倣うの意味とは?
「倣う」とは「ならう」と読みます。意味は、「自分が見た相手や物を、みたままに真似をする」という意味です。そっくりそのまま、自分が見て感じたままに同じような行動をとって後に続く、というようなニュアンスで用いられる言葉です。
また、「倣う(ならう)」には、対象となる相手の行動を見習ってそれに準ずるという意味もあります。現状を変える、より向上させるために見本を見立て、そのまま真似することで改善点を見出すというような意味合いとなります。
ポジティブな意味である場合が多いですが、ネガティブな意味をもった慣用句もあります。例文にてまとめていますので最後までご覧ください。
倣うの対義語・類義語
言葉には意味があり、その意味からいろいろな事象が考えられるように、その意味にたいしての位置づけとして、他の言葉との意味の関係性を表すことがあります。そうした位置づけを「対義語」や「類語」として書き表します。
ここではそんな「倣う」という言葉の対義語関係にある言葉や、類語関係にある言葉をまとめて紹介しています。
倣うの対義語
「対義語(たいぎご)」とは、元になる言葉の関係性としては「対になる言葉」、「意味が反対になる言葉」「方向性が反対になる言葉」を総称して「対義語」と呼んでいます。まったくの正反対の位置づけではなく、方向性として反対方向の言葉と言えます。
ここでは、「倣う(ならう)」の対義語と、その意味、読み方や使い方をまとめて紹介しています。どのような言葉が定義されるのでしょうか。
「倣う(ならう)」の対義語「独創」の意味、使い方
「倣う(ならう)」の対義語の一つ「独創(どくそう)」です。意味は、”独自の新しい考え・思いつきで、ものごとをつくり出すこと。”と定義されています。「倣う」がだれかの真似を意味しているので、独自性という意味での対義語と言えます。
「倣う」がインプットであるのに対し、「独創」はアウトプットを意味する言葉としての対義語であるとも言えます。”彼は独創性に優れた男だ”、”あの人の作品は独創的で、イマジネーションをかきたてられる”といった使い方になります。
「倣う(ならう)」の対義語「孤高」の意味、使い方
「倣う(ならう)」の対義語の一つ「孤高(ここう)」です。意味は”孤独で超然としていること”、”ひとりかけはなれて、高い理想をもつこと”などと定義されている言葉です。
「倣う」が他の誰かの存在を強く意識させる言葉であるのに対し、「孤高」はたった一人で自分自身を高めるための生き様を表すような言葉だと言えます。
例文としては、”彼は群れない、孤高の存在だからだ。”、”孤高であり続けるというのは人本来のあり方に対しても、異端の存在だと言える”というような使い方となります。
倣うの類語
「類義語(るいぎご)・類義(るいご)」とは、元になる言葉との関係性上で、「まったく同じ意味を持つ言葉」、「極めて近しい意味を持つ言葉」「表現として似た意味を持つ言葉」が類語として定義されています。
ここでは「倣う(ならう)」の類語とその意味、読み方や使い方をご紹介します。例文なども交えて、「倣う(ならう)」との意味の違いや使い方の違いについても言及しています。
「倣う(ならう)」の類語「追随」の意味、使い方、違い
「倣う(ならう)」の類語の一つ、「追随(ついずい)」は”前を行く者に従って後を追うこと”や”つき従ってそれをまねること”といった意味をもつ言葉です。前者がおりその後に続くような行動をとるという意味を持った言葉です。
「倣う(ならう)」との違いは、純粋に後を追いかけることを意味する「追随」に比べて、「倣う(ならう)」は真似をしたり、繰り返し行動することという違いがあります。
複数の行動パターンを追いかけるように繰り返し続けることや、その行動規範をなぞるという違いがあるのです。
「倣う(ならう)」の類語「従う」の意味、使い方、違い
「倣う(ならう)」の類語の一つ、「従う(したがう)」です。意味として、”逆らわず、かけ離れないように行う。”もしくは、”後ろについて行く。「先達に―」。沿って進む。”といった定義がなされています。
「倣う」との違いは、「従う」という言葉があくまでも行動にのみ焦点を当てられた言葉であるのに対し、「倣う」は考え方や在りようにも言及されることのある言葉である点です。
倣うの使い方・例文
ここまででおおまかな「倣う(ならう)」という言葉の意味を把握してきました。続いてはその具体的な使い方について、4つの例文を用いて説明していきます。基本的な使い方に加えて古来の言い回しや近年の言い回しなどの違いを把握しましょう。
例文①
「まずは君は、これまでのあり方を見直して、少なくともXX君のような営業企画をきっちりとした行動をとるように心がけたまえ。これからも私たちに倣ってしっかりとした成績が出せるように頑張りたまえ」
営業成績が芳しくない人が、上司からお叱りの言葉を受ける時に「倣え」という言葉を用いてお説教を受けた場合の例文です。年配の方ほどこのような言い回しを好む傾向があります。
例文②
「あなた達はいつもそうだ!組織の命令に従順なのはいいことだが、そうした決まりやルールを盾に、何でもかんでも右へ倣えだ!我々利用者をバカにしているとしか思えん。一人一人の事情にあった最適な対応というものがあるだろう」
ネガティブな言葉として使われる「右へ倣え」という慣用句を用いた例文です。比較的耳馴染みの良い言葉の一つですか、意味としてはとても厳しい言葉となります。非を追求するような場面に使われます。
例文③
「私たちはこれまで、決められたことを淡々と繰り返すことが当たり前であると考えてきました。そうした顰(ひそ)みに倣うだけの仕事では、本来の役職としての意味をなさないのではないかと考えるようになったのです」
「顰み(顰)に倣う」とは、”特に何も考えずに決められた行動だけを繰り返す”、もしくは”自分の功績を他人の行動に倣ったからである、と謙遜する様子”を表した言葉です。
この場合は、自らの業務態度が通り一辺倒で決められた事しかやっていないような、とてもネガティブな意味合いで使われた例文です。
例文④
「私たちが今回商品として提供させていただいているものは、これまで日本国を支えてきた古き良き時代の伝統に倣い生み出された技術です。これからの新しい国際社会を切り拓いていくための試金石として活躍してくれることでしょう」
この例文では、伝統と言う歴史を引き継ぐような意味合いで文章が成り立っています。例文のようにただ真似するという意味だけではない使い方もあります。
倣うと習うの違い
「倣う(ならう)」と同じ読みの言葉に、「習う(ならう)」という言葉があります。しかしこの二つはまったく同じ読みであるにも関わらず少々別の意味をもっている言葉であることが、日本語のすこしややこしい所でしょう。
文章であれば漢字の違いでわかりますが、言葉として言われた場合には前後の文脈から判断するしかありません。では、具体的な意味の違いはどのようなものなのでしょうか。
習うは勉強するという意味
「習う(ならう)」の意味には、”何度も繰り返しやり、技術や知識を覚えたり、身につけよる努力をする。”もしくは、”おそわる”、”教えを受ける”といった意味が定義されています。
つまり、倣うで考えられている「模倣する」こととは根本的な行動姿勢が違ってくるのです。文字通り真似するのではなく、バックボーンも含めて学習することが「習う」なので、前後の文脈には十分に注意したい所です。
倣うを使う際の注意点
前項でも触れましたが、言葉として発する場合は極めて分かりにくくなる言葉として「習う」があります。「習う」ではなく「倣う」として認識してもらうためには、一般的な言い回しを中心にすることで誤解を防げます。
文章以外では使えない
どうしても「倣う」という意味合いの言葉を会話中で使いたいのであれば、無用な誤解を避けるためにも、前述した類語で代用するほうが安全といえます。「規範としよう」や「手本として」などの言い回しが言い換える言葉として良いでしょう。
倣うは見たままに真似をするという意味
「倣う(ならう)」とは、「元となる何かにたいして真似をする、手本として参考にする」といった好印象な意味で使われることもあれば、「慣習的で怠惰な行動、考えもせず機械的な行動」といった悪印象の意味として使われることもあります。
その場その場の使い方次第で全く別の意味に捉えられかねないので、慣用句の使い方も含めてどのような意味で使いたいのかを考えた上で、文脈に沿った使い方を心がけましょう。