぴったりです。主に目上の人や商談の相手等、気を遣う相手に対して使うと効果的です。
例文②まずは一献いかがですか
「まずは一献いかがですか」という「一献」の使い方は「一杯の酒」という意味が含まれています。崩した言い方をすると「まずは一杯どうですか」という意味です。酒席において目上の人に対してお酒を勧める時に使うと効果的です。
この例文では「一献」を「一杯」に変えても問題はありません。「一杯」と表現しても特に相手に失礼になることはないので、好きな方を使うとよいでしょう。しかし、より気を遣った表現をするなら「一献」がおすすめです。
例文③景色を観ながら一献傾ける
「景色を観ながら一献傾ける」という「一献」の使い方は「お酒を飲むこと」という意味合いが含まれています。「一献」には特有の言い回しがいくつかあり「一献傾ける」とは「一杯やろう」という言葉をより丁寧に言い回した表現です。
なので「一献傾けませんか」と言われれば「一杯飲みに行きませんか」という意味になります。若い世代ではあまり使い馴染みの無い言葉ですが、年配の人がよくこの表現をします。
例文④今度一献交えよう
「一献交える」とは「一緒に飲みに行こう」を丁寧に表現した言葉です。なので「今度一献交えよう」は「今度一緒に飲みに行こう」という意味です。
「一献」を使った言い回しはたくさん種類があり、先ほど紹介した「一献傾ける」の他にも「一献設ける」「一献お願い」「一献お付き合い」等の表現方法があります。基本的にはどれも「一杯飲もう」という意味合いが含まれていますが、それぞれでニュアンスが少し違います。
一献の注意点
「一献」という言葉は「一杯の酒」「最初の一杯」「お酒を酌むこと」「お酒の席」等、たくさんの意味があります。丁寧な言い回しなので目上の人に使うのが基本ですが、敬語的表現である以上いくつか気を付けなければならない点があります。
ここでは「一献」という言葉を使う上で注意しておくべき点をご紹介します。「一献」はビジネスシーンで使うことが多い言葉なので正しい使い方を覚えておきましょう。
丁寧さを打ち消すような言葉は使わない
「一献」という言葉は「一杯」の敬語的な丁寧な表現なので、丁寧さを打ち消すような使い方をしないよう注意しなければなりません。間違った使い方の1つとして「一献いきましょう」という表現が挙げられます。
「一献いきましょう」という言葉は一見すると正しいようにも見えますが、「いきましょう」という言葉が「一献」という言葉の丁寧さを打ち消してしまっています。目上の人に勧める最初に一杯では「一献いきましょう」という言葉は使わないようにしましょう。
正しく表現するなら「一献させて下さい」「一献お願いします」と使うのが良いでしょう。相手が目上の人でなく目下に対してなら「一杯いこう」と表現するのも良いでしょう。
一献は一杯という意味
総括すると「一献」という言葉は「一杯」を丁寧に言い回した言葉です。ただ、「一献」には「最初の酒の一杯」「酒を飲むこと」「酒を振る舞うこと」等、他の意味合いもあるので、使い方の幅は「一杯」という表現よりもとても広いです。
「一献」という言葉は言い回し方や使い方によって微妙にニュアンスが変わってくるので、注意が必要です。「一献」という言葉は適切な場面で使い分けることが大切です。