「不要」と「不用」の意味とは?
同じ読み方で似かよった構成の言葉である「不要」と「不用」は使い方に気を付けるべき言葉です。誤用すると、相手に悪い印象を与えたり相手の物事に対する評価を下げてしまったりすることがあります。
「不要」は「必要がない」ということを意味し「不用」は「使わない」という意味を表します。ともに、主語になる人の考えや意志によって変わる行動なので、混同すると、相手に正しく伝わりません。
「不要」と「不用」の由来
「不要」と「不用」の一文字目の「不」は、否定や打消しの意味を表します。動詞に付く場合、二文字目の意味内容を一文字目の「不」が「ではない」や「していない」と否定する構造になっています。
また、名詞に「不」がつく場合は、「悪い」「良くない」という意味になります。たとえば「不気味」は気味が悪いことを表し「不便」は、便が良くない、便利でないことを表します。
「不要」と「不用」の特徴
「不要」も「不用」も打ち消す働きの漢字「不」から始まっています。これは、主語となる人つまり判断する人の「打ち消す」考えによって文章や会話に登場します。
その人が必要かどうかを判断し、必要がないと判断する場合は「不要」の漢字が使われます。また、その判断する人が、今後使わないまたは使えないと判断する場合は「不用」の漢字が使われます。
「不要」はあっても良いがなくても良いことを表す
「不要」は「不必要」という意味を表すので、必要がないだけで、使えないわけでも、機能しないわけでもありません。
ある物事が、誰かにとっては「不必要」であっても、他のだれかにとってはとても重要不可欠であることは往々にしてあるのではないでしょうか。
フリーマーケットに出品されるような品々は、出品する人がそれまで使っていて、まだまだ使えるけれども自分にはもう必要がなくなったと判断したということなので「不要」品が出品されることになります。
「不用」は捨て去っても差し支えないことを表す
「不用」は使えないことが前提となります。たとえば、不用品回収(地域によっては廃品回収と呼ばれます)に出されるもののほとんどは壊れていたり、ひどく汚れていたりして使えません。
近年、エコロジーが唱えられるようになったのは、使えるけれども自分は使わないという意志のもと、不用品として出されるものが多いからかもしれません。
思い出の品々などは、たとえ壊れていてもそばに置いておきたいものもありますから、誰かにとっては必要かもしれませんが、機能しないという点においては「不用」を使うべきでしょう。
「不要」と「不用」の対義語
「不要」も「不用」も打ち消す意味がはっきりと伝わる言葉です。打消しの助動詞「ず」や漢字の「不」は、聞き逃したり見逃したりしにくく、かなり理解しやすいものであるためでしょう。
「不要」の場合、判断する人以外の人にとっては必要かもしれないという立場によっては必要かもしれないという前提がありますが、それでも、主語になる人にとっては「不要」つまり「必要でない」という意味がはっきりとわかる表現です。
「不用」の場合は「用いる」つまり使うことを打ち消している言葉です。「もはや機能しない」「使えなくなった」ことを表すので、たとえば「不用品」と言われるものは「廃品」とおおよそ同意になります。
「不要」の対義語
必要のないもの・なくても差し障りがないものという意味の「不要」の対義語は「必要」です。また、「必携」も携帯することが必要不可欠という意味では「不要」の対義語の意味を持っています。
役所で身分証明書必携の規定がある場合に各種請求ができないということが起こるように、身分証明書必携が身分証明証なしには許されないということを示すので「必要」と同様に「必携」も「不要」の対義語になるでしょう。
「不用」の対義語
使わないという意味の「不用」の対義語は、使うことを前提としている言葉です。役所や学校等の提出書類の束の中から「この用紙はフヨウです」と言われたものについては、使わないので破棄してよいという意味で「不用」を意味しています。
この「不用」の言葉に対し「入用」は、何かをするときに必要なもの、あるべきものを表しているので「不用」の対義語です。
また「入り用がある」も他にも経費つまりお金が必要であることを表し、使うことを前提にしているので「不用」の対義語の意味を持つと言えるでしょう。
「不要」と「不用」の使い方
似かよった意味で混同しやすい「不要」と「不用」の使い分け方を、例文とともに検討してみましょう。「不要」と「不用」は、会話の中で音で聞くだけの場合にも、漢字の分別の判断をして、誤解しないように注意が必要です。
「不要」は必要不必要が尺度になります。他方の「不用」は使うか使わないかが尺度になる言葉です。それぞれ使い方の違いを知っておくべき言葉ですから、例文を見て「不要」と「不用」の使い方に慣れておきましょう。
例文①
日常メール等の交換をするときに「返信不要」と添えられていると、疑問点もなく内容を承知した場合、既読了解を知らせるべきかどうか迷います。これは、立場と用途によって違います。
たとえば、親しい友人の場合は指示されるまま返信なしで問題がないこともありますが、基本的には「不要」と言われても「わかりました」「承りました」の意思表示が必要でしょう。
また、ビジネスメールにおいて「返信不要」の配慮を伝える場合は四字熟語で意思表示するのではなく「ご返信のお気遣いには及びません」等、文章で添えることがマナーです。
例文②
「不要不急の外出は控えてください」と新聞やテレビで報道されると、危険な一大事が起こりつつあるとわかります。「今、直ちにする必要がなく、急がなくても済む」場合には外出をしないように」と告知する例文です。
「控えてください」という場合と「禁止」と言われる場合とでかなり印象が違いますが、とり急ぎ必要のない外出、代替えの利く所用による外出はしてはいけないという意味でしょう。
例文③
「不用品回収を利用される方は指定の日時・指定の場所に出してください」と掲示板に注意が貼られることがあります。壊れたり新調したりして「使わなくなったもの」を処分するとき、特に場所をとるような大きなものはすぐに搬送してもらいたいものです。
そのような気持ちに対して、指定の日は守りなさいと厳重に確認するための掲示ですが、柔らかい印象で注意喚起できるように使われている例文です。
例文④
「不用になったパソコンは、資源有効利用促進法によってリサイクルが義務付けられている」ということをご存じでしょうか。壊れたパソコンでも、粗大ごみや燃えないゴミとして捨てられないという法律を紹介する例文です。
「不要」と「不用」の注意点
「不要」は不必要を意味しますから、誰にとってかの違いによっては必要があるかもしれないという前提があります。機能はするけれど自分には必要がないというような場合に使われます。
「不用」は用いられないことを意味しているので、一般的な使い方では使えない、つまり壊れているとか傷んでいるとか機能を望めないという意味を含んでいます。
これらの「不要」と「不用」と混同しやすい言葉に「無用」があります。否定の意味を添える「無」がつき、音としては「不要」「不用」と似ていて錯覚することも多いでしょう。「不要」「不用」「無用」の使い方の違いを、英語での使われ方の違いとともに見てみましょう。
「無用」の意味
「無用」は「不要」や「不用」と同様に「いらない」という意味を含みます。たとえば「心配ご無用」のように、心配していただく必要がないのように、あっても良いけれどもいらないと使う場合は「不要」に近いです。
他にもこの「無用」には「存在価値がない」という意味を含む場合もあります。「無用の長物」がその例で、足手まといになるからいらないことを表します。使い方の難しい言葉で、人に対しての評価には使用がためらわれる表現でしょう。
配達される荷物に目にする「天地無用」は「上下さかさまにしてはいけない」ことを意味し「不要」や「不用」とは全く違った使い方の禁止の意味を主張する言葉です。上下を気にする必要がないと誤解するとかなり差し障りがあると予想されるので注意が必要です。
英語表記
「不要」「不用」「無用」は英語でも表し方が異なります。禁止の意思やそのものに対する評価の違いによって使う単語が異なるようです。大切なビジネスの場で誤解が生じてはいけませんから、確認しておきましょう。
「不要」は「not needed」
「不要」の「必要がない」という意味を表す英語は「not needed」や「unnecessary」です。必要がないものを「unwanted items」と表し、不要品を「unnecessary items」と言います。
「不要品」は「不用品」と違い、壊れていないもので他の人から必要とされる可能性もあるので、リサイクル業者やフリーマーケットに出す価値があるものを示すことが多いです。
「返信不要」は「NRN」
「不要」は必要がないという意味で、この意味を表す英語表現には「not necessary」「no needed」があります。メールなどで「返信不要」と添えたい場合は「No Reply Necessary」や「No Reply Needed」と表します。また、ビジネスメールなどの文末に「NRN」と添えることも一般的です。
「不用」は「disuse」
「用いられなくなる」という意味の「不用」の英語は「disuse」です。「不用品」は「disused articles」や「disused items」と表されます。
また、不用品回収は「Waste collection」と表され「The refrigerator was taken out for waste collection.」のように使われます。
「無用」の英語は「useless」
「無用」は、役に立たないという意味で「useless」と言われます。無用、無駄、無駄骨、使い物にならないという意味を表す形容詞です。たとえば「He was useless.」は、彼は使い物にならないという意味です。名詞形はuselessnessです。
「無用」の英語は「不要」の意味も「不用」の意味も含み、どの単語を使ったらよいか英単語の使い方の判断が必要な単語と言えるでしょう。
「不要」と「不用」は「いらない」という意味
「不要」も「不用」も打ち消しの意味を表す漢字「不」が付く言葉で、どちらも「いらない」ことを表しています。その違いは「不要」は「今後自分にとって必要がない」ことを意味し「不用」は「今後自分は使わない」ことを意味します。
二つの言葉「不要」と「不用」は、読み方が同じで熟語の構造も同じなので使い方を混同しやすい言葉ですが、相手への伝え方によっては誤解を生じることもあるので注意が必要です。