及びの意味とは?
「及び」とは「および」と読み、さまざまな場面でよく目にしたり耳にする言葉です。その意味は、「何か同レベルのものと並べてあげる時に使う言葉」であり、「同列としてあげたものを一塊として捉える時に使う言葉」と定義されています。
「及び」の意味をより簡略して表現した場合は「~と」という表現でも書き換えることができます。同程度のレベルのものが複数ある様を表現するときに使う言葉です。ここでは「及び」の由来や例文、「並びに」という言葉との違い。
そして、「及び」の使い方や、類語、そして英語での表現についてなどなど、「及び」という言葉にまつわる様々なことについて紹介しています。
及びの由来
「及び」という言葉はどのような経緯を経てこの形となったのかについての由来は、 「及」の字の由来に起因します。「及」という字は会意で、人を捕まえるさまから「人に追いつく」という意味に繋がり、「およぶ」という意味をもった漢字になりました。
ですので、並び立つ、という意味や同格として存在する。などといった意味を表す言葉として使われるようになりました。
及びの特徴
「及び」の特徴として、何かと何かを対比してその結果「及び」として表現する使い方が一般的です。同格として並ぶことを意味するので、「及ばず」という表現の場合は並び立たないということになります。
また、「及ぶ」となれば、同格として並びだったということを意味する言葉になるので、少し言葉を変えるだけで大きく意味が変わるという特徴があります。
また、及びには「たどり着く」という意味を持つように、もう一つの使い方がある点も特徴と言えます。「何かに及びつく」というように追いつくことを意味する場合もあるので、特殊な使い方も見られます。
「並びに」との違い
「及び」と意味の似た言葉として「並びに」という言葉があります。並びにと及びではどのような意味の違いがあるのでしょうか?「並びに」の意味には及びと同じような使い方をしますので、ほとんど同じ意味をもつように思われがちです。
しかし、並びにと及びでは決定的に使われる場所が違うので、意味や文面に応じて適切な場所で適切な使い方があるのです。並びにはどのような使い方が正しいのでしょうか?例文を交えて、並びにの使い方や意味を理解しましょう。
「並びに」の使い方・例文
「父兄の皆々様方、並びにご観覧の皆々様方本日はお越しいただきまして誠にありがとうございます」父兄と観覧という対照的な間柄に並びにを使っています。「列強諸国の精鋭達、並びに我が国の俊英たる文官諸君」 こちらも武官と文官を並びにと表しています。
「並びに」のポイントとしては、同列でない、別の次元の存在を「並びに」と列挙する際に用いています。「及び」が同列の存在を指しのに対して、「並びに」は全く違った使い方になります。これが「及び」と「並びに」の決定的な意味の違いなのです。
及びの類語・対義語・英語表記
続いては、「及び」の類語、対義語、英語表記についてご紹介します。及びという言葉が人や物などの中で同クラスの存在を「~と」として並べる言葉なので、類語としてはそうした部分で及びに近似性のある言葉が当てはめられます。
対義語には、及びがもつ意味とはどのような関係性をもった言葉なのか、そしてどういった使われ方をするのかなどについても言及したものを紹介します。
また、英語表記に関しても、先ほどあった「並びに」に近しい意味も含めて「及び」を意味する言葉があがっています。どれも近似性という意味では誤りではありませんが、完全なニュアンスでの英語となると、文面での表現となります。
及びの類語
類語というのは、きわめて近い意味を持った言葉であり、全く同じ意味を持つ言葉を指しません。あくまでも類語は類する言葉であり、同意語ではない所がポイントです。「及び」にかぎりなく近いニュアンスをもった言葉として、類語と紹介します。
及びの類語として、いくつかの言葉とその意味、使い方や簡単な例文を交えながら、及びそのものとの意味や使い方の違いについても紹介します。
類語「加えて」の意味・使い方・例文
及びの類語「加えて」です。意味は「つけたして」「~と」「さらに」などの意味をもつ言葉です。「及び」のニュアンス的な意味の違いとしては同列の存在をあげている「及び」とは違って、様々な存在を組み合わせて並べて述べるときにも使われます。
例文として、「あれもこれもそれもどれも、加えてあっちもそっちも足してみよう」というように、比較的にこだわりなく加えることができる言葉として使われます。ニュアンスとしては「並びに」に近いものがあります。
類語「且つ」の意味・使い方・例文
及びの類語「且つ」です。意味は「二つもしくはそれ以上の物や存在に一定の同意性を認めつつさらにその条件を満たしたうえで」という意味を持つ言葉です。あくまでも「及び」が格を対象しているだけな事に比べて、条件として設定している違いがあります。
使い方の例文としては「まさしく強靭且つ明晰な頭脳をもった人間であるといえる」体格として優れしかも頭脳においても優秀という意味で「且つ」を使っています。このように異なる条件に合致した(動詞・形容詞)、というような使い方となります。
「及び」のいくつか複数の物や事象を並列の出来事や物体として捉えて、表現する場合の言葉としての使い方という意味で類語として扱われている言葉です。
類語「そして」の意味・使い方・例文
及びの類語「そして」です。意味は「物事から物事へのうつりかわりを繋げる言葉」のような意味をもちます。及びとの意味の違いは、「そして」は前後の対象を繋げ合わせる意味合いを持つ言葉なのに対して、さらに「及び」の方が限定的である事です。
使い方の例文としては「彼らは彼らとしてあり、そして彼女らは彼女らとしてあることを望むだろう」のように、Aの事象とBの事象を関連付けて言い表す場合に用いられる言葉です。厳密には関連性がそこに無かったとしても、表現として繋げた類語です。
この言葉も、「及び」のいくつかの物事を並列の物として捉えて、表現する場合の言葉としての使い方という意味で類語として扱われている言葉です。
類語「達して」の意味・使い方・例文
及びの類語「達して」です。意味は、「物事や目的などに至ったさま」「いずれかの場所、地位、時点から定められたポイントへと至った様子」を意味する言葉です。「及び」との意味の違いとしては、達してはより広い意味で使われている点です。
使い方の例文として「いつの間にか彼は我々の領域にまで達していた」というような使い方や、「やがて彼女は本来あるべき場所へと達した」というような使い方となります。規定された水準へと至ったことをさす言葉として使われます。
この言葉は「及び」における物事や事象の影響がある対象もしくは範囲に及ぶ様子を意味する言葉です。並列ではなく線で捉えた意味の類語と言えます。
類語「股にかけて」の意味・使い方・例文
及びの類語「股にかけて」です。意味としては、「ひろく各地を飛び回る、歩き回る、走り回る」や「いろんな場所を渡り歩く」といった足にまつわる意味をもった言葉です。「及び」との意味の違いとしては、目的意識に関する差と言えます。
「股に掛けて」が非常に広範囲で、ともすれば目的すら見当たらないような先の見えない様子を表すのにたいして、「及び」にはすでに一定の到達ラインが定められているようなニュアンスを感じられるところが違いと言えます。
例文としては「世界を股にかけて圧倒的な活躍をする」「ありとあらゆる摩訶不思議を股に掛けて飛び回ってきた」というような使い方となります。
及びの対義語
対義語というのは、対象となる言葉の意味とまるきり反対の意味を持つ言葉、もしくはそうした言葉に限りなく近しい言葉のことを指します。さしあたっては「及び」という言葉と正反対、もしくは反対の意味をもつ言葉のことです。
「及び」の対義語についていくつかの言葉と、その意味や使い方について、ひとつずつ紹介します。なるべくどういった意味で対しているのかなどの位置関係についても紹介しますので、しっかりと把握しておきましょう。
対義語「又は」の意味や使い方
及びの対義語「又は」です。意味は「対象となる物、人などの存在のどちらか」「挙げられた存在のいずれかひとつ」といった意味を持った言葉です。片方だけや、枠組みからはずされる存在を意味する言葉としての対義語になっています。
使い方としては、「りんご又はみかん、いやそれでは心もとないのでイチゴもあればよいな」といった選択を表すような使い方が一般的です。基本的に「いずれか一つ」を指しますので、複数の選択肢があがっている場合でもどれかを選ぶ意味になります。
対義語「あるいは」の意味や使い方
及びの対義語「あるいは」です。意味は「または」「もしかすると」「想定とは別のなにか」「こちらではないもうひとつの」などの意味をもちます。この言葉も二面性をもった言葉で、「どちらかの」という意味と「もしかしたら」という想定の意味をもちます。
「及び」の対義語の位置関係としては「並列同時」を意味する「及び」とは異なり「どちらか一方を意味する言葉である点です。使い方として一つ目は「りんご、あるいはみかんを用意しておいた方がいい」
そしてもう一つは「りんご、あるいはみかんである可能性が高い」というような使い方になります。少し複雑ですが、なにげなく使いこなしている言葉の本質を知るという意味では非常に面白い結果と言えます。
対義語「もしくは」の意味や使い方
及びの対義語「もしくは」です。意味は「または」「あるいは」「さもなければ」「でなければ」「だったとしたら」などの意味をもった言葉です。この言葉も「あるいは」と同様に想定を意味する使い方をおこなう言葉です。
「及び」の対義語としての位置関係は、さきほど紹介した「あるいは」と同じく並列同時を意味する「及び」とは違って、いずれか一方などを指す言葉という対義語関係にあります。使い方として「リンゴ、もしくはミカンを御前にお供えすべきである」
またもう一つの意味では「リンゴ、もしくはミカンではないかと愚考する次第である」というような想定文として使用することがあります。あるいは、と同じような意味を持つ言葉ですが、すこし堅い印象とどちらももっている言葉です。
及びの英語表記
言葉としての「及び」には、類語でも例を出していますが二つの意味をもっています。それぞれの英語表現に関して、いくつかの例文で英語での言い換えを表現しています。それぞれの英語表記と日本語のニュアンスの違いをとらえましょう。
英語では比較的大まかな意味合いでの言い換えとなるので、細かいニュアンスとしては違った意味合いにとらわれることもあります。そうした細かいニュアンスで伝えるべき時は、表現すべき英語もまた違ったものになります。
及びの英語・例文①
「You have an idea that I wouldn't be able to match.(ユー ハブ アン アイデア ザット アイ ウドゥント ビー エイブル トゥー マッチ)」意味は「私などでは及びもつかない考えをお持ちの方だ。」を英語表記した例文です。
wouldn't be able to matchで「及びもつかない」を英語で表現しています。これは類語でも説明した、「及び」の意味を線で捉えた場合の言い換え方と言えます。線で「及び」の意味を捉える場合、距離や時間などのものさしを指す場合もあります。
及びの英語・例文②
「I have the economy and the people and the world in my hands.(アイ ハブ ザ エコノミー アンド ザ ピープル アンド ザ ワールド イン マイ ハンズ)」意味は、「私は、経済及び人材を手中に収め、世界をこの手にするのだ。」を英語表記しています。
この言い換えは「及び」を並列した事象に対して用いる場合の英語表記を使った例文です。ですので「及び」の意味で使用した単語は「and」になります。先ほどの例文に比べると随分とすっきりしています。
及びの英語・例文③
「The battle lasted 100 years and continued to throw people into what seemed eternal desolation and death.(ザ バトル ラステッド 100 イヤーズ アンド コンティニュード トゥ スロー ピープル イントゥー ワット シームド エターナル デソレイション アンド デス)」
意味は、「その戦いは100年の長きに及び、人々に永劫とも思える荒廃と死を振りまき続けた。」という文面を英語で表記しています。こちらも意味としては「線」を意識した文ですが、英語での表記では「and」を用いています。
①の例では別の言葉で表現されていましたが、同じような使い方でもこのように別の言い換えを英語では表現します。状況によってandとそれ以外の言葉を使い分ける必要があることを覚えておきましょう。
及びの使い方
続いてはいよいよ「日本語」での「及び」をつかった色々な意味での使い方を例文を使って表現したものを紹介します。大きく分けて二つの意味をもつ「及び」を、どのように使うのが正しいのか。
例文を通して具体的なニュアンスと使用方法を掴んで、「及び」という言葉をどのタイミングでどのようにして使えば良いのかについて見ていきましょう。先ほどの英文にもありましたが、用法によって微妙に意味が変わります。
そうしたちょっとした違いによって生まれる意味の変化や、「及び」のあやまった使い方いついても例文にて確認しておきましょう。
例文①
「繰り返します、本日の昼食及びお昼の構内行事は、避難訓練を実施するために場所を変えて行います。所内のみなさんはくれぐれも通常通りの行動ではないことを理解してください。繰り返します…」
お昼の行動というくくりで枠組みに組まれた「昼食」と「構内行事」を同列のものとして扱い、「及び」として合わせて表現した意味をもった例文です。ひとつの行動にさいして同時間におこなわれる行事ごととの関連性から同格として扱う形になっています。
例文②
「必死になって頑張って、ようやくここまでたどり着いたと思っていた。そして、改めて目指すべき目標に目を向けて、そこでわたしは思い知ったのだ。まだまだわたしは、師の足元にも及びえない未熟者であったということに」
到達点に対しての位置づけを意味する言葉としての「及び」を使った例文です。繰り返し繰り返し行ってきた過酷な修行によって、師匠の存在をより身近に感じられるようになったと思った矢先に、実際はもっと遠い存在だと気付いたしまった、という例文に使っています。
並列としての意味をもつ「及び」ではなく、前後や点に関しての意味をもつ「及び」を使った例文です。前述している英語の例文でも似たような文を使っています。
例文③
「さきほど発表があったように、省庁及び職員は今後、名称を別の括りとして改めて、まったく別の形でスタートを切ることになった。しっかりと意識を切り替えていかなくてはならない。民営化の並はついにここまで来たのだ、と理解すべきなのだ」
これまでは国営であったとう意味での括りとして「省庁」という建物と「職員」という人々を同列の意味として「及び」で括った例です。建物も人も本来は同列でくくれるものではありませんが、観点が違うために同列としてくくれてしまう例です。
例文④
「いつも当店をご利用頂き、誠にありがとうございます。つきましては大変ご迷惑をお掛けしますが、ドリンクバーのメンテナンスを30分程度実施致します。お水、ホットコーヒー、及びソフトドリンクメーカーのご利用が叶いませんのでご了承くださいませ」
二つ以上の同列の意味をもつ存在を扱う場合は、最後に「及び」をもってくるのが正解です。4つ以上の場合は中央に「及び」を配置すると言葉の文節の流れとし美しいと見られています。また句読点をうつ場合は、「及び」の前にうつのが美しいとされています。
「及び」の後ろにうった場合、「及ぶ」という意味に勘違いされやすくなってしまうからです。二つの「及び」の意味を正しく使い分けるためにも、句読点や同列の複数配置時の「及び」の使い方には注意しましょう。
及びを使う上での注意点
「及び」という言葉を使うにあたって注意したい事がいくつかあります。一つはさきほども例文にて紹介した「三つ以上のものや存在が挙げられている場合の用法」です。例えば「リンゴ、ミカン、及びイチゴ」が三つの場合は美しい書き方になります。
そして「リンゴ、ミカン、及びイチゴ、スイカ」というように、4つの場合は中央に配置するようにすればよりバランスがよい文体に見えます。また読点についても使い方には注意が必要です。
本来は「リンゴ、ミカン及びイチゴ」が法令用語として定められていますが、読みやすさとしては「リンゴ、ミカン、及びイチゴ」の方が見やすくなります。使いやすい方を選ぶべきですが、「リンゴ、ミカン及び、イチゴ」の使い方は間違やすいので控えましょう。
及びは付け加えるという意味
前後の文節を繋ぎ合わせるという意味での「及び」は、基本的には小さな文節を対象として使用されることが多い言葉です。複数グループや枠組みを組み合わせて呼称する場合などは、「並びに」と使う場面もあり、なかなか使いどころが難しい言葉でもあります。
しかし、根本的に「及び」は特定の枠に収まる複数の存在をまとめるときに使います。「~と」という印象で使う言葉ですので余り肩ひじ張らずにつかって行きましょう。
そして、「並びに」とうまく使い分けて、大きな枠組みには「並びに」を用いて、その中の小さな枠組みに「及び」を使えるように頑張りましょう。