「試行錯誤」の意味とは?
「試行錯誤」はよく聞く四文字熟語です。普段の生活で使う機会は少ないものの漢字検定では3級レベルの四文字熟語です。漢字検定3級というと中学校で習う四文字熟語になります。
日常生活ではあまり使わない言葉ですが、読み方は中学校で習っていることもありなじみ深い四文字熟語でもあります。
読み方は「しこうさくご」。日常会話ではあまり用いませんがビジネスでの会話や業者さんとの打ち合わせ、TVなどで耳にする機会があるのではないでしょうか。
「試行錯誤」の意味:何度も失敗を繰り返し解決すること
「試行錯誤」の言葉の意味は「いろいろな方法を試して失敗を重ねながら工夫すること」また、「難しい課題を解決するためにめに様々な試みを繰り返していく過程」です。失敗をしながらも諦めずに工夫を繰り返す姿勢から「工夫を重ねた」ことを相手に伝えたいときに使うことが多いです。
また、何度も挑戦し失敗を繰り返したことから諦めずに取り組んだという熱意ある印象も同時に与える四文字熟語でもあります。
「試行錯誤」の由来
良く知られた四文字熟語の試行錯誤ですがどのような由来があるのでしょうか。語源の由来は意外にも英語にあるようです。英語の「trial&error」というアメリカの心理学者が提唱した動物の行動様式を表す言葉が元になっていると言われています。
「試行錯誤」は2つの言葉の意味
アメリカの心理学者エドワード・L・ソーンダイクは動物が解決策を模索する際に試みと失敗を繰り返して解決する行動様式をみて「Trial&Erro」という学説を唱えました。試行錯誤は動物を使った実験の様子が由来になっています。
由来となっている「Trial&Erro」の「Trial」が「試行」、「Error」が「錯誤」と訳されて、「試行錯誤」となったようです。
「試行錯誤」の読み方
試行錯誤の読み方は「しこうさくご」です。試行は文字通り試しに行うことを意味しています。錯誤は誤という字からもわかるように間違える=失敗することを意味しています。この試す→失敗を繰り返すことを意味する二語で試行錯誤は失敗を繰り返し解決策を導く様子に由来しています。読み方はそれほど難しくはなさそうです。
「試行錯誤」の類語
試行錯誤は達成するべき出来事に対して方法を模索して失敗を繰り返しながら成功に向かおうとする意味を表しています。同じような意味の言葉について知っておくと言い換えなどに使えて便利です。例文と併せてご紹介します。
「試行錯誤」の類語①「悪戦苦闘」
「悪戦苦闘」という四文字熟語は試行錯誤と似た意味合いで使うことができます。「悪戦苦闘」とは、不利な状況でも苦しみながら試練や困難を乗り越えようと挑む姿勢を意味する言葉です。
「試行錯誤」とは問題に対して試練を乗り越えようと努力する姿勢の意味ですので「悪戦苦闘」と意味が近く同様の意味で使われることも多くあります。
同じように困難な課題に取り組む姿勢を意味する言葉ですが、「試行錯誤」よりも「悪戦苦闘」の方が状況が悪い意味を持っています。苦しんでいる状況を印象付けます。「悪戦苦闘」を使うとよりつらい状況で苦労したという意味を持たせることができます。
また、「悪戦苦闘」には「試行錯誤」にある「何度も試してみる」という意味合いは持ち合わせていないのも違いです。
悪戦苦闘の使い方
例文1)簡単な問題だと高をくくっていたが思いのほか悪戦苦闘した。例文2)今までにないタイプの機械の修理に悪戦苦闘した。など、工夫を凝らしたという意味よりも難しい状況で苦しみながらも努力をしたという意味が強調されることが特徴です。
「試行錯誤」には何度も繰り返したという意味はあっても辛く苦しいという意味は含まれていないので「悪戦苦闘」の方が辛い苦しいといったイメージを相手に与えます。
ビジネスシーンやメールなどでは悪戦苦闘はややネガティブな印象を与えがちなので使用には注意したいところです。
「試行錯誤」の類語②「暗中模索」
「悪戦苦闘」と並んで「試行錯誤」と同じような意味あいで使われる言葉に「暗中模索」があります。「暗中模索」とは暗くてよく見えない(手がりもない状況)で探りながら方法を探していくという意味で、中国の故事に由来する言葉です。
「試行錯誤」とは方法を探り、実際に失敗を繰り返しながら答えを見つけるよう努力する姿勢を意味しているのでいろいろな方法を探しているというところが似た意味を持っています。
「暗中模索」の方がより「手がかりのない状況で」という意味が強くあります。解決方法を探るという意味では同じですが、「試行錯誤」にある何度も失敗を繰り返しながらという意味は「暗中模索」を使った場合は感じにくいといえるでしょう。
また、「試行錯誤」では実際に失敗をしながらという意味を持つときに利用しますが、「暗中模索」では頭の中で考えて答えを見つけるときにも利用できます。
暗中模索の使い方
例文1)彼女をデートに誘う方法を暗中模索している。例文2)暗中模索の末やっと実用化にこぎ着けました。などのように苦労したこと、闇雲に取り組んだことなどの意味で利用します。
例文1)のように実際に行動をしていない場合には「試行錯誤」での言いかえよりも、例文2)のように実際に試しているような意味あいで使うときの方が「試行錯誤」との言い換えが使われる傾向にあります。
「試行錯誤」の類語③「紆余曲折」
「紆余曲折」とは「様々な理由で物事がスムーズに運はない」という意味の類語です。「試行錯誤」試みと失敗を繰り返すというもともとの意味とは若干異なりますが、目的に対して困難の上取り組んだという意味で言い換えができることもあります。
「紆余曲折」の方が様々な寄り道をしてたどり着いたという印象が強くあります。また、「試行錯誤」は自ら試みと失敗を繰り返すのに比べて「紆余曲折」は周りに振り回されて物事が思うように進まないという意味を感じさせる使い方が特徴です。
紆余曲折の例文
例文1)この会社の立ち上げには紆余曲折ありましたが、この度○○会社を設立することとなりました。例2)紆余曲折を経て取引先との合意が成立しました。どちらも「試行錯誤」以外の理由があってなかなか実現しなかったという印象を与える文章となります。
「試行錯誤」のビジネスメールでの使い方と例文
ビジネスシーンでは相手にいろいろな方法を試して失敗しながら完成させたということを伝えたいこともあります。そんな時に「試行錯誤」という言葉がピッタリです。
あまり苦労した経緯を強調して恨みがましい印象を与えてしまうことはビジネスシーンでは避けたいものです。しかし、課題に対してできうる限りの時間と労力努力を重ねたということを伝えておくことも必要です。
そんなときには「試行錯誤」を使うとすっきりと伝わります。努力や研鑽を重ねたという意味を持っていますが、ネガティブな印象や押しつけがましく感じない言葉です。実際にビジネスシーンやメールなどで使う場合はどのように使えばいいのか例文を交えてをご紹介します。
試行錯誤を重ねる
「試行錯誤」は重ねるという言葉とともに「試行錯誤を重ねる」という文章で使われることが多いです。「試行錯誤」には失敗を繰り返すという意味が既にあります。
それに「重ねる」を加えることでより苦労・工夫を重ねたという意味の言葉になります。実際には強調の意味があるというよりも言い回しの意味が強いです。
例文1)お待たせしていた作品ですが試行錯誤を重ね、ようやく完成しました。例文2)新しいシステムは試行錯誤の上、完成しました。例文2)のように試行錯誤を重ねた上でという言い方もよく使われる言い方の一つです。
試行錯誤を繰り返す
「試行錯誤を繰り返す」という言い方もよく使われます。やはり試行錯誤に元々ある繰り返し失敗したという意味を補完する形で「繰り返す」が重ねられ「試行錯誤を繰り返す」という表現となります。
例文1)今回の新製品はより良いものをと試行錯誤を繰り返し、製作しました。例文2)ご提案いただいた問題点を克服すべく試行錯誤を繰り返した末に完成しました。例文2)の試行錯誤を繰り返した末という表現もよく使われます。
試行錯誤の連発
「試行錯誤」という言葉は「連発」という言葉と組み合わせて使われることも多いです。「連発」という言葉は続けて何度も繰り返したという意味です。「試行錯誤」の繰り返し試して失敗する様を強調した表現の形になっています。
前述の「試行錯誤を重ねる」や「試行錯誤を繰り返す」と同様強調という意味あいよりも言い回しとしてよく使われると捉えてよいでしょう。
例1)今回の研究は試行錯誤の連発でした。例2)試行錯誤の連発で一時は感性も危ぶまれましたが努力の甲斐あって完成までこぎつけることができました。
「試行錯誤を重ねる」「試行錯誤を繰り返す」よりも今までの苦労を口語で伝えるときに使われることの方が多いです。新製品の発表会やプレゼンテーションなどで用いられることが多いので前の二つに比べてメールでの利用は少ないかもしれません。
ビジネスメールでの四文字熟語
ビジネスメールでは簡潔にわかりやすく内容を相手に伝える必要があります。長々と文章を連ねることはマナー違反にもなります。
「試行錯誤」などの四文字熟語を利用すると意味はそのままでも文章を短くすることができます。また、四文字熟語を使うことで相手に知的な印象を与えることもできます。ですのでビジネスメールにも四文字熟語も積極的に取り入れていきたいところです。
例えば「この製品を開発するにあたって様々な方法を探りながら研究を繰り返しました。失敗も多くありましたが何とか製品化にこぎ着けることができました。是非一度お試しいただければ幸いです。」はちょっと長く,くどく感じます。
「試行錯誤」を用いれば同じ意味合いの文章でも「この製品の開発には試行錯誤を繰り返し、何とか製品化にこぎ着けることができました。」というすっきりした文章で表すことができます。
また、四文字熟語を知らなくても熟語の中には漢字の意味から推察できるものが多くあります。必要以上に難解な四文字熟語を使うのはおすすめできませんが漢字から意味を読み取れるような四文字熟語ならおすすめです。
「試行錯誤」の英語表現
もともと英語に由来する「試行錯誤」ですが英語表現ではどのような利用のされ方をするのでしょうか。英語に由来のある「試行錯誤」ですが、実は英語の文章で使う際は注意する点もあります。ビジネスメールを想定した簡単な例文とともにいくつかご紹介します。
試行錯誤のそのままの意味の英語
「試行錯誤」の由来でご紹介した通り由来の元となる「Trial&&Erro」がそのまま「試行錯誤」の英語表現です。Trialは試すことErroは間違いという意味ですので覚えやすいのではないでしょうか。ここで一つ注意しておきたいのは試行を意味する英語が「Traial」であることです。
ビジネス用語は意味が通じないこともある
日本では試す=Tryというイメージを持たれている方も多いです。日本語ではトライ&エラーという和製英語も利用されていることが多いので、ここを混同してしまい「try and error」という英語表現をしてしまいがちということです。
ビジネスメールなどで外国人の方にメールを送る際に「try and error」を使ってしまうと意味が通じないことになってしまうので注意が必要です。
同じようにケースバイケースなども和製英語です。和製英語を英文メールなどで使わないように注意しましょう。
Trial&Erroを使った例文
例文1は、We used a process of trial and error.(私たちは試行錯誤を繰り返した。)例文2は、After much trial and erro, we were able to produce this machine.(試行錯誤の結果、私たちはこの機会を作ることができた。)
日本語の「試行錯誤」では粘り強く課題に取り組む熱意ある姿勢を印象付ける言葉ですが、英語での「試行錯誤」はもともと行動様式を表していることもあり挑戦と失敗を繰り返す手法というさっぱりとしたとらえ方をしています。
例1のようにprocessなどの手法という意味あいの単語と組み合わせてprocess of trial and errorとして使うことも多いです。
learn by mistake
「試行錯誤」の英訳は」もちろん「trial and erro」ですが、「試行錯誤から多くのことを学んだ。」というような意味で用いる場合は「learn by mistake」もおすすめです。
「trial and error」は英語では手法という印象も強いので失敗から多くのことを学んだというような意味で使う場合は場合はこちらも利用してみて下さい。
「試行錯誤」は失敗を繰り返し解決する事を意味する
「試行錯誤」の由来が英語にあること、動物の行動観察から生まれたことを意外に思った方も多いのではないでしょうか。
試行錯誤は失敗を繰り返し諦めずに問題に向き合っている姿勢を表す四文字熟語です。できうる限りいろいろなことを試してみたという印象を与える言葉なのでビジネスシーンでもうまく使っていきましょう。