「お目汚し」の意味
「お目汚し」という言葉を聞いたことがあるという人は意外に少なく、聞いたことがないという人は結構多いでしょう。「お目汚し」という言葉は日常生活の中ではあまり使われることのない言葉なので、聞いたことがない人が多くても当然と言えます。聞いたことがなければ当然、意味も読み方も分からないでしょう。
「お目汚し」とはいったいどういう意味の言葉なのか、まずは「お目汚し」の意味からご紹介しましょう。
見苦しいものを見せること
「お目汚し」という言葉の意味は「見苦しいものを見せること」です。「相手の目を汚すような見苦しいものを見せる」といったニュアンスで「お目汚し」と言います。「見苦しいものをお見せして申し訳ない」と「恐縮しながらお見せする」という日本語特有の謙遜した言い回しであって、本当に相手の目を汚すと思ってこう言っているわけではありません。
あくまでも相手に対して謙遜する気持ちで「お目汚し」と言っているだけですので、その点は間違えないようにしましょう。
「お口汚し」という言葉もありますがこちらは全く意味が違います。「少量の食べ物」「粗末な食べ物」という意味で、意味は違いますがこちらも謙遜する気持ちを表す日本語特有の表現です。「お目汚し」も「お口汚し」も美しい日本語の表現だと言えます。
「お目汚し」の読み方
「お目汚し」の意味は「見苦しいものを見せること」ですが、まず「お目汚し」の読み方がわからないという人もいるでしょう。一度でも聞いたことがあれば読み方もすぐにわかりますが、聞いたことがない上に意味も初めて知ったという人なら読み方がわからなくても仕方がないです。
「お目汚し」の意味を知って「なんだか難しそうな古そうな日本語」などと思って身構えてしまうと、その読み方も難しいのではないかと思う人も多いでしょう。ですが実は「お目汚し」の読み方はそう難しくありません。
「見苦しいものを見せること」という意味を持つ「お目汚し」の読み方についてご紹介しましょう。
読み方・おめよごし
「お目汚し」の読み方は実はそのまま「おめよごし」です。「おめけがし」でも「おもくよごし」でもありません。「お目汚し」はストレートに「おめよごし」という読み方をします。「おめよごし」という読み方を知って「聞いたことがあるかも」と思う人もいるでしょう。実は「お目汚し」という言葉を良く使っている人も少なくありません。
「お目汚し」という言葉は口で言うより文字で書くことの方が多いので、読み方がわからないという人も多いですが、ビジネスマンなどの中には時々取引先の人などに対して「お目汚しですが」と口で言う人もいます。
「お目汚し」の意味は「見苦しいものを見せること」で、読み方は「おめよごし」だということを覚えておきましょう。
「お目汚し」の類義語
「お目汚し」の意味と読み方をご紹介しましたので、次は「お目汚し」の類義語についてご紹介します。「お目汚し」は「見苦しいものを見せること」という少し変わった意味を持つ日本語なので、本当の意味での「お目汚し」の類義語はないと言えます。同じ意味を持つ言葉を類義語と言うなら、「お目汚し」の類義語はないと言っても過言ではありません。
なので「お目汚し」の類義語として挙げられるのは、似た意味を持つ言葉です。それでは、「お目汚し」の類義語についてご紹介しましょう。
お披露目
「お目汚し」の類義語の一つ目は、「お披露目」です。「お目汚し」は「見苦しいものを見せること」という意味ですが、ニュアンス的には「恐縮しながらお見せする」ということです。なので、何かを誰かに披露するという意味を持つ「お披露目」は「お目汚し」の類義語だと言うことができます。
このように「お目汚し」の類義語には、「見せる」ということを表現する言葉が当てはまると言えます。
公開する
「お目汚し」の類義語の二つ目は、「公開する」です。「公開する」も「お披露目」と同じように、誰かに何かを見せることを表す言葉ですので「お目汚し」の類義語であると言えます。「公開する」や「お披露目」は大勢の相手に対して見せるイメージがありますが、「お目汚し」はそういうわけでもありません。
「お目汚し」は相手が一人であっても大勢であっても使われる言葉です。少々の違いはありますが、「公開する」も「見せる」という意味なので「お目汚し」の類義語だと言えます。
見ていただく
「お目汚し」の類義語の三つ目は、「見ていただく」です。「お目汚し」は相手に何かを見せる時に自分がへりくだる言い方ですので、「見ていただく」も「お目汚し」に似た表現だと言うことができます。そのため「見ていただく」も「お目汚し」の類義語の一つと言えます。
目に入れる
「お目汚し」の類義語の四つ目は、「目に入れる」です。ですが「目に入れる」には自動的な意味と他動的な意味がありますので、「お目汚し」の類義語のようでいて類義語ではないとも言えます。「目に入れる」は「自分が見る」という意味にもなりますし「相手に見せる」という意味にもなります。
このため、「目に入れる」は「お目汚し」の類義語でもあり類義語でもないということになります。要は使い方次第ですので、「目に入れる」の前後に何を入れるかについて注意すれば、「目に入れる」は「お目汚し」の類義語として使えるということです。
「お目汚し」の使い方と例文
それでは次に「お目汚し」の使い方と例文についてご紹介します。「お目汚し」の意味が分かっても、どのような場面でどのように使えば良いのか、使い方がわからないという人も多いでしょう。使い慣れていない言葉なら、使い方がわからなくても当然です。こういった使い慣れない言葉は使っていくことで次第に慣れていくものです。
ですがまずはどういう時にどういう場面で使えば良いのかを知っておくことが大切です。「お目汚し」という言葉の使い方とその例文をご紹介しましょう。
何かを見せる前に添える
それでは「お目汚し」の使い方についてご説明します。「お目汚し」は誰かに対して何かを見せる前に添えるという使い方をすることが多いです。誰かに何かを見せる前に「恐縮ですがご覧ください」という気持ちを表すために「お目汚し」という言葉を使います。本当は相手に見せる物に対して自信を持っていても、謙遜する気持ちで「お目汚し」と言います。
誰かに何かを見せる時に「お目汚し」という言葉をどのように使えば良いのか、「お目汚し」の使い方の例文をご紹介します。
何かを提出する時
「お目汚し」の使い方の例文の一つ目は、何かを提出する時の使い方の例文です。まだ入社間もない新人がベテランの企画部長に自分の企画書を提出する場合の例文として「お目汚しではございますが、企画書を作成いたしましたのでお目通し頂ければと存じます」という例文が挙げられます。
これはちょっと改まった表現の例文ですが、新人がベテラン上司に何かを提出するならこのぐらいへりくだった言い方でもおかしくありません。「お目汚し」に「ではございますが」をつけるというのは、「お目汚し」の使い方には結構多いです。
「お目汚し」の後は「ですが」でも構いません。例文の「お目汚しではございますが」の部分を「お目汚しですが」に変えても使い方としては問題ありません。
取引先に新製品を見てもらう時
「お目汚し」の使い方の例文の二つ目は、取引先に新製品を見てもらう時の使い方の例文です。取引先に新製品を見てもらう時には、あまり自信満々な態度で見てもらうとあまり良い印象がありませんので、謙遜する気持ちを表現するような「お目汚しではございますが、ご覧いただければ幸いに存じます」という言い方をしましょう。
こちらの例文も先にご紹介した例文と同じく、「お目汚し」の後に「ではございますが」をつけています。「お目汚し」の後には「ではございますが」「ですが」という言葉をつけるのが、「お目汚し」の正しい使い方になります。
写真を見せる時
「お目汚し」の使い方の例文の三つ目は、写真を見せる時の使い方の例文です。人に自分の写真を見せるというのはあまりないことですが、子供が生まれた時などに上司に「写真を見せてくれ」と頼まれることもあります。そんな時に使える「お目汚し」の例文として「ほんのお目汚しですがご覧ください」という例文が挙げられます。
写真を見せるなら、企画書などを見せる時ほど改まった言い方をする必要はありません。ですがやはり、上司などに対してはへりくだった言い方をした方が良い印象を与えます。なので「お目汚しですが」をこのように使うことをおすすめします。
目上の人などに対して何かを見せる時にはまず、「お目汚しではございますが」「お目汚しですが」という言い方をするということを覚えておくと良いでしょう。
発表が終わった後にも使用
「お目汚し」は誰かに対して何かを見せる前に使うとご紹介しましたが、実は「お目汚し」という言葉は何かを見せた後にも使います。「お目汚し」は基本的には何かを見せる前に、「たいしたものじゃありませんよ」というように謙遜する気持ちを表すために使いますが、見せた後に「お粗末なものをお見せしました」という意味でも使われます。
誰かに対して何かを見せる前にも見せた後にも使える「お目汚し」という言葉の、何かを発表した後での使い方の例文もご紹介しましょう。
お目汚し失礼いたしました
「お目汚し」の何かを発表した後の使い方の例文は、「お目汚し失礼いたしました」です。見せる前には「お目汚しではございますが」と言いますが、見せた後には「お目汚し失礼いたしました」と言います。「粗末なものをお見せして失礼しました」というような、謙遜する気持ちを表す言い方です。
本当は自分では粗末なものだとは思っていなくても「お目汚し失礼いたしました」と言うのは、相手に対しての礼儀の一つであるとも言えます。
何かを見せる前には「お目汚しではございますが」と言い、何かを見せた後には「お目汚し失礼いたしました」と言うのは、ビジネスシーンではごく当たり前のことですので覚えておきましょう。
「お目汚し」という言葉をよく使う人
「お目汚し」という言葉はビジネスシーンにおいて時々使われる言葉ですが、この「お目汚し」という言葉は意外な人が意外な所で使っていることがあります。「お目汚し」というのは誰かに何かを見せる時に謙遜する気持ちを表す美しい日本語ですが、これを日常生活の中で使っているという人もいます。
それでは「お目汚し」という言葉をよく使う人にはどのような人がいるのか、「お目汚し」をよく使う人についてご紹介しましょう。
ビジネスマン
「お目汚し」という言葉をよく使う人の一つ目は、ビジネスマンです。「お目汚し」の使い方の例文の中でもご紹介したように、「お目汚し」という言葉はビジネスシーンにおいて色々な場面で使われます。それはやはり、ビジネスシーンの中では常に上下関係というものがあるからだと言えます。
目上の人に対してへりくだることの多いビジネスマンは、色々な場面で「お目汚し」という言葉を使う傾向にあります。
同人作家
「お目汚し」という言葉をよく使う人の二つ目は、同人作家です。同人作家といっても色々いますが、特に「絵師」と呼ばれる「絵を描く人」が「お目汚し」という言葉をよく使います。自分が描いたイラストに「お目汚しですが」という言葉を添えて、絵師仲間にプレゼントするということがよくあります。
同人作家は色々な本などから得た豊富な情報を持っているため、季節の挨拶などの社会常識も普通の人よりしっかり持っていることがあります。そのため同人作家は「お目汚しですが」といった言葉をきちんと使えるということです。
中高年の女性
「お目汚し」という言葉をよく使う人の三つ目は、中高年の女性です。強風でスカートがめくれて下着が見えた時などに「あら、お目汚し失礼」などと言うおちゃめな中高年の女性が時々います。若い人にはあまりなじみのない「お目汚し」という美しい日本語を、中高年の女性はこのような場面で軽く使いこなしています。
「習うより慣れろ」とはまさにこのことで、こういった人達は昔から使ってきたからこそスマートに使いこなせるということです。ふとした時にすぐに口から「お目汚し」という言葉が出るのはさすがの「年の功」というものです。
「お目汚し」の他に「お耳汚し」という言葉もある
「お目汚し」は「見苦しいものを見せること」という意味ですが、これにとても良く似た日本語に「お耳汚し」という言葉があります。「お口汚し」も似ていると言えば似ていますが、「お耳汚し」は「お口汚し」よりさらに「お目汚し」に似た意味を持っています。それでは「お耳汚し」とはどういう意味なのかについてご紹介しましょう。
「お耳汚し」の意味とは
「お目汚し」に似た「お耳汚し」という言葉には、「聞き苦しいものを聞かせること」といった意味があります。なので「お耳汚し」という言葉は、「見苦しいものを見せること」という意味を持った「お目汚し」に極めて近い意味を持った言葉だと言えます。体のパーツが目から耳に変わっただけで、意味的にはほとんど同じです。
会社の飲み会などのカラオケで歌う前に「お耳汚しですが」と前置きしたり、歌った後に「お耳汚し失礼いたしました」と言ったりします。「お目汚し」に比べると使える場面は少ないですが、これを使えると「ちょっとデキる人」という印象になります。
「お耳汚し」も「お目汚し」と同じく美しい日本語
「お目汚し」は自らを謙遜するとても美しい日本語ですが、「お耳汚し」も自らを謙遜してへりくだるとても美しい日本語です。本当は自信があることに対してもへりくだる言い方をするというのが、日本語の美しさであり魅力であると言えます。そしてこれらの美しい日本語を使いこなすことは、社会人にとって必要なことの一つです。
特に年配の人から見れば、「お目汚し」や「お耳汚し」が使えるかどうかで相手の印象は大きく変わります。「お目汚し」だけでなく「お耳汚し」という美しい日本語も使いこなせるようになりましょう。
「お目汚し」の英語表現とは
「お目汚し」と同じように謙遜するような言い方の日本語はたくさんありますが、それを英語に翻訳する際にほぼストレートに同じ意味になる英語表現もあれば、ニュアンスが近いというだけの英語表現もあります。「お目汚し」はひと言の英語で表すのはかなり難しい日本語だと言えます。
「お目汚し」を英語表現したらどのようになるのか、「お目汚し」の英語表現についてご紹介しましょう。
「お目汚し」の英語表現
「お目汚し」という言葉を英語表現するとどのような言い方になるのかですが、「お目汚し失礼しました」を直訳すると「I'm sorry to keep your eyes dirty」という言い方になります。「あなたの目を汚してすみませんでした」といった意味になります。ですがこれは直訳で、一般的には違う言い方になります。
「お目汚しですが資料をご覧いただけますか」というのを英語表現すると「Excuse me. Could you please take a look at the document.」となります。
「お目汚し」という言い方は本当は英語にはない
「お目汚し」の英語表現を直訳と意訳両方でご紹介しましたが、実は「お目汚し」という言い方は英語にはありません。「お目汚し」には「見苦しいものを見せること」という意味がありますが、このように複雑な意味を持った英語表現はありません。なので敢えて挙げるなら、先にご紹介したような直訳か意訳かになります。
直訳の方は実際欧米などでは使われていませんが、意訳の「Excuse me. Could you please take a look at the document.」の方は一般的に使われています。英語で「お目汚しですが」と言いたい場合には意訳の言い方を使うと良いでしょう。
「お目汚し」という言い方があるのは日本だけ
「お目汚し」に当たる英語表現はないと述べましたが、実は「お目汚し」という言い方は日本独自の言い方です。日本に近く漢字のふるさとである中国にも、このような意味を持つ言葉はありません。日本では謙遜することや控えめでいることが美徳ですが、日本以外の国ではそうではありません。むしろ自己アピールをする方が良いとされています。
謙遜することや控えめでいることが美徳とされている日本だからこそ、「お目汚し」という言葉が生まれたと言うことができます。
「お目汚し」の注意点
それでは次に、「お目汚し」を使う上での注意点についてご紹介します。ここまでにもご紹介してきたように、「お目汚し」は自らを謙遜する美しい日本語の一つです。普段の日常生活の中で使うことは少なくても、ビジネスシーンなどで正しく使えば株が上がることもあります。
ですが使い方次第では相手に対して失礼になるということもあります。「お目汚し」の使い方の注意点についてご紹介しましょう。
乱用は失礼となる事もある
「お目汚しではございますが」「お目汚しですが」といった言い方は謙遜する言い方ですが、あまりに乱用すると相手に対して失礼になることもあります。謙遜すること自体は悪いことではなく、失礼には当たりません。ですが、あまりにも「お目汚し」を使ってしまうと逆に「謙遜し過ぎだろう」と思われ、失礼になることもあります。
「お目汚し」という言葉は、ここぞという場面で使う言葉です。あれもこれも全部「お目汚し」と言ってしまっては失礼になることもありますので、「お目汚し」を乱用するのはやめましょう。
「お目汚し」は見苦しいものを見せること
「お目汚し」という言葉の意味や使い方などについて色々とご紹介してきましたが、如何だったでしょうか。「お目汚し」は「見苦しいものを見せること」という意味を持つへりくだった言い方ですが、あまりに乱用すると逆に失礼になりますので、使いどころを考えて適切に使いましょう。