登竜門の意味とは?
皆さんは「登竜門」という言葉をご存じでしょうか。受験時期などによく耳にする方もいるでしょう。ですが、実際に「登竜門」とはどのような意味かを聞かれると、漠然とわかるもののはっきりとした内容を説明できない方も多いです。
今回はこの「登竜門」という言葉についてお話しします。まずは「登竜門」という言葉の意味についてです。この機会にしっかりと意味を理解していきましょう。
「登竜門」の意味は「立身出世の関門」
「登竜門」とは「立身出世、入学などの(難しい)関門。またそれを超えること」を言います。つまり、「自分が進もうとする先に立ちはだかる試練」のことです。
例えば、「プロになるためには、このコンクールで優勝しなければならない。」、「昇進するためには、このプレゼンを成功させなければならない。」という様な、自分が目指したものに辿り着くために、越えなければならない壁を表現する際に用いられます。
作家でいう所の「直木賞や芥川賞」、アーティストでいう「世界的なコンクール」、あらゆる分野の「新人賞」も「登竜門」です。
登竜門の対義語・類義語
「登竜門」の意味がおわかりいただけたところで、次は「登竜門」に相当する類語と対義語についてお話しします。
「登竜門」の類語は「入試」や「試験」、「試練」、「オーディション」など、自分の能力を認められるために行われるイベントを突破することを「登竜門」として使われることが多いです。状況によって何が「登竜門」になるかは変化します。
一方「登竜門」の対義語についてですが、「点額(てんがく)」が対義語に当たります。意味は「試験に落ちること」を表しています。
鯉が急流を登り切れずに「額(ひたい)」をぶつけて、「点(傷)」がついたという、故事成語から由来した対義語です。鯉が「登竜門」を超えられなかったことから、「難関を超えられない」という意味から「登竜門」の対義語として使われます。
登竜門の使い方・例文
ここまで「登竜門」の意味と類語をご説明しました。続いては、実際に使われる場面での例文についてお話ししていきます。
自分に起こり得そうな状況を想像しながら、自分の場合はどのような場面で「登竜門」を使えばよいかを考えながら読んでみてください。誰にでも「登竜門」は待ち構えています、実際の場面で使えるように、ここで例文を整理しておきましょう。
例文①
「登竜門」の使い方の例文1つ目は「直木賞は小説家の登竜門だ。」です。これは人気作家になるための第一歩である賞です。他にも「芥川賞」や「本屋大賞」など、様々な賞があります。作家だけでなく、アーティストやアスリートにも受賞しなければならない「登竜門」が存在します。
例文②
「登竜門」の使い方の例文2つ目は「登竜門を超えても、まだ油断はできない」です。「登竜門」は成功への関門です。ただし、あくまで第一歩であるため、「登竜門」を一つ越えることで必ずしも成功があるとは限りません。戒めのような例文です。
例文③
「正念場」の使い方の例文3つ目は「登竜門を避けていては成功は出来ない。」成功するためには楽な道はないということでしょう。練習や準備を怠ることなく、繰り返し行うことで、成功へ近づきます。かと言って、それらの努力をしたくないと「登竜門」を避けてばかりでは成功は為しえないでしょう。
例文④
「登竜門」の使い方の例文4つ目は「登竜門を目指して日々努力し続けている。」です。自分の超えたい試練を突破するために努力を惜しまないということです。前述した通り、成功のためには「登竜門」は避けて通れないとお話ししましたが、努力ほど成功への近道はないということでしょう。
登竜門と正念場の違い
ここで「登竜門」の類語の他に、よく似た言葉「正念場」について、「登竜門」との違いを考えていきます。どちらも「その人にとって大事な場面」で使うところは同じだと言えます。では、逆に違いはあるのかについてお話ししていきます。
正念場はここぞという大事な場面という意味
「登竜門」は「立身出世、入学などの(難しい)関門」という意味だとお話ししましたが、「正念場」は「ここぞという大切な場面、本領を発揮する最も大事な所」という意味があります。
つまり、「登竜門」は「試験」や「面接」などの自分にとって大事な場面における具体的イベントを「突破すること」を意味し、「正念場」は自分にとって大事な「場面や状態」を意味するということです。
違いを理解するのは難しく、意味を考える度にループしてしまうそうですが、簡単に言うと「登竜門」を超えなければならない状況が「正念場」と言えるでしょう。
登竜門を使う際の注意点
ここまで「登竜門」という言葉の意味や使い方、類語についてお話ししてきました。「登竜門」の使い方については大体ご理解いただけたでしょう。では次に、実際に使う際によくある間違えた使い方についてご紹介します。
折角会話に織り交ぜたのに、使い方が間違っていては勿体ないです。注意点をよく把握して、正しく「登竜門」を使えるようにしましょう。
「登竜門」を「関門」そのものを指す意味は間違い?
最初に「登竜門」の意味は「立身出世の関門」とお話ししました。一方、元々「登竜門」の意味は「関門」そのものを表現しているのではなく、「登ったこと」を示すとされており、「関門」そのものを表現することは誤りでした。
なので、「このコンクールはプロへの道の登竜門だ」という言い方は間違いで、「このコンクールで優勝することは登竜門だ」というのが正しいです。
ですが、現在では「登竜門」を「関門を通過すること」ではなく、「関門」そのものとして指す意味がむしろ一般的で、誤りとは言わなくなっています。また、国語辞典にも「関門」そのものとしての記載があります。
前述で「点額」という対義語をご紹介しましたが、あれは「試験に落ちること」とお話ししました。この対義語と比較すると逆の「関門に通過すること」の意味についてわかりやすいでしょう。
「登竜門を登る(通る)」という表現では使えない
前述のことを踏まえて、「登竜門」の使い方の注意点をお話ししていきます。「登竜門」の注意点は「二重表現」になってしまうことです。
先ほど述べた通り、「登竜門」には「関門を通ること」を意味する内容も含まれます。そのため、「登竜門を登る」や「登竜門を通る」と言ってしまうと、「登る」または「通る」という意味を二重に話していることになります。
聞いた感じではあまり違和感がないですが、間違いに感じる方もいますので、出来るだけ使わないよう注意するのが良いでしょう。
登竜門の由来・歴史
次に「登竜門」の言葉の由来についてお話しします。漢字の言葉はほとんどが中国から由来していることが多いことから、中国由来であることを想像している方も多いでしょう。「登竜門」も例にもれず中国の歴史書から来ている故事成語になります。
由来
「登竜門」の由来は中国が「後漢」の時代に書かれた歴史書、「李膺伝(りようでん)」から来た故事成語とされています。この歴史書は文字通り「李膺(りよう)」とい官僚が記した伝記で、大変偉い地位にいたそうです。
また、中国の故事成語には「竜門」という激しい急流があり、その麓にいる鯉たちはその「竜門」を登る力はないとされていました。
ですが、もし「竜門」を登ることが出来た暁には「その鯉は竜になれる」という言い伝えがありました。そうして、「李膺に認められ出世する(関門を突通過する)」様を「鯉が竜門を登り竜になる」という故事成語になぞらえて「登竜門」と呼ぶようになったと書物に記載が残されています。
李膺という人物がどれほど偉い人間だったかがわかります。自分の伝記が語り継がれるほどですから、あらゆる功績を残したであろうことも想像に難くないです。
歴史
「竜門」から来た故事成語「登竜門」の話を聞いて、似たようなものを思い浮かべた方もいるでしょう。それは「こいのぼり」です。
日本では5/5「端午の節句(こどもの日)」に「こいのぼり」を飾ります。これは子どもの健やかな成長や出世を願う目的で行われ、江戸時代から盛んに行われてきました。この行事も「竜門」の故事成語から来ていると言われています。
登竜門は立身出世のための関門という意味
いかがでしたでしょうか。「登竜門」の意味や使い方とその例文、類語、対義語、故事成語から来る由来についてまでご紹介してきました。試験や面接など自分にとって大事なイベントが生じた際には、ぜひ「登竜門」やその類語を使ってみてください!