「享受」の意味とは?
「享受」という言葉は使う人は使うけれど使わない人は使わないという、あまり耳慣れない人も多い言葉です。「享受」とはどのような意味を持つのか、聞いたこともほとんどないという人にはわかるものではないですが、その意味を知ると意外にしっくりくるものがあります。
「享受」とはどのような意味かというと、まず「享」の字は「もてなしを受ける」「ありがたく受け取る」といった意味があります。そして「受」の字は文字通り「受ける」です。つまり何かを受け取ってありがたくいただくのだということになります。
ですが「享受」は少しニュアンスの違う意味も持ちますので、「享受」とはどんな意味なのかをご紹介します。
①受け取って自分のものにすること
「享受」とはどんな意味なのかというとまず「受け取って自分のものにすること」です。先に少し触れた「享」の字の意味は「ありがたく受け取る」でしたが、「受」とつながって「享受」になると「自分のものにする」という意味が加わってきます。「享受」とは「何かを受け取って自分のものにする」という意味を持つ言葉です。
「享受」とは「何かを受け取って自分のものにする」という意味ですが、その「何か」には色々あてはめることができます。「利益」だったり「恩恵」だったり、人にとってありがたいものやプラスになるものなどをこの「何か」に当てはめることができます。
例えば「自然の恵みを享受する」などといった具合に「何か」を「自然の恵み」とすれば「自然の恵みを受け取って自分のものにする」という意味になります。「享受」にとっての「何か」は利益になるものと言えます。
②芸術美などを味わい楽しむこと
「享受」とはどんな意味なのか、二つ目は「芸術美などを味わい楽しむこと」です。「享受」とは「何かを受け取って自分のものにする」という意味ですが、何かを受け取るだけではなく、それを味わったり楽しんだりするという意味も持っています。自分にとって価値のあるものを受け取ると楽しむことができますので、「享受」という言葉がつかえます。
例えば、絵の鑑賞が趣味だという人が美術館に行って名画を楽しんだりした場合に「名画の美しさを享受する」といった言い方をすることもできます。「享受」とは「何かを味わい楽しむ」という意味も持った言葉です。
享受の読み方
「享受」とは何かという以前に「享受の読み方がわからない」という人も少なくないでしょう。「享受」は「きょうじゅ」と読みます。読み方が分かれば、聞いたことがあるという人も多いはずです。日常生活ではそう使いませんが、新聞や小説などの本の中では時折使われる言葉ですので、聞き覚えがあっても不思議ではありません。
同じ読み方で「教授」という言葉もありますが、「享受」と「教授」はアクセントが違いますので、耳で聞けばすぐにどちらの「きょうじゅ」なのかがわかります。「享受」とはどう読むのか、覚えておきましょう。
「享受」の類語・対義語とは?
「享受」とはどんな意味なのかが分かれば、類語は結構すんなり思いつくでしょう。「享受」の意味とは「受け取って自分のものにすること」「芸術美などを味わい楽しむこと」ですので、「受け取って自分のものにすること」の類語は想像がつきそうです。「美術美などを味わい楽しむこと」の類語とは「楽しむこと」と考えれば想像に難くないでしょう。
「享受」の対義語は類語以上に想像しがたいですが、あるにはあります。「享受」の類語はたくさんありますが対義語と言っていい言葉はとても少ないです。それは「享受」が色々な意味を含んだ言葉だからです。
そんな「享受」の類語とは、対義語とはどんなものなのか、どんなものが類語や対義語と言えるのかをご紹介します。
享受の類語
「享受」の類語とは何かというと、実はかなりたくさんあります。「享受」の類語として挙げられるものはまず「受け取る」です。「享受」の意味の中には「受け取る」という意味もありますので、「享受」の類語としてまず挙げられるのは「受け取る」です。「受け取る」に近い「享受」の類語は「利益を得る」という言葉もあります。
他に「享受」の類語として挙げられるのは「恩恵を受ける」です。「享受」は「恩恵を受ける」という意味もある言葉ですので、これはとても近い類語と言えます。
「享受」の類語は他にもまだあります。「享楽」は同じ「享」の字がついていて「楽しみを味わう」といった意味を持ちます。他に「享受」の類語として「受益」もあります。「利益を受ける」という意味で、「享受」の類語と言えます。
享受の対義語
「享受」の対義語とは何なのか、何が「享受」の対義語に当たるのかというとこれは実は少し難しいです。「享受」の意味が複数の意味を持ちますので、それにぴったり当てはまるような対義語はほとんどありません。強いて挙げるなら「受け取る」の対義語と言える「提供」が「享受」の対義語になります。
「提供」は完全な対義語ではありませんが、「享受」の「受け取る」という意味の部分に対応する対義語と言えますので、「提供」と似た意味合いの「供給」や「供与」という言葉も「享受」の対義語と言うことができます。
「享受」の使い方とは?
次に「享受」の使い方についてご紹介します。「享受」とはどういう意味を持つ言葉なのかがわかっても読み方が分かっても、使い方がわからなければ理解したことにはなりません。実際にどのような場面のどのような時に「享受」という言葉が使えるのか、「享受」の使い方とはどんな使い方なのかを知ることが大切です。
①利益を受け取るの意味
「享受」の使い方の一つ目は「利益を受け取る」の意味です。「享受」は「何か自分にとって良いものを受け取り自分のものにする」という意味がある言葉ですので、「利益を受け取る」ということを表現したい時に使うのは「享受」という言葉の使い方として正しいと言えます。
②利用・活用の意味
「享受」の使い方の二つ目は「利用・活用」の意味です。昨今ではスーパーや色々なショップ等で割引などの様々なサービスを受けることがありますが、そういった「自分にとって利益のあること」を「利用・活用」するという時にも「享受」という言葉を使うことができます。
③楽しみ・恵を受けるの意味
「享受」の使い方の三つ目は「楽しみ・恵を受ける」という意味です。高い山に登って自然を満喫する時などによく「自然の恵みを享受する」などといった言い方をしますが、これはまさに「楽しみ・恵を受ける」という意味での使い方に当たります。自分にとって楽しいと思えることや恵みを受けると思えることに対する「享受」の使い方です。
「享受」を使った例文
次に「享受」を使った例文をいくつかご紹介していきます。「享受」の意味がわかっても、普段の生活の中ではあまり使いません。ですが、仕事のプレゼンテーションや学校の論文などの中では「享受」という言葉を使う機会が結構あります。そんな時に間違った使い方をしては困りますので、例文で正しい使い方や適切な使い方をご紹介します。
享受を使った例文①
「享受」という言葉を使った例文一つ目は「我々日本人は近年の急速な科学の発達により生活が向上し、スマートフォンなどの便利なものを生活の一部として享受している」といった使い方です。科学の発達というのは人間にとって利益のあることがとても多く、それを毎日の生活の中で使えるということは大きな利益になります。
そのため、この例文のような使い方をすることは「何か利益のあるものを受け取って自分のものにする」という「享受」の意味に従っていると言えます。
享受を使った例文②
「享受」という言葉を使った例文二つ目は「古来から人間は、大自然の恵みを享受して生きてきた」という使い方です。こちらも「利益のあるものを受け取って自分のものにする」という意味での使い方です。人間は昔から自然の恵みである植物や動物などによって生かされてきました。それは「恩恵を受ける」ということなので「享受」という言葉が使えます。
生きるために必要なものを受け取ることは利益と言えますので、「享受」という言葉を使うのにふさわしいと言える使い方です。
享受を使った例文③
「享受」という言葉を使った例文三つ目は「大企業と呼ばれる規模の大きな会社は、法人税の軽減などの恩恵を享受している」という使い方です。「法人税」は負担になるものを表しますが「軽減」というのは利益を表します。「負担」が「軽減」されるのは「利益」と言えますので、こういった場合にも「享受」という言葉を使うことができます。
享受を使った例文④
「享受」という言葉を使った例文の四つ目は「海外ではいまだに安心して水道水が飲めないという国もあるが、日本では水道水であっても安心して飲むことができるという恩恵を享受している」という使い方です。「安心して飲むことができる」というのは人にとって大きな「利益」を表します。
そしてその「利益」を受けることができるのは「恩恵」ということですので、「享受」という言葉を使って表すことができます。
享受を使った例文⑤
「享受」という言葉を使った例文の五つ目は「会社員の報酬をプロアスリートのような年俸制にすることでメリットを享受することができると言われるが、必ずしもそうではない」という使い方です。「メリット」は「利益」を表しますので、「享受」という言葉を「メリット」の後につけて使うことができます。
「享受」を使った文章とは?
「享受」は使う場面を選ぶ言葉ですが、実はとても有名な文章の中でも「享受」という言葉は使われています。有名といっても、すべての人が知っているような文章ではありません。たまたま興味を持って調べてみた人や、憲法を勉強している人などしか知らないような文章ですが、とても大切な文章ですのでご紹介します。
日本国憲法の前文
「享受」という言葉を使ったとても有名な文章は、「日本国憲法の前文」です。「日本国憲法の前文」はまず、「ここに主権が日本国民に存することを宣言する」という文から始まる文章です。次に「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって」と、国会議員が選挙で選ばれることを記しています。
「その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し」と続き、最後に「その福利は国民がこれを享受する」と、国の利益を国民が享受することを記しています。こんな意外な所にも「享受」という言葉は使われています。
「享受」の英語表現とは?
「享受」に当たる英語は複数あります。「享受」はひとつの意味しか持たない言葉ではないため、複数の英語が「享受」の意味に対応するからです。日本語は複雑なのでひとつの英語だけで表現することは難しい場合がありますが、ひとつの単語に続く文章によって「享受」と同じ意味になる英語もあります。
ひとつの英語では「享受」の意味にはならなくても対象になる言葉を足すと「享受」の意味になる、そんな「享受」に当たる英語を、使い方をまじえていくつかご紹介します。
①楽しむ意味の「enjoy」
「享受」に当たる英語の一つ目は「enjoy」です。「enjoy」とは本来「楽しむ」という意味ですので、「享受」の意味の一部に似ていると言えます。そのため、何を「enjoy」するのか、その対象を何か利益にするものにすれば、「enjoy」も「享受」を表す英語になります。
「enjoy」の後に「利益」を表すような言葉をつけることによって「enjoy」は「楽しむ」から「享受する」へと意訳することができます。
②得る・受ける意味の「receive」
「享受」に当たる英語の二つ目は「receive」です。「receive」は「得る」とか「受ける」という意味の英語ですので、「享受」の意味「受け取って自分のものにする」に近いものがあります。この場合も「enjoy」はと同じように、利益を意味する言葉を後に続けると「享受」という意味になります。
ビジネスシーンでの「享受」とは?
「享受」という言葉はビジネスシーンで使うことはありません。「享受」という言葉の意味は「何かを受け取って自分のものにする」ということなので、「自分が利益を受けること」を表します。ビジネスシーンにおいて「享受」という言葉を使うと、自分が他の人より偉いと言っているようなことになってしまいます。
ビジネスシーンにおいて「享受」を使ってはならないなら、一体どのような言葉を「享受」と同じように使えばよいのかをご紹介します。
「享受する」ではなく「教示する」
ビジネスシーンにおける「享受する」は「教示する」です。「享受」と「教示」は全く違う言葉ですが「教示」の使い方がちょっと独特で、「享受」に当たる言葉になります。仕事の時に「何々について是非ご教示いただきたく存じます」などといった言い方をする時の「教示」が「享受」に当たります。
何かに対して「お教えいただきたい」と言うのは「何かを教わることで自分が利益を得る」ということになります。ですがストレートに「享受」という言葉を使うと「自分に利益」という意味になり、角が立つ場合もありますので、「教示」という言葉を使います。
享受の色々な変化
「享受」は主に「享受する」という自発的な使い方をしますが、実はそれだけではありません。ちょっと強引なようですが、「する」を変化させた使い方もできます。「享受」は「自分が利益を得る」ことなのに、「する」以外に変化させるというのはちょっと面白い使い方ですのでご紹介します。
享受させるという使い方もある
「享受する」を変化させて「享受させる」という使い方もできます。元々「自分が利益を得る」という場合に使うものなのに「させる」となると少々使い所が難しいです。使えるとしたら「余生短い祖父に楽しいことを提供し享受させる」といった具合です。利益を得て欲しい相手や楽しんでほしい相手に楽しんでもらう、利益を得てもらうという時に使えます。
「享受」の意味を正しく理解して使おう!
「享受」の意味や使い方についてご紹介してきましたが如何でしたか?「享受」というのは普段使い慣れない、見慣れない言葉なので急に使いこなせるようになることは難しいですが、難解な言葉のようでいて実はそう難しい言葉ではない「享受」の意味を正しく理解して使いこなしましょう。