「賜る」の意味
ビジネス文書などの中で時々「賜る」「賜ります」という言葉を見かけることがありますが、「賜る」の意味がわからないという人も少なくありません。日常生活の中で「賜る」という言葉を使うことはあまりないため、「賜る」の意味がわからないという人が少なくなくても仕方がないと言えます。
ですが、ビジネスシーンなどにおいて意外に「賜る」という言葉を使うことも多いので、「賜る」という言葉の意味や使い方などを知っておくと、色々な場面で役に立つことも多いでしょう。
「賜る」という言葉にはどういう意味があるのか、まずは「賜る」の意味についてご紹介していきましょう。
意味①「もらう」の謙譲語
「賜る」の意味の一つ目は、「もらう」の謙譲語という意味です。謙譲語は敬語表現の中でも最上級の敬語表現ですので、「もらう」という普段良く使われる言葉であっても謙譲語にすると、特別な場面で使われる言葉になります。「賜る」の意味は簡単に言えば「もらう」ですが、ある特別な場面でしか使わない言葉だということになります。
「賜る」という言葉をビジネスシーンなどにおいて時々見かけることがありますが、いつもいつも使われているというわけではありません。「賜る」という言葉は得意先への季節のご挨拶や、偉い人から何かもらった時などに使われます。
「賜る」の意味の一つ目は「もらう」の謙譲語で、日常的に使われるものでありながらもその対象は特別であるということだということを押さえておきましょう。
意味②「下賜する」の尊敬語
「賜る」の意味の二つ目は、「下賜(かし)する」の尊敬語という意味です。「下賜する」という言葉は、天皇陛下などのとても身分の高い人が身分の低い相手に対して何かを下さる場合に使われる言葉で、「下さる」「給う(たまう)」という意味を持ちます。この「下賜する」の尊敬語も「賜る」の意味の一つになります。
「下賜する」という言葉自体、日常生活の中で使われることはまずありませんので、「下賜する」という言葉に戸惑う人もいるでしょう。そういう場合には「下賜する」の尊敬語という意味ではなく、「下さる」という意味の方で覚えておくと良いでしょう。
勤めている会社の社長などが自分に対して何かをくれるといった場合に「下さる」という意味で「賜る」を使うことができます。「賜る」は「下さる」と覚えても良いでしょう。
「賜る」の読み方と送り仮名
「賜る」の意味について先にご紹介しましたが、「賜る」の意味以前に「賜る」の読み方がわからないという人もいるでしょう。「賜る」の意味「下賜する」の読み方は「かしする」ですが、「賜る」の読み方は「しる」ではありません。「下賜する」は音読みなので訓読みである「賜る」とは読み方が違います。
ですが「賜る」の読み方を知れば「この読み方なら聞いたことがある」という人はかなり多いでしょう。それでは「賜る」という言葉の読み方とはどんな読み方なのか、「賜る」の読み方についてご紹介しましょう。
賜るは「たまわる」と読む
「賜る」の読み方は「たまわる」です。「賜る」と漢字で書かれたものの読み方がわからなかった人でも、「たまわる」という読み方を知れば、「ビジネス文書で見たことがある」などと思い当たるでしょう。「賜る」は日常生活の中ではあまり使われませんが、ビジネス文書などでは結構使われることが多い言葉の一つです。
季節の挨拶や会社の移転の挨拶のビジネス文書などにおいて「平素は格別のお引き立てを賜りまして誠にありがとうございます」などという文章を目にすることは意外に多く、事務職や営業職をしている人ならかなりの頻度で目にしている人が多いでしょう。
このように「賜る」という言葉は取引先からのビジネス文書などにおいても意外に使われていますので、「賜る」の読み方は「たまわる」だと是非覚えておきましょう。
送り仮名の注意
「賜る」の読み方は「たまわる」ですが、「たまわる」と入力すると「賜わる」と変換される場合もあります。実は「たまわる」を漢字変換すると「賜る」と「賜わる」の両方が変換候補として上がってきます。「賜る」と「賜わる」のどちらが正しいかというと「賜る」の方が正式で、「賜る」の送り仮名は「る」になります。
「賜わる」のように「わる」という送り仮名でも間違いではないですが、正式には「賜る」の送り仮名は「る」だけですので、この点も覚えておくと良いでしょう。
「賜る」の敬語としての使い方・例文
「賜る」の意味と読み方についてご紹介しましたので、次は「賜る」の敬語としての使い方と例文についてご紹介します。「賜る」の意味は「もらう」の謙譲語と「下賜する」の尊敬語だとご紹介しましたので、「賜る」は敬語だということを理解できたでしょう。ですが「賜る」の敬語としての使い方は、ちょっと難しいです。
「賜る」の意味の一つ「下賜する」の尊敬語という意味がわかりにくいという人には、「賜る」の敬語としての使い方はとてもわかりにくいでしょう。少しでも分かりやすくなるように、「賜る」の敬語としての使い方と例文についてご紹介しましょう。
謙譲語としての使い方
「賜る」の敬語としての使い方と例文の一つ目は、謙譲語としての使い方と例文です。「賜る」を謙譲語として使う使い方は、目上の人から何かを頂くといったシチュエーションでの使い方です。目上の相手と言っても色々いますが、「賜る」は天皇陛下のように極めて目上の人にしか使えないというわけではありません。
どのような相手に対して「賜る」を敬語として使うことができるのか、「賜る」の謙譲語としての使い方の例文をご紹介します。
謙譲語としての例文
「賜る」の謙譲語としての使い方の例文としてまず、「御来賓の皆様方からのお言葉を賜りたく存じます」という例文が挙げられます。会社のパーティなどの催し物に取引先の人達が集まってくれた時、そういう人達のことを「御来賓」と言いますが、その人達に対してスピーチをお願いする時にはこのような例文が使えます。
また、「社長から勤続40年の記念品を賜りました」という例文も挙げられます。このように「賜る」は取引先の人や自社の社長などに対しても敬語として使えるということです。
尊敬語としての使い方
「賜る」の敬語としての使い方と例文の二つ目は、尊敬語としての使い方と例文です。「賜る」を尊敬語として使うシチュエーションは、目上の人が何かをしてくれる場合や何かをくれる場合です。「賜る」を謙譲語として使うのは、自分が目上の人から何かをもらう場合でしたので、「賜る」を尊敬語として使うのは逆になります。
また、「賜る」を尊敬語として使うのも「賜る」を謙譲語として使うのと同じように、それほど目上ではない相手に対して使うことができます。それでは、「賜る」の尊敬語としての使い方の例文をご紹介しましょう。
尊敬語としての例文
「賜る」の尊敬語としての使い方の例文として、「昨年は格別のお引き立てを賜りまして、誠にありがとうございます」という例文が挙げられます。この例文は取引先相手の年賀状などに使われることの多い例文で、「賜る」を尊敬語として使っています。この場合、相手が自分に何かをくれるという意味で使われています。
他に「今後共変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます」という例文も挙げられます。こちらもビジネス文書などで良く使われる例文で、「賜る」を尊敬語として使っています。
「賜る」の類語
次に「賜る」の類語についてご紹介します。「賜る」の意味は「もらう」の謙譲語という意味と、「下賜する」の尊敬語という意味ですので、「賜る」の類語にはどのような言葉があるのか想像がつくという人も少なくないでしょう。「賜る」の類語にはどのような類語があるのか、「賜る」の類語についてご紹介しましょう。
いただくの意味と使い方
「賜る」の類語の一つ目は、「いただく」です。「いただく」の意味には「もらう」の謙譲語の意味もありますので、「いただく」は「賜る」の類語の一つであると言えます。「いただく」には他に「目上の人をお迎えする」「頂戴する」「頭に載せる」などといった意味がありますが、他の意味で使われることも多いです。
「賜る」の類語「いただく」はどのように使われるのか、「いただく」の例文をご紹介しましょう。
いただくの例文
「賜る」の類語「いただく」の例文としてまず、ご飯を食べるという時に「お食事をいただく」という例文が挙げられます。また、物をもらう時にも「記念品をいただいた」などと言いますし、飲み物を飲む場合にも「お神酒をいただいた」というような言い方をします。「賜る」の類語「いただく」は色々な使い方ができる言葉だと言えます。
拝受するの意味と使い方
「賜る」の類語の二つ目は、「拝受する」です。「拝受する」の意味は「受ける」「受け取る」の謙譲語の意味ですが、日常生活の中で使われることはほとんどありません。「拝受する」はビジネスシーンなどでは結構使われる機会が多いですが、家庭の中で使ったりすることはなく、あまり馴染みのない言葉です。
「賜る」の類語「拝受する」という言葉はどのように使われるのか、「拝受する」の使い方の例文をご紹介します。
拝受するの例文
「賜る」の類語「拝受する」の例文としてまず、ビジネスメールで「ご査収ください」という文章が来た時の返事として「拝受いたしました」と返事をするという例文が挙げられます。他にもビジネスメールで「書類を発送いたしました」という文章が来た時の返事として「拝受いたします」と返事をするという例文も挙げられます。
このように「拝受する」という言葉はビジネスメールなどにおいて結構日常的に使えますので、メールの返事などで使ってみましょう。
授かるの意味と使い方
「賜る」の類語の三つ目は「授かる」です。「授かる」の意味は、大切なものを目上の人などから与えられるという意味で、「目上の人」の対象には神様や仏様も含まれています。「授かる」という言葉は意外に多くの場面で使われていますので、使ったことがあるという人も少なくないでしょう。
それでは「賜る」の類語「授かる」という言葉はどのように使われるのか、「授かる」の使い方の例文をご紹介します。
授かるの例文
「賜る」の類語「授かる」の例文としてまず、「このたび新たな命を授かりました」という例文が挙げられます。「授かる」は神様から何かを与えられるといった場合にも使われますので、赤ちゃんができた時に挨拶状などに使われることが多いです。他に「勲章を授かりました」などというように、名誉なことに対しても使われます。
頂戴するの意味と使い方
「賜る」の類語の四つ目は、「頂戴する」です。「頂戴する」の意味は「もらう」の謙譲語ですので、「頂戴する」は「賜る」と同じ意味を持つ類語になります。「頂戴する」は「もらう」をへりくだって言う言い方で、日常生活の中でも意外に多く使われていますので、目にしたことや耳にしたことがあるという人も多いでしょう。
「賜る」の類語「頂戴する」はどのように使われるのか、「頂戴する」の使い方の例文をご紹介しましょう。
頂戴するの例文
「賜る」の類語「頂戴する」の例文として、「先日は結構なお品を頂戴いたしまして誠にありがとうございました」という例文が挙げられます。「頂戴する」という言葉は、お中元やお歳暮などへのお礼状に使われることが多いです。また「折角のお申し出ですが、お気持ちだけ頂戴いたします」などという使い方もでき、なじみ深い言い回しだと言えます。
承るの意味と使い方
「賜る」の類語の五つ目は、「承る(うけたまわる)」です。「承る」の意味は「聞く」や「引き受ける」などを表す時に使われる丁寧な敬語表現で、ビジネスシーンの他にも色々なシーンで使われることがありますので、日本人にとってとてもなじみ深い敬語表現の一つだと言うことができます。
それでは「賜る」の類語「承る」はどのように使われるのか、「承る」の使い方の例文をご紹介しましょう。
承るの例文
「賜る」の類語「承る」の例文として、「ご用件を承ります」という例文が挙げられます。この例文は「ご用件をお聞きします」という意味になり、「聞く」をとても丁寧に言いかえた言い方になります。他に「ご注文を承りました」といった使い方もあります。こちらは「ご注文をお受けいたしました」という意味になり、良く使われる言い方です。
「賜る」の英語表現
次に「賜る」の英語表現についてもご紹介します。「賜る」の意味は「もらう」の謙譲語という意味と「下賜する」の尊敬語という意味がありますが、「賜る」の英語表現はどちらかと言えば「もらう」の謙譲語としての意味に近い意味を持つ表現になり、「賜る」に当たる英語表現はちゃんと存在しています。
「賜る」の英語表現とはどのような英語になるのか、「賜る」の英語表現についてご紹介しましょう。
場面で表現が変化する
「賜る」の英語表現にはいくつかありますが、「賜る」の英語表現は場面で表現が変化すると言えます。日本語で「平素は格別のお引き立てを賜り、ありがとうございます」と言う場合に使える「賜る」の英語表現と、「ぜひご参加賜りますようお願いいたします」と言う場合に使える「賜る」の英語表現は違います。
日本語において「賜る」ひとつで済む言い回しであっても、英語で表現する場合には違う言い回しを使うということになります。「賜る」の英語表現にはどのような言い方があるのか、「賜る」の英語表現についてご紹介しましょう。
Thank you for
「賜る」の英語表現の一つ目は、「Thank you for」という英語表現です。この「Thank you for」という英語表現は、「平素は格別のお引き立てを賜りまして誠にありがとうございます」などと言いたい場合に使える英語表現です。この場合「Thank you for」という英語にさらに「very much」をつけることで感謝の意を強めます。
「平素は格別のお引き立てを賜りまして誠にありがとうございます」を英語表現すると「Thank you vey much for your continuous support」となります。「Thank you for」を使うと「賜る」に当たるということです。
I'd like you to
「賜る」の英語表現の二つ目は、「I'd like you to」という英語表現です。「I'd like you to」という英語表現は「このイベントに是非ご参加賜りますようお願いいたします」といった「賜る」を表現する時に使われ、この文章を英語にすると「I'd like you to attend this event」になります。
先にご紹介した「Thank you for」という英語表現とは違い、「I'd like you to」という英語表現はどちらかと言えば「賜る」の意味「下賜する」の尊敬語という意味に近い意味の言い回しになります。
このように、「賜る」を英語表現する場合には場面によって表現が変化するため、場面による使い分けが必要になると言えます。
「賜る」と承るの違い
次に「賜る」と「承る」の違いについてご紹介します。「賜る」の意味はこれまでにもご紹介してきたように「もらう」の謙譲語という意味と「下賜する」の尊敬語という意味で、「承る」の意味は「賜る」の類語の所でご紹介したように「聞く」や「引き受ける」を表す時に使われる丁寧な敬語表現です。
「賜る(たまわる)」と「承る(うけたまわる)」は「たまわる」という読み方が共通しているため、混同してしまうという人も少なくありませんが、実は少し使いどころやニュアンスなどが異なっています。
「賜る」と「承る」にはどのような違いがあるのか、「賜る」と「承る」の違いについてご紹介しましょう。
賜るは目上の人に使う
「賜る」と「承る」の違いの一つ目として、「賜る」は目上の人に対して使うということが挙げられます。「承る」も丁寧な敬語表現ではありますが、必ずしも目上の人に対してしか使われないというわけではありません。例えば通販の注文を受けた時にも「承る」と言いますが、お客様が自分よりずっと年下であっても「承る」と言います。
ですが逆に「賜る」は目上の人に対してしか使われません。自分よりずっと社会的地位が高い人や、自分よりずっと年上の人など、目上の相手に対してしか使われないというのが「賜る」という言葉で、そこが「賜る」と「承る」の違いの一つになります。
他に、「賜る」は品物に対しても使うことができますが、「承る」は品物に対しては使うことができません。その点でも「賜る」と「承る」は大きく違うと言えます。
承るはビジネスシーンでも使える
「賜る」と「承る」の違いの二つ目は、「承る」はビジネスシーンでも使えるという点です。「賜る」という言葉もビジネスシーンで使うことができますが、それは季節のあいさつ状などであって、注文を聞いたり用件を聞いたりするといったビジネスシーンにおいて「承る」の代わりに「賜る」という言葉は使えません。
「承る」は「ご注文を承りました」「ご用件を承りましょう」といったように、ビジネスにおいて様々なシチュエーションで使うことができますが、これらを「ご注文を賜りました」「ご用件を賜りましょう」と言い換えることはできません。
このような点でも「賜る」と「承る」は違いますので、ビジネスシーンなどにおいて「賜る」と「承る」を使う場合には注意が必要です。
「賜る」はもらう・与えるを意味する敬語
「賜る」の意味や類語、使い方の例文や「賜る」の英語表現などについて色々とご紹介してきましたが、如何だったでしょうか。「賜る」の意味は「もらう」の謙譲語という意味と「下賜する」の尊敬語の意味が戸ご紹介しましたが、簡単に言えば「もらう・与えるを意味する敬語」ということになります。
「賜る」の意味や、「賜る」と「承る」との違いをしっかりと理解して、使うべき場面で正しく使えるようにしましょう。