「この度」の意味とは?
「この度」は「このたび」と読み、「この度提案した〜」のように「この度」単独で次の言葉につなげる場合と、「この度の〜」や「この度は〜」のように「の」や「は」などの助詞をつけた使い方がありますが、どちらも「今回」「今度」という意味です。
「この度」に助詞をつけた「この度の」や「この度は」という表現は「今回・今度」の意味を丁寧にした言い方で、話を進める際の前置きとして使うことが多く、現在進行中の出来事や自体・状況を表現する意味があります。
それでは「この度」の正しい意味や使い方と特徴、類語の意味と使い方の違い、英語表現なども例文と合わせて詳しく紹介していきます。
「この度」の特徴
「この度」という言葉は、日常会話ではあまり使われませんが、手紙やメールなどの文章ではよく使われるのが特徴ですが、ビジネスの商談や会議・スピーチなどフォーマルな場面でもよく使われます。
それは「この度」という言葉は、少しかしこまった意味合いがあり、日常会話では堅苦しくなるので敬遠されがちですが、ビジネス会話では手紙やメールと同じように少しあらたまったフォーマルシーンが多いのでむしろ表現としては向いているのです。
また「この度」という言葉は、「今回」や「今度」を丁寧にした敬語的な表現なので、目上の人や取引先や上司に使っても失礼になりません。そのためにビジネスでは便利な言葉としてよく使われるのが特徴です。
「この度」の類語
類語とは似た意味を持ち、同じような使い方をする言葉のことです。「この度」は「今回」「今度」という意味なので、その類語は非常にたくさんあります。
「この度」の類語は意味は似ていますが、それぞれの意味や使い方は微妙に違っています。類語を並べて比較検討することで「この度」の意味をさらに深く掘り下げることができます。
例えば違いがわかりずらい似たものを調べる場合には、2つを並べて見比べます。見比べることによってお互いの特徴や違いがよくわかります。類語の意味を調べることも同じ効果があります。
また食べ物や飲み物の味を見極めるのに、試飲会などで飲み比べをすることで味の違いや特徴がよくわかります。つまり類語の意味を調べることは、飲み比べや食べ比べをするのと一緒です。それでは「この度」の類語の意味や使い方を紹介します。
「今回」の意味
「今回」とは、現在から最も近くに起きたこと、または起きることを意味しているので「この度」とほぼ同じ意味で類語になっています。
しかし「今回は部長も参加して下さることになりました」の例文のように、「今回」は未来に起きる意味でも使いますが、「この度」は現在または、過去に起きたことで最も現在に近いことに対して使います。
また「今回」には丁寧な敬語的な意味合いがないのが「この度」とは違います。目上の人やかしこまった場面ではあまりふさわしくないので「この度」を使う方が無難です。
「今度」の意味
「今度」という類語は、「最近・この頃」「最も近い将来」という意味があり、現在と未来を表す言葉です。例えば「また今度一緒に食事をしましょう」のように、具体的な日時ではなく近い将来に食事をしましょうという意味で使います。
「今度はセミナーでお会いしましょう」「今度は海で会いましょう」のように、今日は街で偶然会ったけれど「次回は〜で」という意味でよく使われます。
このように「この度」と意味は似ていますが、使い方や使う対象が「現在〜未来に起きること」という点が違います。また「今度」は非常にフランクな表現なので改まった場面やビジネスではあまり使いません。
「今般」の意味
「今般(こんぱん)」という類語は「今度」とは逆に少々硬い表現で、厳格な意味合いを持っているのでかしこまった場面で使われる言葉です。「今般」は「最近行われたこと」や「現在に最も近い過去の事柄」という意味を持っています。
「今般結果を出せなかったのは、私の管理不行き届きに起因しております」の例文のように最近起きたことに対して使う言葉で、現在の状況よりも過去に重きがあるところが「この度」と微妙に違います。
また「今般」は硬い厳格な言葉なので、よほど改まって襟を正す状況や、反省や弁明する意味で使う表現です。使用頻度が少ないところも「この度」とは違います。
「昨今」の意味
「昨今(さっこん)」という類語は、文字面通りに解釈すれば「昨日・今日」という意味で、「この度」の「今回・今度」と意味はよく似ています。
しかし使い方を見ると「昨今の若者は、スマホが必需品になっていて常に携帯しています」「昨今の異常気象は、地球温暖化が原因なのでしょうか」の例文のように使う対象が「この度」とは違っています。
つまり「昨今」は社会や気象などで、今日この頃・最近起きている現象や状況が対象になりますが、「この度」は「この度の結果は〜」や「この度の会議は〜」のように、どちらかというと人が絡む人為的な状況に対して使われるところが違います。
このように意味が似ているといっても、使い方や使う対象が違う場合が多々あります。その違いを見つけることが「この度」の意味を理解する上で助けになるので留意するようにしましょう。
「このところ」の意味
「このところ」という類語は、「近頃・現在のところ」という意味で「この度」とよく似ています。しかし使い方では「このところ風邪をこじらせて、会社を1週間ほど休みました」のようにカジュアルで気軽に使う表現です。
「このところ寝不足で」とか「このところ忙しくて」「このところゲームにはまって」「このところ食欲があって」のように日常的なことに多く使います。
このように「このところ」はビジネスやアカデミックな場面では意味が軽いのであまり使われません。つまり「このところ」は日常的に気軽に使えるところが「この度」とは違います。
「この度」のその他の類語・言い換え
「この度」は非常に使い勝手が広い言葉なので、類語も紹介したほかに「この節」「近年」「時下」「只今」などいろいろとあります。「この節」は「今回」と同じような使い方をし、「近年」は「昨今」と意味も使い方も非常によく似ています。
「只今」は「只今の時間は〜時です」「只今帰りました」「只今すぐにお持ちします」のように「目下、すぐに」という意味で、現在やごく近い未来を表します。
「時下」は手紙や文章で「時下益々ご健勝のこととお喜び申し上げます」のような使い方をする慣用句で「この度」と同じようなニュアンスを持っています。「本件につきましては」という表現も「この度」の言い換えとしてよく使われます。
このように「この度」の類語は色々とありますが、意味や使い方は微妙に違いますので、興味のある方は調べてみてください。類語の意味を調べることで「この度」の意味を深く解釈することに加え、新しい発見があるかも知れません。
「この度」と「先日」との違い
「この度」と「先日」のどちらも、昨日やおとといのように具体的な日時はしめさずに、近い過去の「この間」という意味を持っています。それでは、この2つの言葉にどのような違いがあるのでしょう。
「先日受け取ったばかりの原稿を、車内に置き忘れてしまいました」と「この度受け取ったばかりの原稿を、車内に置き忘れてしまいました」の例文では一見意味に違いはなさそうですが、何か微妙な違和感があります。
しかし「先日は、お忙しい中をお越しくださいましてありがとうございました」と「この度は、お忙しい中をお越しくださいましてありがとうございました」では明らかに違いが見られます。
それは、お礼の言葉「ありがとう」を言っているのは確かに現在なのですが、お礼の対象となる「相手が来てくれた時間」に対する観念に違いがあります。
「この度」の意味には、現在から過去までの時間を含んでいます。つまりお越しくださったのは現在の場合も過去の場合も両方の可能性があります。話し手の意思によって「この度」はどちらにも使い分けられます。
しかし「先日」という言葉の意味には現在という時間は存在しません。前述の例文の場合は、過去にお越しくださったことに対してお礼と感謝の意を表しています。つまり「先日」は過去の時間だけに使い、「この度」は過去と現在両方に使えるところが違います。
「この度」の英語表現
「この度」という言葉は日本語特有の表現です。英語ではこの意味に相当する単語に「now」や「this time」「on this occasion」がありますが、日本語の「この度」とはニュアンスが少し違います。そのために「この度」の意味を英語で正確には訳すことは厳密には難しくなります。
英語は象徴的であいまいな表現を嫌い、その意味をストレートに具体的に表現する言語です。つまり日本語の「この度」のように象徴的な意味合いを伝える英語がないのです。
「now」や「this time」「on this occasion」は確かに「今」「この時間」「機会」という意味ですが、厳密には「この度」とは微妙にニュアンスが違います。
「now」と「this time」を使った英語には「Now, what do you think about this program?(この度のプログラムをどう思う?)」「Thank you very much for your visit this time despite being busy.(この度はお忙しい中、お越しいただき誠にありがとうございます)」などの例文があります。
また「on this occasion」を使った場合には「Thank you for all your help on this occasion.(この度はお世話になりました)」などの例文があります。
どの例文でも「now」「this time」「on this occasion」を日本語では「この度」と訳していて、それらの単語が「この度」の意味を持つ単語のように見えます。
しかし直訳すると「Now, what do you think〜」は「〜を今どう思っている」で、「your visit this time 」は「あなたの忙しいこの時間に」であり、「help on this occasion」は「このタイミング(機会)の援助」という意味で、厳密には「この度」とは意味とニュアンスが違います。
それは英語と日本語の言語に使われる文字に大きく左右されています。日本語は平仮名・カタカナに漢字という数千文字で構成されています。それに比べ英語はたった26文字の記号のような文字で構成されています。この違いを想像してみてください。
英語はたった26文字のアルファベットで意味を表さなければならないのです。「この度」という日本語は見ただけで意味が想像できます。それは日本語が象形文字に由来しているからです。英語では「now」や「this time」だけでは意味が想像できません。
そのあとに続く言い回しやセンテンスで意味合いを理解していく言語なのです。つまり日本語はビジュアル的な言語、英語はアルファベットという記号の組み合わせで意味を表す言語です。根本的に表現方法に違いがあるのです。
言い換えれば日本語の「この度」は、様々な場面の英語単語の意味にも応用できる便利な言葉なのです。つまり日本語は象徴的なひとつの言葉で、様々なシチュエーションに応用できるのが日本語です。
逆を言えば英語は様々な単語や言い回しを使わなければ意味を表現できない不器用な言語とも言えます。つまり「この度」を英語表現するためには、場面に合わせていろいろの単語や言い回しを使う必要があるということです。
「この度」の使い方
「この度」は、今回や今度という意味がありますが、非常に使い勝手が良く様々な場面で使われる言葉です。様々な場面で使われので使い方も多岐にわたります。
ビジネス文書やメール、手紙などの挨拶文面、会議やプレゼン、商談などと色々なシーンで使われる便利な言葉です。また伝える内容も感謝やお礼、反省と謝罪、お祝いとお悔やみなど様々です。
「この度」の意味や使い方がわかっても実際に使えなければ意味がありません。使い方をマスターするためには例文を参照するのが、一番の近道です。例文に使われている「この度」の場面や目的を考えることで使い方がより明瞭になります。
それでは「この度」の使い方と例文を、使うシーンに合わせて紹介しますので、どのような場合にどのように使うのか、意味と使い方をマスターする参考にしてください。
例文①
お礼や感謝の気持ちを伝える場合の例文を紹介します。一口にお礼や感謝といっても、その対象やお礼の質・度合いはケースによって様々です。例文の中で読み取って見ましょう。
「この度は早速の回答ありがとうございます」「この度は提案書をお送り下さりありがとうございます。早速部内で検討させていただきます」「この度は求人募集にご応募いただき、誠にありがとうございます」などの例文は事務的なビジネス連絡で、お礼の質やニュアンスは儀礼的なお礼文です。
「この度はお忙しい中にもかかわらず、ご丁寧なご指示をありがとうございました」「この度は、まだ企画途中の未完成な案件にもかかわらず、真摯に取り組んでいただき誠にありがとうございます」などは儀礼的な中にも、お礼と感謝の意味が含まれている例文です。
「この度は、私のようなもののために送別会を開いていただき、感謝のしようがないほど恐縮しております」「この度、皆様から頂いた励ましの言葉とご厚意は、一生忘れることのない思い出になることでしょう」では、直接お礼の言葉は中に入っていませんが、感謝の気持ちがひしひしと伝わる例文です。
このように「ありがとうございます」や「感謝しております」という直接的なお礼の言葉をあえて入れなくても、お礼の気持ちは伝わるものです。逆に直接的なお礼の言葉を入れることで、前述のビジネス文書のように儀礼的になってしまうことがあります。
人が受け取る感情というのは不思議なもので、特に日本人の場合は、面と向かってお礼や感謝の意をまともに伝えられると、恥ずかしいという気持ちと同時に白々しく感じてしまうことがあります。
ビジネス文書では相手に失礼がないようにするために儀礼的なお礼の使い方が必要ですが、その他の場面では雰囲気やシーンによってお礼の言葉の使い方には注意しましょう。
例文②
ビジネスではお詫びや謝罪の意を伝える時に「この度」はよく使われる言葉です。「この度は私の失態により会社及び皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」「この度は私の技量の足りなさでプロジェクトに遅れを生じさせたことを深く反省しております」のように使います。
これらの例文は、ビジネスで自分のミスなどが原因で失態を招いた際の自社向けの謝罪です。ビジネスでは自社内だけでなく、他社など社外にもトラブルで迷惑をかける場合があります。
「この度は弊社工場の機械トラブルで、商品の納期が大幅に遅れてしまったことを深くお詫び申し上げます」「この度のトラブルの原因を、徹底的に究明をし再発防止に努める所存です」の例文は社外向けの謝罪文です。
このようにビジネスの謝罪文は、特に社外向けの場合は「この度」を使ってお詫びをするだけでなく、再発防止の意味と自社と取引先との信頼回復につなげる意味あるので重要です。
例文③
「この度」は結婚式や授賞式などの祝宴の席や、葬儀などの不祝儀の席でも挨拶のスピーチを述べる際の冒頭の言葉としてよく使われます。
「この度はご結婚おめでとうございます。新郎と同じ会社の同僚の高橋と申します。ご指名ですので一言挨拶をさせていただきます」や「この度は栄えあるベストドレッサー賞を受賞されましたこと、心よりご祝福申し上げます」のように使います。
また葬儀などでは「この度は突然の訃報を伺い、とりもなおさず馳せ参じた次第です。ご遺族の方の悲しみはいかほどと推察いたします」のようにお悔やみの言葉を述べるときに使います。
また「この度は誠にご愁傷様です。生前のご尊父様には大変お世話になりっぱなしで、今更ながらに悔やんでおります」のようにも使います。「この度」は、祝儀不祝儀どちらの場合にも使う言葉です。
例文④
「この度」という言葉は、この他にも様々な場所で使われます。「この度は、御社の企業理念に揺り動かされ入社試験に応募いたしました」のようにエントリーシートの応募動機や面接のスピーチで使います。
また「この度大阪市支社より赴任しました下田と申します。どうぞ宜しくお願い致します」「この度は一身上の都合で退職の運びとなりました。これまで皆様より頂いたサポートの数々には感謝しきれません」のように赴任や退職の挨拶にも使います。
また「この度、弊社創立60周年を記念して、下記の要領で記念式典を開催する運びとなりました」のように案内文に使うことがあります。この他にも、まだたくさんの使い方があるように非常に使い勝手が良く便利な言葉が「この度」です。
「この度」は「今回・今度」という意味
「この度」は「今回・今度」という意味で、様々な場面で使うことができ非常に使い勝手が良い便利な言葉です。ここまで「この度」の意味や特徴、類語の意味とその違い、使い方と例文などを紹介してきました。
「この度」の英語表現の中では、上手く英語に訳すことができない理由に日本語と英語の表現方法の違いがあることなども紹介しました。これらの記事を参考にして、使い勝手の良い「この度」をさらに上手に使いこなしてください。