よしんばの意味とは?
「よしんば」という言葉について、深く考えたことはありますか。日常的に聞かれる言葉ではありませんが、まったく耳にしないということもないはずです。未だ使われている日本語である以上、意味や使い方を知っておくのは大切です。
よしんばは、「例えそうでも」「仮にそうでも」という仮定の意味を持つ言葉で、その後には、前半とは逆の意味を持つ仮定が来るのもポイントです。
よしんばの類語
仮定を意味するよしんばですが、類語はあるのでしょうか。よしんばの類語としては、「万一」「万に一つの確率でも」といったものが挙げられます。「よしんばそうでも」は、「万一そうでも」「万に一つの確率でそうでも」と言い換えることも可能です。言い換えても、意味はまったく同じです。
このことからも、これらの表現が類語であることが分かります。万一などはよく浸透している言葉なので、類語からよしんばの意味を思い出すことも出来るでしょう。
よしんばの語源
言葉の意味を知る上で、その言葉の語源に迫るのは重要なことです。よしんばをより理解するために、まずはその語源について知っておくといいでしょう。仮定を意味するよしんばですが、なぜそのような意味を持つに至ったのでしょうか。それを知るためには、語源を紐解くのが一番です。
よしんばの語源は「縦」という文字にある
よしんばは「縦しんば」とも書き、この「縦」という漢字が、よしんばの意味を最もよく表していると言えます。語源を探るため、まずはこの漢字について解説しましょう。向きを表す「縦」が広く知られている意味ですが、この文字には他にも「たとい」という仮定を表す意味があります。
「縦し」には仕方がないがそう想定するというニュアンスがあり、それに条件を表す「んば」が結合し、よしんばという言葉になっています。このことが、よしんばの語源と言えるでしょう。
よしんばは方言ではない
よしんばは、その独特の響きから方言であると勘違いされることが多いです。しかし、よしんばは方言ではなく、日本で古くから使われている大和言葉という位置づけになっています。地方で話されている方言という言葉ではなく、広く日本で用いられている言葉なのです。
最近注目されつつあるという大和言葉ですが、一体どんな言葉を指すのでしょう。大和言葉とは、日本に外の文化が入ってくる以前に、日本で使われていた言葉を指します。方言とは、違う言葉です。
国際化が進む現在だからこそ、古くから日本に伝わる言葉に注目が集まるのも納得です。よしんばのような大和言葉を使いこなせることは、スマートな大人であるという印象を持たれるものでもあります。
方言は方言で知っておくと話題性もありますが、よしんばが方言でないことを知った今、あなたはまた一歩そういう大人に近付いたと言えるでしょう。
よしんばの英語表現
よしんばが方言でなく大和言葉であることは、たった今ご紹介したばかりではあります。よしんば、「よしんば」が古い日本の言葉であっても、英語での使い方を覚えておいて損はないのではないでしょうか。よしんばが大和言葉だからといって、英語に出来ないわけではありません。
よしんばの持つ意味そのものを、英語に訳して使えばいいのです。そんなよしんばですが、英語で表現するとどのような形になるのでしょうか。
よしんばは「if」?
よしんばを端的に表そうとするなら、まず考えられるのはifではないでしょうか。ifにはもちろん仮定の意味がありますが、よしんばを表すには少し足りないとも言えます。そんな時に使いたいのが、even ifという英語です。「たとえ~だとしても」という意味になり、より近い意味となります。
I'll do it even if he doesn't.この例文は「彼がしなくても、私はそれをやります」という意味になり、「しなくても、やる」と前後の意味が逆になっていて、よしんばの英語訳として相応しい表現です。
英語ではin spite ofも近い
英語のspiteには、悪意や意地悪といった意味があります。この単語を使った言い方にin spite ofというものがあり、「~にも関わらず」という意味を持っています。In spite of poor weather, I'll go there.という例文を訳すと、「悪天候にも関わらず、私はそこへ行くだろう」となります。
意味としては、よしんばを使った場合と非常によく似ています。しかし、細かいニュアンスまで考えると、完璧であるとは言いがたいでしょう。
「よしんば悪天候だったとしても、私はそこへ行くだろう」と言う場合は、どうでしょう。何があってもそこへ行くんだという、強い意志が感じられはしないでしょうか。in spite ofだけでは、その辺りを表現するのに物足りなさがあると言えます。
このことから考えると、よしんばの英語表現としては、even ifが相応しいと言えるでしょう。in spite ofも意味合いとしてはほぼ同じですが、表現されている事柄に弱さがあります。
よしんばの使い方
言葉は難しいもので、意味が分かったからといって、簡単に使いこなせるものではありません。せっかくよしんばについて理解を深めてきたので、それを実際に使ってみたいと思う人も多いでしょう。そんな声にお応えして、こちらではよしんばの具体的な使い方をご紹介しましょう。
実際の文章の中ではどのように使えばいいのか、例文を挙げてご説明いたします。参考にしていただき、よしんばを日常的に使えるようにしましょう。
例文①
「よしんば雨が降ったとしても、私はその野外ライブに行くだろう」よしんばの多くは、よしんばの後に前半とは逆の意味を持つ仮定を置くという特徴があります。雨が降った時には、屋外でのイベントに出掛ける機会は少なくなるはずです。その2つを結び付けているのが、よしんばなのです。
例文②
「よしんば彼がどんなに努力しても、彼の好意は受け入れてもらえないに違いない」よしんばの後には仮定の話がくるわけですが、その多くは、前半とは逆の、否定的な意味合いであるとも言えます。こちらの例文ではどうなっているでしょう。
彼は誰かに思いを受け入れてもらうべく努力しますが、その気持ちは受け入れてもらえない可能性が高いという意味の文章です。よしんばを使った、典型的な表現方法と言えるでしょう。
例文③
「よしんばそうなったとしても、私は泣くつもりはない」この例文が示すように、よしんばを含む前半部分では、具体的な内容を省いて表現することも出来ます。この文章だけでは何がそうなったのかは分かりませんが、前後にその答えがあるはずです。
例えば、「彼氏と別れた」という事実が最初に来てもいいですし、「彼氏と別れることになっても」と後付けすることも可能です。こういう形でも使えるということを、覚えておくといいでしょう。
例文④
「よしんば怖がりでも、大人の彼が一人でトイレに行けないということはないだろう」このように、よしんばの後には名詞を直接持ってくることも出来ます。この例文は「よしんば彼が怖がりだったとしても、一人で~」という形に置き換えることも可能です。
よしんばを使った表現に慣れれば、言い方も多様に変化させることが出来ます。いくつかの用法を覚えておいて、使い分けてもいいでしょう。
よしんばの注意点
よしんばを使った例文に触れ、この言葉にもずいぶんと馴染んできたのではないでしょうか。慣れてきた頃に注意したいのが、誤った解釈や使い方です。決して難しい言葉ではないよしんばにも、実は注意してほしいポイントがあるのです。それは一体、どういったものなのでしょうか。
「否定形とセット」がよしんばの正しい使い方?
「よしんば~でも、●●ではない」というように、文末を否定形で結ぶのは、よしんばの使い方のひとつです。よしんばの説明の中には、常にそうでなくてはならないとするものもありますが、実はそれは誤りです。
先の例文①でもご紹介しましたが、「~するつもりだ」のように、否定形で終わらない用法もあるのです。否定形で結ばなくても、導かれた仮定が後半部分で否定されていれば問題はありません。
例えば、次のような一文があったとしましょう。「よしんばお金があっても、私はその服を買うだろう」この例文も否定を含む終わり方ではありませんが、これは正しい使い方ではありません。普通に考えて、お金があれば、買おうと考えていた服を買うはずです。否定がないので、これは誤用です。
この場合は「よしんばお金があっても、その服を買わないだろう」か「よしんばお金がなくても、その服を買うだろう」とすれば、よしんばの正しい使い方になります。
よしんばは「仮にそうだったとしても」という意味
よしんばは、意味としては簡単な言葉ですが、その使い方に注意であることが分かっていただけたでしょうか。なかなか日常使いをすることのないよしんばですが、これを機に、少しずつ自分の中で広めていくのもいいでしょう。美しい言葉を正しく使えることは、とても素晴らしいことなのです。