昨今の意味とは?
「昨今」は「さっこん」と読み「以前・昔」から「今・現在」を表しています。「昨今」の意味は「近頃」「この頃」です。
現在までに到達する近い過去までの時間を意味しますので、「いつ」から「いつ」」までという明確な区切りはありません。「昨今」が意味する期間は漠然としていて曖昧です。
人によって時間の表現や捉え方は違います。「昨今」を使って物事を表現する際、受け止め方の多くは、数ヶ月から数年ですが、長い場合は数十年を意味することもあります。それも人それぞれ若干の違いがあるため、期間を断定したい場合は、具体的に伝える必要があります。
昨今の語源
「昨今」は、「以前・昔」を意味する「昨(作)」と「今・現在」を意味する「今(こん)」の組み合わせで成り立っています。先にも述べましたが、過ぎた日を意味する「昨」と昨日でも明日でもない「今」が意味する時間は曖昧です。
表現したい時間の長さは人によって捉え方が違いますが、文書やスピーチなどでよく用いられています。ビジネスシーンの会議などを除き、日常会話や対面で話すシーンで使うと、堅苦しい印象を与えるでしょう。
昨今の特徴
「昨今」が持つ意味は、日常会話でよく使う「最近」や「近年」「今日(こんにち)」と、ほぼ同じ意味です。大きく違うのは「昨今」が相手に与える印象です。
「昨今」の特徴の一つとして、堅苦しい印象を持たれやすいことが挙げられます。そのため、「昨今の調子はどうですか?」というような使い方はしません。「最近の調子はどうですか?」「この頃、調子はどうですか?」と伝えるのが通常でしょう。
普段は使うことがない「昨今」ですが、ビジネスシーンや文書ではよく使われています。その際、「昨今」が意味する時間の範囲がどのくらいなのかは聞き手、または読み手が推測します。これも「昨今」の特徴です。
例えば、会議で次のような発表を受けたとしましょう。「我が社における昨今の業績は右肩上がりです。これはシステムの入れ替えに伴い人材育成に力を入れたことによります。」この場合「昨今」が意味する時間の範囲は、今年度から本日です。
では、次の場合はどうでしょう。「昨今の世界情勢と今後の展望について、〇〇教授におうかがいしました」この場合、「昨今」が意味する時間の範囲は2年~3年といえます。世界情勢に変化が見られるのは数年単位だからです。
報道や文書などの多くが「昨今」の世界情勢について述べる際、指し示す時間の範囲は2年~3年となっています。では、「昨今」と同じような意味を持つ「最近」「近年」「今日(こんにち)」が意味する時間の範囲はどうでしょうか?
中長期的なテーマを扱う論文などでも「昨今」は多く使われていますが、近頃では「近年」を使うことも多くなってきています。「最近」「近年」「今日(こんにち)」と「昨今」の意味の違いと使い方を見てみましょう。
「最近」の意味と昨今との違い
「最近」は「最も」を意味する「最」と、「近頃」を意味する「近」の組み合わせで成り立っています。時間を表現する場合の意味は、現時点に近い過去や少し前から現在までのことです。距離を表現する場合は、最も近いことを意味します。
「最近」と「昨今」に意味の違いは特にありません。違いがあるのは、使い方です。「昨今」は堅苦しいイメージを与えることから、会話ではなくビジネスシーンや文書で用いられます。「最近」は文書やビジネスシーンだけでなく、日常会話でも頻繁に使われる言葉です。
例えば、「最近は高齢になっても新しいことにチャレンジする方が増えています」を、「昨今」に置き換えてみましょう。文書や報道などで、「昨今は高齢になっても新しいことにチャレンジする方が増えています」と伝えられても違和感を感じることはありません。
一方、日常会話で「昨今は高齢になっても新しいことにチャレンジする方が増えています」と言われると違和感を感じます。「昨今」と「最近」の大きな違いは、シーンに合わせて使い方を変える必要があるかどうかです。
「近年」の意味と昨今との違い
「近年」は「現時点に近い」を意味する「近」と、「12ヶ月で1単位となる時間のまとまり」を意味する「年」の組み合わせで成り立っています。「近年」が意味する時間は、最近の数年間です。「近頃」の意味も含みます。
「近年」と「昨今」の意味の違いは、時間の単位です。「昨今」も「近年」も曖昧な表現ではありますが、「近年」は「年単位」での出来事を表現する時にしか使えません。
例えば、「昨今、〇〇会社は大きなトラブルもなく順調に伸びている」の意味は、「ここのところ、〇〇会社は大きなトラブルもなく順調に伸びている」となります。ここでの「昨今」は「近頃」または「この頃」を表現しています。
では、「昨今」を「近年」に置き換えてみましょう。「近年、〇〇会社は大きなトラブルもなく順調に伸びている」となります。「近年」は年単位での表現になりますので、「ここ数年、〇〇会社は大きなトラブルもなく順調に伸びている」という意味になります。
「昨今」と「近年」を入れ替えてみると、意味する時間の幅が違うことがわかります。「昨今」と「近年」を同じように使うことができるのは、数年間を表現したい場合のみです。伝えたい内容が「年単位」かどうかで、使い分けが必要です。
「今日」の意味と昨今との違い
「今日」は「現時点」を意味する「今」と、「24時間で1単位となる時間のまとまり」を意味する「日」の組み合わせで成り立っています。使い方は「今日(こんにち)」または「今日(きょう)」の2通りです。
「今日(こんにち)」が意味する時間は、時代です。「今日(きょう)」の場合は、その日を意味します。基本となる日と同じ未来の日や曜日の日を示す意味も含みます。「昨今」と似ている使い方は、「今日(こんにち)」です。「今日(こんにち)」について見ていきましょう。
「今日」と「昨今」の意味の違いは、時間の範囲です。「昨今」よりも、「今日」のほうが広い時間幅を意味します。使い方を見てみましょう。
例えば、「今日の保育園事情は厳しいものがある」と表現すると、「今の時代の保育園事情は厳しいものがある」という意味になります。「昨今」が「近頃」または「この頃」を表現するのに対して、「今日」が意味するのは時代です。
では、「今日」を「昨今」に置き換えてみましょう。「昨今」に入れ替えると意味が「近頃の保育園事情は厳しいものがある」となり、ぐっと時間幅が狭くなるのがわかります。「昨今」よりも時間幅を広く表現したい場合は、「今日」を用いると良いでしょう。
昨今の類語
「昨今」と同じような使い方をする言葉を、先に少し述べました。ほぼ意味は変わりませんが、使うシーンや時間の単位の違いで、選択する言葉が変わります。その他の類語として、下記があげられます。
ちかごろを意味する「このところ」、現時点から近い過去を意味する「以前」、この前やちょっと前を意味する「この間」、少し前の頃を意味する「先ごろ」、ずっと前や以前を意味する「前々」などが目にすることの多い「昨今」の類語です。
また、「現下」「刻下」「当座」「当節」「当今」「今日日」もあります。これらの類語の意味と使い方を知れば、伝えたいシーンや内容によって使い分けが容易になります。今回は、「昨今」の類語として「このところ」と「この頃」見ていきましょう。
類語「このところ」の意味
「昨今」の類語、「このところ」は「最近」や「ちかごろ」を意味しています。期間は少し前から現時点を指しています。「昨今」と同様、「このところ」が意味する時間・期間は大雑把で曖昧です。
類語「このところ」を使った例文を見てみましょう。「このところの行政のやり方には大いに不満がある」「国際情勢はこのところ、かつてない程緊迫した状況が続いています」「このところ、SNSに依存しすぎている人を社内でもよく見かける」
上記の例文で使われている、類語「このところ」を「昨今」に置き換えてみましょう。「昨今の行政のやり方には大いに不満がある」「国際情勢は昨今、かつてない程緊迫した状況が続いています」「昨今、SNSに依存しすぎている人を社内でもよく見かける」
類語「このところ」の例文のように、伝えたい内容が示す時間が曖昧な場合、「このところ」を「昨今」に置き換えても、内容は伝わります。類語「このところ」が意味する「最近」に置き換えてもいいでしょう。
類語「このところ」は「昨今」と同様、時間や期間を正確に理解してもらうことが必要な場合には適していませんので、注意してください。その際は、年度や日時を指定して伝えるようにしましょう。
類語「この頃」の意味
「昨今」の類語、「この頃」は「少し前から現時点まで」を意味しています。「昨今」も類語である「この頃」も表現する期間は曖昧ですが、類語「この頃」で表現できる期間は「昨今」よりも短期間です。
類語「この頃」を使った例文を見てみましょう。「この頃、疲れているせいか物覚えが悪くなったように感じる」「この頃、息子の好き嫌いがひどくなった」「この頃、ペットを我が子のように育てる人が増えてきた」
「昨今」と類語の「この頃」は同じような意味を持ちますが、表現している時間の単位に違いがあるため、言い換えることはできません。また、「昨今」は堅苦しいイメージを与えるため、「この頃」と違い、日常会話にも不向きです。
「この頃」を他の類語で言い換える場合は、「最近」が適しています。「最近、疲れているせいか物覚えが悪くなったように感じる」「最近、息子の好き嫌いがひどくなった」「最近、ペットを我が子のように育てる人が増えてきた」
「この頃」もまた他の類語と同様、時間や期間を正確に理解してもらうことが必要な場合には適していません。年度や日時を指定して伝えるようにしましょう。
昨今の使い方
「昨今」が意味する時間の範囲は、数年前から現時点まで、または昨日ぐらいまでと大雑把です。幅広い期間を表現したい場合に用いるのが、適した使い方です。時期や日時を断定する場合には使えません。
例えば、「最近、頭痛がひどい」を伝えるところを、「昨今、頭痛がひどい」とは言いません。診察時であれば、「3日前から頭痛がひどい」など具体的に伝える内容です。「昨今」を使うべきではありません。
また、「昨今」の使い方として、日常会話では使わないという特徴があります。ビジネスシーンや書き言葉として使う言葉として、覚えておきましょう。
例文①
「昨今」は、専門家が意見を述べたり文書で伝えたりする場面でよく使われます。テレビ番組であればニュースやインタビュー、コラムなどでよく耳にする言葉です。
例文で使い方を見てみましょう。「昨今の不安定な国際情勢について述べる」「昨今の問題として、失業率があげられる」「昨今のファッション業界における在庫問題を語る」
このように、「昨今の世界情勢は〜」「昨今の失業率は〜」など、ここ数年に変化していることに対して、「昨今」を使います。昨日や今日という短い期間で起こっていることに対して、「昨今」は使いません。
例文②
「昨今」は、ここ数年で発達した技術などを伝える際にも使われます。主に、技術の発達や研究の成果により見られる変化などです。この使い方の場合、「昨今」を「ここ数年」で置き換えても意味が通じます。
例文で使い方を見てみましょう。「スマートフォンの発達により、昨今はガラケーを使う人が少なくなった」「昨今の研究により、AI技術の発展が顧客との距離を縮めることに貢献していることが判明した」
「昨今」を「ここ数年」で置き換えてみましょう。「スマートフォンの発達により、ここ数年はガラケーを使う人が少なくなった」のようになります。
もう一つの例文も同様です。「ここ数年の研究により、AI技術の発展が顧客との距離を縮めることに貢献していることが判明した」このように、「昨今」を「ここ数年」で置き換えても意味が通じる使い方もあります。
例文③
「昨今」は、曖昧な時間や期間を表現する他、次に語られるであろう内容を思わせることもできます。今と昔を比較した時の使い方です。
例文で使い方を見てみましょう。「昔、テレビドラマやCMで大活躍をしていた〇〇さん、昨今は声すら聞くことが無くなったのはなぜか?」「昨今、多用されているカタカナ語の必要性について論じる」「昨今、書籍は本屋で買うものではなくなってきた」
このように、昔の状況を知っている人が現時点での状況と比較した内容を伝える時に「昨今」を用います。この場合、「昨今」が意味する時間の幅は、数年です。伝えている内容によっては、数十年を指すこともあるでしょう。
例文④
「昨今」の使い方として、「では」と組み合わせて用いる方法があります。「昨今では」と導入部に入れることで、相手の理解度をスムーズにする方法です。
例文で使い方を見てみましょう。「昨今では、インターネット上のブログを利用して日記を書いたり収益につなげたりする人が多くなってきた」「昨今では、求職者から選ばれる会社創りを目指す企業が増えている」
このように、「昨今では」を冒頭に置くことで「これが一番言いたいこと」として強調することができます。過去の事象と違い、現時点でどのようになっているのかを伝えたい際に適した使い方です。
昨今の注意点
先にも述べましたが、使い方で注意すべき点は、「昨今」は表現している時間の幅が大雑把で曖昧だということです。数年以内のことを伝えるのであれば、「ここ数年」「近年」などで置き換える使い方が適しています。
昨今はビジネスシーンで多く使われる
「昨今」は日常会話で使われることはありません。ビジネスシーンでよく使われます。「昨今」を用いて作られた文書であれば、書き手が意味する期間の幅を前後の文章から検討し、理解することが必要です。
ビジネスシーンで「昨今」を使う場合、使い方に間違いがないかどうかが気になります。確認の際は、「最近」で置き換えても意味が通じるかどうかで判断すると良いでしょう。
また、会議の資料などでは、「昨今」を使わないほうが伝わる場合があります。数値で正確な年度や月日を伝えることで信憑性が増し、相手の理解を深めることができるからです。「昨今」を使う場面によって使い分けるようにしてください。
昨今は「近頃」「この頃」という意味
「近頃」「この頃」という意味を持つ昨今は、過去から現時点までの範囲を曖昧に表現したい時に使う言葉です。ビジネスシーンで多用される言葉なので、意味を理解しておくと重宝します。相手から受け取る文書の理解度も深まるため、やり取りがスムーズになるからです。
ビジネスシーンでは、時間や期間の伝え方が信用度や資料の信憑性を左右することがあります。「昨今」を「類語」に置き換える、正確な日時を伝えるなど適切に使い分けましょう。ビジネス上のコミュニケーションを円滑にし、信頼を高めることにも貢献します。