世帯年収の平均は年齢で変わる
現在の日本国内の、平均世帯年収は560万円とされています。この平均世帯年収は、全ての日本の世帯を対象とした平均世帯年収です。世帯の形成は、独身で一人暮らしのの世帯、結婚して子供のいる世帯、または近年急速な増加傾向にある高齢者世帯など実に様々です。その様々な形で形成されている平均年収が560万円ということです。
例えば、ある50代の世帯年収が800万円だとしても、他の70代の世帯年収が320万円の場合、この2つの世帯を足して2で割ると560万円になります。日本の平均世帯年収は1985年の時にちょうど500万円に達して、ピークは1994年の662万円でした。
因みに、2018年の日本人の平均年収は441万円で、これは世界の他の国の平均年収の26位にあたります。多くの人に経済大国と認識されている日本にしては、26位という順位を意外だと感じる人も少なくないでしょう。実質2000年には日本人の平均年収は世界で1位であり、そこから2010年には18位、そして2018年は26位と下降トレンドになっています。
50代が最も世帯年収が高い
現在の日本の平均世帯年収を年齢別に見てみると、20代の平均世帯年収は約350万円となっており、そこから30代になると一気に約250万円程上がり、世帯年収の平均は約594万円になります。更に40代では約707万円、そして50代になると平均世帯年収はピークを迎え、約743万円になり、60代からは下降して、約558万円となっています。
勿論、中には起業して成功し、若くして高年収を得る事が出来る世帯もいることも確かです。しかし実際は日本人の約87%が一般の企業で会社員として働いているという事実があり、その中で企業の会社員として、最も年収が高い年齢の時期が50代の役職付きになる可能性の高い年齢であることが考えられます。
因みに、世帯というのは何人かの家族の集合体であるのにも関わらず、年齢別にデータを比較できるのは何故か、という素朴な疑問を感じる方もいると思いますが、通常、平均世帯年収の年齢別のデータというのは、その世帯の「世帯主」の年齢を指します。
例えば、48歳の男性と53歳の女性の夫婦と代の夫婦と15歳と17歳の子供4人で形成されている世帯があるとします。この様な場合、その世帯の世帯主が夫であれば40代の世帯年収のカテゴリーに入り、仮に53歳である妻が世帯主の場合は、その世帯の平均世帯年収は50代のものとしてカテゴライズされます。
世帯年収の平均【20代】
ここからは、世帯主が20代~70代のケースに分けて、各世代の平均生体年収の特徴を、子供がいる場合といないケースや、共働きのケースなど、平均世帯年収を年齢別・状況別のについて詳しく説明します。また、上記に表記してある平均世帯年収や、特に何も記載されていない場合の平均世帯年収の金額は、あくまで「額面上」の金額です。
しかし、生活をする上で大切なのは額面上のお給料の金額ではなく、所得税と住民税といった税金を差し引いた後に手元に残る「手取り」の金額だと言えます。その様なことも踏まえ、各世代の平均世帯年収の特徴を説明します。
20代の世帯年収の平均
先述の通り、20代の平均世帯年収は約350万円となっています。晩婚化が進んでいる現代の日本社会では20代では多くの世帯主が独身であることが比較的多いと言えるでしょう。2018年の人口動態統計のデータによると、20代女性の未婚率は約76.3%で、男性の未婚率は約83.9%とされており、1987年以降晩婚化が進んでいます。
20代の月収・手取り・税金の例
上記の20代の未婚率の割合を見ると、約8割が独身で生活しているということになります。仮に独身で大学卒業後、新卒で企業に入社した場合、大抵のケースでは新卒の年収は250万円~350万円だと考えられますが、特に有名校の理系を良い成績で卒業していると、新卒でも800万円以上の条件を提示してくる企業も珍しくありません。
また、データ上では約2割の20代が結婚しているとされているので、結婚して夫の年収が300万円で、妻の年収が100万円で、合計の世帯年収が400万円という例も一般的に考えられるでしょう。
額面年収が350万円の場合、手取りの年収は約280万円程になります。額面の金額から差し引かれる項目の中で最も高いものは社会保険料で、額面年収が350万円の場合、凡そ50万円前後が社会保険料として、自動的に差し引かれます。社会保険料の内容は、健康保険・厚生年金・雇用保険などがメインです。
社会保険料で50万円も差し控えれるの納得がいかないと考える人もいるでしょう。しかし、健康保険に加入していることにより、病気や怪我をした時などに、病院に行った際の診察費の支払いが3割負担になったり、労災や定年退職後の年金などのことを考慮した場合のリスク対策になります。また、社会保険料は年収に比例して、支払額は高くなっていきます。
社会保険料の他に、額面の金額から差し引かれるものは税金です。税金は所得税と住民税の2種類があり、額面の年収が350万円の場合、所得税が約7万円、そして住民税が約15万円で合計約22万円を税金として差し引かれます。所得税や住民税のような税金も年収が上がるにつれ、納税額が上がっていきます。
その結果、手取りの年収は約280万円になり、これを12か月で割ると一か月約23.3万円の手取りになる計算です。この金額は、独身であれば全く不自由なく生活でき、更に毎月貯金することも可能だと言えます。次に20代で既に結婚していて、共働きのケースについて考えてみましょう。
共働き世帯の場合
20代の平均世帯年収は350万円であり、独身であれば充分生活していけますが、結婚している世帯の場合、将来のことや子供のことを考えて共働きする世帯も少なくありません。実際に20代の平均世帯で、共働きをしている割合は半数以上の約55%という結果になっています。
また、共働きをしている20代の平均世帯年収は約430万円と平均を約80万円程上回っており、これは30代前半の平均世帯年収とほぼ同じ年収になります。
因みに、2018年時点での日本全体の世帯の内、共働きをしている世帯の割合は、1219万世帯と全体の約67%が共働きをしている世帯であるという現状があります。対して、1980年代の共働き世帯の数は614万世帯しかなく、これは全体の約35%にあたります。そして、2000年になると日本の共働き世帯は全体の約50%になり、現在に至ります。
このデータ推移から、1980年代から現在にかけて、日本の全世帯で共働きの割合が約2倍になっていることが読み取ることができます。
世帯年収の平均【30代】
2018年のデータによると、日本人の30代の女性の未婚率は29.2%で、男性の場合41%となっております。これらの数字は20代の数字よりは高くなっていますが、例えば今から約50年前の1970年のデータと比較してみると、当時の女性の未婚率は7%~8%であり、男性に関しても6%~7%であったことを考えると、非常に深刻な問題だと言えるでしょう。
現在の30代の未婚率は、1970年の未婚率と比較した場合、女性に関しては約4~5倍、男性に関しては実に約7倍も未婚率の割合が増えています。当然未婚率が大幅に上昇すると出産率もこれに反比例して下がっていき、現在の少子高齢化問題は、未婚率が上がり始めた1980年代前半から対策を行うべきであったと言いざるを得ません。
30代の世帯年収の平均
30代の世帯年収の平均は594万円と20代に比べるとかなり増える傾向にあります。これは勿論、20代よりも30代の方が結婚している世帯が多く、共働きによって全体的な世帯収入が増加しているものと考えられます。中には共働きでなくても、20代で会社で大きな実績を残して、出世して役職が付き世帯主自体の年収が上がったという事も考えられます。
30代の月収・手取り・税金の例
世帯年収が594万円の手取り年収は、約450万円程とされています。つまり、額面年収の594万円から、社会保険料と税金で約150万円程差し引かれている計算になります。差し引かれる金額の内訳は、会社の制度や職種によって多少異なるものの、社会保険料で約50万円、所得税で約50万円、そして住民税で約50万円になります。
手取り450万円を12か月で割ると、1か月の手取りは約37.5万円になります。先述のデータから分かるように、30代では約70%の女性が結婚しており、男性に関しても約60%の男性が結婚しています。その為、30代の夫婦には子供がいる可能性が高く、生活費に子供の教育費なども織り込んで家計をやり繰りする必要があると言えるでしょう。
例えば、30代の夫婦で子供が2人いて、更に持ち家を住宅ローンで購入しているケースを考えると、1か月の手取りが37.5万円だと、20代独身のような生活をすることは難しいと言えるでしょう。
共働き世帯の場合
30代の世帯年収の平均は594万円と先述しましたが、国税庁が発表した2018年の「民間給与実態統計調査結果」によると、30代で世帯年収が600万円を超えている世帯の殆どが共働きであるというデータがあります。その中の約1割は世帯年収が1000万円を超えているというデータもあります。
但し、年齢が30代~40代になるにつれて女性の場合、結婚、出産、子育てなどにより、ライフスタイルそのものが変わるケースが多いと言えます。その結果、30代では子供が1人以上いる世帯と、そうでない世帯の平均世帯年収や平均貯金額も大きく変わってくると言えるでしょう。
世帯年収の平均【40代】
続いて、40代の世帯年収の平均について考えてみましょう。40代になると、女性の未婚率は17.7% 男性の場合は27.9%と全体を通して約75%の40代が結婚しているというデータがあります。地域によっては9割近くが結婚している地域もあり、子供を持っている世帯も多いと考えられます。
40代の世帯年収の平均
40代の平均世帯年収は約743万円とされており、30代の平均世帯年収より約100万円程多くなっていることが分かります。40代の世帯になってくると、それなりの出費が予想されます。東京都福祉保健局のデータによると、子供を持っている父親の年齢層で最も多いのが40歳~44歳で、母親の年齢層で最も多いのが35歳~39歳とされています。
また、40代で子供1人と夫婦の3人で生活している世帯の割合はと生活している世帯は約40.8%で、子供2人以上を出産し、4人以上の世帯は約60%とされています。その中でも夫婦2人に子供2人というケースが44.3%、夫婦2人に子供3人というケースは12.9%、それ以上のケースは僅か2.2%というデータがあります。
40代の月収・手取り・税金の例
40代の世帯年収の平均は743万円と先述で説明しましたが、これを手取りの年収にすると約540万円になります。年収700万円の年間の税金負担額は、所得税が51.6万円、住民税が47.9万円とされており、社会保険料の負担額は約50万円です。40代の世帯の手取り年収を同様に12か月で割ると、1か月の手取りは約45万円になります。
現代採用されている、「累進課税」のシステムでは、所得が多くなればなるほど、所得税や住民税のような税金の納税額が上がり、結果として手取り年収と額面年収の差が開くシステムですが、この、手取り年収と額面年収の差は、年収が700万円~800万円を超える辺りから広がる仕組みになっています。
従って、年収が700万円~800万円を超えた辺りから、手取り年収を増やすための税金対策として、住宅ローンを組んだり、収入の一部を投資に回したりすることによって税金対策をする世帯が増加する傾向にあります。
先述の通り、40代の世帯は子供と同居しているケースが多く見られます。しかし、晩婚化が進んでいる現代社会では40代の世帯の子供の年齢は様々で0歳~3歳の乳児のケースもあれば、小学校から高校生まで幅広い子供の年齢が考えられます。子供が2人以上いる世帯は44.3%の為、40代の世帯の場合子供に費やす教育費がかなり負担になると考えられます。
共働き世帯の場合
40代の共働き世帯の平均世帯年収は約647万円とされており、税金などを支払った後の手取り年収は約520万円です。これは、40代全体の平均世帯年収を下回る結果になっています。理由として考えられるのは、40代で共働きが必要な世帯は、世帯主である夫の年収が平均を下回っており、その結果、扶養者も働かざるを得ないということが考えられます。
年齢の上で40代というのは、子供の教育費以外にも、親の介護費用や住宅ローンの支払いで最も出費が多い年齢層だと言えます。ここでも、子供の有無、また親の介護の必要性の有無などの、様々な違った世帯環境が考えられと言えます。
その為、40代の世帯では単純に共働きをすることにより、平均世帯年収が20代、30代のように単純に上がる訳ではないと言えるでしょう。
世帯年収の平均【50代】
次に、最も世帯年収の高い50代の世帯の平均的な生活レベルについて考えてみましょう。50代になってくると、女性の未婚率は10.1%、男性の未婚率は18.7%と全体的に見ても50代の約85.5%が結婚していることになります。しかし、この数値も1970年のデータによると、当時の女性の未婚率は2.7%、男性1.2%と、なっています。
その為、1970年は50代の約98%が結婚経験があったにも関わらず、現在ではその数値は約12.5ポイント減の85.5%に減少していることが分かります。また、男性の場合、現在結婚経験がない約82.3%の男性の殆どが、生涯結婚することなく人生を終える可能性が高いという研究結果も出ています。
50代の世帯年収の平均
50代の世帯年収の平均は、年齢層の中で最も高く約743万とされています。しかし、あくまでこの数値は平均年収の世帯年収為、現代の格差社会に於いて、高年収の世帯と低年収の世帯の差がどんどん開いているのが現状です。50代の世帯年収の平均は約743万円とされていますが、厚生労働省が2017年に発表した50代世帯年収の「中央値」は約633万円です。
世帯年収を「平均」ではなく「中央値」で考える
最近では、あらゆるデータを「平均」で見るのではなく「中央値」で見た方がより現実的なデータが得られるという考え方が注目されています。世帯年収も平均で考えるのではなく「中央値」で考えた方がより参考になると最近では捉えられています。中央値とは、「対象のデータを大きさの順に並べたとき、ちょうど全体の中央に位置する値」です。
例として、社員4名と社長1人で構成されている会社の各社員の年収はちょうど400万円で社長の年収が3000万円だとします。この場合、この会社の5人の年収の平均は920万円となりますが、中央値で見ると400万円になります。5人の内、4人の年収が400万円で、会社の平均年収は920万円です、といわれても現実的ではないと考えるケースが増えています。
広がる「格差社会」
特に18歳未満の子供がいる世帯の生活は、平均世帯年収が1000万円あっても、主に子供の教育に関しての出費が多く、そこまで楽な生活が出来ている世帯は少ないと言えます。実際に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査結果」によると、18歳未満の子供がいる全世帯の平均年収は712万円ですが、63.5%の人が「生活が苦しい」と回答しています。
また、平均世帯年収が1000万円以上の世帯が18.6%を占めているということも格差社会を表すポイントとして挙げられると言えるでしょう。例えば、単純に50代の平均世帯年収は743万円ですが、仮にそのうちの半分の世帯の平均年収が1200万円だとすると、残りの世帯の平均年収は約486万円ということになってしまいます。
50代の月収・手取り・税金の例
年収が743万円の場合の手取り額は約588万円になります。つまり、約155万円程が社会保険や税金によって差し引かれる計算になります。内訳は健康保険が約34万円、厚生年金が約68万円、雇用保険が約6.5万円となっており、税金面では所得税が約27.8万円、住民税が約19.3万円となっています。
共働き世帯の場合
50代の平均世帯年収は最も高いとされていますが、その分に子供の教育費に費やすお金なども増え、50代の世帯の約24%が共働きをしています。50代で共働きをしている世帯の平均年収は約713万円とされています。年収713万円の税金などを支払ったあとの手取り年収は凡そ530万円です。
このケースでもやはり、全体の12.6%いる平均世帯年収が1000万円の世帯により、共働きとそうでない場合の平均年収がほぼ同じ額になっています。
世帯年収の平均【60代】
現在の日本の人口は約1億2600万人ですが、そのうち「高齢者」のカテゴリーに入る65歳以上の人口は実に3,515万人います」。つまり現在の日本は3.5人に1人が65歳以上であることが分かります。年齢が60歳以上の女性の生涯未婚率は5.7%、男性に関しては11.4%ですが高齢者の場合、病気や事故でパートナーを無くしている方々も少なくないでしょう。
60代の世帯年収の平均
年齢が60代になってくると、世帯年収の平均は下降トレンドに入っていきます。一般的に定年退職は65歳なので、それまではまだまだ働く人が殆だと言えるでしょう。また、人によって条件は様々ですが、一般的に65歳から年金の支給が始まり、当然年金の受給額も世帯年収の一つとして数えられます。
厚生年金を受け取っている高齢者の人数と年金の受給額平均額は、2018年の時点で、約1590万人の高齢者が老齢厚生年金を受給しており、老齢基礎年金を含む平均年金月額は約14.5万円となっています。
60代の月収・手取り・税金の例
60代の場合、60歳~64歳までと65歳~69歳までの年収に開きがあることが特徴だと言えます。60歳~64歳までの平均年収は395万円で、手取り年収は凡そ330万円程です。65歳~69歳までの平均年収は、年金の受給額も含めた上で約314万円とされており、税金や社会保険料の支払いも場合によっては免除されるケースもあります。
共働き世帯の場合
60歳でも、特に健康に問題がなく、働く事に意欲的で、且つそれまで長い間共働きをしていてそれが既に習慣になっている世帯は一定数います。その様な世帯は、一般的にそれまで勤めていた企業に嘱託社員や契約社員という形で、再雇用してもらい年収250万円~300万円を稼ぐことが出来ます。
会社に再雇用してもらい働く事によって、基礎年金・厚生年金の受給開始時期に選択肢が持てるというメリットがあります。例として、65歳までは基礎年金の月額約13万円を受給し、厚生年金の受給開始時期を71歳にすることにより、71歳から月額約40万円の厚生年金を受け取ることが可能になり、豊かな老後生活を送ることが出来ます。
世帯年収の平均【70代】
年齢が65歳以上の高齢者は、年齢が65~74歳をの高齢者を「前期高齢者」、そして年齢が75歳以上の高齢者を「後期高齢者」と区分されています。特に「後期高齢者」は、主に年金を頼りに生活しているように捉われがちですが、現在日本に於ける総労働人口は約6700万人でそのうち、70歳以上でも労働者として336万人が働いています。
また、65歳以上の、「前期高齢者」を合わせると約786万人が65歳以上の高齢者になっても働く事を余儀なくされています。この数字は、現在の日本の少子高齢化の流れを止めない限り、今後も増加していくことが予想されます。
70代以上の世帯年収の平均
70代以上の世帯年収の平均は297.3万円と全体平均の約55%程しかなく、かなり経済的に苦労している世帯が多いとされています。また70歳以上の世帯の世帯構造を詳しく分析してみると、夫婦のみの世帯が全体の約47.3%を占めており、その次が、女性一人の単身世帯が32.7%、そして男性一人の単身世帯が15.8%という世帯構造になっています。
女性一人の単身世帯が男性一人の単身世帯の約2倍になっているのは、70代後半になってくると配偶者に先立たれてしまうケースが多いことが理由です。その為、配偶者に先立たれてしまうケースの多い女性は、70代後半から女性一人の単身世帯になったり、場合によっては子供と同居するなど、生活環境が変化する可能性が高いと言えるでしょう。
70代以上の月収・手取り・税金の例
70代以上の世代の月収・手取り・税金の支払いに関しては、ほぼ年金により賄われているため、70代以上の世代が税金を支払うケースは殆どないと言えるでしょう。寧ろ医療費や交通費、または介護費などが税金によって優遇されているケースもある為、どちらかというと税金によって様々な恩恵を受けることにより、生活が成り立っていると言えるでしょう。
世帯年収の平均と貯金の関係
次に、世帯年収の平均と貯金の関係について説明します。2019年6月3日に金融庁が発言した「老後に年金収入以外に2000万円の貯金が必要である。」といった趣旨の発言が話題になっていますが、実際のところどうなのでしょうか。現実問題として「老後までに2000万円の貯金を確保する事」は非常に困難だと言えます。
2016年に厚生労働省が発表した、全世帯の平均貯金額は約1031万円とされていますが、ここでも母子家庭や、高齢者世帯は極端に平均額より少ないという「格差」が生じています仮に20代から40年間働き続けて、老後までに2000万円の貯金をするには毎年50万円貯金すれば可能な計算になります。ここでは各世代の貯金の特徴をまとめました。
20代の貯金の特徴
20代の世帯の平均貯金額は154.8万円で、共働きの場合は約307万円とされています。先述の通り、20代で結婚する若者は現代では僅か2割程度ですがが、結婚して共働きをすることにより、平均金額が独身のケースの約2倍になっていることが分かります。これは、結婚することにより将来に対する意識が高まり、それが貯金額に反映されていると考えられます。
30代の貯金の特徴
30代の世帯の平均貯金額は403.6万円で、共働きのケースでは約397万円とされています。ここで注目するべき点は共働きの場合の平均貯金額とそうでない場合の平均貯金額では、共働きの方が貯金額が下回っているという事だと言えるでしょう。これには様々な理由が考えられます。
そもそも、世帯主のみの収入では十分な生活が送れないという理由から、共働きという選択肢を取る女性が多いケースが殆どだと考えられますが、逆にそこが盲点になっているケースがあるのです。考えられる主な理由は2つあります。
先ず、夫婦共働きのケースでは、「お互いに働いていて収入がある」という安心感が双方に生じます。その為、「相手がキチンと貯金してくれているから大丈夫だろう。」といった考え方や、「自分で稼いで得たお金なので多少の贅沢をしても大丈夫だろう。」考え方から、貯金に対する意識が薄れてしまうという理由が考えられます。
もう1つの理由として、夫婦で共働きをしていると、夫婦お互いにに忙しい生活になりがちで、節約の為に家で自炊して食事をするケースが減ってしまいます。その為、双方の交際費・外食費での出費が増え、その結果貯金が出来ないという理由が考えられます。これらの問題を解決するには、一度夫婦で貯金に関する考えを見直す必要があります。
40代の貯金の特徴
40代の世帯の平均貯金額は652万円で、共働きの場合は約436万円とされています。40代になると、共働きの場合とそうでない場合の平均貯金額に約200万円程の違いが生じています。40代で共働きをせざるを得ない世帯では、殆どの場合世帯主の年収が全体の平均を下回り、その結果共働きをせざるを得ないという理由がメインだと考えられます。
40代の世帯は、子供の教育費や住宅ローンの支払などにより、20代・30代と比べ、「将来に向けての出費」が多くなる年齢層だと言えます。また、この辺りの年齢層から「老後の生活」について考えるようになり、その結果として共働きをせざるを得ない世帯が多くなっていると言えるでしょう。
50代の貯金の特徴
50代の世帯の平均貯金額は1049.6万円で、共働きの場合は約388万円とされています。50代になると、共働きの場合の平均貯金額とそうでない場合の平均貯金額の差は実に約660万円にも上ります。これは格差社会の典型的な例だと言えます。若い頃に新卒で企業に就職し、地道に努力して働いていると50代で年収はピークを迎えるケースが多いと言えます。
一方で、30代・40代の頃に不況の影響でリストラにあったり、起業して失敗したりすると、上記の様な会社員のケースと比べ平均年収にかなりの差が出てくると言えるでしょう。実際に50代の世帯で、生活していくのがやっとで、貯金が全くないという世帯も決して珍しくありません。
60代の貯金の特徴
60代の世帯の平均貯金額は1337.6万円です。この年齢層から全体の世帯の平均貯金額を上回ることになります。この平均貯金額の1337.6万円という金額も、現在の格差社会の象徴とも言えます。同時に、若い頃からのライフスタイルや貯金についての考え方によっても貯金額に大きな差が出てくると言えるでしょう。
至極当然のことですが、例え比較的高額な給料を貰っていても、生活スタイルが派手浪費が多いと、お金は減る一方で、貯金することは出来ません。一方で、そこまで高額な給料を貰っていても、常に「質素倹約」を意識し、無駄な出費を避けることで自然と残ったお金を貯金に回すことが出来ます。
これは口で言うのは簡単ですが、いざ実行しようとすると意外に難しいことだと言えるでしょう。また、60代の世帯の平均貯金額は1337.6万円であることから、60代の世帯は「老後の生活に対しての意識」が高い世代が多いと考えられます。
70代以上の貯金の特徴
年齢が70歳以上の貯金額で最も割合が高いのは、17.6%を占める「4000万円以上」というデータがあります。一方で、15.8%と次に割合の高いのが貯金額「200万円以下」の高齢者世帯です。因みに、70代以上の世帯の貯金の中央値は、全体の平均世帯年収を大きく上回る1639万円とされています。
ここでも各世帯の若い時期の生活スタイルと働く環境によって、貯金額が大きく変わることが貯金額の差に大きな変化をもたらしていると言えるでしょう。
世帯年収は働き方と役職により変化する
今回は、年齢層や、状況別に関しての平均世帯年収と、20代~70代以上の世帯年収の平均貯金額について説明しました。総務省のデータによると、70代以上の貯金が2000万円以上の世帯は約42%あるとされています。彼らは、50年前の日本がまだ貧しかった頃に働きだした高齢者が殆どで、当時の「質素倹約」の感覚が今でも残っているのでしょうか。
最近では高齢者の人口増加に伴い、高齢者のことを「老害」などと表現する若者もいます。しかし、戦後全てを失った日本で、様々な苦難を乗り越え、努力と苦労によって現在のレベルまでに回復させ、世界第3位の経済大国としての基盤を作ったのは彼等です。
そのような偉大な先人達には、最大限の敬意を払うことが、正に現代の高齢者に対する正しい接し方だと言えるでしょう。