「迎えに行く」の意味とは?
「迎えに行く」は使う機会が多い言葉です。日常で一番多いのは我が子を幼稚園やは学校に迎えに行くといった使い方でしょう。ビジネスではお客様をこちらから迎えに行くなどの使い方です。
「迎えに行く」という言葉の意味は「迎える」と「迎えに行く」とで少し状況が変わってきます。「迎える」は「その場にいて来る人を待ち受ける」であり、「迎えに行く」は「こちらから相手のところへ行き、そこで相手を待ち受ける」となります。
しかし、それぞれのシーンにおいて相手に「迎えに行く」ということを伝える時の言い方については、誤った使い方をしている人を見かけます。
ビジネスでは上司やお客様などに敬語を使わなければいけないのですが、正しい敬語を身につけていないと相手に失礼になったり、不快感を与えたりするので注意が必要です。ここでは「迎えに行く」という言葉の意味を正しく理解し、正しい敬語表現ができるように解説します。
「迎えに行く」の対義語・類義語
「迎えに行く」の意味を理解したところで、「迎える」の対義語は何かということについて紹介します。「迎える」の対義語には「送る」が当てはまります。「迎える」が相手を待ち受けるのに対して、「送る」はその場にいて、去る相手を見送るという意味になります。
「迎えに行く」は迎える相手のところへ行って迎えるのですが、「迎える」は自分はそこにいて相手を待ち受けるという意味になり、「迎えに行く」の自分から出向くのとは違います。
一方、「送る」は目的地まで一緒に行くこと、すなわち「送って行く」という意味の表現もこの一語に含まれます。つまり「送る」は「迎える」と「迎えに行く」の両方の対義語となります。
「迎える」の対義語は案外すぐに思いつくかもしれませんが、「迎える」の類義語は何かとあらためて尋ねられると、何となく出てきそうでなかなかこれといった言葉が出てこないのではないでしょうか。
「迎えに行く」の類義語は「出迎える」がややニュアンスが違うものの適切です。その他にも来ることに敬意を表して「歓迎する」なども類語と言えるでしょうが、いずれも「迎えに行く」とは異なって、自分はそこにいるという意味が含まれています。
「出迎える」は「迎えに行く」のように「行く」と含まない「迎える」の類義語と言った方が正確かもしれません。
「向かえる」は発音は同じでも全く違う!
「迎えに行く」の類義語とは少し違いますが、「迎える」と同じ発音の言葉に「向かえる」があります。ところがこの「向かえる」は辞書にはありません。というのは「向かえる」は「向かう」と「~える」とに分解できます。
「~える」というのは「~することができる」という意味です。なので「向かえる」の意味は「向かうことができる」となります。
これと同じように「~える」とつけた言葉は他にもあります。例えば「見える」の意味のひとつに「見ることができる」があって、これも「見る」のあとに「「える」をつけることで成り立つ言葉です。
この「向かえる」と「迎える」の二つの意味は全く違うと紹介しましたが、一番大きな違いはその「方向」です。「向かえる」が外の方向に向かうのに対して、「迎える」は自分の方へ迎え入れる」と内側に向かう方向と逆向きになっていることです。
「迎えに行く」の使い方・例文
ここでは「迎えに行く」と併せて、「迎えに行く」をビジネスなどで使う際の敬語表現をその使い方についても例文を示して紹介します。
敬語表現はビジネスシーンにおいてはお客様や課長、部長などの上司、日常では目上の人にも使うので、正しい使い方を知っていないとせっかくの「迎えに行く」という親切な行為も、自分の立場を低くして信頼をなくしたり、さらには相手によっては不快感を与えたりしてしまいます。
例文①
まずは日常的な場面でよく使われる「迎えに行く」の使い方について、「学校まで子どもを迎えに行く」や、友人との間で「駅まで迎えに行くね」などの会話ではそのまま「迎えに行く」という表現で問題ありません。
相手が家族や親しい友人など対等な立場の場合には、そのまま「迎えに行く」と特に丁寧な言葉遣いをせず、普通の使い方で問題ありません。
例文②
「迎えに行く」の敬語表現は「お迎えに参ります」となります。主にビジネスシーンや目上の人に対して使います。敬語表現の詳細として「お迎え」と「行く」について補足します。
「お迎えに参ります「お迎え」は「迎え」の尊敬語で、相手を尊敬する表現です。「行く」の方は、行くのは自分なので、謙譲語である「参る」であり、続けて「お迎えに参ります」が正しい表現になります。
例文としては、「3時に駅までお迎えに参ります。」など来社されるお客様を駅まで迎えに行くときに使います。
なお、「お迎えに参ります」と同じ意味で、「お迎えにあがります」という表現がありますが、これは間違いという人もいて、正しいのかどうか疑問に思った方がいるのではないでしょうか。しかしこれは正しい敬語表現です。「上がります」も「行く」の謙譲語なので同じ意味になるのです。
例文③
例文①では迎えに行く対象が我が子など対等な立場の人で、「迎えに行く」という相手もその人自身の場合であったのに対して、迎えに行く対象は同じで、それを伝えるのが先生などの場合にはどうでしょうか。
相手は先生ということで目上の人という認識で、「お迎えに参ります」という人がいますが、このような場合には「迎えに行きます」が正しい表現です。
例文④
最後の例文は、逆に目上の相手に自分を迎えに来てもらう場合の使い方です。目上の人なので当然英語表現になります。「もらう」の謙譲語は「いただく」なので、「迎えに来ていただく」が正しい敬語表現となります。
また、この表現は自分が迎えに来てもらうという、自分が主体の意味なので間違いではありませんが、逆に自分よりも目上の人に主体を置いた言い方にはまた違う表現があります。
例えば「社長に迎えに来ていただきました」は社長が自分を迎えに来たという印象を受けますが、これを相手である社長を主体に置いた言い方にすると「社長が迎えに来てくださいました」となり、社長を主体においた表現になるので、より相手に良い印象を与える使い方になります。
なお、この場合も身近な人に対しては「迎えに行く」と同様に「迎えに来てもらう」で問題ありません。
「迎えに行く」と「出向く」の違い
「迎えに行く」の類義語として「出迎える」を紹介しましたが、これらはいずれも相手方および自身が受け入れていることが前提になっています。
これとよく似た言葉に「出向く」というのがあります。しかしこの2つの言葉の使い方には大きな違いがあるので注意が必要です。
「出向く」はただ単に「足を運ぶ」という意味
それは、「迎えに行く」や「出迎える」というのが相手に対して親しい人やお客様など、良い関係の時のみ使うのに対して、「出向く」の使い方はそこに行くことが目的で、ただ単に「足を運ぶ」という意味にとどまっています。
あまり良い状況ではないときの使い方の例文を挙げると「悪さをした子どものために相手の家に出向いて謝る」で、決して相手は受け入れているとはいえません。このように似たような言葉でも使い方が大きく違うものがあるので、間違えないようにしましょう。
「迎えに行く」を使う際の注意点
「迎えに行く」は家族や友人など、身近な関係の人に対してならばそのまま使えますが、それ以外、つまりビジネスにおける相手や目上の人などに対しては注意が必要です。
ビジネスにおいては上司やお客様に対する敬語表現が必要なことはすでに触れましたが、ビジネス以外でも目上の人やあまり親しくない関係の相手であれば、やはり敬語を使うことになるので、「迎えに行く」も敬語にしなければなりません。
そこでビジネスにおける「迎えに行く」の敬語表現と、ビジネス以外での目上の人への「迎えに行く」の敬語表現に違いはあるのか、あるとすればどのような違いがあるのかを解説します。
「お迎えに参ります」では使えない
ビジネスシーンにおいては「迎えに行く」は「お迎えに参ります」でほとんどの場合問題ありませんが、ビジネス以外で単に目上の人という場合には、必ずしもこれで良いとは限りません。
それは単に「目上の人」といっても親密度などに段階があるからです。全くの初対面の人や、めったに会わないような関係性であれば、「お迎えに参ります」で構いませんが、目上の人でもたびたび会う機会があったりしてお互いの距離が近い場合には若干くだけた言い方の方が自然です。
そのような人に対しては、「お迎えに参ります」ではなくて「行きます」で問題ありません。また、「迎え」についても相手との距離によって「迎え」のままで良い場合と、「お迎えに行きます」のように「迎え」のみ敬語という使い方もあります。
割と近い間柄の人から「お迎えに参ります」と言われると、むしろ相手もなんだかむずがい感じがするでしょう。相手との距離によって使い分けるように注意しましょう。
「迎えに行く」の由来・歴史
「迎えに行く」は日常で使う身近な言葉ですが、その言葉の由来と、このように一般的に使われるようになった歴史は身近な言葉だけに多くの人が考えていないでしょう。
もともと使われていた「迎えに行く」という言葉の意味が今とはちょっと違い、ある限られた範囲での言葉であるというと、ちょっと興味がわくのではないでしょうか。
由来
「迎えに行く」という言葉の由来ですが、「迎え」のあとに「行く」がついているので、「迎え」についての由来を解説します。
「迎え」の由来には諸説ありますが、日本にあるお盆が関係しているとも言われています。お盆には「迎え盆」と「送り盆」とがあり、この「迎え」と「送り」が一般的に広まったものと考えられています。
お盆について補足すると、お盆は仏教からきているとされています。しかし仏教では死後は生まれ変わるものとされていて、死後、霊となって子孫を見守る考え方の日本に古来からあった神道とは違ってて、日本では独自の習慣が確立されてきました。
歴史
このようにして一般的に使われるようになった「迎え」や「送り」は次第に使う範囲が広がってきて、日常生活の中でも使われる言葉として定着しました。
このようにして広まった「迎え」や「送り」ですが、本来の意味からあまり悪い意味では使われません。類義語のところでも紹介したように「迎え」が「歓迎」のニュアンスを含んでいるところからも理解できます。
「迎えに行く」の英語表記
「迎えに行く」は英語で何というのでしょうか。「迎えに行く」を辞書で調べると"go pick up"と出てきます。「彼を迎えに行く」の英語の例文は"go to pick him up"となります。あるいは似た表現で"pick up him"ということもできます。
簡単な例文を挙げると「私は明日、彼を迎えに行きます。」は英語で"I will go to pick him up tomorrow"となります。
また、相手によっては丁寧な表現が必要な場合があります。日本語で言う「お迎えに参ります」のような表現です。これは英語では上の"go pick up"だけでなく、シチュエーションによっても変わってきます。
例えば車で迎えに行った場合にはこの表現で良いのですが、そうでなくただ単に迎えに行くのであればちょっと違った表現になります。
具体的な例文を挙げると、「空港までお迎えに参ります」という文章は、前者の場合は"I'll come to the airport to pick you up."となり、後者は"I will come to the airport to meet(またはsee)you."です。
このようにただ単に"go"を使うのではなく、相手基準をにして、相手がいる場所に「来る」とすると、日本語で言う「お迎えに参ります」のような丁寧な言い方になるのです。
「迎えに行く」は相手に愛情や親しみ・敬意を表しているという意味
ここまで「迎えに行く」という言葉の意味や敬語表現、さらには英語表現など、さまざまなケースについて解説しましたが、新たな発見があったでしょうか。
冒頭でも紹介したように、「迎えに行く」は日常的にもよく使う言葉なので、ビジネスシーンにおいてうっかり間違った表現をすると相手とのコミュニケーションに支障が出ることもあります。
元来、「迎えに行く」という動作はわざわざこちらから出向くことから、相手に対して愛情や親しみ・敬意を持っている関係の人には敬語表現は不要です。
「迎えに行く」以外にも日常的に使う言葉があります。今回の「迎えに行く」のように普段何気なく使っている言葉の使い方がまちがっていないか、これを機会に見直してみませんか。