「テラ銭」の言葉の意味
日本には宝くじや競馬、競輪、ボートレース、オートレースなどの公営ギャンブルの他に、パチンコやスロットなどの民営ギャンブルがあります。
これらギャンブルに関わる「テラ銭」という用語の意味や語源はどのようなものなのか解説します。
また、株やFXとの違い、ギャンブルの中でも特に宝くじにおける損得に関しても見ていきます。
競馬等の売上金から当選金を差し引いた差額
「テラ銭」という用語は、宝くじや競馬等の売上金から当選金を差し引いた差額を意味します。
ギャンブルの運営には、施設の設備費や人件費など、一定の必要経費が掛かります。ギャンブル運営の必要経費やギャンブル運営者が得る利益のことを指す用語が「テラ銭」です。
ギャンブル運営の経費や利益を指す用語
「テラ銭」という用語は、宝くじや競馬などのギャンブルの必要経費や利益を指す用語です。かつては、ギャンブルが行われる場所の持ち主に支払われた場所代を指して「テラ銭」と言いました。
ギャンブル運営者もギャンブルを運営するために必要経費が掛かりますし、商売としてギャンブルを運営していますので、ある程度の利益を得なければなりません。
そのため、宝くじや競馬などのギャンブル売上金から一定の額を差し引いた額が、宝くじや競馬などのギャンブル勝者へ配当されることになります。
「テラ銭」の方式
売上金を運営者が差し引く「テラ銭」と勝った人に分配する方式は2種類あります。1つが
パリミュチュエル(お互い同士の賭け)方式、もう1つがブックメーカー方式と呼ばれます。
パリミュチュエル(お互い同士の賭け)方式は、運営者が売上金から一定割合の金額を先に差し引き、残りの金額を勝った人で分配する方式です。運営者の利益がマイナスになることはありません。
ブックメーカー方式は、賭けるときにはすでに勝った人への配当率が決まっている方式です。運営者は配当率の残りを得ることになります。
「テラ銭」の語源
現在では宝くじや競馬などのギャンブル用語として使われる「テラ銭」ですが、元々の意味と語源を解説します。
「テラ銭」という用語は、元々「寺銭」と書く商業用語を語源としています。「テラ銭」という用語は、ギャンブルが行われる場所の持ち主に支払われた場所代を指し、江戸時代にはお寺や神社の境内でもギャンブルが行われていました。
ギャンブルから生じた利益の一部がお寺や神社に寄進されていたため、「寺銭」を語源とする「テラ銭」は宝くじや競馬などのギャンブルから生じる必要経費や利益のことを意味するようになりました。
寺社の運営資金
「寺銭」つまり「テラ銭」は、江戸時代にお寺や神社で行われていたギャンブルの利益をお寺や神社へ寄進していたことを語源としています。
江戸時代には、都市部を中心として徐々に宗教へ関心を持たなくなり、新年のお賽銭を撚るなど、特別なイベントのときを除いてお布施を行わなくなっていきました。
そこで考えられたのが「富くじ」という今でいう「宝くじ」にあたるギャンブルです。その売上金から、必要経費と利益を差し引いて、当選金を支払いました。
「テラ銭」という用語の意味や語源は、元々はお寺や神社が必要経費や利益を得ることからきています。
「テラ銭」という用語は、お寺や神社の必要経費や利益という意味から、ギャンブル運営者の必要経費や利益という意味へ、元々の語源から拡大した意味となりました。
西洋でも、キリスト教会が運営資金を得るためにビンゴ大会を主催することがあるようです。
ギャンブル毎のテラ銭割合
「寺銭」を語源とする現在の「テラ銭」はどれくらいの割合なのかというと、宝くじや競馬などのギャンブルそれぞれで違います。「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「toto」や「BIG」などのサッカーの宝くじは「テラ銭」が占める割合が高く、公営ギャンブル、非合法賭博は低くなっています。
①宝くじ・サッカー
「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじでは、売上金から差し引かれる「テラ銭」の割合は約50%です。
「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじの売上金の約半分が、設備費などの必要経費やギャンブル運営者の利益として差し引かれます。
サッカーの宝くじとして有名な「toto」や「BIG」なども、売上金から差し引かれる「テラ銭」の割合は約50%です。通常の宝くじと同様に、売上金の約半分が設備費などの必要経費やギャンブル運営者の利益として差し引かれます。
ただし、宝くじは株などと異なり売上金の一部が地方自治体の公共事業や社会福祉のために用いられています。公共事業や社会福祉のためにお金を使っているとポジティブに捉えることもできます。
②公営ギャンブル
公営ギャンブルとは、競馬、競輪、ボートレース、オートレースなどを指します。公営ギャンブルの「テラ銭」割合は売上金の25%程度です。
しかし、宝くじと異なり競馬などの公営ギャンブルは、払戻金が一時所得となり課税対象なので、実際の「テラ銭」は40%にもなります。
パチンコやスロットなどの場合は「テラ銭」の割合がもう少し割合が低く、10〜15%程度と言われています。ラスベガスやマカオなどの海外のカジノの「テラ銭」は5〜10%程度と言われています。
③非合法賭博
スポーツ選手や芸能人などが、暴力団関係者が運営する非合法カジノなどでギャンブルを行うニュースがお茶の間を賑わせることがあります。相撲や野球などのスポーツ賭博へ非合法に金銭を賭けて検挙されるニュースなどです。
こういった非合法カジノに占める「テラ銭」の割合は意外にも低く、数%となっているようです。
また、知人とマージャンやゴルフ、トランプゲームなどでお金を賭ける場合には、運営者がいないため「テラ銭」は0%となります。
「テラ銭」の株とギャンブルの違い
「テラ銭」が生じるギャンブルと株にはどのような違いがあるのでしょうか。一言で言ってしまうと、「テラ銭」が生じるギャンブルには「賭ける」という側面が強く、株には「投資」という側面が、FXには「ゼロサムゲーム」という側面が強いです。
「テラ銭」が生じるギャンブルと株はリスクとリターンの関係性が大きく異なっています。ギャンブルにはリスクとリターンに一定の相関性がありますが、ギャンブルには相関性がありません。
ギャンブルは「賭ける」
株とはことなり、「テラ銭」の生じるギャンブルでは誰かが勝ったら必ず誰かが負けるようになっています。奪い合いの世界です。
「テラ銭」が生じるギャンブルでは、ギャンブルに勝った人と負けた人の損失はプラスマイナスゼロになるどころか、厳密にはマイナスになります。なぜなら、運営者に必要経費や運営者の利益となる「テラ銭」を売上金から取られるからです。
株では誰かが勝ったら必ず誰かが負けるようになっているわけではありません。そのため、勝った人と負けた人がいて、損失がプラスマイナスゼロやマイナスになることはありません。
株は「投資」
運営者が必要経費や利益を売上金から差し引く「テラ銭」が生じるギャンブルとは異なり、株では誰かが勝ったら必ず誰かが負けるようになっているわけではありません。
ある期間においては全員が勝って利益を上げることもあり、ある期間においては全員が負けて損失を出すこともあるのが株です。
しかし、投資期間が短くなればなるほど、一瞬の値動きを捉える勝負に出ることになります。そうなると、「テラ銭」が生じるギャンブルと似たゼロサムゲームの様相を呈してきます。
したがって、1日に何度も取引を繰り返すデイトレードなどがギャンブルと見做されることは強ち間違っていません。しかしながら、株はあくまでも「投資」の一つであって、「テラ銭」が生じるギャンブルとは異なるものです。
「テラ銭」が生じるギャンブルは、先述したとおり「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカー宝くじで最大50%ほどの「テラ銭」が生じます。
運営者に必要経費や利益として、売上金に対して高い割合を占める「テラ銭」を差し引かれます。
FXはゼロサムゲーム
株と異なり、FXはゼロサムゲームです。為替取引は2種類の通貨をトレードする取引なので、片方の通貨価値が上がれば、片方の通貨価値は必ず下がります。
したがって、ギャンブル要素が強い側面はあります。しかしながら、ギャンブルのように運営者の必要経費や利益といった「テラ銭」を差し引かれることはありません。
スプレットや手数料などは存在しますが、「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカー宝くじなどといったギャンブルのように50%ほどの高い割合で「テラ銭」を差し引かれることはありません。
お金持ちが宝くじを買わない理由
お金持ちが「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカーくじを買わないのはなぜでしょうか。
「テラ銭」が占める割合の非常に高いギャンブルである宝くじは、運営者が確実に儲かる仕組みとなっていて割に合わない、という考えが多いようです。
FXでは1ドル0.4銭程度である運営費が、先述したように、年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカーくじでは50%にも上ります。
①宝くじは他人に貢ぐのと同じ
「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカーくじなどの「テラ銭」は、地方自治体や日本スポーツ振興センターなどへ渡ります。
地方自治体は地方へ「テラ銭」を還元し、日本スポーツ振興センターはスポーツ振興へ「テラ銭」を還元するため、社会貢献をしたい方にとっての一種の寄付行為と言っても良いかもしれません。
しかしながら宝くじの「テラ銭」は、他にも日本宝くじ協会や自治総合センター、宝くじ事務協議会などにも落ちます。これらの法人は天下り法人の可能性もあるため、宝くじを購入することで他人の給料や退職金のために貢いでいる可能性もあります。
②当選確率が低すぎる
例えば「ジャンボ宝くじ」の当選率は1000万分の一となっています。ファイグー「夢が壊れる!?宝くじの種類別に1等当選確率を計算してみた結果」によれば、「東京ドームの収容人数を4万5000人だとすると、東京ドーム約222個にひしめき合う人の中から1人が選ばれるのと同じ確率」です。
交通事故に合う確率よりも遥かに低く、買っても殆どの確率で当たりません。買わないとどんなに低い確率でも当たらないという声もありそうですが、基本的には300円の商品を3000円で買っていることになります。
③テラ銭の殆どが地方自治体に行く
先述したとおり、「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカーくじなどの「テラ銭」は、地方自治体や日本スポーツ振興センターなどへ渡ります。
詳細な「テラ銭」の使い道としては、公共事業や災害対策事業、高齢化少子対策事業、情報化事業、芸術文化振興事業、東京オリンピック競技大会及び東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に係る事業やラグビーワールドカップ大会の準備及び運営に係る事業などに使われているようです。
④時間が勿体ない
時間を割くということは、人生の一部をその事象に割くということであり、一つの投資と言えます。「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカーくじの発売日を気にする時間、買いに行く時間、並ぶ時間、数字を選ぶ時間、当落を調べる時間、換金へ向かう時間には、投資価値があるでしょうか。
お金持ちは、自分でコントロールできない事象やリスクに見合ったリターンが得られない事象に対して時間を割くことをもったいないと感じます。
そういったことに割く時間があるのであれば、時間を割いた分に見合うリターンが得られるビジネスなどの事象へエネルギーを注いだほうが良いと考えます。
「テラ銭」は運営経費や利益を指す言葉
現代において「テラ銭」とは、売上金から差し引く運営に掛かる必要経費や運営者の利益を指します。以前はギャンブルを行う場所の持ち主に対して支払われる場所代を意味しました。
「テラ銭」という用語は、かつては「寺銭」と書いたことからもわかるように、お寺や神社で行われていた富くじからお寺や神社が得ていた必要経費や利益を語源とします。
かつてお寺や神社は、「テラ銭」からお寺や神社の運営費を得ていたのです。西洋においても、キリスト教会がビンゴ大会で運営費を得ています。
しかしながら、「年末ジャンボ宝くじ」や「サマージャンボ」などの宝くじや「BIG」や「toto」などのサッカーくじ、競馬やボートレースなどの公営ギャンブル、非合法ギャンブル全てにおいて「テラ銭」はかなり高い割合で設定されています。
特に宝くじでは「テラ銭」の割合が50%程度となるなど、運営者に半分ほど差し引かれています。また、リスクとリターンへ相関性がなく、時間やお金を割くに値しないと考えるお金持ちが殆どです。