「紛糾」の意味とは
新聞やテレビ、インターネットのニュース記事で「この問題を巡り、与野党が対立して国会が紛糾しています。」等と言った話を目にしたことはありませんか?この一文に出てくる「紛糾」という文字。読み方は「ふんきゅう」と読みますが、この言葉がどんな意味を持ち、どんな時に使用されるかを正確に理解している人はどのくらいいるでしょうか?
この「紛糾」という言葉は主に揉め事やうまく進まない物事といった状況を表すのに使われる言葉ですが、類語表現も存在し、この類語表現はニュアンスの違いもあるため、実際に使用する際には、場面や状況に応じて上手に使い分ける必要があります。
本記事ではこの「紛糾」という言葉が持つ意味と、その由来や語源について、そして実際にどのような状況で使用されるかについてや、具体的な使い方についても説明していきます。
「紛糾」の意味は「物事がもつれてまとまらないこと」
「紛糾」とは「物事がもつれて、もしくはこじれてうまく決着を付けられずに纏まらなくなること、またはその様子」という意味を持ちます。例えば、議題があっても参加者の利害が対立してなかなか結論が決まらない会議や、人間関係のトラブルが発生した際に使用されることが多い言葉です。
ニュアンスとしては単なる口喧嘩や言い争いといった場面よりも、例えば会社内での会議など、「意見や主張がまとまらず、ごたごたする様子」を表現する際に良く使用されます。
一対一の関係での対立というよりは、会議のような複数のメンバーが参加している場面で意見がぶつかったり揉めたりしてしまい、会議の方向性に沿って結論を導くことが難しくなってしまったり、各自の利害が対立して意見がぶつかったまま話が纏まらなくなってしまう様子を表現する際に使用されることの多い表現です。
「物事がもつれる、違う意見がまとまらないまま多数存在している」という様子を表現するこの「紛糾」という言葉は、「なかなか話が纏まらず、各自の意見が対立している状態の会議」の様子を表現するのには、まさにぴったりの表現だと言えます。
「紛糾」語源
「紛糾」という言葉はどのようにして構成されたのでしょうか?その語源や由来を辿ると、「紛糾」を構成する漢字にたどり着きます。
「紛」という漢字は「(物事が)まぎれる、乱れる、もつれる」という意味を持ちます。この「紛」という漢字を構成する部首が糸へんで「糸」という字が用いられ、そこにつくりが「分けられる」の「分」という字の組み合わせで、「糸が解けて乱れるさま」を表現したことが語源と言えます。
日本語の単語が作られる際には、中国からの外来語として入ってきた漢字が組み合わされて、漢字の成り立ちやその読み方、文字の見た目や音が持つ意味で言葉の意味が作られて、そのまま日本語として使用されるようになったという例はよくありますが、この「紛糾」という言葉の由来やその成り立ちは、まさにその典型例と言えます。
「紛糾」の類語と意味
今まで「紛糾」という言葉の語源や由来に始まり、「紛糾」という言葉の意味が出来上がるまでの過程について説明してきました。多くの言葉と同様、「紛糾」にも類語がいくつかありますが、その類語にはどのようなものがあって、またどのような使い方をするのでしょうか?
ここでは「紛糾」という言葉とほぼ同じ意味、もしくは似たような意味を持つ類語を、その使い方を含めながら紹介していきます。
「紛糾」の類義語は「混乱」「いざこざ」「無秩序」
「紛糾」の類語として挙げられる言葉には主なものとして「混乱」「いざこざ」「無秩序」といった言葉があります。「類語」ですので勿論似た意味を持つ言葉として取り扱うことはできるのですが、いざこれらの言葉を使おうとすると、その意味やニュアンスの違いにより、実際の場面や状況に応じてうまく使い分ける必要が出てきます。
ここでは「紛糾」の類語表現である「混乱」「いざこざ」「無秩序」のそれぞれの言葉が持つ意味と語源、またその由来に関しても使い方の説明を含めながら、以下でひとつひとつ掘り下げて説明していきます。
「混乱」の意味・語源・由来について
「混乱」という言葉が表す意味は、「物事や要素が複数あり、それらが複雑に入り乱れた結果、秩序や安定を失うこと」です。また、「人間の思考力や判断力といった精神状態が乱れた結果、その人の精神機能が低下すること」も意味します。
この「混乱」という言葉の由来ですが、それはこの言葉の構成に関連しています。「混乱」の言葉を作っている単語が「混(混じること)」と「乱(乱れること)」の漢字が使用されていますが、この漢字から「多数の物事・出来事が混ざることプラス、今存在している安定や秩序が崩されること」という意味が構成されたのです。
ゆえに「混乱」の言葉は、「色々な事柄が混ざり、その結果今ある安定が壊されて何が何だか分からなくなる混沌とした状態」を表し、その語源は使用されている漢字の意味から来ていることがわかります。
「いざこざ」の意味・語源・由来について
「いざこざ」とは「揉め事」や「争いごと」のことを意味します。また「ごたごたしている様子」も表現することができます。「いざこざ」を二字熟語で表現すると、「葛藤(かっとう)」となります。
先に説明した「混乱」という言葉と意味の上で比較してみると、「何が何だかわからなくなる、混沌とした状態」よりも、より人間同士の「揉め事」や「争い事」という意味合いが強くなります。例えば、「旦那が職場でのいざこざを家庭に持ち込んでくるので、こちらはイライラしてしまう。」という具合に奥様が嘆く時にも使われる言葉であると言えます。
「無秩序」の意味・語源・由来について
「無秩序」とは「混沌とした、物事が混ざり合ってしまいはっきりとしない様子」を表す言葉です。この「混沌」としたの「混沌」の意味を更にかみ砕いて考えてみると、「天と地が混じり合い、はっきりとわからない様子」に由来していると言われています。要は「天と地ほど」異なるものが互いに混じり合い、はっきりしない様を表現する言葉と言えます。
この「無秩序」という言葉は、例えば「連日のデモ運動の後、街は無秩序の状態が続いていた」という例文のように、「デモによる反対運動が発生した後の街は、軍隊と市民達が衝突したり、睨み合いを続けて収拾がつかなくなっていた」様子を表現する使い方ができます。
「紛糾」と「いざこざ」の使い方の違い
「物事がもつれて纏まらない」ことを表す「紛糾」と、「揉め事」や「争いごと」を表す「いざこざ」とでは、「何かがもつれて上手いことまとまらなくなる」という点では共通の意味を持ち、重なる部分もありますが、実際の場面で言葉の使い方について考えた際には、運用方法が異なるところもあります。
具体的に例文を使って考えてみます。「紛糾」の使い方を例文で見てみると、「社員が取引先から賄賂を受け取っていたことが発覚したことで、株主総会は紛糾した」「父が遺言書を残していなかったため、兄弟間で遺産相続を巡り紛糾した」といった具合です。
これに対して「いざこざ」の使い方を例文で見ると、「隣の家では孫の進路を巡り、嫁姑のいざこざが絶えないようだ」「隣のコールセンターの部署では女性同士のいざこざが多く、離職率が高い」のような使い方をすることができます。「紛糾」の使い方と比較すると、どちらかというと身近な人間関係のトラブルについて言及する際に使われることが多いです。
一方、上の例文でも取り上げたように、「紛糾」の方は会議が揉めたり、より問題が複雑にややこしくなり、収まりがつかなくなるというニュアンスを含み、家庭内や身近な人間関係というよりも、より公の場で、社会的にも大きなインパクトを与えるような場面で使われる傾向があるといったニュアンスの違いがあります。
特にテレビのニュース等で「国会が紛糾している」「衆議院の予算委員会が予算配分を巡って紛糾している」等のような、社会的にも影響の大きい場面で使われることが多いということも、「紛糾」の使い方の特徴と言うことができます。
上で述べた通り「紛糾」が公な場面で使用されるのに対し、「いざこざ」は身近な人間関係等のやや私的な場面で使用される傾向があります。実際にどんな場面で使用する言葉かを考えることも、「紛糾」と「いざこざ」を使い分けるポイントの一つであると言えます。
「紛糾」の対義語と意味
「紛糾」には同様の意味で使うことのできる類義語が存在する一方で、もちろん対義語も存在します。誰でも日頃の生活上で揉め事やトラブルは避けたいですから、できることなら「紛糾」に値する言葉よりも、「紛糾」の対義語を使える機会を持ちたいものです。ここでは「紛糾」の対義語に当たる言葉について紹介していきます。
「紛糾」の対義語は「解決」「収束」
「紛糾」の対義語として使うことができる言葉は、「解決」そして「収束」が代表的です。「解決」の意味は問題のあったことや事柄が、うまいこと良い方向に運んでいくことで、「収束」の意味は問題があったり、混乱を極めていたことが、うまいこと問題が取り除かれて良い方向に向かっていくことです。
トラブルや揉め事が原因で、事態が「紛糾」している状態は誰にとっても気分が良くないですし、いつまでたっても揉めていると、会社などの組織であれば士気が下がってくるでしょうし、いずれにしてもストレスフルな状況であることは間違いありません。
トラブル発生の際には、相手ともどうにか歩み寄ってお互いの意見の相違についても落とし所を探し、いつまでも事態を「紛糾」させたままではなく、その対義語が表す状況である「解決」や「収束」の状況へ持っていけるようにしたいところです。
「紛糾」とはどんな時に使うのか
ここまで「紛糾」という言葉とその由来や語源について、また「紛糾」の類語や対義語についてやその使い方に至るまで例文を交えて説明してきました。ではこれらの類語や対義語が存在することも踏まえて、「紛糾」とはどのような場面で使われるのでしょうか。ここから例文を用いて使い方について具体的に説明していきます。
「紛糾」の例文
「紛糾」の使い方について、次の例文を例にとって説明します。「営業部の不適切な交際費支出が先日発覚したことで、翌年度の営業部の予算配分を巡って予算編成会議が紛糾している。」この例文では予算編成を巡って営業部員とその他のメンバーとの利害が対立し、話を纏めることが難しくなってしまっている状態を表現しています。
記事前半の「紛糾」と「いざこざ」の使い方の違いについて述べた章の例文でも触れた通り、「紛糾」という表現はよりオフィシャルな場面の、かなり複雑にねじれてしまった事態について言及する際に使われることが多い表現と言うことができます。
「紛糾」の英語訳は一般的に使われる
昨今のグローバル社会においては、ビジネスの現場で「紛糾」している事態を、「英語」で表現する必要に迫られる可能性もあります。このような場合には、どのような表現を使えば良いのでしょうか?
「紛糾」を表す一番シンプルな英語表現は「complicate」です。この英語が「複雑に絡み合った、事態を紛糾させる、事態を悪化させる」という意味を持つので、日本語の「紛糾」の意味を表す英語表現としてはぴったりだと言えます。「His opinion made this matter more complicated.(彼の発言で事態はより紛糾した。」のような使い方ができます。
「混乱」を意味する英単語
ここで「紛糾」の類語である「混乱」を意味する英単語について触れます。「混乱」は英語では「confusion」や「chaos」といった単語で表現できます。「cahos」については「カオス」として日本語でもよく見かける表現ですが、「confusion」も「chaos」も主に「混沌としたさまや様々なものが入り乱れている状態」と意味を表すのに使えます。
「紛糾」の意味は物事がもつれて決着がつかないこと
この記事では「紛糾」の意味や使い方についてを具体的な例文を交えながら、また類語・対義語の紹介等も含めながら紹介してきました。類語との比較をしてみると、「物事が乱れる、もつれる、または天と地ほども違う異質なものが互いに混じり合ってはっきりしない状態」という広義の意味は共通しています。
しかし互いに類語同士の関係にある言葉であっても、その使い方や実際に使われるに相応しい場面という意味では、よりオフィシャルな場面で使われる言葉と、プライベートに近いより身近な場面で使われる言葉がある等、使い分けには少々コツが必要です。
従って実際に「紛糾」をはじめとするこれらの言葉を使う際には、その意味やニュアンスの違い等を頭に入れた上で、場面に応じてより相応しい表現を選択することが、賢い運用方法と言えます。辞書等を使用して正しい運用方法を身に着けておくことが得策です。