「ハードルが高い」の意味
普段の生活の中で「ハードルが高い」という表現を使うことは多いのではないでしょうか。「ハードルが高い」は会社などビジネスシーンで使うのはもちろん、友達や家族との会話の中でも使うことができる表現です。
しかし、「ハードルが高い」の意味を詳しく説明してくださいと言われると、戸惑う方もいるはずです。何となくの意味合いは分かっても、明確な説明が難しい言葉だからです。また、言い換えができずに「ハードルが高い」を繰り返し使ってしまうこともあるでしょう。
そこで、この記事では「ハードルが高い」の意味、類義語、例文、特徴、英語表現などを説明していきます。読んだあとには、「ハードルが高い」を完璧に使えるようになっているはずです!
自分にとって乗り越えるのが困難
まず、「ハードルが高い」の意味について確認していきましょう。「ハードル」というのは陸上競技の「ハードル競争」で使われる障害物を意味するのが一般的です。
この「ハードル」は、もともとは牧場などに設置されていた木の門や柵のことを意味したと言われています。「ハードル競争」が生まれたイギリスでは、羊をたくさん飼っていましたから、そのときに使われていた柵が「ハードル」の源流だと考えられます。
また、ヨーロッパでは乗馬が盛んですが、これらの競技の1つとして、障害物競走が行われています。この馬による障害物競走でも牧場の柵などを使っており、これを馬に乗れないような人たちも始めたのがハードル競争の最初だという説もあります。
その後、水濠などの柵以外の障害物を置いて行うレースは「SC」と呼ばれる競技として独立して、今でも3000m障害などのかたちでオリンピック競技になっています。
これとは別に、柵だけを飛ぶレースは「ハードル競争」として発展して、飛ぶものも木の柵からおなじみの「ハードル」に変わったようです。
ここから、日本では「ハードル」に対して「超えるべき障害」というイメージを持っている人が多いです。これに加えて、障害は言い換えれば「困難」ですから、「ハードルが高い」というのは「乗り換えるのが難しい困難なこと」という意味であると言うことができます。
「ハードルが高い」の類義語
「ハードルが高い」の意味を確認したところで、今度は類義語についても見ていきましょう。先ほどもみましたが、「ハードルが高い」の意味は「乗り換えるのが難しい困難なこと」です。
しかし、「困難」と一言で言っても、日本語にはいろいろな意味での「困難」が存在します。そこで、その意味ごとに類義語を紹介していきます。また、それぞれの意味での例文もつけて解説していきます。
①難易度が高い
まずは、「難易度が高い」という類義語です。ここで言う「難易度が高い」というのは、「それをするのが難しい」という意味での使い方をされていることが多いです。
例えば、フィギュアスケートをやっている人が「トリプルアクセルは難易度が高いんだよ」と言う場合などが例文としてあげられます。基本的に、スポーツなどの技について言うときに出てくることが多いという特徴を持つ表現です。
なお、「難易度が高い」という表現自体は、実は日本語としては不自然です。というのも、「難易度」は「難しさや易しさ(やさしさ)の度合い」そのものを指す言葉でしかないからです。
具体的には、「難易度は星5つ中、4つ」という表現なら正しい使い方になります。星が多いほど難しいとして、その度合いが5つ中4つという意味になるからです。
しかし、「難易度が高い」では難しさが高いのか、易しさが高いのかが分かりません。一般的には「難しさが高い」という意味の使い方をされていますが、これは「難度が高い」の言い間違いから発生した誤用でしょう。
もっとも、日常生活ではよく使われていますので、完全な間違いとは言いづらくなっていますが、正しくは「難度が高い」だなと理解しておくと、ほかの人よりも一歩リードできるはずです。
②レベルが高い
次の類義語は「レベルが高い」です。これは前に紹介した類義語である「難易度が高い」というものと似ていますが、使い方や意味に違いはあるのでしょうか。
「レベル」というのは「水準」という意味です。「水準」も難しい言葉ですが、もっと簡単に言えば「標準」や「基準」のことです。
「標準的な成績」と聞くと「だいたい平均的な成績だったんだな」と感じられますので、「レベル」はものごとの一定の基準のことを意味しているということが分かります。難しさなどではなく、その物事全体の程度が高いことを意味します。
また、同じく類義語の「難易度が高い」との使い方の違いとしては、「ハードルが高い」や「難易度が高い」が主観的で自分視点からの表現なのに対して、「レベルが高い」はより客観的な視点がある点があげられます。
このため、「あの分野は全体的なレベルが高いので、難しいのではないか」といったような例文をあげることができます。
③果てしない
次の「ハードルが高い」の類義語は「果てしない」です。「果てしない」は、「果て」が「ない」、つまり終わりや限りがないことを意味します。
形容詞なので「~は(が)果てしない」か、「果てしない+名詞」や「果てしなく+形容詞」という使い方をすることが多いです。
「ハードルが高い」の類義語として使う場合は、「私たちが掲げたゴールは果てしなく遠い」という例文のように、その困難の程度の強さを示したいときに使うと相手に伝わりやすくなります。
ちなみに、「ハードルが高い」よりも、実現可能性が低いようなニュアンスを含む類義語になるので、使うときには少し気を付けると良いでしょう。
④高望みな
この章、最後に紹介する類義語は「高望みな」です。「高望み」というのは、自分の身分や立場、能力を超えたことを望みを意味する名詞です。
文章内で使う場合は、「高望み+(を)する」や「高望みな~」という使い方をされていることが多いです。
日本語の名詞のうち、動作を示すものの多くは「~する」という動詞と合わさることで、あたかも動詞のように機能しますが、「高望み」も同様であるため、「いつまでも高望みしてないでさ」のような例文をつくることができます。
また、名詞に接続する場合は「彼は高望みな目標を立てた」という例文のように、「高望み+な」という使い方をします。
「ハードルが高い」の使い方と例文
ここまで類義語を見てきましたが、次に「ハードルが高い」の使い方を詳しく見ていきましょう。
単純に使い方を説明しても、やや分かりづらいので、シーン別の例文と一緒に紹介していきます。
①受験で目標志望校を選定する場合
まず、受験で目標志望校を選定する場合です。この場合の「ハードルが高い」は、受験生の学力や偏差値から考えると合格することが難しいと考えられる高校を志望しているという意味になります。
したがって、「君の学力から言うと、この学校はハードルが高すぎるんじゃない?」というような例文をあげることができます。
②恋愛で高嶺の花の様な人を好きになった
次に、恋愛で使われる「ハードルが高い」です。この場合の「ハードルが高い」は、好きになった側が好きな相手と釣り合わないときや、恋が実る可能性が低いであろうときに使われる表現です。
例文としては、「あの子と付き合うのはハードルが高いと思うけど、後悔しないように告白してみたら?」などが考えられます。
③ビジネスで厳しい戦略をとる場合
最後に、ビジネスシーンでの「ハードルが高い」です。ビジネスシーンでは、目標などが高く、達成できるか不透明な戦略をとっているときに「ハードルが高い」を使うことができます。
例えば、「前年同月比、売上2倍というノルマはとてもハードルが高いが、ぜひ頑張ってほしい」というような例文をつくることができます。
ハードルが高い人の特徴【男性】
「ハードルが高い」という言葉は、人との関係でも使われることがある表現です。そこで、今度はハードルが高い男性の特徴について見ていきます。
ハードルが高い男性と聞くと、恋愛での感じ方を想像される方が多いと思いますが、それ以外にも仲良くなることへの難しさを示すハードルが高い男性の特徴もあわせて紹介していきます。
高学歴・高収入・高身長
まずは想像しやすい、恋愛での「ハードルが高い男性」の特徴です。最近は婚活などを行っている人も増えてきていて、ハードルが高い男性をゲットするハードルは日に日に増していると言える状況です。
バブルの時期に女性の結婚相手に求める特徴として言われていたのが「高学歴・高収入・高身長」の「3高」です。現在は「3K」と呼ばれるように価値観などを重視する人も多いですが、「3高」も相変わらず一定の人気があります。
したがって、こういう特徴は、ハードルが高いと思われる男性の多くに当てはまるものだと言えるでしょう。
仲良くなるのにハードルが高い男性の特徴
「ハードルの高さ」は恋愛で感じるだけではなく、単純に仲良くなりたいという場合にも感じることがあるでしょう。例えば、友達関係であったり、先輩後輩関係をつくろうと考えたときに「ハードルの高さ」が問題になることがあります。
そこで、そういう場合に「ハードルの高さ」を感じさせてしまう男性の特徴についても、あわせて見ていきます。
1つは性格上の特徴で「自己中心的な言動がある人」です。こういう人は「仲良くなるのは難しいな」と相手に思われてしまいます。ほかにも「批判が多い」、「協調性がない」という特徴を持つ人も仲良くなる人が少なりがちです。
また、「社会的地位が高い・優秀」といった特徴を持つ人も、仲良くなるのにハードルが高いと思われがちです。仲良くなる場合には、一定の共通性があったほうがいいのですが、地位が高かったり、優秀である人は周りから自分では不釣り合いだと思われやすいためです。
ハードルが高い人の特徴【女性】
次に、女性の場合で「ハードルが高い」と思われる人の特徴について見ていきましょう。女性は男性と比較すると、一般的に人間関係をより重視するので、「ハードルが高い」と思われるのは嫌がる人が多いでしょう。
女性の場合についても、男性の特徴と同様に、恋愛面で「ハードルが高い」と思われてしまう特徴と仲良くなることへのハードルの高さにつながる特徴の2つを紹介していきます。
高学歴・高収入・地位が高い
まずは、恋愛面で「ハードルが高い」と思われやすい女性の特徴です。男性の特徴で「3高」と呼ばれるものが出てきましたが、女性にも同じように「3高」があります。
女性の「3高」は、「高学歴・高収入・地位が高い」になります。男性の「3高」の場合は、ニーズが多すぎるためにハードルが高いという状態になっていましたが、女性の「3高」ではニーズが少ないという意味でハードルが高いと言うことができます。
男性の場合、女性より学歴、収入、社会的地位が低いことを気にする人が多いため、女性で3高に当てはまる人は「自分では釣り合わない」と敬遠されてしまうことが多いのです。また、女性側からそういう男性を避けてしまうこともハードルの高さに拍車をかけています。
とはいえ、最近は女性の社会進出が進み、女性で「3高」の条件にあてはまる人も増え、共働きをしてほしいという男性も多いので、少しずつ変わってきています。
仲良くなるのにハードルが高い女性の特徴
続いて、仲良くなるのに「ハードルが高いな」と思われてしまいやすい女性の特徴です。これには男性と同様の特徴もあれば、女性特有のものもあります。
まずは「自己中心的・わがまま」という特徴です。これは男性の特徴でも出てきたものです。やはり、良い人間関係をつくるときには、自己中心的な言動は控えるほうがいいのでしょう。
また、「コミュニケーションが苦手」という特徴を持つ女性も、仲良くなるのにハードルが高いと思われがちです。女性の会話では共感が重要になることが多いため、そこがあまり得意でないと仲良くなる人が少なくなりやすいです。
さらに、「プライドが高い」という女性も敬遠されがちです。本人のプライドが高くなくても、結婚相手がお金持ちなどで社会的なステータスが高いと、周りから「プライドが高いのでは」と思われやすくなってしまうことがあります。
「ハードルが高い」の英語表現
ここまでは、「ハードルが高い」の意味や使い方などを見てきましたが、今度は英語表現についても見てみましょう。
英語表現を覚えていくと、英語で「ハードルが高い」ということを表現したいときにスムーズに相手にその意味を伝えられるようになるので、ぜひ覚えてみてください。
大きな困難の意味で使われる
「ハードルが高い」は英語が入っているので、そのまま英語に直訳すればいいと思う方も多いでしょう。実際、これをそのまま英語に訳した「high hurdle」でも意味は一応通じます。
しかしながら、英語の「hurdle」(ハードル)は日本人が思い浮かべるような陸上競技用の障害物だけではなく、「柵」としての意味も持っているので、「高い」ではなく、「大きい」と表現したほうが自然です。
したがって、「high hurdle」ではなく、「big hurdle」と表現したほうが伝わりやすいです。また、ニュースなどでも「大きな困難」というニュアンスでよく出てきます。
「big hurdle」は「His proposal faced big hurdle.」(彼の提案は大きな困難に直面した)という例文のように使うことができます。
なお、英語の「ハードルが高い」の場合は、日本語とは違い「hurdle is high」というような表現はあまりしないようですので、気を付けましょう。
また、このような比喩(ひゆ)的な表現は使わないで、より簡単な英語で「ハードルが高い」というニュアンスを伝えることもできます。むしろこちらのほうが使い勝手が良いと言えます。
多くの方が知っているであろう英語としては「difficult」があります。「難しい」という意味の英単語で、中学校で習います。例文としては、「Goal of the month is difficult to achieve.」(今月の目標は達成が難しい)といったものをあげることができます。
ほかには「challenge」という単語も使うことができます。日本語のチャレンジには「挑戦」という意味しかありませんが、英語では名詞で「やりがい」や「難題」という意味もあります。
このため、「Goal of the month offers me a challenge.」(今月の目標はわたしにやりがいを与えてくれた=今月の目標は(ハードルは高いが)やりがいがある)というように使うことができます。
ほかに「tough」などを使っても「ハードルが高い」という意味を出すことができます。また、日本語の「ハードルが高い」の「ハードル」と同じような雰囲気で「bar」を使うことも可能で、「I am set a high bar.」(私は高いハードルを課された)といった使い方をすることができます。
「ハードルが高い」と「敷居が高い」の違い
「ハードルが高い」と似たような言葉として、「敷居が高い」というものがありますが、この2つには何か違いがあるのでしょうか。
「敷居が高い」は、「不義理を働いてしまい、その人のところへ出向きにくいこと」です。「敷居」というのは、ふすまなどの引き戸を動かすための溝・レールがほられている横木、あるいは門の内側と外側を区切るために置かれる横木のことを意味します。
「敷居」は空間の境界に置かれるものですので、その部屋や家に入るときには必ず敷居をまたがなくてはいけません。ここから、不義理を働いてしまった人のところに出向きにくいことを「敷居が高い」と表現するようになりました。
「ハードルが高い」と同じ意味は誤用か?
上で説明したように「ハードルが高い」の意味は「不義理を働いてしまい、その人のところへ出向きにくいこと」です。しかし、徐々に意味が拡大しており、「近寄りがたい、入りにくい」という意味でも使われるようになっています。
従来、この用法は誤用とされてきましたが、若い人ほど使う割合が高くなっており、辞書によっては「近寄りがたい、入りにくい」といった意味のほうも載るようになっています。
そして、「敷居が高い」を「近寄りがたい、入りにくい」の意味で使った場合は、「ハードルが高い」の意味とほぼ同じだと言えます。したがって、「ハードルが高い」の意味で「敷居が高い」を使っても間違いとは言えなくなってきています。
「ハードルが高い」と「敷居が高い」のニュアンスの違い
ただし、微妙にニュアンスは異なってきます。具体的には、「敷居が高い」にはもとの意味のイメージも残っていることから、格調高い、高級、堅いといったことが原因で「近寄りづらい、体験しにくい」というときに使ったほうが意図が伝わりやすいです。
また、「敷居が高い」には「ある行動を起こすことへの抵抗感、難しさ」という意味合いしかないため、「ハードルが高い」のほうが広く使うことができます。
例えば、「今月の目標は敷居が高い」といった使い方は不自然で、このような行動を伴わないものを言いたいときは「今月の目標はハードルが高い」と言うべきです。
なお、「敷居が高い」を伝統的な意味でしか使っていない、あるいはそれが正しいと考えている人もいます。このため、そういう人に「ハードルが高い」の言い換えとして「敷居が高い」を使ってしまうと上手くコミュニケーションがとれない可能性もあるので、使う場面には気を配るようにしましょう。
「ハードルが高い」は乗り越えるのが困難なこと
ここまで、「ハードルが高い」の意味や類義語、英語表現などを紹介してきました。「ハードルが高い」は単に「難しい」というよりも、相手に情景を思い浮かばせながら感情を伝えることができる表現ですので、コミュニケーションをより良いものにすることができます。この記事を参考に、ぜひ「ハードルが高い」を上手に使ってみてください!