ひとしおの意味とは?
「ひとしお」という言葉の意味はご存知ですか?誰もが何度か耳にしていると思います。自ら使ったことがある方も多いのではないでしょうか?色々な式典でのスピーチや冠婚葬祭の場で聞くことが多いこの言葉。何気なく耳にしていますが正しい意味は何なのでしょう。
「ひとしお」という言葉の意味は「他の場合と比べて程度が一層増すこと」です。感情的に程度が増したことを強める意味であるこの「ひとしお」という言葉。今回は「ひとしお」の意味や使い方や例文、類語、対義語、英語での表現、英語の例文などをご紹介いたします。
ひとしおの対義語・類語
ひとしおとは他の物や場合と比べて、程度が一段と増していること、という意味の言葉ということは分かりました。では「ひとしお」と似たような意味を持つ類語や、逆に反対の意味を持つ対義語はどのようなものがあるのでしょうか?ここでは「ひとしお」の類語と対義語について考えていきます。
ひとしおの類語と意味
「ひとしお」の類語とは一体どんな言葉があるのでしょうか?ここでは「ひとしお」の類語をあげていきます。その種類たるやとても豊富です。例えば「格段」「一段」「ひときわ」「とりわけ」「格別」「ことさら」「一層」「特に」など「ひとしお」の類語は本当にたくさんあります。
このようにたくさんある類語ですがその意味はほぼ同じです。私たちが普段使うのは「ひときわ」「一層」「特に」などの類語でしょう。「格別」や「格段」「ことさら」などの堅苦しい類語は意味は同じですが特別な場でしか使わない傾向にあるので、あまり耳にすることはないでしょう。
ひとしおの対義語と意味
「ひとしお」の対義語についてですが対義語らしい対義語は見当たりません。では「ひとしお」の反対の意味を持つ対義語に当たるような言葉もないのでしょうか?その意味から考えて「一抹」や「いささか」などが「ひとしお」の対義語と考えても良さそうです。
「たくさんの喜び」という意味を含むポジティブな「ひとしお」に対して「多少、わずかな不安」という意味を含むネガティブな意味を含む「一抹」「いささか」などが対義語にあてはまるのではないでしょうか?
ひとしおの使い方・例文
「ひとしお」という言葉について一通りその意味を理解していただけたと思いますので、ここで「ひとしお」を実際に使った例文をご紹介いたします。「ひとしお」の意味を考えながら読んでみてください。併せて前述のネガティブな意味を持つ「一抹」「いささか」を使った例文もご紹介していきます。
例文①
「待ちに待ったお孫さんが無事にお生まれになったということで、お母様の喜びもひとしおでしょう」今回、新米ママになった女性に対する言葉です。この女性のお母様はずっと孫が欲しいと思っていたのでしょう。
そこでやっとのことで孫が誕生。待ちに待った初孫の誕生をいうことでお母様の喜びが一段と増していることを意味しています。とろけるような優しい笑顔で生まれたばかりの初孫を見つめる新米お婆様の顔が想像できます。
例文②
「久しぶりに再会した友達は、昔よりもひとしお美しくなっていました」この例文での「ひとしお」は昔から美しかった友達が時を経て更に美しくなっていた驚きの意味が含まれています。人はどうしても時と共に表情などが疲れていくもの。同窓会に参加した時にはこんな風に言われてみたいものです。
例文③
「今度の宴会の幹事を彼に任せることには一抹の不安があります」このような言われ方をするなんて「彼」が可哀想な気がしますが、そう思われるところが「彼」にはあるのだ、という意味を感じさせます。
なので幹事を任せたとはいえ「準備は進んでいるのだろうか?」「前日になって中止なんてことにならないだろうか?」と不安になっているのかもしれません。このように「一抹」という言葉はネガティブな意味を持つ言葉ですので使い方のは十分に注意しましょう。
例文④
「彼女が私より先に出世するなんて、いささか不満です」この人はとても仕事が出来る自信家なのでしょう。明らかに自分より「出来ない」と思っていた彼女が先に出世したことに納得がいかないし、意味がわからないと感じているようです。
本当はとても不満なのかもしれませんが「いささか」という言葉を使うことにより控えめに自分の不満を伝えています。このように「いささか」という言葉も「一抹」と同じようにネガティブな意味を含む言葉です。「一抹」同様、使い方には注意しましょう。
ひとしおと一抹の意味の違い
「ひとしお」という言葉の持つイメージは明るく前向きです。一方で「一抹」という言葉の持つイメージは不安でネガティブです。この2つの言葉は正反対の意味を持っています。ですので逆の使い方をしないように注意しましょう。
例えば「親友の子どもの成長に一抹の喜びを感じる」や「まだ小学生の子どもに長時間の留守番をさせるのはひとしおの不安を覚える」という使い方は間違いですし、何だか意味の分からない文章になっています。声に出して読んでみると一層、違和感を感じるはずです。
一抹は多少やわずかという意味
「一抹」とは多少、わずかなという意味を持つ言葉です。ですが前述のとおり後ろ向きな意味の言葉なので決してポジティブな意味では使いません。「一抹の希望が見えた」などの使い方は間違いですし意味が分からなくなるので気を付けましょう。
この言葉は不安や寂しさ、悲しみや恐怖などネガティブな意味で使います。なお、多少やわずかなをポジティブな意味で表現する時に使うのは「一縷(いちる)」という言葉です。ですので「一抹の希望が見えた」ではなく「一縷の希望が見えた」というのがその意味を考えると正しいでしょう。
ひとしおを使う際の注意点
「ひとしお」の漢字表記は「一入」と書きます。ですが読める人のほうが圧倒的に少ないので、ひらがな表記で「ひとしお」と書くのが一般的です。とても美しい言葉ですが使い方に少し注意点がありますのでご説明いたします。
ビジネスシーンでは使えない
「ひとしお」という言葉は美しい響きをもつ素敵な言葉です。「ひとしお」は大変古い大和言葉なので上品な純和風の言葉としてお祝いのスピーチや手紙にはよく用いられます。しかしその一方でビジネスシーンには適さない表現です。くれぐれもビジネスシーンでは使わないように気を付けましょう。
ひとしおの由来・歴史
「ひとしお」という言葉の由来とは一体何なのでしょうか?果たして「塩」という意味は含まれているのでしょうか?そしていつ頃から使われてきた大和言葉なのでしょうか?ここでは「ひとしお」の由来と歴史について触れていきます。
由来
「ひとしお」の「しお」とは染物を染料につける回数のことです。なので「ひとしお」は染料に1回浸す、という意味です。現代語にすると「一回」という意味になります。また2回つけることは「再入(ふたしお)」何回も浸けることは「百入(ももしお)」「八千入(やちしお)」などと表現します。
1回染料につける度に色が濃くなって鮮やかさを増すことから「ひとしお」という言葉が出来ました。なお、なぜ染料につける回数が「しお」と言われていたのかは詳しくはわかっていませんが一説では「しお」の語源は「濡れる、湿る」といった意味を持つ「しおる」などとされています。
歴史
「ひとしお」の歴史についてです。一回染料につける度に色が濃くなって一層と鮮やかさが増していくことから、「ひとしお」は「ひと際」などを意味する副詞として平安時代頃から使われるようになりました。また「ひとしお」の漢字表記が「一入」なのは染物を染料に入れる意味からの当て字です。
ひとしおの英語表記
次は「ひとしお」の英語での表現について考えてみましょう。「ひとしお」「一層」「特に」という意味を持つので英語では「especially(特に)」「specially(特に)」「so(とても)」などの英語表現が適当でしょう。いくつか英語の例文をご紹介いたしますのでご参考にしてください。
「I felt espcially happy because I went tokyo for the first time.(初めて東京に行ったので喜びもひとしおでした)」「I love him specially becauce he is my youngest child.(彼は末っ子なので、ひとしおかわいいです)」
「especially」や「specially」のところを強調して大げさなくらいに発音すれば、より英語らしくなるでしょう。なお「ひとしお」の対義語となりそうな意味を持つ「一抹」に当てはまる英語は見当たりません。ですが、その意味を考えると「a little」「a bit」「slightly」などが近いです。
ひとしおはひと際という意味
今回は「ひとしお」について、その意味や由来についてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか。多くの人は、この「ひとしお」という言葉の意味や由来などそれほど深く考える機会などはなかったと思います。
ですが今回「ひとしお」の意味などを深く知る事が出来たことで、また一つ日本語の魅力を感じることが出来たのではないでしょうか。言葉というのは古からの人間の様々な営みの中で生まれてきたので、それぞれにきちんと意味と由来があります。
これをきっかけに「ひとしお」だけでなく、もっと色々な言葉の意味など調べてみてはいかがでしょうか。新しい言葉も楽しいですが古から伝わる大和言葉などもその意味を知り、大切に使っていきたいものです。