ガイドラインの意味とは
新聞やニュースなどを見聞きしていて、ガイドラインという言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。もしかしたら、仕事でも使うことがあるという方もいるかもしれません。
しかし、ガイドラインと一口に言っても、意味が複数あります。そのため、それぞれの文脈での意味を理解していないと使い方を間違えてしまう場合もあります。
この記事ではガイドラインの意味や使い方、似ている言葉であるガイダンスとの違いなどを説明していきますので、これを読んでガイドラインの使い方をしっかりと理解していきましょう。
意味①政府の政策や施策などの指標
ガイドラインの使い方の1つとして、「政府の政策や施策などの指標」というものがあります。新聞やニュースで見聞きした場合はこの使い方であることが多いです。
「指標」というのは、物事を判断する際の目印のことで、政策や施策の場合は「~をする際は基本的にこのようにしてください」というような意味合いです。
例えば、消費者庁からは「魚介類の名称のガイドライン」というものが出されていたりします。これがあるので、お店で表示されている魚の名前はこのガイドラインに基本的に従っています。
意味②組織や団体が指導する際に用いる指針
「組織や団体が指導する際に用いる指針」としての使い方もガイドラインにはあります。「指針」というのは方向性のことで、指標よりは抽象的な内容が書かれていることが多いです。
この場合のガイドラインは「~に関係することをする人は、これに従うことをおすすめします」というような意味合いになります。
具体的な例としては医療でのガイドラインがあります。この症状の場合にはこのような治療をおすすめするというような内容が書かれたガイドラインで、医者はもちろん、患者側からも受けている治療が適切なものなのかを判断する目安となっています。
意味③文字を書いたりする際の目安のけい線
上2つとは違う使い方として、「文字を書いたりする際の目安のけい線」というものもあります。ガイドラインのガイドというのは「案内」を意味する言葉なので、その意味をそのまま使った使い方と言えます。
具体的には、ノートなどで横や縦に入っている線がガイドラインです。まっさらなところに文字を書いていくと行や列が曲がってしまうことがあるので、それを避け、きれいに文字が並ぶようにするためにラインが引いてあります。
ガイドラインの類語
ここからはガイドラインと似ている言葉について説明していきます。同じような使い方ができる場合もあれば、ニュアンスや意味合いが違うため、安易に使うと相手に理解してもらえない場合もあるので、類語についてもしっかりと理解していきましょう。類語が分かれば、バリエーション豊かに文章を書くこともできるようになります。
ルール
ガイドラインと似ている言葉として「ルール」があります。誰かに「こういう風にして」と要求するという意味では、ガイドラインとルールは似たようなものと言えます。
しかし、ガイドラインとルールには大きな違いがあります。それは強制力の有無です。ガイドラインは「おすすめ・推奨」というニュアンスなので、守らなくても罰則などはありませんが、ルールは「守るべきもの」なので、破った場合は罰則があることが多いです。
したがって、「守るべきこと」を決めるときにガイドラインとして決めてしまうと、相手に間違ったメッセージを伝えることになってしまうので注意が必要です。
スタンダード
「スタンダード」もガイドラインと似たような意味合いで使われることがあります。スタンダードにはいくつか意味がありますが、ガイドラインとは違いがある使い方もあります。
まず、スタンダードの1つの意味として、「普通、平均」というものを紹介します。これは常識であったり、無難であるというニュアンスがあるので、それ以外のマイナーな行動を制限する働きがあります。
ガイドラインは行政機関や組織が誰かに物事を要求するものなのに対して、この場合のスタンダードは自然と出来上がったものと言えるので、行動の目安となるという意味では同じでも、ニュアンスには違いが出てきます。
また、スタンダードには「標準」という意味もあります。標準というのは物事を判断する目安や拠り所という意味です。
こちらの意味の場合はガイドラインに近い意味になるので言い換えで使うことも可能ですが、「普通、平均」という意味と間違えられやすいので、言い換えとして使う場合は気を付ける必要があります。
ガイドラインの法律での使い方
ここからはガイドラインという言葉の法律での使い方について詳しく説明していきます。仕事でも国の規制がある分野の場合は、ガイドラインに従う必要があるケースもあるので、法律ではどのような意味で使われているのかを理解しておくことは非常に重要になってきます。
自主的に遵守する事が推奨されるルール
私たちが普段使っている「法律」は漠然としたものですが、実際はいくつか種類があります。まず「法律」の定義について見てみましょう。
「法律」というのは、国会で議決されたルールのことです。国会以外で決められたものは「法律」とは呼ばれません。私たちが身近でよく接するものとしては「労働基準法」や「道路交通法」などがあります。
私たちはこの「法律」だけで、世の中の色々なものが動いていると思いがちですが、法律は大枠しか決めていないことが多いです。より細かいことは「命令」で決められています。
この命令は誰が行うかによって名前が異なり、内閣が出した命令は「政令」、省が出した命令は「省令」と呼ばれます。政令と省令では政令のほうが上位なので、政令のほうが省令に比べて大ざっぱな内容になっています。
この記事のテーマである「ガイドライン」は上のどれにも当てはまりません。先ほど少し書いたように、ガイドラインは法体系とは別に、「こういう風にすれば法律を守っていることになりますよ」という具体例や基準を示すものなので、法律や命令ではありません。
したがって、ガイドラインは「自主的に遵守することが推奨されるルール」と言うことができます。むしろ、行動に迷ったときに頼りになるものとも言えます。
強く義務づけるものでは無い
ガイドラインは法律や命令ではありませんので、それを守らなかったからと言って罰せられることはありません。これはルールとの違いの部分などでも説明しました。
したがって、ガイドラインは行動を強く義務づけるものではありません。しかし、実際は「これに従っていれば法令違反にはなりません」というものなので、従っていない状態の場合「法令違反状態」になっている可能性があります。
また、ガイドラインに従っていなければ、行政からの指導の対象になる場合も考えられます。このため、ガイドライン単独で考えれば行動を義務づけるものではないですが、法令との関わりで考えると実質的には義務に近いということもできます。
ですので、「たかがガイドラインなんだから従わなくて良いんだ」ではなく、原則として従うべきものだという認識は持っておいたほうが良いでしょう。
ガイドラインとマニュアルの違い
ガイドラインと似た言葉の一つに「マニュアル」というものもあります。「このマニュアルに従って作業してください」という指示を聞いたことがある人は多いでしょう。
このマニュアルという言葉とガイドラインにはどのような違いがあるのでしょうか。ここからは、この2つの言葉の違いについて、説明していきます。
マニュアルの意味とは
マニュアルにはいくつか意味があります。具体的には「機械やアプリケーションの使用説明書」、「作業手順をまとめた冊子」、「操作が手動式であること」の3つです。
この3つの意味について、それぞれ詳しく説明していきます。意味の説明だけでなく、ガイドラインとの違いについても触れていますので、しっかりと理解していきましょう。
機械やアプリケーションの使用説明書
マニュアルの1つ目の意味として、「機械やアプリケーションの使用説明書」というものがあります。「この機械はこのように使ってください」という内容が書いてあるものということです。
ガイドラインは「こういう風にするのがおすすめ」という内容でしたが、マニュアルの場合は「こういう風に使わないと動きません」、あるいは「こういう風に使わないと壊れます」という内容なので、従わざるを得ません。
法令などと違い、誰かにペナルティを与えられるわけではありませんが、使いたい機械やアプリケーションが使えないのでは意味が無いので、当然マニュアルに従うことになります。この部分がガイドラインとマニュアルの大きな違いです。
作業手順をまとめた冊子
マニュアルの2つ目の意味として、「作業手順をまとめた冊子」というものもあります。「最初にこれをして、次にこれをして」と書いてある冊子のことです。仕事でマニュアルと言う場合、この意味で使われていることが多いです。
この場合のマニュアルも「従うことが必要なもの」になるので、「従ったほうがいい」程度であることが多いガイドラインとは行動の制約具合に違いがあります。
また、ガイドラインは受け手にその行動をするかどうか考える余地がありますが、この場合のマニュアルは考える余地は基本的にありません。書いてある通りにすることが必要なためです。
操作が手動式である
マニュアルの3つ目の意味として「操作が手動式であること」をあげることができます。これはガイドラインとはまったく意味が違います。この意味でよく使われるのは「マニュアル車」という言葉です。
車はスピードの出し具合にあわせてギアを変える必要があり、マニュアル車はこのギアチェンジを手動で行います。このギアチェンジが手動式であるためにマニュアル車と呼ばれています。
ちなみに、現在主流のオートマ車は、正確には「オートマチックトランスミッション車」と呼ばれ、ギアチェンジを機械が自動的に行ってくれるものになっています。ギアチェンジが自動なので「オート」という名前が付いています。
ガイドラインとガイダンスの違い
ガイドラインの類語の一つに「ガイダンス」というものもあります。というわけで、最後にガイドラインとガイダンスの違いについても説明していきます。
ガイドラインとガイダンスは音が似ていますが、内容には違いがありますので、これを読んで誤って使わないようにしていきましょう。
初心者向きの案内や手引きを意味する言葉
ガイダンスの1つ目の意味としては、「初心者向けの案内」というものがあります。よく聞くものとしては、大学での「就職活動ガイダンス」や、自治体などが行う「起業ガイダンス」などがあげられます。
このようなガイダンスは、初心者向けの基本的な説明などを行うことが多いです。ガイドラインの場合は指針や指標を示すことも多いですが、この使い方でのガイダンスはそのような意味は持っていません。
ガイダンスにはもう1つ意味があり、「初心者向けの手引き」というような意味もあります。これも先ほどの案内と同じですが、書物やペーパーになっているものを指すこともあります。
この手引きの場合も基本的な説明や、初心者向けの話が書いてあることが多いため、ガイドラインほど作り込まれていないことが多いです。
ガイダンスは法令などと共に使われる場合もあります。この場合も、基本的には手引きといった内容で法令やガイドラインを実際に具体化するための方法が書いてあるものになります。このため、通常は法令やガイドラインとセットで制定されます。
このようなガイダンスを読むと、難しく、抽象的なことしか書いていない法令を実際にどう解釈すれば良いのかということが分かるので、仕事などで法令を理解する必要がある場合はガイダンスがないかを一度調べてみるのもおすすめです。
ただ、法令以外でも団体などがガイダンスが決める場合もあり、この場合はガイドラインとガイダンスの区別があいまいなことがあります。ガイダンスと言いながら、内容が実質的にはガイドラインに相当するものであったりします。
ガイドラインとは政策や施策などの指標
ここまで、ガイドラインの意味や法律での使われ方、似ている言葉である「ルール」、「スタンダード」、「マニュアル」、「ガイダンス」との違いを説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
法令などで使われるガイドラインは、何気なく生活しているとあまり関わりがないように思えるかもしれませんが、仕事などで法令の理解が必要な場合には指標となるので、法令を守りながら仕事をする際には重要なものになります。
この記事でガイドラインについてマスターできれば、仕事で使えるだけでなく、新聞やニュースを見聞きしているときに「ガイドライン」という言葉が出てきたときにも、しっかりと理解できますので、ガイドラインについてぜひマスターしてみてください!