「一見さんお断り」の店とは
「一見さんお断り」遮断するような冷たさを感じさせるこの文言。これは初めてそのお店を利用する方の入店を一切断っていることを意味しています。どのようにすればお店を利用することができるのでしょうか。この記事では、一見さんお断りの理由や入り方、英語表記など京都へ行くならぜひ知っておきたいことについてご紹介しています。
「一見さんお断り」の意味とは
テレビや雑誌を見ていると、よく「一見さんお断り」という言葉を見聞きします。関西地方に住んでいると馴染みの深い言葉ではありますが、そうでない方にとってはあまり馴染みのない言葉かもしれません。また、その独特の言い回しから敷居の高そうな、近寄りがたい雰囲気も醸し出されています。この「一見さんお断り」とはどんな意味なのでしょうか。
「一見」というのは辞書的意味で言うと、初めて会うこと、特にお店に馴染みのないお客さんを意味し、読み方は「いっけん」ではなく、「いちげん」になります。一見さんの他に、「一見客」「一見の客」と言われることもあるようです。では、この「一見」という言葉の由来は何なのでしょうか。
「一見」という言葉の由来としてよく知られているのは、芸者と客が初めて会うことを意味した「一見」が由来となっているという説です。この時の一見は「初めてのお客さん=その場で会計を済ませる」ことを意味した「一現」が語源となっており、後にそれが変化したとされています。
「一見さんお断り」の英語表記
遠い海の向こうから旅行で日本に来られた海外の方は特に、日本の文化を身をもって知ることのできる「一見さんお断り」のお店に興味があります。日本の食文化や伝統的な音楽、衣服、マナーなど様々なことに触れられる一見さんお断りのお店ですが、英語ではどのように言い表すとより伝わりやすいのでしょうか。
「一見さんお断り」を英語に変換すると、"Members only."となります。その他にも、"Invitation only."や"No first time customers without invitation."など、英語だと様々な言い換えが可能です。
海外の方に「一見さんお断り」のお店や理由について英語で説明するときにも役立つフレーズです。また、"Members only."などと言うことで「簡単には入れないんだ」と入り方まで含意させることも可能なため、ぜひ覚えておきましょう。この後に続けて一見さんお断りのお店について掘り下げて説明できるとより良いです。
「一見さんお断り」の言い換え
「一見さんお断り」と言われても、聞きなれない言葉からピンとこない方もいるかもしれません。分かりやすく言い換えるならば、「紹介制」や「会員制」と言うといいでしょう。これらの言葉を使えば、初めての人は入店することも難しいというシステムや意味も示唆するため便利です。
「一見さんお断り」の店はどこにある?
一見さんお断りを掲げているお店はよくテレビや雑誌では見かけるものの、普段生活している中で見かけたり入店する機会はあまりありません。「本当に存在するの?」「それこそ選ばれた一握りの人しか行けないんじゃないの?」とどこかで思ってしまいますよね。実際にはどんなところにあるのでしょうか。
「一見さんお断り」としているお店は、現在は東京、京都に多数あるようですが、やはり圧倒的数を誇っているのは京都です。東京での一見さんお断りのお店は、有名な日本料理店、フレンチやイタリアンのお店など、どちらかというと予約困難なお店を指します。また、メインストリートから外れた静かな路地裏にお店を構えていることがほとんどです。
「一見さんお断り」の店は京都で有名
現在では国内だけでなく海外からの旅行者も非常に多い京都。人気観光スポットである河原町から少し外れた細道へ入ると、一見さんお断りのお店が立ち並んでいます。
「一見さんお断りと言えば京都!」というイメージも定着しつつありますが、あちらこちらで一見さんお断りのお店が見られるわけではなく、限定されたエリアにのみお店が構えられています。
そのエリアというは花街(かがい)と呼ばれ、祇園、先斗町、宮川町、上七軒、祇園東の5つのエリアを指します。これらのエリアを「五花街」とも呼び、芸妓さんが歌や踊り、京料理をもってお客さんを最大限にもてなします。「一見さんお断り」という特有の文化が根付いているのも主にこれらのエリアになります。
「一見さんお断り」はどんな店?
先に書いたように、五花街に一見さんお断りのお店が多数存在することは分かったものの、実際にはどのようなお店が一見さんお断りを掲げているのでしょうか。「入ってみたものの一見さんお断りのお店で入店を断られてしまった」とがっかりすることのないよう、一見さんお断りのお店の特徴や入り方のコツを見ていきましょう。
お茶屋さん
お茶屋さんとは、花街などで芸妓さんを呼び飲食できるお店のことを指し、英語ではtea houseと言います。芸妓さんの踊りや三味線を楽しんだり、お座敷遊びができます。最近は限られた時間のみ一見さんOKなお店やお座敷体験ができるお店も多数あり、気軽にその空間を楽しむことができるのでチェックしていきましょう。
東山の八坂通にお店を構える「八坂通り燕楽」も、お座敷遊びを体験できる貴重なお店のひとつです。素敵なお庭を眺めながらおでんや季節の料理を楽しめます。お座敷体験宴-UTAGE-では、2名39,000円/人、3名35,000円/人、4名25,000円/人(全て税・サービス料込)でコース料理、飲み放題も含まれており、リーズナブルに体験することができます。
先にご紹介した「八坂通り燕楽」以外にも、お得なプランで気軽にお座敷体験のできるお茶屋さんは現在たくさんあります。お茶屋さん=一見さんお断りというイメージがあるものの、現在はその体系が少し変わりつつあることが分かります。京都に遊びに行かれた際にはぜひその華やかな世界に浸ってみてください。
料亭
英語での表記はtraditional Japanese restaurantとなる料亭。京都に来たからには京野菜やお魚、お肉を使った京料理や美味しい地酒を楽しみたいところです。春夏秋冬の食材のうまみを存分に引き出した料理に舌鼓を打つこと間違いありません。
しかしながら、料亭にも一見さんお断りのお店は多数あります。「入店してみたいけど、入り方が分からない。」「良さそうなお店は全て一見さんお断りのお店だった。」と理由を付けてせっかくの機会を諦めてしまうのはもったいないです。
一見さんお断りのお店も多いものの、最近では特定の時間帯のみ一見さんを歓迎しているお店も増えてきています。そういったお店では夜のみ一見さんをお断りしている場合が多いため、お昼を狙って入店するのも入り方のコツのひとつです。また、店頭のメニュー表の有無で一見さんお断りのお店か否かを判断することも可能なので、ぜひ注目してみてください。
「一見さんお断り」の理由
京都独特の文化の1つでもある「一見さんお断り」。一見さんお断りを掲げているお店はメディアを通して見るだけでもなかなかの数がありますが、そもそもなぜ「一見さんお断り」としているのでしょうか。
「一見さんお断りにしないほうがたくさんお客さんが入ってお店にとっても利益があるだろうに。」と思う方も多いかと思いますが、実はそこには京都ならではの「おもてなし」に対する考え方や価値観があるのです。ここでは、「一見さんお断り」としている理由について見ていきます。
トラブル防止のため
一番の理由は、やはり金銭的トラブルを回避するためです。一見さんお断りのお店では、支払いのシステムが一般的なお店と比べて変わっています。これらのお店では、その日のお客さんの代金は全て一度お店側が持ち、後日お客さんに請求がいくようになっています。お客さんはその日お財布を持っていなかったとしても来店することができます。
しかし、中にはもちろん後日請求されてきた代金を踏み倒す方もいます。そうすると、そのお客さんの紹介者に全ての代金の請求がいき、その紹介者が全額肩代わりするシステムとなっているのです。
店と客の信頼関係を結ぶため
先に述べたような金銭的なトラブルをお互いが避けるように動くことによってお店とお客さん、そのお客さんの紹介者の間に強い信頼関係ができるというのも理由として挙げられます。
つまり、紹介者はそのお店にとってふさわしい振舞のできる新たなお客さんを紹介し、紹介されたお客さんはその紹介者の顔に泥を塗らないような振舞をし、そしてお店側は紹介者に恥をかかせないような極上のおもてなしをする、この良い循環が生れることによって末永い信頼関係がお店とお客さんの間に生まれるのです。
お得意さんを大事にしているため
皆さん、普段行く喫茶店やお店ではどのような接客をされるでしょうか。また、今現在接客業をされている方はどのような接客をされているでしょうか。現在ではどんなところでも誰が入店してもほとんどの人が良い気持ちになれるような素敵な接客をされているところがほとんどです。しかし、一見さんお断りを掲げているお店での接客は少しまた違っています。
一見さんお断りのお店では、そのお客さんひとりひとりに合わせた最高のおもてなしが日々されています。そのお客さんはどんなお料理が好きで、どんなお話や心配りが喜ばれるのか。お客さんひとりひとりのお話に耳を傾け、心の深いところまで通じ合うことでそのお客さんに合った接客をすることができるのです。
そのお客さんだけの特別なおもてなしをして心に寄り添って喜んでもらう、これは「一見さんお断り」のお店ならではの魅力でもあり、その理由の大きなひとつでもあります。
「一見さんお断り」の店の入り方
一見さんお断りのお店に一度でいいから行って、芸妓さんとお話をしてひと時の幸せな時間を過ごしてみたい、入り方が知りたいという方も多いかと思います。では、どのようにすれば一見さんお断りのお店に足を踏み入れることができるのでしょうか。ここでは一見さんお断りのお店の入り方についてご紹介します。
店に通っている人からの紹介
やはり、そのお店に通っている方に紹介してもらうのがお店への入り方としては一番良いです。誰かに紹介してもらうと言っても、そのお店を紹介してもらえるような信頼関係を事前に築いておく必要があります。
同じ会社の人や友人、また京都の行きつけのお店があれば店員さんに尋ねて紹介してもらうのも入り方としてひとつの手です。しかし、例え紹介されたからと言って押し掛けるようなことをするとお店にも紹介者の人にも迷惑をかける可能性があるため、来店する前に事前に電話連絡をしておく方がベターでしょう。
店へ行った時最低限注意したいこと
ついに一見さんお断りのお店に行けることになったとき、どんなところに気を付けていくべきでしょうか。服装やマナーについてご紹介いたします。
お店に行くとき、最低限気を付けておきたいことそれは足元。お座敷に上がるため、素足はマナー違反です。夏場などでも靴下を一足持ち歩いておくとより良いでしょう。穴が開いていないかどうかも注意しておきたいところです。
また、あまり過度な露出のある服装やカジュアルすぎる服装は避けるのがベターでしょう。堅い恰好をする必要はありませんが、普段より少し清潔で上品な恰好をしていくとより良いです。お店の雰囲気を守ることや敬意を払うという意味でできるだけ上着を着用するようにしましょう。
そして何より気を付けるべきことは、芸妓さんへの振舞です。最近では街中を歩く芸妓さんへのマナーの注意喚起としてあちらこちらで日本語や中国語、英語で書かれた看板を見かけますが、それはお店でも変わりません。どんなことに気を付けるべきかご紹介いたします。
絶対に守るべきなのは、芸妓さんに触れないこと、そして嫌がるようなことを決してしないことです。なぜならば、芸妓さんは基本的に高価なものを身につけられていることが理由として挙げられます。着物やかんざしなど、季節ごとに揃えられていることがほとんどのため、絶対に触らないようにしましょう。
また、一見さんお断りのお店だけでなく生活する上で当たり前のことではありますが、嫌がられるようなことは絶対にしないようにしましょう。顔や体、着物に触れることはもちろんですが、写真なども撮影したいときは必ず一声かけるようにし、近づきすぎることのないように撮影するのがベターです。
「一見さんお断り」は初めて訪れた人は入れない!
「一見さんお断り」のお店についてその意味や英語での表現の仕方、システムの理由やマナーの注意点などをご紹介いたしました。一見さんお断りのお店には気軽には入店できないことが事実ではありますが、その特有のシステムによって素敵なお店作りがされています。
最近では英語メニューを置いてあるお店も増えてきているため、海外からのご友人とも一緒に楽しめます。これからの季節、京都へ観光に行った際に興味のある方や体験してみたい方はぜひひとつずつステップを踏んでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。