「ブッキング」の意味とは?
ブッキングとは、英語の「book」に現在進行形の「〜ing」がついた言葉「booking」です。名詞の「book」には、本や書籍、帳簿、名簿、電話帳などの意味があり、動詞の「book」とは「予約する」「契約する」「記入・記帳する」という意味があります。
日本語の「ブッキング」は、ほとんどが英語をそのまま直訳した意味です。しかし中には英語の表現でしか見られないような意味や使い方があります。普段よく使われる場合と使われないケースに分けて「ブッキング」の意味を紹介します。
宿泊や乗りものの予約
「ブッキング」で最も多く使われるのが「予約する」という意味です。旅行をする時にホテルの予約を取る、新幹線や飛行機の座席の予約を取るという意味で「ブッキング」が使われます。
また演劇や音楽ライブ、スポーツ観戦のチケットの予約を取る意味でも使われます。このように「ブッキング」とは、普段の生活の中で「予約する」という意味で、英語でも日本語でも広く使われている言葉です。
興行や出演の契約
「ブッキング」の意味で「契約する」も比較的多く使われるます。とくにマスコミやメディア関係者の方がよく使います。プロデューサーが出演交渉をする時や、興業の日程や時間の調整、ホールや会場との交渉の際に「契約する」という意味でブッキングが使われます。
また依頼されたタレントや出演者側のマネージャーがギャラや日程スケジュールを了承して契約したという約束の意味でも「ブッキング」が使われます。「ブッキング」とは、このように「予約する」「契約する」という意味で広く使われている言葉です。
帳簿への記入
英語の「book」の動詞には、前述したように「記入・記帳する」という意味があります。その動詞の意味に由来して、ブッキングには会計帳簿などに記帳するという意味があります。
しかし「会計帳簿などに記帳する」とは、あくまで英語で使われる表現であり、日本語では「会計帳簿にブッキングする」とは言わずに、通常は「記帳する」と言います。つまり日本語の場合は、ブッキングが「帳簿への記入」という意味になることはほとんどありません。ただ英語の表現にはある、ということは頭に入れておきましょう。
「ブッキング」の由来とは?
「ブッキング」とは英語の「booking」をカタカナ読みにしたもので、意味は英語のbookingに由来しています。日本語での「ブッキング」の使い方もほぼ英語に由来しています。ブッキングの意味や使い方は、bookingのどんな意味に由来しているのかを詳しく解説します。
英語では「booking」
英語で「booking」とは、本来は「帳簿に記帳する」という意味です。bookは本や書籍のことですが、複数形のbooksは「帳簿」を意味します。
ホテルで宿泊予約を帳簿に記入していたことに由来して、ブッキングとは「帳簿に記帳する」という意味になっています。しかしこれは会計や金融業界で主に使用される言葉で、一般的には英語でも「予約する」「契約する」が主流です。
英語の本「book」の動詞
英語で本という意味「book」の動詞形には「予約する」「契約する」「記入・記帳する」という意味があります。ブッキングは業界やシチュエーションにより、色々な意味を持った使い方がされています。それはbookの動詞形の多様性に由来していると言えます。言葉を変えれば、ブッキングとは、様々な応用性や多様性を持った言葉と言えます。
「ブッキング」の使い方・例文とは?
ブッキングの使い方や例文を知ることで、ブッキングとはどんな意味を持っているのか理解がさらに深まります。例文とは使い方のサンプルのようなものです。通常の会話の中、ビジネスのシーンの中、あまり知られていない業界での使い方、それら例文が使われる場合や状況を検討することで、「ブッキング」とは?の意味や理解を深めてみましょう。
予約の意味での例文
「予約する」という意味で使われる「ブッキング」には、どのような例文があるのでしょう。ブッキングはビジネスのシーンで「予約する」という意味でよく使われますが、海外のビジネス取引では日本の場合と少し意味が違うので注意が必要です。
アメリカ英語では「ブッキング」は旅行に関する予約の際にのみ使います。人との約束では「appointment」を、レストランやコンサートなどの予約では「reservation」を使います。イギリス英語では日本と同じで予約に関することには「ブッキング」を使います。それでは日本語の場合の例文を紹介します。
例文:ホテルのブッキングは問題ないですか
「ホテルのブッキングは問題ないですか」とは、「ホテルの予約は問題なく出来ていますか」という意味で、ブッキングを「予約する」という意味で使った例文です。
ホテルのトラブルで「ダブルブッキングをしてしまった」とは、ダブル(二重)に予約を入れてしまったという使い方になります。
また日本語で「サッカーの試合の席をブッキングする」とか「来月の○○ライブのアリーナ席をブッキングする」とは、すべて席を予約するという意味の例文で、他の様々なチケットをとる場合にもブッキングが使われます。
例文:来週のフライトのブッキングをする
会社の上司に「来週の出張のフライトをブッキングしてくれ」と言われた場合は、「来週の出張先まで行く飛行機の予約をとっておいてくれ」という依頼になります。
飛行機の場合で「オーバーブッキングが発生してしまった」とは、システム上のトラブルで「飛行機の定員以上の予約が入ってしまった」という意味です。
また「新幹線のグリーン席をブッキングする」とか「来月の10周年記念のパーティ会場をブッキングする」「誕生日の花をブッキングする」など予約に関することには、リザーブと同じような意味でブッキングが使われます。
物流の意味での例文
物流の業務では、「ブッキング」の意味や使い方が少し違います。物流の業務とは、物資や荷物などを船や飛行機で運ぶ業務のことです。
船舶や航空機の積載能力に見合った貨物の容量をきめることは、物流において非常に重要な業務です。貨物の容量が少なければ経営効率・コストに影響します。容量オーバーなどで一つ間違えば、重大な事故にも繋がりかねません。物流業界では、この作業を総称してブッキング業務といいます。
例文:目的地までブッキング業務をする
物流の作業で「目的地までブッキング業務をする」とは、「目的地まで正確に安全に貨物を届ける作業をする」という意味で、そのためには船舶や航空機の、貨物を運ぶ際のスペースを確保して、正確な運行計画を作らなければなりません。
また積載容量の管理や、前後左右の積載貨物の重量バランスも重要なブッキング業務です。客船や飛行機の定員管理も大切なブッキング業務です。過去にはオーバーブッキングや重量バランスの不備で事故になったケースが何度もあります。ブッキング業務とは、そのくらい物流では大切な作業なのです。
輸出の意味での例文
輸出では多くの貨物にコンテナが使用されます。それはバラバラに荷物を積むより、コンテナに貨物をまとめて運ぶ方が効率的で、重量バランスも取りやすくブッキング業務が作業しやすいからです。
輸出業務ではコンテナの数の増減や、コンテナの予約の際にブッキングはよく使われる言葉です。また船舶などの荷物を置くスペースを確保するために、船会社などと密接に連絡を取り合うことも輸出業務の大切なブッキング作業です。
例文:貨物が増えブッキングが必用
輸出業務で「貨物が増えブッキングが必用」とは、「貨物が増えたのでコンテナの予約数を増やす必用がある」または「貨物が増えたので、予約している船を積載量の大きい船舶に変更する必用がある」という意味になります。
つまり輸出関連でブッキング業務とは、積載する貨物のスペースを確保することです。また輸出入では関税など提出する書類が多岐にわたります。その書類提出作業もブッキング業務の一つです。
「ブッキング」の類語とは?
ブッキングの類語とは、ブッキングと似た意味を持つ言葉のことです。つまり「予約を取る」「契約を交わす」などは、ブッキングの意味を表現した言葉であると同時に類語でもあるのです。
ブッキングを使った言葉にダブルブッキングがあります。ダブルブッキングの類語にバッティングがあります。では「バッティング」とはどんな意味で、「バッティングする」とはどんな状況のことなのでしょう。
バッティング
バッティングと聞けば、野球やソフトボールが最初に頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。しかし野球やソフトボールのバッティングとは、ボールをバットで打つことです。ブッキングとは全く意味が違います。
バッティングとは、厳密に言えばブッキングの類語ではありません。類語というよりもブッキングの派生語といった方が正しいようです。またバティングは使われる場面により全く違う意味になり、類語も使い方も様々に変化します。
例えばバッティングは、ビジネスシーンではダブルブッキングの類語になります。アパレル業界では「近くのセレクトショップ同士が同じブランドを扱う」などの意味で使われ、「競合する」が類語になります。
少し変った使い方をするのはウイスキー業界で、バッティングとは「モルトウイスキー同士を混ぜる」という意味です。
混ぜることを「ブレンド」ということから、ウイスキー業界の「バッティング」は「ブレンド」の類語になります。このように「バッティング」とは、場面や業界によって意味が変わるブッキングの類語です。またバッティングとは、様々な類語や使い方が存在する言葉です。
例文:スケジュールがバッティングした
ビジネスや芸能・音楽業界で「スケジュールがバッティングした」とは、予定が重なってしまった、予定がダブってしまったという意味になり、「重なる」や「ダブる」「ダブルブッキング」が類語になります。
また「会議やステージがバッティングした」とは、会議やライブの予定がかち合うという意味になり「重複する」が類語になります。また同じ顧客に2社以上がアプローチを掛けた時などを「営業バッティング」といい、その場合の類語は「競合する」になります。
「ダブルブッキング」の意味とは?
ダブルブッキングとは、言葉どおりブッキングがダブるという意味です。もともと「ブッキング」は業界用語でしたが、最近では一般にも広がり「ダブルブッキング」もよく使われる言葉になりました。
ダブルブッキングの意味とは、類語のところでも紹介したように「予定や予約が重なる」「二重の約束をしてしまう」などです。ブッキングをミスしてしまうことなので「ブッキングミス」が類語になります。
同じ日時に複数の予約が重なる
ダブルブッキングの意味とは、同じ日時に複数の予約が重なることです。複数といっても厳密には2つ重なった場合です。3つ重なればトリプルになります。
例えばホテルが同じ部屋に2組の予約を受付けた場合や、航空会社が同じフライトの同じ席を2人のお客さまに販売してしまった場合です。ダブルとは英語で二重という意味です。つまりダブルブッキングとは、二重に予約を入れたり、二重に販売することです。
予定・約束の意味を持つ
最近ではブッキングの意味の「予約」を転じた「予定」「約束」の意味の使い方が増えています。例えばA社を訪問する予定とB社を訪問する予定を、同じ日時に「ダブルブッキングしてしまった」などと言います。
またうっかりA氏とB氏と同じ日時にミーティングの約束をしてしまった時にも「ダブルブッキングしてしまった」という使い方をします。つまりダブルブッキングとは、二重に予定や約束をしてしまう意味です。
ブッキングの業界別の意味とは?
ブッキングとは、業界や状況により意味や使い方が色々に変化する言葉です。それは英語の「book」や「booking」がもともと持っている意味の多様性に由来しています。
また意味が多様に変化するのは、日本語が持つ特性に由来するところもあります。日本語には外来語の意味を、自国語に上手くアレンジして取り入れる柔軟性があるからです。日本語の特性が手伝って、ブッキングの意味や使い方が業界別に多様化しているのです。
会計・金融
会計や金融業界でブッキングとは、会計帳簿に記帳するという意味です。これは英語のブッキングの「記入する」という意味から転じた表現ですが、日本の会計・金融業界ではあまり使用されません。日本では「ブッキングする」ではなく「記帳する」の表現が一般的です。英語圏の業界用語と解釈した方が適しています。
貿易・流通
貿易や流通業界でブッキングとは、貨物の輸送のため船舶や飛行機のスペースを確保するという意味です。貿易や流通業界の仕事とは、荷物を確実に安全に目的地まで届けることです。
そのためには船舶や飛行機、コンテナなどの手配が必要です。また輸送スケジュールや運行管理、税関などの手続き業務も必要です。貨物のスペース管理、船舶などの輸送手段、運行管理、手続き業務など作業のすべてをブッキング業務と言います。貿易・流通においては、これら全てに関する作業の意味に「ブッキング」が使われます。
映画業界
映画業界でブッキングとは、映画館に映画フイルムを配給するという意味です。配給会社の仕事は、上映しようとする映画を制作会社から買い付けて、上映映画館に配ったり映画の宣伝をすることです。
この配給作業や上映映画館を確保することを映画業界ではブッキングと言います。またブッキングには「ブロックブッキング」と「フリーブッキング」の2種類があります。
「ブロックブッキング」とは、公開される映画館と上映期間があらかじめ決められている仕組みのことです。「フリーブッキング」とは映画館がどの配給会社の作品でも自由に選んで上映する仕組みです。
複数のスクリーンがあるシネコン映画館が増えた現在では「フリーブッキング」が主流になっています。「フリーブッキング」は映画の人気や興行成績に合わせて上映することが出来ます。
人気映画には座席数の多いスクリーンを使い、成績の上がらない作品は座席数の少ないスクリーンで上映する、また上映期間も映画館側で自由に調整できるのが「フリーブッキング」が主流になっている理由です。
芸能・音楽
芸能や音楽業界でブッキングとは、出演の契約をするという意味です。企画プロデュース側は、番組やライブの企画に見合うタレントを選定し、出演交渉や日程調整をして契約することがブッキングです。
依頼を受けるタレントやマネージャー側は、オファーされた企画がタレントにとって有益かどうかの判断と、ギャラの交渉や日程を調整することがブッキングです。マネージャーや所属事務所にとっては、タレント生命に関わることなのでブッキングは非常に大切な業務です。
イベント
イベント業界では、ライブなどのイベント主催者が企画からスケジュール、チケットの販売まで行うことをブッキングと呼びます。
イベントには音楽ライブ以外に、会社の記念行事、地域のお祭り、新作のプロモーション、タレントの握手会など、小規模のものから万国博覧会、ワールドカップ、オリンピックなど大規模なものまであります。会場の手配、出演者の交渉、音響PAや照明設備の手配、大規模になればセキュリティ対策、警備ガードマンの手配など全てがブッキングです。
サッカー
少し変った使い方ですが、イギリスではサッカーの試合中に審判がイエローカードを出すことを「ブッキング」といいます。英語の「booking」には「記入する」という意味があり、審判がイエローカードを出した後で手帳に記入することに由来しています。またイエローカードをもらった選手は「booked(ブックされた)」といいます。
通信業界
通信業界では契約している顧客に、通信回線を提供する状況を「ブッキング」といいます。また回線使用が集中して、通信がつながりにくい、通信速度が遅くなる状態を「オーバーブッキング」といいます。
自社が保有している通信回線より、多く回線を顧客に提供している状態のことです。オーバーブッキングによりサーバーエラーなどの障害が起きることがあります。
文具業界
アルバム作成で写真をただ貼るだけでなく、写真を切り抜いたり、写真の周りに飾りを付けたりする個性的なアルバム作りが人気を集めています。
文具業界ではこれを「スクラップブッキング」といいます。「写真を飾るペーパークラフト」のことです。ペーパークラフトとは紙を素材にした工芸品という意味で、文具業界では様々なペーパークラフト素材集を発売しています。
「ブッキング」の英語表現とは?
英語の「ブッキング」は、基もとはホテルの帳面に「予約を記帳する」という表現が転じて「予約する」「約束する」になっています。
アメリカ英語とイギリス英語では表現が多少違います。またブッキングする対象や目的、状況により「booking」の他に「appointment」「reservation」が使い分けられています。
appointment
英語表現では、時間や場所を決めて人に会う約束をする場合には「appointment」を使います。取引先と会う、弁護士と会う、友人と会うには「booking」より「appointment」が使われます。
「明日彼と合う約束がある」は「I have an appointment with him at tomorrow.」と表現します。日本語でも「アポイントメントを取る」は同じ意味でよく使われる言葉です。
reservation
アメリカ英語では、ホテルの予約やフライトの予約など旅行関連の場合は「booking」が多く使われますが、レストランやコンサートの予約には「reservation」が使われます。
「reservation」は「席」の予約を取るという意味合いが強い言葉なので、レストランなど席や場所を確保するのが目的の場合に使われます。ただしイギリス英語では予約に関することはすべて「booking」で通用します。
「ブッキング」が日本語で多様に使われる理由
日本語でブッキングが、各業界だけでなく色々な場面で、様々な意味で広く使われるのは何故でしょう。
現在の日本語では英語に限らず外来語にはカタカナが使われます。漢字、平仮名、カタカナの3種類の表現方法を持つ言語は世界でも稀です。この表現方法の豊かさ、特にカタカナの存在が外来語を日本語に溶け込ませる大きな要因になっています。
それに加え日本人の柔軟で寛大な考え方が手伝っています。つまり元々英語のはずの「ブッキング」が今ではすっかり日本語になっているのです。「ブッキング」が英語の意味や使い方に縛られずに多様に使われるのは、「ブッキング」が日本語だからです。
ブッキングは記帳や予約を意味する言葉
ブッキングは英語の「記帳する」意味から発して、予約する、約束する、契約するなどの意味があることを紹介してきました。また使い方や例文、業界による意味や使い方の違いも紹介してきました。
それらを参考にしてブッキングの意味の解釈が深まると同時に、日本語に溶け込んだブッキングを理解することで、日本語そのものの奥行きの深さを感じ取って頂ければ幸いです。